SAOデカ   作:リューイ

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第1話

 「おはようございまーす!!」

 

 清廉な空のした少し肌寒くなってきた柔らかな朝の秋風を身に受けながら色とりどりのランドセルを背負った子供たちが元気な挨拶の声を上げる。

 

 「おはよう。気を付けて行って来いよ。」

 

 挨拶を返すと子供たちは「はーい」とこれまた元気よく返事をして私の前を通り過ぎ登校していく。

 

 子供たちが気安く挨拶し、私も態々挨拶を返すのも理由がある。それは私の立っている場所が交番前で、着ている物が警察官の制服だからだ。

 そう私は警察官なのだ。と言ってもまだ一年目の新人ではあるが。

 故に子供たちに挨拶を返すのも職務の内なのである。

 

 さて子供たちも登校し終わり、通勤の人達もほぼ見なくなる時間帯になったらそろそろ前日からの勤務も終わりだ。

 

 私はやって来た次の交番勤務の担当に引継ぎをしてから所属の警察署に戻り上司に報告を済ませ独身寮への帰途に就く。

 

 

 警察官の花形は刑事だとよく言われるが交番勤務も悪くないと私は思っている。

 特に私の勤務している地域は平和で手柄を立てる機会もないが非番の時に呼び出されることもほとんどない。

 できればこのまま平穏無事に定年まで過ごしたいものである。

 先輩の警官にそう言うと決まって若いのに覇気がないと呆れられるが私だって元から覇気のない人間だったわけではない。こうなったのは誰にも打ち明けたことのない私の秘密に関係がある。

 実は私は転生者なのだ。

 

 いわゆる神様転生と言うやつで、一度死に、そのあと神様に転生させてもらったのだ。

 その時、もともとそう言う質だったのか、それとも一度死んだからそうなったのかはもう定かではないが、私は死ぬことをとても恐れる様になった。今度生まれる場所がどのような所か分からなかったことも私の恐怖心をあおり神に力をくれる様に願わせた。

 

 その願いは拍子抜けするほどあっさりとかなえられ、私はチートライダーの呼び声も高い仮面ライダーBLACK RXの力を得た。

 私は喜んだ。これでちょっとやそっとでは死なない、何よりピンチになったら不思議なことが起こり何とかなってくれるかもしれないのだ。

 

 だがしかし私の恐怖心はそれでも消える事はなかった。

 故に私は警察官になった。

 それは己の恐怖心に相対し乗り越える為などと言う前向きな事ではなく、何か自分の手に負えない出来事が起こった際少しでも早く事を知り逃げるためだ。

 我がことながらなんとさもしい奴かと自己嫌悪していたが最近はそんな私だから何事もそここそ、平凡な日常を平凡に過す、そのありがたみが分かるのではないかと思えるようになってきた。

 

 

 寮に帰り着き、カーテンの閉め切られたままの薄暗い部屋に明かりをつける。すると部屋の真ん中に置かれたテーブルの上には大きめのダンボールが鎮座していた。

 

 今日サービス開始のオンラインゲームを帰ってきたらすぐにできる様に昨日出勤する前に机の上に買ってきたゲームを置いて出かけたのだ。

 

 さっそくやるかと箱に手を伸ばしかけたが止めた。平穏無事な一日だったとはいえ相応に疲れはした、折角の最新ゲーム、それも世界初のバーチャルリアリティー・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム、所謂VRMMOなのだから。

 一眠りして頭をすっきりさせてからやろうと思い直して私は手早く着替えベットで横になった。

 

 

 

 

 ピピピピッピピピピッと携帯電話のけたたましいコール音で目が覚める。

 コール音の種類から署からの呼び出しだと気づきベットから上半身だけ起こし枕もとで充電していた携帯電話に出る。

 

 「はい」

 

 「今すぐ署の第一会議室に集合しろ」

 

 電話に出ると名乗る間もなく出頭を命じられて切れてしまった。

 おかしい、普通なら本人確認の為こちらが名乗るまで用件は言わないし、命令にしてももっと正確になされる。

 よほどの事が起こっているのだろう。

 いやな予感がする。

 私は急いで署に向かった。

 

 署に着いた私は更衣室で制服に着替え会議室に急ぐ。

 到着した会議室には部屋いっぱいに簡素な長机が並べられすでにそこに大勢の警官が着席していた。

 馴染の薄い顔も多い事から所属に関係なく集められている様だ。

 集められた人員の多さを見るに嫌な予感はあたりだった様だ。

 私はため息を吐きつつ開いている席を探す。

 同じ地域課で働く先輩女性警察官、日名五月(ひなさつき)巡査長のとなりの席がが丁度空いてるのを見つけたのでそこに移動する。

 

 「お疲れ様です日名(ひな)先輩、何だか大事みたいですね。何があったのか知っていたら教えてもらえませんか?」

 

 「君、ニュース観ていないの。」

 

 彼女に何事か知っていることが無いか訊いてみたが返事は素気無く、私を非難するような色もあった。

 警察官なら常日頃から世の中の動向に気を配っていてしかるべきだと言いたいのかもしれないがそれなら私にも言い分はある。勤務で明けで寝ていたところを起こされて、押っ取り刀で駆けつけてきたのだ。そう抗弁したい気持ちになったが、やめた。

 不毛であるし、彼女が少し硬く厳しい言い方をするわけも知っている。

 

 彼女はその容姿からしばしは幼く見られ侮られることがあるのだ。

 身長自体は警察官の採用試験を通るぐらいなので小柄過ぎると言う事はないし顔の造形も整っているのだか兎にも角にも童顔すぎてどうしても若くて美人という感じでは無く、幼くて可愛らしい印象になってしまう。

 なのでどうしても皆からマスコットガール扱いをされてしまっていたらしい。

 それを嫌った彼女は肩口まで伸ばしていた髪をベリーショートに切って凛々しく見られようと努力していたのだがうまくいかず、馬鹿な後輩からは彼女の名前と掛けて「お雛様が五月人形のマネをしているみたいですよ」と言われる。

 その馬鹿な後輩とは誰あろう私なのだが、あの時は無理せずに自分らしい恰好をすればいいと言いたかっただけなのだが、他人から押し付けられる自分らしさはと言うものはただの偏見であると後から気づいた。

 彼女が成りたい自分、自分らしいと思える自分はマスコットガールではなく、皆から敬意を抱かれるような警察官なのだ。

 だから彼女は自身に厳しく、他の警察官にも少しだけそれを求めてしまうのだ。

 

 

 「すいません。見ていませんでした。」

 

 私が素直に謝罪すると彼女はそれ以上責める気はないのか質問に答えてくれた。

 

 「テロよ」

 

 「テロですか?」

 

 その言葉のあまりも馴染の無さに思わずオウム返しに聞き返してしまう。

 しかし私のその様子にあきれたのか日名先輩はそれ以上何も言わなかった。

 いや、あるいは彼女も詳しい事は知らないのかもしれない。

 ならこれ以上食い下がっても仕方がない。私は説明が開始されるのを待つことにした。

 

 

 会議室の席がほぼ埋まったころ前側の扉から数人の年嵩の男たちが入室してきた。

 署長、副署長以下各課の課長ら、この署の幹部たちだ。

 彼らが会議室の前側、署員たちと向かい合わせに成るように置かれた机の前まで来ると号令がかかる。

 

 「起立ッ!!」

 

 皆が一斉に立ち上がる。

 それを確認した副所長が「それでは署長、お願いします」とマイクを渡した。

 署長は頷いた後マイクを受け取り話し始めた。

 これでようやく今回の呼び出しについて説明が聴けそうだ。

 

 「今回集まってもらったのは本庁からの捜査協力要請にこたえるためだ。どの事件なのかは皆うすうす気づいてはいるだろう。今も報道されているあの事件だ。」

 

 

 その後署長から語られた内容は衝撃的なものだった。

 その内容は茅場晶彦なる人物による前代未聞のサイバーテロ、1万人近い人間を茅場が製作したソードアート・オンラインというゲームのVR空間に閉じ込め、ゲーム内で死亡すると現実でも死亡するデスゲームを強要しているという事と、それに際し茅場が犯行声明で政府に対しSAO(ソードアート・オンライン)の運営の妨害禁止と囚われたプレイヤー達の肉体の生命維持を要求してきたと言う事だった。

 

 「本事案の重大性を鑑み、本庁からの要請に従い全面的に協力する。具体的な内容についてはこの後刑事課課長から説明を受けてもらうが、皆粉骨砕身、全力を尽くしてもらいたい。」

 

 署長がそう締めくくると署員全員から「ハイッ!」と気勢の良い返事が揃う。署長はその様子に満足したのか一度署員たちを見回すと頷き、隣に居る刑事課課長にマイクを手渡した。

 

 マイクを渡された刑事課課長が続けて説明に入る。

 

 「では詳しく要請された捜査協力の内容について話していく。現状本庁に設置されたSAO事件対策本部では人命を最優先とし、茅場から犯行声明と共に送られてきたナーブギア購入者リスト、あぁっとナーブギアと言うのはSAOようのヘッドギアタイプのゲーム機らしいんだが、それをもとにプレイヤーの肉体の発見及び保護を本庁及び各県警の捜一に要請している。しかしリスト自体に大きな穴があることが解った。」

 

 刑事課課長は一度リストのコピーを掲げて見せた後それを机に叩きつけた。

 

 「茅場があえて無視したのか、考えつかなかったのかは知らんがこのリストでは転売屋の事が考慮されていない。現在転売され所在の分からないナーブギアが複数あり、その総数はかなりの数に上ると推測される。これらを一件一件捜索している時間は無い。茅場が提示したプレイヤーの肉体を医療施設に移動させるために用意した期日は3日あるが飲まず食わずでずっと同じ体勢で居続けると言うのも健康上良くないらしい。故になるべく早く、医療施設への移動時間も顧慮して2日の内に全員発見したい。だから手すき署員全員で管内の市民全員の安否確認をする。」

 

 「そんな無茶な」

 

 「難しい事は分かっている。しかしリストに漏れがあったからと言って我々警察がその手の内から市民の命を零れ落ちさせるわけにはいかない。担当の地域はそれぞれの課長に指示がすでに出ている。これより各課に別れそれぞれの課長から担当場所の指示を受け速やかに安否確認を始めてくれ。では行動開始」

 

 思わずと言った風に署員の一人が弱音を吐く。しかしそれでも刑事課課長は毅然と命令を下した。

 そこには警察官の使命と、それから生まれた茅場への確かな怒りの熱を感じた。

 

 そんな姿を見せられたら事なかれ主義の私でも魅せられてしまい熱が移ってしまう。

 折角生まれ直したのだ。

 今の私は警察官北 闇太郎(きた やみたろう)巡査だ。

 一度くらい他人(ひと)の為に真面目に働くのもいいかもしれない。どうせ探すだけなら自分には全く危険は及ばないのだから。

 

 

 

  

 

 

 





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