パワフルC   作:Arica

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VS恋恋高校⑥ 逆転!サヨナラホームラン

 

 

みずきとパワプロが話していた同時刻。

恋恋高校の座席で、恋恋のキャプテンがぼそりと呟いていた。

 

 

「....結構、あっけなかったな。あおいちゃんとの対戦」

 

 

 

そのキャプテンに、高木がにこやかに笑いながら話しかける。

 

 

「あはは、何言ってんのキャプテン。これまで全然ダメだったこの恋恋高校が、あの猪狩守のいるチームを倒そうとしているのよ?」

 

「しかも、うちのチームを抜け出した裏切り者の早川あおいがあれだけ失態を見せてくれたなんて....むしろ喜ぶべきことじゃないかしら?」

 

 

 

「....そこなんだ。あおいちゃんは、前にチームにいた時はあんなに動揺してなかった。それがどうしてだ?....オレは全然納得できない!」

 

 

 

その恋恋のキャプテンの様子を見て、高木は呆れた顔をした。

 

 

「やれやれ。もうすぐ試合に勝てるっていうのに、あの女の話ばっかり....」

 

「色恋沙汰の話はキライじゃないけど、ここまできたら呆れた話ね」

 

 

 

「....色恋沙汰?」

 

 

 

高木の言葉に対してふと疑問を口にしたのは、軽井沢だった。

 

 

「どうした?軽井沢」

 

 

恋恋キャプテンが彼の方に振り向く。

 

 

「いや....さっきまで、別に恋愛の話なんてしてなかったじゃないですか?なのに高木さんが色恋沙汰なんて言うから....」

 

 

 

軽井沢の言葉に対し、高木が少し焦った表情をした。

 

 

「え?い、いや、それは....!」

 

 

「まさか....何か知ってるのか?高木さん」

 

 

 

「あ、キャプテン!それ、なんだけど....」

 

 

殺伐とした流れの中で恐る恐るといった感じで声をかけてきたのは、

あおいの親友である七瀬はるかだった。

 

 

「....はるかちゃん?」

 

 

「.....」

 

 

しかし、はるかはそのまま押し黙ったまま一言も発さない。

 

 

「はるかちゃん、どうしたんだ?....あおいちゃんの事。それに高木さんが隠してるウソについて....何か知っているのか?」

 

 

 

七瀬はるかはさすがに全部知っているわけじゃないけど、

という前置きを置いてから静かに語り始めた。

 

 

「私....実は、だいぶ前にあおいちゃんと約束してたんです。どこかのタイミングで、一緒に....キミに告白しようって」

 

 

「....オレにか?はるかちゃんがオレのことを好きなのは知ってたけど、あおいちゃんがまさか....」

 

 

 

「あおいは言わなかったけど、そうだったの。お互い好きだったから、公平じゃないといけないって。」

 

 

「....でも、あおいはある時にもう別にいいよ、キャプテンのこと好きじゃなくなったからって言って、そのまま聖パワフルに転校して行っちゃって....」

 

 

「あの時はあまり気にしてなかったけど....今考えたら....」

 

「もしかしたら、あおいは私のことを想ってわざと身を引いたのかなって....今思っちゃって....」

 

 

「....まさか。その時のことが今日の試合のプレーに影響してるっていうのか?」

 

 

 

今までの話を聞いていた軽井沢が口を開いた。

 

 

「....それで。はるかさん、その話って高木さんにしてました?」

 

 

 

はるかは首を横に振る。

 

 

「いや、別に....ずっと私たち2人だけの秘密だったから....」

 

 

「....じゃあ、やっぱりおかしいね。なんで高木さんは今のあおいさんの話を、恋愛だと決めつけたんです?」

 

 

 

「し....新入部員のくせに。生意気よ!」

 

 

 

恋恋キャプテンが高木に詰め寄った。

 

 

「高木さん。....どうやって今のはるかちゃんの話を知ったんだ?」

 

 

 

「う....うるさいわね。....そんな話、どうだっていいでしょう!?今は試合に勝つことが重要よ!」

 

 

 

「確かに。もう時間も押してる....」

 

 

 

「....だったら!!!!」

 

 

 

「....でも!オレはここでこの話を終わらすわけにはいかないんだよ。....あおいちゃんは、かつてのチームメイトだ。仲間だったんだ!!」

 

 

「その仲間がもし苦しんでいるとしたら、オレはこの試合で冷静にはいられない。」

 

 

 

「くっ.....!!」

 

 

 

軽井沢がそこに口を挟む。

 

 

「ボクもそう思います。....可愛い女の子が苦しんでいるとなれば、ボクだって冷静ではいられませんよ。」

 

 

 

「お前の考えは、似てるようでちょっとオレとは根本的に何かが違う気がするな....」

 

 

 

「全部.......から、悪いんだよ。」

 

 

 

高木がボソッと小さな声で呟く。

 

 

「昔っから野球が好きで、だけど女子野球部は全然人気がなくって....」

 

「最初は絶対入るなら野球部だって思ったけど、段々とその熱意も薄れてった....そのうち、ソフトボールの方がありだって思ったりして....」

 

 

 

「本当は.....あの女のこと羨ましかったけど、ずっとずっと夢だったわ....」

 

 

 

「高木さん.....」

 

 

 

「だからさ。ひそかに憧れてた、あの女と一緒に野球部をやれた時は....実はすごく嬉しかった。」

 

「野球の才能は、噂通りに私よりも上で....全然追いつけなくって。でもそれはそれで越えるべき目標と思ったわ....あの時はね」

 

 

 

「あの時は....か」

 

 

 

高木の話を聞きながら、そう恋恋キャプテンは呟いた。

 

 

「私たち、同じ野球好きだから、一緒に分かり合えると思った....でもそうじゃなかった。それがあの試合の時、ようやく分かったの」

 

 

「あの時も、早川あおいは今みたいな調子で....それでアタシは心配になって、あいつのことを追っかけたわ」

 

 

「あおいちゃんの調子が悪かったときか.....いつなんだ?....はるかちゃん、分かるかな?」

 

 

恋恋キャプテンははるかに聞いてみたが、互いに見当も付かなかった。

 

 

「ふん....私しか気づかなかったみたいね」

 

 

「で....なんでも話してみなさいよって、私あの時に言ったわ。....そしたら、なんて言ったと思う?」

 

「キャプテン....アンタの事が気になって、試合に集中できないって言ったのよ、あいつ」

 

 

 

「アタシ、あの時、....一体何言ってるかよく分からなかったわ。頭がどうにかなりそうだった」

 

「いつも女だからってバカにするなとか、男を寄せ付けない雰囲気とか出してたから、信頼してたのに....あんな急に、いきなり....!!」

 

 

 

「....確かにそれはよく言ってたな。....だからオレもてっきり、あおいちゃんは恋愛に興味がないと今までずっと思ってた」

 

 

 

「....だからね、言ってやったのよ!そんなアンタの中途半端な実力じゃ、どうせ誰にもモテやしないわ。」

 

「大体野球ってのは恋愛のためにやるものじゃない。.....そんなこと考えてるなら、アンタは選手失格だから早くこの野球部を辞めるべきだって!!」

 

 

 

「.....私はそれで、早川あおいが目を覚まして、いつもの調子に戻ってくれるとバカみたいに信じてた。」

 

「.....けどね、それからすぐあいつは聖パワフルに転校した。....その時初めて、私は最悪の選択肢を選んだことを自覚したの」

 

「....はぁ。今こうして思い返してみたら、ちょっと言い過ぎたって思ったわ。....あいつがこの学校を去った理由も、分かったかもしれない」

 

「でも。....でもあの時は、早川あおいの言葉がどうしても許せなかったのよっ....」

 

 

 

高木幸子は語り終えた途端に少し涙をこぼしたが、

それを必死でユニフォームの袖で押さえた。

 

 

「......」

 

 

高木幸子の話を聞いた恋恋キャプテン....

そして他の生徒たちは、その場から消えたように静まり返った。

 

 

 

 

 

 

(ふぅ....緊張してきた!いよいよ大舞台、最後の見せ場!この橘みずきが大活躍する時がって来たってわけね....!)

 

 

 

「....思い切って相談してみて良かったぁ♪一度やってみたかったし、こういうシチュエーション!!」

 

 

気を取り直して、私は奥にいるピッチャー、恋恋のキャプテンを見据える。

 

 

(どういう球が飛び出してこようが。とにかく、目の前に来た球を打つ!.....これしかないわ!)

 

 

....そう私が思った瞬間。恋恋キャプテンはいきなり速い球を放ってくる。

バシーン!一瞬のうちにストライクとなった。

 

 

(は....はやっ!?これが恋恋のキャプテンの実力なの!?)

 

 

(....ま、まぁ!ちょっとは驚いちゃったけど、こんな球、しっかり意識したら打てるんだから!)

 

 

そんな事を考えてるうちに、すぐ球が向かってきた。

....たぶん、これはまたストレートだとなんとなく直感する。

 

 

「....えいっ!!」

 

 

ズシリとした球の感覚がバットから伝わってきた。

しっかりバットを振り切ると、カキーン!強烈な打球の音が周りに響いた。

 

....けど、結果はファール。しかもあまり飛んでいない。

 

 

(....ウソ、もう2ストライク!?結構早いじゃん!!)

 

 

予想外にカウントダウンは速かった。....そろそろ次で決めとかないとちょっと厳しそうかも。

私はしっかりとバットを握りしめて構える。とにかく全力で打つことだけに神経を集中させた。

 

 

そして、次に飛んできた球は....!

 

 

「....えっ?」

 

 

その瞬間私は思いっきりバットを振った。

カキンッ!快音が鳴る。球はライトの方に一直線に飛んでいく!

 

 

(....とにかくっ、走らなきゃ!!)

 

 

私は全速力で走った。球はそこまで遠くに飛ばなかったけど、

なんたって走りには自信があるんだから!

 

....そんな考えの通りに、私は余裕で1塁まで進む事ができた。

 

 

(それにしても。さっきの球、偶然かしら....あおいさんのマリンボールに似てた気が)

 

 

恋恋キャプテンが放った球は、明らかにマリンボールそっくりだった。

 

 

(アレがここぞというところで使う変化球だったのかしら....?)

 

 

....確かにマリンボールは怖い変化球だし、普通なら打ちづらいかもしれない。

けど、毎日あおいさんの投球を見慣れている私は大したモノじゃない気がした。

 

 

(ともかく。ここで次にパワプロ君が、ホームランとはいかないまでもヒットに繋いでくれたら....)

 

 

奥でまた快音が鳴り響く。どうやらパワプロ君が打ったらしい。

.....って、あれ?あの球、グングン伸びてるような.....

 

 

(いや、まさか....そんなわけ.....)

 

 

....私の予感は的中した。....パワプロくんは私の打席の次にホームランを打った。

試合はパワプロ君の逆転サヨナラホームランで勝ち越し。

 

得点は5ー4、聖パワフルの勝利で試合を終えたのだった。

 

 





色々な反省点はありますが、ひとまず終われたことは良かったです。
試合が終わった後の後日談を入れるつもりでしたが、
台詞だけでもかなり長かったため後ほど分割して投稿を行います。
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