パワフルC   作:Arica

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謎のストーカー

 

「ねえ、聖。この先何があっても、友達でいてくれる?」

 

「なんだ?急にそんな話をして」

 

「だってさ。私、迷惑かけてばっかりだし....」

 

 

「ずっと、というのは....進路もあるから難しいかもしれないが」

 

「少なくとも今は。みずきと一緒にいたいつもりだ。」

 

「...そっか。」

 

 

「ここ最近のみずきはなんだかみずきらしくないな、落ち込んでばっかりで。入学当初の元気だった頃はどうしたのだ」

 

 

....元気、か。大変な事が立て続けにあって、

気がつけばどんどん暗い気分になっていたかもしれない。

 

そろそろ気持ちを切り替えなくちゃ。

 

 

 

「...仕方ないな。じゃあ何か、軽く食べにでも行くか?奢ってやるぞ」

 

え、本当?それなら....

 

「あ。私、パワ堂のプリンが食べたい」

 

すると聖は不満をにじませた。

 

「むっ、別にいいのだが...パワ堂と言ったら、普通きんつばだろう?」

 

 

 

 

「えぇ、何言ってんの?パワ堂ならプリンが定番でしょーが」

 

私にとって、ここは絶対に譲れない部分だった。

 

「確かにあれも人気だがな...やはりあそこの1番のオススメ商品はきんつばだな」

 

「いやいや、プリンが一番だって。」

 

「違うな、きんつばだ」

 

「プリンよ、プリン!」

 

 

 

 

 

 

 

...言い争いが続いて、何十分が経ったのか。

気づけば私も聖も疲れ始めていた。

 

「はぁ、はぁ...」

 

「もう...両方奢ってくれない?ちゃんと食べるから」

 

「はぁ、仕方ないな、そうするか...はぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、食べた食べた...もうお腹いっぱいね」

 

「ほとんど買ったのはプリンだがな...」

 

「だって、プリンおいしいじゃない」

 

「まあ...食べてみたが、確かに人気なのも分からなくないかもしれない」

 

そういう聖も実際に店に行くと、割と目移りしたようで

3個ほどのプリンをおいしいと言ってすぐにたいらげていた。

 

 

 

「でっしょー?ようやく魅力が分かってきたみたいね」

 

「いや。でもやはり一番はきんつばだ」

 

 

「...まだ言うかっ。」

 

 

 

店の近くでしばらく話していると....

急に雨が降ってきた。

 

「あ、雨だ。そういえば、もう外もさすがに暗くなってきたね。」

 

「ああ、そうだな...夜中だし、帰りには気をつけろ。」

 

「それじゃ、また明日」

 

 

「うん。じゃあねー」

 

私は聖と別れた。

 

 

 

 

 

「ふう、私も家に帰らなきゃ。おじいちゃんが心配するし...」

 

結構長居し過ぎたみたいで、外はもうかなり暗かった。

気がつけば歩いている人は全くいなくなっている。

 

車も全く通っていない。

まるで私以外の人が消えたような気分...

 

 

 

....なんだか、さっきから自転車の動きが遅い気がする。

 

 

「あ。いつの間にタイヤの空気が抜けちゃってる....歩くしかないかなー、これ」

 

寄り道するなら、行く前に入れておけばよかったな。

 

 

仕方なく、役に立たなくなった自転車を押して歩き続ける。

 

 

そのまま、しばらく時間が経つ。

どれだけ時間が経っても、距離は全く進まなかった。

 

「どうしよう....」

 

 

これじゃ、家に帰るのがどんどん遅くなっちゃう。

いや。そもそも家に帰れるのかな....それすらも怪しく感じてきた。

 

 

....すると。急に前の方から声がする。

 

 

「ちょっと、キミ。学校の帰り?良かったら、乗っていかない?」

 

 

顔を上げると、黒い車が少し離れた場所に止まっていた。

その隣に運転手らしき人も立っている。

 

とても良いタイミングだったし、願ってもない提案だと思う。

 

 

けど...なんだか少し怪しい。

 

「え...でも、知らない人にはついていかない方が良いって言われてるんで」

 

 

 

 

その人は歩道の真ん中で私に向かって手を振っている。

顔は暗くてよく見えないけど....声からして女の人なのかな?

 

 

「そんな冷たい事言わないでよー。さあさあ、早くっ」

 

 

なんだか怖い。逃げた方が良いかも....

私はそのままスルーして、急いで通り抜けようとする。

 

 

 

すると、その手が強引に私の服を掴んできた。

 

 

「ちょ。ちょっと、何するんですか!」

 

 

危険を感じてとっさに離そうとする。

だけど....あまりにも力が強いのか、なかなか離れてくれない。

 

 

 

「抵抗するとお姉さん、ちょっと手荒な事をしちゃうかもよ」

 

話し方はフレンドリーだけど、言ってる事は物騒で。

そのギャップもあって私は更に怖く感じる。

 

「な、なんですか。や...やめてくださいっ!」

 

 

すると女の人は、落ち着いてよと私をなだめてきた。

 

「いや。だからつまりは、私の車に乗ってくれれば良いんだって。」

 

「別に何もしたりしないからさ、安心してよ」

 

 

...本当かな。

 

 

「でも、自転車が」

 

「じゃあそれも乗っけるから。気にしない、気にしない」

 

 

女の人はまだ余裕がありそうな口調だった。

どうせ抵抗した所で、すぐに捕まるかもしれない。

 

それならせめて...私は覚悟を決めて、車に乗る事にした。

 

 

 

 

 

バタンとドアが閉まると、すぐに車が動いた。

どこへ連れてかれるんだろう。

 

「...」

 

「大丈夫。誘拐犯とかじゃないから」

 

 

....凄く怪しい。

 

「一体何の目的なんですか...なんで私を?お金なら持ってないですけど...」

 

「えっ、ホントに?お金は持ってるハズでしょ。たくさん」

 

 

 

 

 

「...やっぱり、誘拐犯!?」

 

「わ、私をさらった所で。なんにもっ....」

 

いくら話を聞いても、やっている事は誘拐以外に考えられなかった。

しかし、女の人はそれを聞いて困った様子を見せる。

 

 

「いやいや...違うって。んー、なんて説明しよっかな」

 

何が違うのか全く分からない。

誘拐じゃないとしたら....なんの目的で?

 

 

 

 

 

 

「うーんと...あ、そうだ」

 

「実は私、君の親と知り合いで。色々親交があって...」

 

 

「...親はもう亡くなってますけど。私が小さい頃に」

 

「あ...そうだったか。勘違いだったかも...ごめんね」

 

咄嗟に考えた嘘なのが明らかだった。

 

 

「...さっきから、なんなんですか?」

 

何がしたいのかホントに分からなかった。

もしかしたらこの人、頭がおかしいんじゃ...?

 

 

 

 

 

....しばらく沈黙が続いた後。

 

女の人は、もう言っちゃおうかなと言って

こんな事を私に打ち明けてきた。

 

「んー。信じてもらえないかもしれないけど、私は君の事知ってるのよ」

 

「知ってる...?」

 

 

意外と私って、有名人なのかな?

 

 

「あ...まあ。知っててもおかしくないですよねっ。」

 

「私って頭も良いし、スポーツ万能だし、顔も可愛い(と思う)方だし?」

 

考えてみれば自然かも....?

 

 

 

 

「あははは!まあ、そう。それでいいよ。昔からそう思ってたもんね」

 

「それでいいって...えっ、昔から?」

 

 

「あ。もしかして私のファン...?」

 

そうか、この人は私の追っかけみたいな人だったんだ。

そう考えると全部の辻褄が合う。

なんとか近づきたくてこんな事をしたのかな。

 

「....私と話がしたくて、ストーカーをしてたんですか?」

 

「ま。そういう感じかな....」

 

そうだったんだ...分かってしまえば特に怖い事もなかった。

少なくとも悪い人ではなさそう....ちょっと危ない人だけど。

 

 

 

 

 

 

「で。その、美少女の君にさ。聞きたい事があるのよね」

 

「今...好きな人とかいる?」

 

 

「好きな...?別にいませんけど....」

 

どういう意味の質問だろう?

 

「あっ。まだ、そこまで行ってないとか」

 

 

「うーん。始まってるわけでも...」

 

好みのタイプとかが知りたいのかな。

まあ、そういう人もいなくはないように思える。

 

 

 

 

 

すると、女の人はまた不思議な事を言い出した。

 

「...そう。まあ、伝えたい事は1つだけ。」

 

「とにかく、後悔しないような選択をしてってこと」

 

急に声色を低くして、真剣な口調でそう話す。

私はその雰囲気の変わりように、思わず身震いした。

 

「後悔しない選択...?」

 

「いずれ、その日が来るかもだけど...あんたには後悔してほしくないの」

 

 

 

私がすっかり萎縮しているのに気づいたのか、

女の人はまたさっきまでの明るい口調に戻り始める。

 

「ごめん。突然こんな話されても驚くよね」

 

いや...もう散々驚かされてるんだけど。

 

 

「...まあ昔、色々あってね。私、高校の時に好きな人がいたんだけど」

 

「好きな人?」

 

「うん。初めての恋でね...今考えると、青春だったなぁって思うのよね。2人きりでデートなんかもしてたし」

 

ふーん...なんか、ちょっとロマンチックだなぁ。

私は少しずつその話に興味を持ち始めた。

 

 

 

 

 

「....で。どうなったんですか?その人とは」

 

 

「勇気が出なくてね。結局ちゃんと告白できなかったんだ」

 

「それで。その後はまあ....自然と疎遠になって、おしまい」

 

 

「えーっ。なんかそれ、もったいなくないですか?」

 

私ならちゃんと思いを伝えるのに....

言えずに終わりだなんて、凄く悲しい話だった。

 

 

「...うん、そだね。私、バカだったから。」

 

真っ暗だからはっきり見えないけど、

女の人はなんとなく寂しげな顔をしている...そんなように感じる。

 

「だからさ、君には私みたいにならないで欲しいな」

 

「なるわけ、ないじゃないですか」

 

私はきっぱりと言った。といっても、自信があったわけじゃなく。

ただ単に、そうなりたくないという思いからだった。

 

 

 

 

「ふうん。さあ、どうだかねぇ?同じことして泣きついてきても知らないよっ」

 

女の人はけらけらと笑って、茶化すように言う。

 

 

「私はおばさんみたいなストーカーじゃないんで。一緒にしないでください」

 

「お、おばさんって...まあ、そうか。そう見える年齢に入ってきたしね...」

 

女の人は凄くショックを受けているみたいだった。

ちょっと言い過ぎたかな。

 

「...でも。羨ましいなって、思いました」

 

 

「え?」

 

「だって私には、それだけ夢中になれる人がいないし。学校生活もろくな事ないし...」

 

 

 

 

 

 

 

「それに比べておばさんは、後悔するほど好きな人を見つけて...学校を楽しんでたみたいだから」

 

「...そっかー。じゃあさ、キミも私みたいに好きな人を見つけたらいいんじゃない。」

 

 

好きな人、かぁ....少し考えてみるかな?

 

 

「あっ。でも、告白できずに終わっちゃうなんて事はならないようにね?」

 

「...な、ならないですっ!」

 

 

 

 

 

「あはは。...さて、着いたよ。家はここでしょ?」

 

 

「え。いや、全然違うんですけど...」

 

着いた場所は、私の家とは似ても似つかないような

とてつもない豪邸だった。

 

「あれっ、ウソ?」

 

 

 

仕方ないから、私は分かりやすく家の場所を教えた。

 

「...この辺で合ってる?」

 

 

 

「はい。あ。あの、送ってくれてありがとうございます!」

 

「いや、いいよ全然。あっそうだ、明日学校だよね?なんなら朝もここで...」

 

「だ、大丈夫ですっ。自分で登校できるんで」

 

 

 

「そう?それじゃあねー」

 

女の人は車に乗り、そのままどこかへ走り去っていった。

 

 

 

「...ちょっと変だったけど、結構良い人だったな。」

 

「でも、結局何が目的だったんだろ?」

 

ファンの割に、私の家も全然知らなかったみたいだし...

特に何もされなかったのも、逆に不気味に感じる。

 

 

 

 

次の日。私は聖に相談をする事にした。

 

「おっはよー、聖。」

 

「おはようって...もう真っ昼間だぞ?」

 

 

「まだ朝みたいなもんでしょ。...それよりさ、昨日変な女の人に会ったんだよね。」

 

「変な...?なんだ、それは。」

 

 

「分かんない。私のことなぜか知ってたみたいだけど...」

 

「好きな人がいるかとかまで聞かれたのよ。まあ、いないって答えたけどね」

 

「...そうか。親戚じゃないのか?」

 

 

「それがさ、話を聞いたらそうでもないみたい。一応家まで送ってもらったんだけど」

 

聖は一瞬驚くと、心配そうな顔で語りかける。

 

「家まで...?大丈夫か、みずき?」

 

「うん。まあ、大丈夫だと思うけど...」

 

 

 

 

「心配だな...今日は私が帰りまでついていくか?」

 

「いやいや...そこまでしなくても。その気持ちは嬉しいけどさ。」

 

 

「しかし...やはり心配だな。」

 

「念のため、今後は登校も下校も一緒にしておいた方が」

 

 

 

...もしかして、こっちも結構なストーカーかも?

 

 

 

 

私は車を走らせながら、考えを巡らせていた。

バックミラーを見てさっきまで見えた彼女の姿をふと思い出す。

 

「結構良い目つきしてたな、あの子。」

 

あの高校生の子は、まるで昔の私にそっくりだった。

まあ、もちろん私とは全然違うんだけど...凄く奇妙な気分。

 

「...にしても。ホント、不思議なこともあるもんねぇ。」

 

こうなったのも、あの日のことがあったおかげか。

 

あの時はまさかこういう展開になるだなんて思わなかったし。

なんだかんだ、人生もまだまだ捨てたもんじゃないな。

 

「...なんか、ちょっと面白くなってきたじゃない」

 

彼女の行く末を期待して、私は久しぶりに心を躍らせていた。

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