パワフルC   作:Arica

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地方大会編
VSバス停前高校


 

 

「バス停前高校です!対戦よろしくお願いします!」

 

 

「ねぇ、聖。バス停前?だかって相手チーム....」

 

 

「...なんだ?」

 

 

「なんか...地味じゃない?全員、印象薄いっていうか....」

 

 

 

こうして並んでる人たちを見てみると。

なんというか全く特徴がないし、存在感が薄い。

 

 

「...そう言うな。確かに目立つとは言えないが。あれでも皆頑張っているのだ。」

 

 

「頑張ってるったってねぇ。....数が多すぎて、誰が誰なんだかさっぱりだわ。」

 

 

 

「....やっぱり、そう言われるよなぁー。」

 

 

「わっ。ビックリした!えーと....名前なんだったっけ。」

 

 

 

「田中山だよっ!いい加減覚えてくれよー!」

 

 

そう言われても、全く覚えられないなぁ。

まるでここのチームの人たちみたいっていうか...

 

 

「橘さん。...今キミ、このチームの人みたいだなって思っただろー?」

 

「....いやいや、全然?ただまぁその。やっぱり改めて見ても地味だなーって....」

 

 

「みずき、全くフォローになってないぞ。」

 

 

「....はぁ。実はボク、それが理由でこの学校に来たんだよ。」

 

「それが理由で?どういうこと?」

 

 

 

私がそう聞くと田中山くんは、実はこのバス停前高校に最初は入学する予定だったと言った。

だけど、何故入学しなかったのかと言うと....

 

 

「友達が誘ってきてたんだけどさ。なんていうか、あんな学校にいるとボクまで地味になってきそうで....」

 

 

「...あぁ。それで、この....色々と、変な名前の学校に来たってわけね。」

 

 

 

....とは言われても、大して変わってない気もするけど。

まぁ逆にうちの学校で地味な見た目だったら、ある意味インパクトは強いのかも。

 

 

「....あれ、おい!田...あいつじゃないか!」

 

「ホントだ。あいつ、なんでそんな学校に行ったんだ?おーい!」

 

 

相手チームの誰かが、田中山君に向かって呼びかける。

だけど、向こうの方ですら全く名前を覚えられていない。

 

 

「...み、見てろよー!ボクはもう二度と、地味なんて呼ばせないからな!」

 

 

田中山くんは相手に向かってそう啖呵を切ると、こっちに向き直って言った。

 

 

「みんな!ボクの活躍、しっかり見ててくれよ!」

 

 

 

「....ははは。結構目立ってるじゃない。これは今日の試合、なんだかんだ見所あるかもね。」

 

 

「そうだなみずき。....私たちも、影が薄くならないように頑張ろう!」

 

 

 

 

 

 

「よし!2回戦に進んだぞ!」

 

 

そう皆が騒ぐ。次の対戦チームは恋恋高校に決まった。

 

 

「次の打線はこんな感じに決めたわ。みずき、どう思う?」

 

 

聖奈子お姉ちゃんがそう言ってきたから、

私はチラッとその打線を見てみることにする。

 

 

1 一 パワプロ

2 三 東條小次郎


3 二 原啓太


4 左 エミリ・池田・クリスティン

5 遊 田中山太郎

6 右 三条院麗奈


7 捕 六道聖


8 中 矢部明雄


9 投 猪狩守

 

 

「とりあえずこれでいいんじゃないかなぁ。....相変わらず、ちょっと無理が出てる所もあるけど」

 

 

うちの野球部は遊び半分でやってる部員が多くて、あまり試合に出たがる人がいない。

そのせいでマネージャーまでもチームの数に含まれてしまっている。

 

そういえば今回の試合前、麗奈は意気込んだ様子を見せてたけど....まぁ、結果は言わなくてもいっか。

 

 

向こうを見ると、田中山くんはまだあの時の活躍を褒められている。

 

 

「しかし田中山くん、凄いな!見直したよ!」

 

「いやいや、そこまででもないよ!やっぱり頑張った皆のおかげだよ!」

 

 

バス停前との試合の結果は8対2で、私たちのチームの勝ち。

試合の中では先発の猪狩守の好投から始まり、更に田中山君の驚くべき守備。

そのおかげで、相手に点をほとんど取らせていなかった。

 

 

「皆、ホントに凄いわね。....逆に私の方が、あんまり目立ってなかったかも。」

 

 

 

私が1人でそう呟くと、隣にいたパワプロくんが話しかけてくる。

 

 

「そんなことないよ。橘だって結構凄かっただろ?1失点で何とか抑えてたし」

 

「猪狩の次の登板で、ちょっと大丈夫かと心配したけど....不安になる必要はなかったな。」

 

 

 

「な....何言ってんのよ。野球部にいるんだし、これぐらいできて当然じゃない。」

 

 

 

これで褒められたからって、別に感謝なんてしないからね。

どうせいつものお世辞で深い意味なんてないんだろうし....

でもなんか恥ずかしいし。...こっちからも何か言ってやろうかな。

 

 

「ところで。....パワプロくんの方はどうだったのかしら?まぁ生徒会長なんだから、野球の方も当然出来てたわよね」

 

 

「....ヒット1回。でも、あれで2点入ったからいいだろ?」

 

 

「ふふん。まだまだ全然じゃない。もっと練習しなくちゃ、私には追いつけないわよ」

 

 

 

私が少し挑発するとパワプロ君はすぐにムキになる。

その反応が面白くてしょうがなくて、自然に笑みがこぼれた。

 

 

「なんだよ、ちょっと褒めたら調子に乗ってさ。...よし。だったら次の試合、オレは橘の何十倍も活躍してやるからな!」

 

 

「うん。頑張って活躍しなさいよね。きっとパワプロ君ならもっとできるわ。....私、期待してるから。」

 

 

「え?あ、うん。頑張るよ....って。急に態度を変えるなよ、調子狂うなぁ。」

 

 

「あはは。....そういえば、次の対戦校は......また変な名前だけど。恋恋高校って、どんな学校なのかしら?」

 

 

「恋恋?....昔は女子校だったらしいって聞いたけどな。うちと同じく、女の子の選手も多いとか」

 

 

 

だったら....次も簡単に勝てそうな感じかしらね。

そう私が言うと、パワプロ君は難しそうな顔をした。

 

 

「....どうしたの?そんな顔しちゃって。」

 

 

 

「次はバス停前みたいに、...そう一筋縄でも行かないかもしれないよ。最近、凄い選手が入ったって情報があったからな」

 

 

 

凄い選手...?帝王にいるあいつ以外にも?

私がそう思うとパワプロくんは続けて、その選手の名前を口にする。

 

 

「名前は...軽井沢大輝。サッカー部の選手を、野球部のキャプテンが引き込んだらしいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ...これが、次の対戦相手のメンバーか。」

 

 

「軽井沢...いつの間に?」

 

「先輩...どうしましたか?さっきからここにいたんですけどね。」

 

「...相変わらず、お前の足の速さはピカイチだな。さすがはサッカー部のキャプテンだよ。」

 

 

オレがそう感嘆すると、軽井沢は不敵に笑う。

 

 

「...先輩もそれを分かってて、ボクをこの部活に引き込んだんでしょう?」

 

「...最初に勧誘された時は驚きましたよ。まさか野球部と二足のわらじをやれ、だなんて」

 

「悪いな。この高校で野球部を続けていくには、軽井沢の力がどうしても必要なんだ。」

 

 

彼は軽井沢大輝。まだ入学したての新入生だが、訳あって野球部の助っ人を頼んでいる。

まず説明しておくと、オレのいる恋恋高校は元女子校。数年前に共学になったため女子がとても多い。

当然その理由もあって、オレが1年の頃はこの野球部の立ち上げもそう上手くいってはいなかった。

 

一応オレが2年生となった今は、高木幸子や倉橋彩乃など実力ある選手も揃ってきている。

とはいえまだまだ戦力不足。この状況を立て直すにはもっと強い選手が必要とオレは考えていたんだ。

 

....そこでオレは入学していきなりサッカー部のキャプテンとなった軽井沢のウワサを聞き、すぐに勧誘したというわけだった。

しかし、まさか彼がここまでの速さだとは....驚きしかないよなぁ。

 

 

「...鬼だなぁ、先輩は。両方やってたらいつかボク、ぶっ倒れるかもしれませんよ。」

 

「そんなこと言っても、サッカー部の練習にはあんまり行ってないらしいじゃないか。」

 

「ハハハ。ボクには才能がありますからね。サッカーの試合なんて朝飯前だ。練習なんか必要ありませんよ」

 

 

「ずいぶんと適当なヤツだな...」

 

 

よくそれでキャプテンがつとまってるよな、とオレは呆れながら言う。

すると、隣のメガネをかけた仲間がオレを諭した。

 

 

「まぁ...別に良いじゃないでやんすか。その才能があるからこそ、軽井沢くんは野球部にいられるんでやんすよね?」

 

 

軽井沢はその爽やかな表情を崩さずに話す。

悔しいが、彼のルックスはオレから見ても結構整っている方だ。

 

 

「えぇ、もちろん。あとこっちの方は女の子たちが多くてね。また違うやりがいも出てくるってもんですから。」

 

 

....やりがいと言っても、こいつがやってる事は女子のナンパが多分に含まれる。

練習にしっかり参加はしているが、そんな時にも女子へのアピールはまず欠かさない。

 

その様子を見かねて高木や倉橋がたまに説教をするが、彼は全く反省する気はないようだった。....やれやれ。

 

 

「....軽井沢。この聖パワフルっていう高校、どう思う?ヘンな学校名だけどさ」

 

「ああ...可愛い子が揃ってるなぁとは思いますが」

 

「お前、そこしか見てないのか?...まぁ、オレも人のことは言えないけどさ」

 

「先輩。今回は相手チームにも女子がいる。それだけでボクのやる気も上がるってもんですよ」

 

 

軽井沢はそう興奮すると、写真をまじまじと覗き込む。

 

 

 

 

「それで、えーと。緑髪の人が、早川あおいさん...でしたっけ。」

 

 

あぁその通りだよ、とオレは迷いなく答えた。

早川あおいは...うちのマネージャー、七瀬はるかの親友だ。

プライベートでは、はるかちゃんと遊ぶ時にたまに彼女の話を聞いたりはする。

でもオレが彼女を知っている理由はそれだけじゃない。

 

....何しろ彼女は、魔球マリンボールを操る凄腕ピッチャー。

ここの学校でもその名を知らぬ生徒はまずいないぐらいの存在だからだ。

その何が凄いのか...まぁ、ここで話す必要はないかな。

 

もしこの学校に来てくれればかなり助かったんだけどな...

はるかちゃんの話では向こうの方に仲の良い後輩がいるから、らしい。

そんなムシの良い話なんてないってことか。

 

 

「...紫髪の子も可愛いな。...この水色の髪の子は、なんて名前です?」

 

 

 

 

 

「うーんと...確か、橘みずきだったかな。前に野球をやってたけど一旦やめて。最近、また野球を始めたとか」

 

 

実は中学の時、オレは彼女に会ったことがある。

....あると言っても何回か敵チームとして対戦した程度だけど。

年上のオレから見ても、彼女はピッチャーとして優れた能力を持ってた印象があった。

 

一度野球をやめた理由はよく分からないけど、同級生との揉め事が原因だって噂には聞いたな。

オレがそんな話をすると、軽井沢は写真を見ながら呟いた。

 

 

「へー、そうなんですか...あんまり可愛くないけど、気が強そうで良いね。...ボク、こういう子が結構好みなんで」

 

 

 

「お前の好みはどうでもいいけどさ。...どうなんだ軽井沢。今回の試合は、助っ人として参戦してくれるのか?」

 

「...もちろんですよ。こんな可愛い子たちに会えるとはね...感謝してますよ、先輩。」

 

「やっぱ、この野球部に入ったのは間違いじゃなかった。今ならハッキリとそう言える。」

 

「...フフッ、女の子たち。ボクの実力、キミたちにしっかりと見せてあげるからね...今から楽しみにしておいてくれよ。」

 

 

 

「...また一人で妄想にふけってるみたいでやんすねぇ。」

 

 

仲間が呆れながらそう言う。全く。あいつで本当に大丈夫なのか?

ちょっと心配になってきたな。...思わずため息が出てきそうになりながら、オレは言った。

 

 

「...まぁアレでも。数合わせのためには、必要なヤツだよ。」

 

「それにオレは、とにかく何をしようが勝つって決めたんだからな。...この野球部のためにも。...よし。待ってろよ、甲子園!」

 

 

それにしても。早川あおいか...懐かしい。まさかここで会えるなんてな。

オレは久々にワクワクして胸をたぎらせ、戦う決意を秘めた。

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