パワフルC   作:Arica

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みずきの策略

 

 

ついに恋恋高校との試合の日がやってくる。

私は球場の近くでぼんやりと待ちながら、おじいちゃんと話をした時の事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

「...おじいちゃん、おかえり。」

 

 

「みずきか。どうしたんだ、真剣な顔をして?」

 

 

「私ね....また野球始めたんだ。前まではもうやりたくないって思ってたけど。また始めちゃった。」

 

 

「おお、そうか...まぁ、それは良かった。無理はせんようにな。」

 

 

「...それでね。私、学校でお姉ちゃんにも会ったのよ。」

 

 

「聖名子に?....会えたというのか?」

 

 

私はコクリと頷く。どうしてだとおじいちゃんが聞いてきたから、私は今までの経緯を話した。

 

 

「...そうか。色々大変じゃったな、みずき。」

 

「しかし。ワシの築き上げた橘財閥が、今や腫れ物扱いか....皮肉なものだな。」

 

 

「....でも大丈夫、心配ないわおじいちゃん。私は生徒会長を味方につけてるから。」

 

 

「パワプロという男か....まぁその話を聞く限り、悪いヤツではなさそうに見えるが。」

 

 

「全然よ。最初は厳しそうだったけどね。今じゃ私の彼氏で、何でも奢ってくれるし。むしろちょろいもんっていうか?」

 

 

おじいちゃんは私の言葉を聞いて、感心した顔を見せた。

 

 

「....ほう。さすがワシの孫娘じゃ!そこまで登り詰めているとは....誇りに思うぞ。」

 

 

「登り詰めてるなんて、そんな....なんか気がついたら、流れでこうなっちゃっただけだよ。」

 

 

「みずき。....その才能を見込んで、お前に頼みがある。聖タチバナの学校の威厳をもう1度復活させてくれんか。」

 

 

「きゅ。急にどうしたの、おじいちゃん?」

 

 

「ワシはお前に、学校のトップに立って欲しいと言っているのだ。」

 

 

「わ。私が学校の....?校長とかになれってこと?」

 

 

「ハハハ....さすがにそれは無理だろうな。だが、今のみずきなら生徒会長にはなれると思っとる。」

 

「そのパワプロとかいうヤツを上手く利用すれば....成り代わる事もできるかもしれん。」

 

 

その話し方からはもういつもの温厚さが消えている。

まるで私にはおじいちゃんが獲物を狙う目つきをしているかのようにも見えた。

 

 

「お、おじいちゃん。....冗談言わないでよ。それじゃまるで、乗っ取りみたいじゃない」

 

 

「もちろんそうだ。だが今のみずきなら、それを批判もなくやり遂げられる。ワシはそう信じとる。」

 

「よく考えるのだ、みずき。お前は聖名子を救いたいんじゃろう。その男に依存しているだけでいいのか?」

 

「....難しく考えなくともよい。今のみずきには心強い味方がいる。まずはその男の信用を上手く上げること。話はそれからじゃ」

 

 

「....確かに私は、お姉ちゃんを早く助けたいわ。そのためには上の立場になる必要があるのかもしれないけど。」

 

「でも無理よ。もしトップに立てたとして、パワプロ君には信用されても、他の人からは絶対に批判を受けるだろうし....」

 

 

「ハハハッ、そんなものは揉み消しておけば良いだろう。権力を持てば簡単なことよ。」

 

 

おじいちゃんはそうあっさりと冷たく言い放つ。

その言葉に人を思いやる気持ちは欠片もない事に私は少しショックを受けた。

 

....けど冷静になってみたら、今の私たちが置かれてる状況はあまり良いとは言えないしね。

そう考えたら、もはや優しさなんて持ってる場合じゃないのかもしれなかった。

 

 

「....もし前だったら。中学の時だったら出来たかもしれない。けど今の私には、そんな自信はないよ」

 

 

「何を言っておる。そこまで登り詰めたのだろう?お前にはまだ才能があるはずじゃ。自信を持て!」

 

「聖名子のために....そして、聖タチバナのかつての栄光を取り戻すために。どんな事をしてでも、必ずトップに立ってくれ」

 

「....頼む、分かってくれみずき。今のワシにはもはやこれぐらいしか出来んのだ。」

 

 

おじいちゃんはそう祈るような顔をして、声を絞り出して言った。

....私にはよく分からないけど。たぶん財閥がなくなった事で、きっと今まで相当辛い思いをしてきたんだろうなと想像ができた。

そんな姿を見ていると、私は何としてでもその頼みを受けてあげたい気持ちになった。

 

 

「....分かったわ、おじいちゃん。私は絶対にトップに立つ。....たとえどんなやり方をしてでも」

 

 

 

 

 

 

「そのためにもまずこの試合で活躍して、私の評価を上げておかないとね....」

 

 

そう考えていると、急に誰かが声をかけてきた。

 

 

「やあ。どうだい調子の方は。....試合が終わったら、ボクとデートにでも行かないかい?」

 

 

金髪の男はそう言って、やけに馴れ馴れしく私に向かって話しかけてくる。

....デート?突然声をかけられたから何の反応も出来ないまま、私は立ち尽くす。

 

 

「ははは。挨拶もなしなんて、寂しいねぇ。まぁボクに見とれて話が出来ないのは分かるけどね....みずきちゃん?」

 

 

私は一瞬驚いたけど、すぐに平静を保ってそいつに向かって疑問を投げかける。

 

 

「...あんた誰?よく知らないけど....会ったことあったっけ?」

 

 

その男は軽く微笑みながら自己紹介をしてきた。

 

 

「これから覚えてくれたらいいさ。ボクは軽井沢大輝。なんせキミの....将来の彼氏だからね」

 

 

「....彼氏?何言っちゃってんの?」

 

 

私は思わず眉をひそめた。ああ、こいつがパワプロ君の言ってた軽井沢か。

なんだか怪しいヤツね。関わらない方が良いかも...

どう上手くかわそうか頭の中で考えていると、パワプロくんが間に割って入ってくる。

 

 

「....やめろよ。怖がってるだろ!」

 

 

 

「ん?キミは誰だ?ユニフォームを着ているから....そっちのチームの選手かな?」

 

 

「オレはパワプロだよ。聖パワフル学園で、生徒会長をやってる。」

 

 

 

「ああキミか。女の子以外には興味がなかったからよく知らなかった、ごめんよ。」

 

「自己紹介するよ。ボクは恋々高校の軽井沢大輝さ。サッカー部をやりつつ、まぁ趣味で野球部もやってる。」

 

 

「....お前が軽井沢か。何をしようとしてるか知らないけど、橘はオレの彼女だ。変な事するなよ。」

 

 

 

「彼女?そうか....キミと付き合ってるのか。まぁ別にいいさ。奪い取ってやるのも、それはそれで燃えるからね」

 

 

「....なんだと?お前の好き勝手にはさせないぞ!」

 

 

「キミみたいなヤツが彼女を守れるかな。彼女にはボクがふさわしい。そう思うけど?」

 

 

「必ず守ってやるさ。だって橘は、オレの大切な仲間なんだからな!」

 

 

 

「フン。話はここまでにしとくか....少し寂しいけど、それじゃあみずきちゃん。また試合で会おう。じゃあね!」

 

 

軽井沢はそう言って去っていった。

 

 

「橘、大丈夫か?....あいつ、なんかちょっとヘンなヤツだな。」

 

 

....あぁ良かった。パワプロくんが来てくれた。

私は安心した気分になって、彼に思いっきり抱きついた。

 

 

「た。橘!?どうしたんだよ、急に。う、嬉しいけどさ....」

 

 

顔を真っ赤にしてパワプロ君が慌て始める。

その様子を見た私は、少し恥ずかしくなって距離を取った。

 

 

「は、はは。ごめんごめん。つい....ちょっと怖くて。」

 

 

「いや。ビックリしたよ。みずきちゃんがそんな積極的になってくれるなんて....」

 

「橘が彼女ってのはウソだけど。こういう良い事が起きるなら....なんだかんだこの関係も、悪くないよなぁ。」

 

 

パワプロ君は照れながら頭をかいた。すると、妙に私にニコニコと笑顔を見せ始める。

 

 

「あ...みずきちゃん。どうせなら、もっとオレに甘えてもいいんだぜ?」

 

 

またかぁ....ちょっと頼る素振りを見せたらこうだもんなぁ。

私はパワプロくんが調子に乗りだした事に呆れて、ため息をつく。

 

 

「もうやらないっ。今のはただ、ちょっと守ってもらいたかっただけなんだから。」

 

「....それにしても。パワプロくんのそういうとこは、さっきのあいつとあんまり変わんないかもね。」

 

 

「....ええっ。あんなヤツとオレが一緒に見えるのかよ?それはさすがに、言い過ぎだろ!」

 

 

「....だってキミ、ちょっとチャラい所あるじゃん。なんかそこが似てる気がして」

 

 

私は軽い男が嫌いだった。だって、そんなのに自分のことを本気で想ってくれる人なんてまずいるわけないし。

 

パワプロ君も基本的にアレよね....まぁ真面目な所はあるけど。

すると彼は、私に何とか聞こえるぐらいの大きさでボソッと言った。

 

 

「....それを言うなら橘だってギャルっぽいだろ。見た目とか性格とか、そんな感じじゃないか」

 

 

「なっ....何よ、失礼ねー。私のどこがギャルだって言うのよ。どう見たって真面目でしょ?」

 

 

パワプロくんから予想外の反撃を食らって、私は少したじろぐ。

確かに周りからそう思われてる自覚はあったけど....

いざ彼にハッキリと言われると動揺が隠せない。

 

 

「いや。あんまり真面目って感じはしないけど....ああ、でも。たまに橘はなんかいつもと違う顔を見せるよな。」

 

 

「何言ってんの?私の顔はそんなコロコロ変わらないわよ?」

 

 

「ああ、いや。必死になってるっていうか....最近、心に何かを抱えてる感じがするんだよ。」

 

 

「何かねぇ。まあ....お姉ちゃんを助けなきゃいけないからね。そりゃもちろん、必死になるわよ。」

 

 

いや、それだけじゃない気がするんだよな....そう言ってパワプロくんがしばらく考え込む。

 

 

「....なぁ橘。中学の時、責任に耐えきれなくて部活を辞めたって言ってたよな。本当にそれだけが原因なのか?」

 

 

パワプロ君は心を見透かしたような目で見てくる。

私はそれに耐えきれずに、思わず目を逸らした。

 

 

「それ以外に何もないわよ。....もう中学の話はやめてくれる?」

 

 

実は、前の部活を辞めた原因はそれだけじゃない。

....でも、それを打ち明けるのはなんとなく嫌な気分がした。

 

それに、これ以上詮索されたら私が学校のトップに立とうとしてる事までバレちゃうかもしんないな。

そう思った私は、別の方向に話題を変えて話を逸らすことにした。

 

 

「....ねぇパワプロくん。うちの野球部さ、何かが欠けてると思わない?」

 

 

「えっ?....なんだよ急に。野球部に何が欠けてるって言うんだ?」

 

 

「....まず、野球部を強くするためにあおいさんと猪狩守を呼んだわよね。」

 

「そしてついでに、私と聖が呼ばれた。まぁ、ここまでは良いと思うわ。」

 

「例を上げるとして、猪狩守には良くも悪くも凄く個性がある。そして強さもあるから、戦力的にも重要な人よね。」

 

 

「ああ。この部活を立て直すにはあいつの力が必要だと思ったんだ。他の学校での知名度もあるしな。」

 

 

「あとまぁ、美少女で才能のあるこの私でしょ?これで間違いなく野球部の人気は上がるはず」

 

 

「....橘はあんまり関係なくないか?っていうか自分のこと褒めすぎだろ。」

 

 

「うるさいわね。....でも、問題はここからよ。人気は上がると思うけど、これは野球好きの中でだけ。」

 

「普通の人からしてみれば、あんまり目立ってない気がするのよ。」

 

「ハッキリ言って宣伝が全然足りてないわけ。野球部の募集もまともにしてないしね」

 

 

「ああ。確かに....まぁでも、別に良いんじゃないのか?もっと野球部が強くなれば目立ってくるだろうし」

 

 

「問題はそれだけじゃないわ。この野球部には私みたいに女が多いわけじゃない。だから出場が出来てないわけでしょ?」

 

「ただでさえ学校内で、野球部の知名度がイマイチな状態で勝ち続けたとして。出場が認められるかって言うと厳しいと思うのよ」

 

 

「あっ、そうか....よく分かんない野球部に女子の活躍を認めて下さいとかって言われても、正直微妙だよな。」

 

 

「そう。だからまずは、もっと知名度を上げるべきなのよ。なんでもいいから部活に対する注目を持ってもらうこと」

 

「そこが、今の野球部になんか足りないなーって私が思うところね。」

 

 

「そういう意味で見たら、軽井沢は話題性ではバツグンだな。恋恋には戦う前からボロ負けみたいなもんか....」

 

 

「....でもまぁ、これは人気をもっと上げるチャンスよ。そんなあいつに勝ったらきっと大騒ぎでしょうしね♪」

 

 

「ありがとう橘。よし、こうなったらもっと試合には負けられないな!」

 

 

こうやって適当に助言をしていけば、自然と彼は私を信用する。

そうなればどんどん私の立場は上がっていく....後はこっちのモノよね。

野球部。いや....この学校が変わるのはここからよ。そう私は心の中でほくそ笑む。

ふと時計を見ると、試合の時間はもうそこまで迫っていた。

 

 




前回は都合によりざっくりと語って終わりでしたが、次回から本当にちゃんとした試合内容に移っていきます。本当です(ようやく)。

全体的に普通の作品でやったら叩かれるなとか思いながら書いてる自分です。色々と雑ですみません。
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