水彩画のような世界。
淡い水色の空と、淡い灰色のアスファルトの世界。
その中心に私は座っていて。
瞬くと、一瞬にして人で溢れかえった。
同じような顔ばかりだった。見た事のあるような顔ばかりだった。
大好きなあっくんの顔ばかりだった。
「見たことがあるような顔」と言ったけれど明確に分かるのは口元だけで。
服装や体型があっくんのそれなので多分そうだと思う。
その隣には今まで出会った人達がいた。
こちらも顔は朧気で口元しか分からないが、見た事のある服装ばかりだった。
顔が朧気なので表情もよく見えなかったけれど、皆楽しげに会話して幸せそうな雰囲気に包まれていた。
あの美琴ちゃんと思われる人物でさえ、あっくんと笑いあっていた。
───私の入り込む隙なんてない。
なぜか、そう思った。思ってしまった。
周りは相も変わらず、へたり込む私を気にもせずに、私が声をかけても気にもとめずに歩いていく。
次第に。私だけを置いて、楽しそうに笑う顔が見てられなくなって、堪らず走り出した。
走っても走っても、あっくんの隣を並んで歩く私の姿は居なくて、それがまた辛くて、ただ人波に逆らってひたすらに走り続けた。
……気が付くと、そこには見知った日常の風景が広がっていた。
いつもの黄泉川家の日常。
ソファーにはあっくんが寝転んで、あっくんのお腹の上を打ち止めが楽しそうに乗り込んで、鬱陶しそうなあっくんを見てゲラゲラと愉快そうに笑う番外個体が居て、その光景を黄泉川さんと芳川が微笑ましそうに見ていて。
───けれど、そこに私の姿は無かった。
見えない壁が邪魔をして、私はそこへ行けなかった。
私はただの観客のように、その日常を見ていることしか出来なかった。
「ぅ……あ、あぁ……」
虚しさと、切なさが私の心を埋めつくし、私は耐えきれずに膝から崩れ落ちる。
「黄泉川さん……」
家主の名を呼ぶと、彼女は声を上げて笑った。
「芳川……」
居候の研究者の名を呼ぶと、彼女は可笑しそうに苦笑を零した。
「番外個体……」
白いアオザイを着た少女の名を呼ぶと、彼女は服が乱れるのもお構い無しに笑い転げた。
「打ち止め……」
水玉模様のワンピースを着た少女の名を呼ぶと、彼女は心から幸せそうに、あの人に笑いかけた。
「一方、通行ぁ……っ」
壁に縋り付きながら何よりも愛しい人の名を呼ぶと、あの人は打ち止めの頭に手を置いて、一瞬こちらを見たような気がして。
「………………」
気付いて、くれた……?
「ぁ、一方通行っ! みんな!」
その事実が私を絶望の淵から掬い上げた。
そして、無我夢中になりながらもたった一つの