転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様おはようございます、第16話目更新でございます。
今回から少しずつエミルにも変化が…?

では、本編へどうぞ。


第16話『誓いの翼、行動転換する』

「爆震剣‼︎」

 

『っ、結界魔法(シールドマジック)IV‼︎』

 

 アザフィールの放った1撃がエミル達に迫り、エミルとロマンは共に結界魔法(シールドマジック)IVを張り、更にロマンは盾を構えその1撃を防御しようとする。

 

【ドガァァァァァァ‼︎】

 

『うわぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

 だが…結界は触れた瞬間から破られ、更にロマンの盾に直撃した瞬間炸裂し、全員吹き飛ばされ、特にロマンは宙を舞ってしまう。

 

「っ、ロマン…君…‼︎」

 

 其処に意識の残っていたエミルはロマンに風の魔法を使い衝撃を和らげ、ゆっくりと地面に降ろしそれから回復魔法の準備に入る。

 

「くっ…回復魔法(ライフマジック)…IV…!」

 

 そしてロマンやサラ達に回復魔法(ライフマジック)を掛け、全員の傷を治そうとした。

 だが………傷は回復すれど、全員が息を吹き返す事は無かった。

 

「…え…あ………」

 

 この瞬間、エミルは嫌でも理解してしまう。

 500年前に誓いの剣(オースブレード)と共に戦った冒険者、教え子達、そして現代ではアレスター。

 それ等と同じ末路に…死と言う絶望の闇の中へと叩き込まれたのだと。

 

「分かったか魔法使いエミル、いやライラ。

 これがお前達地上界の者達の限界だ。

 これで魔王討伐を謳うなど愚かな考えを持ったからだ」

 

 其処にアザフィールの後ろに待機していたシエルが前へと進み始めエミル、否、ライラに対し地上界の者の限界と魔王討伐が如何に愚かであったかを話し始める。

 それも、死に去った仲間達やいつの間にか周りに居る自分が良く知る者達の死体を指差しながら。

 

「あ………あぁ………」

 

「その結果がこれだ。

 良いか、お前に惑わされた者達は我々の手で死んだ。

 つまりは…」

 

 そしてシエルはエミルの前に立ちその顔を見下しながら侮蔑の目を向け、絶望の言葉を彼女に投げ掛け始めた。

 

「全てお前が招いた結果だ。

 魔法使いライラ、お前は自身の愚かさを見ずに突き進んだからこそ死なずに済んだ者も死なせた。

 偽善者にして愚者のライラ、人を騙すのが得意なお前に付いて来てしまったからこの結末がある。

 それを胸に刻み、我等魔族が地上界を支配する様を見届けるが良い」

 

 シエルはそのままライラに絶望の言葉を送るとその場から去って行き、更に空が暗雲に包まれ門のある方角から巨大な闇の柱が立ち上る。

 その中から『何か』が現れ、地上界に数多の魔法を放ち地上界を一気に荒廃させてしまう。

 

「いや…いや…」

 

 そして地上界が滅ぼされ絶望の淵に立つライラに『何か』は目を付け、ただ1人生き残っていた彼女にも自身とは比べ物にならない、強大で凶悪な魔法を放つのであった…。

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 その魔法が当たる瞬間ライラ、否、エミルは飛び跳ねる様に身体を起こし、嫌な汗を流しながら洗い呼吸をしながら周りを見るのであった。

 

「…今のは…夢…?」

 

 エミルは見知らぬ部屋、汗に濡れたシーツとベッド、そして包帯巻きにされた自身の身体を見ながら先程見た物は夢だと自覚する。

 しかし…アレが現実に起きてしまうと。

 そう思うと恐怖が支配し身体が震え始める。

 更に自分がこんな見知らぬ部屋に居るならロマン達は? 

 そう感じながらベッドから動こうとした。

 

【バタン!】

 

「エミル、如何したの⁉︎

 大丈夫⁉︎」

 

「あ…ロマン君、皆…」

 

 その瞬間、部屋のドアが勢い良く開き、其処からロマンやサラ達が同じく包帯を巻かれながらへやに雪崩れ込み始め、エミルの状態を見に来ていた。

 

「あ、エミル目が覚めたんだ…良かったぁ………」

 

「ロマン君…サラ…ルル…アル…目を覚ました………あっ!」

 

 エミルの様子を見に来た仲間達は彼女の様子を見るとサラとルルが泣き出し、アルが一息吐き、ロマンが近付いて来た後手を握りながら良かったと呟き顔を俯せる。

 それ等を見てエミルはゆっくりと記憶を呼び起こすと、アザフィールの1撃を受けてから全員を回復させ、そしてシエルの念話を聴いてから気絶した事を思い出す。

 

「思い出した様だな。

 そうさ、俺様達は負けちまったんだよ、あの4人組の魔族、しかもその中のたった1人の1撃を以てな」

 

「でも、皆生きてて良かったよぉ〜…‼︎」

 

 アルはエミルの様子を見て改めて自分達は完敗したのだと話し深刻そうな表情を浮かべていた。

 対するサラは全員が無事に生きていて良かったと泣き膝を突いていた。

 

「…皆、此処は?」

 

「…セレンの、酒飲亭の…宿泊室、です…」

 

「俺様達が気絶した後、ロマンの奴が気絶したフリをして息を殺し、奴等が去るのを待ってたらしい。

 そして奴等が転移したのを見ると全員を馬車まで運び、セレンまで戻って来て訳を話して部屋を緊急で借りたって訳さ。

 因みに依頼だが、坑道自体は使用可能になったからどんな形であれ成功だとよ」

 

 エミルはこの場所は何処かと聞くとルルとアルが此処はセレンの酒飲亭の宿泊室であり、如何やらロマンが気絶したフリと言う危ない橋を渡り、シエル達が去った後全員を馬車を乗せ、セレンの酒飲亭まで運び今に至ると言う。

 更に依頼は坑道が使える様になっていた為成功と見做された様であった。

 

「…そう…皆生きてる…良かったぁ…」

 

「エミル…」

 

 エミルそれらを聞き漸く自分達全員が無事に生きている事を再確認し、俯きながら泣き出すとロマンは今までの自信家のエミルでは無い、普通の少女のエミルを見てあの魔族達との遭遇は最早彼女の手に負える様な物では無かったのだと改めて感じ取る。

 サラ達も同様の感想を抱き、本当に自分達が生きているのが不思議でならなかった。

 

「エミル…兎に角僕達は生き残ったんだよ。

 だから今日はもうゆっくり休んで、明日からまた如何するか話し合おう。

 皆もそれで良いよね?」

 

「…おう」

 

 ロマンはエミルの様子を見ながら、全員に今日はゆっくり休み、明日に行動方針を如何するかを検討する事を提案すると、アルやサラ、ルルは同意して自室へと戻って行った。

 その時の部屋から去る目はエミルが奮起するのを信じる瞳であり、最後まで残ったロマンもゆっくりと手を離し、最後に「信じてるから」と励ましの言葉を投げ掛け部屋から立ち去って行った。

 

「うぅ………っ………!」

 

 その部屋に残されたエミルは完膚無きまでの敗北を静かに受け入れ、自身の想定が如何に甘かったかを思い知らされながら再びベッドの横になり夜通し涙を流すのであった。

 魔族シエルに現実で言われた事、悪夢で投げ掛けられた事をその胸に刻みながら………。

 

 

 

 エミル達が意識を取り戻していた頃のとある場所、其処にアギラが既にテーブルを用意し茶菓子も丁寧に自身を入れて3人分用意してると其処にもう1人の男の魔族、更に魔族シエルが転移して現れ用意された椅子に座り茶菓子に手をつける。

 

「シエルと『ダイズ』も揃った様だね。

 ではこれより第3回『魔王幹部三人衆』の会議を始めようと」

 

「誰が貴様如きと同列だアギラ、所詮は姑息な手段で成り上がっただけの者が、俺とシエルを同列に扱うのは反吐が出る!」

 

「ダイズの言う事も最もだ。

 アギラ、楔の泉を満足に探せないお前と『魔王』様降臨の下地作りを行うダイズ、そして大局を見極め一方に力を貸す私達を同列にされては折角の茶菓子も不味くなる」

 

 アギラは魔王幹部三人衆と言う括りでシエル、更にダイズと呼ばれた魔族を同列扱いに呼ぶと2人から反発があり、何方もアギラを姑息な手段で成り上がった為気に食わないと言う共通理由と、シエルに至ってはまともに指名達成出来ていないアギラを見下しこの反発を起こしていた。

 

「んん〜…とは言う物も、楔の泉は我々魔族の眼には只の泉にしか映らず、確証があってこれだ、と言う決め撃ちが出来ずまだ発見出来ないのが現実なのだけどね。

 私の使命に2人が協力的ならそれも捗るんだけどね…特にシエル、君には楔の泉に反応する『魔剣』の正統所有者なのだから」

 

「『魔王』様はそれぞれ出来る使命を与えて我々を派兵した。

 それを他の使命を与えられた私やダイズの責任と呼ぶのは些か可笑しくは無いか? 

 魔界1の策士のアギラ『殿』?」

 

 対するアギラはダイズとシエルの両名が協力的なら指名達成が可能であり、更にシエルに対しては楔の泉を探知する事が可能な『魔剣』を所持する者と呟くが、シエルはそれを一蹴し自らの手で使命を達成出来ず他の者に当たるのは可笑しいとしながらアギラを侮蔑する目で見つめていた。

 アギラはその2人の言動に手に血管を浮かせ魔力を放出し掛かるが、直ぐに収めて溜め息を吐いた。

 

「…ふう、分かりましたよ。

 楔の泉探索は私が最後まで行いましょう。

 幸いにして1個には当たりを付けました、其処を皮切りに残る2箇所をこの手で破壊しましょう。

 では、用意した茶菓子を堪能したらお帰り下さいませ、ダイズ様にシエル様?」

 

 アギラは自分の言い分が通らない事を悟ると楔の泉探索は自身の派閥が最後までやると宣言し、更に1箇所は当たりを付けたと話した後アギラは転移して後にはダイズとシエルの2人が残されるのみだった。

 

「ふん、下らない策に溺れる小物が…。

 それでシエル。

 魔法使いエミル、いやライラの転生体に関しては如何だった?」

 

「アザフィールが勝手に1撃を耐えたら見逃すと宣告したのでな。

 そしてあの中で意識を保ったのはエミルと今代の勇者ロマンだけだったよ。

 その中でエミルは念話傍受、ロマンは気絶したフリをして我々が去るのをジッと待っていたよ。

 片や期待通りに動き片や無謀と勇気を履き違えない弱気な者からは想像出来ない勇気を持つ者だ」

 

 アギラが去った後、紅茶に手を付けながらシエルに三者三様に気に掛けるエミル達の話を振ると、シエルはエミルは期待通りとし、ロマンは想像以上の無謀と勇気を履き違えない者と称し、紅茶を飲みながら2人のスタンスの違いや其処から生まれる物について想像していた。

 

「ほうアザフィール殿の…。

 俺やシエル、我等が師の1撃を受け切るとは、勇者達には『期待』が持てそうだ…」

 

「それは狂戦士(バトルマニア)としてのお前か、それとも私と『盟約』を結んだダイズと言う魔族としてか?」

 

「無論、何方も」

 

 ダイズはかつての自身やシエルの師アザフィールの1撃を受けて生きてる誓いの翼(オースウイングズ)達に狂戦士(バトルマニア)としての顔とアギラが知らないシエルと極秘の『盟約』を結んだダイズとしての顔、両方で『期待』を寄せながら茶菓子を口にし切り、両者も席を立ち転移する。

 シエルはアギラとダイズの両者を取り持ちつつ少数精鋭で支援、ダイズはアギラとはまた別の使命を帯びながら。

 そしてその場には紅茶の残り香しか存在しなくなった。

 

 

 

 エミルは夜通し泣き続けてから朝を迎え、こんな様子を仲間に未だ見せる訳にも行かない為涙を拭き、装備を整え包帯を巻かれた身体をゆっくり動かしながら全員のための椅子とテーブル、紅茶をキーラに部屋に用意して貰い、再びベッドに戻りながら色々と思い出していた。

 すると部屋のドアが開き、紅茶を飲みながら様子を見るとロマン達は同じタイミングで1部屋へと入って来る。

 

「あ、エミル! 

 もう具合とかは良いの?」

 

「ロマン君に皆、おはよう! 

 昨日あの後寝たらスッキリしたからね! 

 さっ、早く座って座って!」

 

 エミルの姿を確認したロマンが真っ先に駆け寄ると、彼女は夜通し泣いたのを隠し寝たから大丈夫と言い張り全員に座る様に促した。

 だがロマンやサラ達はそれが空元気だと直ぐに解る。

 何故ならその目元には涙の跡がくっきりと残っていた為であった。

 しかしそれを指摘しエミルの空元気を崩し今の彼女を折る訳には行かず、全員頷き椅子に着く。

 そしてエミルは早速盗聴防止魔法(カーム)を使い話を始める。

 

「さて、皆集まった訳だけど…ぶっちゃけあの魔族達の存在は想定外も良い所だったわ」

 

「ギルド協会のキーラさんに報告したら震え上がってたもんね〜。

 何、レベル350と450って? 

 私達が相手していた連中が可愛く見えるヤバヤバのヤバめって感じだったよね〜」

 

「…あの魔族の4人組、将来的に如何にかしないとならないからアレのレベルまで追い付くのは必至ね」

 

 話で早速エミルはシエル達4人の魔族、特にサラが言う様にアザフィールとシエルが規格化レベルの極みである為かルルもフードを人前で珍しく取り、深刻な表情でシエル達に追い付く事は必要だと進言する。

 

「だがあんな奴等が居たんじゃ悠長にレベル上げなんかしてる余裕はあるのか? 

 エミル、其処は如何なんだ?」

 

「それがね、あの連中目の前の魔族を如何にかしろとかどうのこうの念話で言ってたんだよね、思い出してみると。

 悠長にしてる暇は無いのは間違いないけど」

 

 アルは付け加えてシエル達の存在は正に悠長な旅をしながらレベルアップを図ってる暇は無いとエミルに話し、何か無いかと聞くとエミルはシエルに言い放たれた事全てを夜通しで思い出し、その内容を話そうとしていた。

 アルの悠長にしてると言う部分に同意しながら。

 

「えっ、エミルあんな状況で念話傍受魔法(インターセプション)を使ってたの⁉︎

 なんて無茶な…いや、魔族の魔法相殺したり新しい魔法作ったりで無茶苦茶やってるから今更だけど、僕より危ない事をしてるじゃないか!」

 

「私の信条は無茶はしても無理はするなだからね、彼処まで盛大に転ばされて何もしないのは魔族に屈した事を意味したから意地でも情報を抜こうと思ったのよ。

 ただ向こうも念話傍受をしてる事を看破して来たけど」

 

『なっ⁉︎』

 

 ロマンはエミルの念話傍受を自身の気絶したフリよりも危ない橋を渡り過ぎている事を話し、此処に来てロマンが火を吹きエミルの無謀に近い行動を咎めていると、エミルも真剣な表情で魔族にやられっぱなしは信条に反する為にやったと反論をした。

 その上でシエル達に念話傍受まで看破されていた事を話しロマン達は驚愕していた。

 あのエミルを4人組の魔族は完全に出し抜いてしまってたのだと。

 そしてあのエミルが彼女達の掌の上でただ転がされていた事を。

 

「其処まで看破されやがったのか…⁉︎

 それで、その後は如何なったんだ⁉︎」

 

「如何なったも何もこの通りになったわアル。

 ただ、あっちは何が目的かオリハルコンゴーレムを仕掛けた奴の上に居るアギラが何処かに行ったのを確認してから念話でこっちが傍受してるのは分かってるから黙って聞け、じゃないと全員殺すって言われたわ。

 …本当に完敗よ、こっちの手を完全に読まれ切ったんだから」

 

 アルが先ず口火を切ってその後の経緯を聞くと、エミルは向こうの目的が分からず終いな上に念話傍受を知りながらアギラ側に伝えず、その上で黙って聞く様にとアザフィール達との間の念話で言われてしまいエミルをして完敗だと言わしめていた。

 

「…それで、あのシエルって魔族は何を念話で漏らしたの? 

 黙って聞いてろって言われて、目の前の魔族を何とかしろって言われたなら他にも色々言われたんじゃないの?」

 

 その直後にサラからエミルに質問が為され、シエルがエミルに対して漏らした事が他にあるのではと問い質し始める。

 するとエミルはシエル達の事を考えながら少々不機嫌そうに話し始める。

 

「鋭いねサラ。

 ええ、あのシエルって魔族達は向こう側の重要そうな情報………楔の泉、って呼ばれる物を探してるだとか、地上界の者はレベル250が限界レベルだからそれを超えろとか訳の分からない、情報漏洩を敢えてして来たわ。

 それから、神剣探しは中止して目の前の魔族をってね」

 

 エミルが話した内容にロマンやサラ達はあの4人組はわざと情報を漏らしたのかと思う程魔族側の動きを話し、更に地上界の者達の限界レベルと言う自分達地上界の者が知らない様な事まで話し、その上で神剣探しは中止して魔族に集中せよと言う警告すら出し何がしたいのか不明な点が多過ぎた。

 

「…何か、不明瞭な事ばかりで分からなさ過ぎるのですか…楔の泉とは一体?」

 

「シエル曰く、地上界に3箇所あって魔王が門から出られない様にする楔。

 500年前から魔族が探す物、神が用意した魔界と地上界の争いを一方の虐殺にしない為の措置、だとか訳の分からない事を言っていたけど、重要なのは魔王がその楔の泉で魔界から出られないって事ね」

 

「…神様が、用意した…」

 

 ルルは考え込む様にしながらエミルに楔の泉の詳細を聞くと彼女はシエルに言われたまま、魔王が門から出られない様にする楔だと話し、重要な点であるこの楔がある限り『魔王は地上界には来れない』事を強調しながら言う。

 しかし此処でロマンやサラ、ルルにアルでさえ神が用意した、と言う部分に引っ掛かりを覚え、エミルが考えた様な事を脳内で思案し始めていた。

 

「まぁ兎に角私達があのシエル達の言う様に行動するなら目的は2つに絞られるわ。

 先ず第1に楔の泉を探索、そして出来るなら魔族が触れられない様に結界で守る事。

 第2に地上界の者の限界レベルと言う物を超える事。

 此方は態々あの魔族シエルがありがたい事にアレスター先生が何かに辿り着きそうだったから消されたと話してくれたわ」

 

「アレスターが⁉︎」

 

 その間にエミルは魔族4人組のリーダー格シエルが念話でわざと漏らした事を辿る道である楔の泉の探索、更に地上界の限界レベル突破を提示し、更に第2の議題にはアレスターが何かに辿り着き掛けて消された=殺された事を全員に話し、サラはアレスターの名を聞き驚きながらテーブルを揺らし、席を立ち上がった。

 

「魔族シエルの談が本当なら、ね。

 これを無視するなら私達は方針通りゴッフェニアに行く事にして神剣探しを続行するわ。

 ただ、これは私1人では決められないから皆の意見が聞きたいわ。

 皆はどっちが良い? 

 これまでの方針通りに行くか、それとも魔族シエルがわざと示した道を罠を想定して行くか?」

 

 そしてエミルは1番大事な話である自分達の今後の行動方針についてを4人に話し始める。

 1つは自分たちが決めた道を行き、神剣探しを行う道。

 もう1つは魔族シエルが提示した物に沿った道。

 それらから何方に行くかを自分1人では無く全員で決める様に促し始める。

 其処で全員が悩む様なそぶりを見せる…と思いきや、アルが先ず口を開き始めた。

 

「なら話は早い、頑固者のゴッフ(ジジイ)に神剣の手掛かりを聞きに行くより先に魔族シエルが提示した方に行く。

 あの女やアザフィールが350オーバーのレベルなら魔王はその上を行く筈だ。

 その出現阻止をする為に楔の泉とやらを意地でも探す方が先だろう、ライブグリッターならその後から探せる。

 何よりあの4人組に借りを返さなきゃアル様の名が廃るぜ」

 

 アルの言い分はライブグリッターと言うゴッフなら在処を知る物より楔の泉と言う聞いた事も見た事も無い物を探す無謀に思えるが、魔王出現を阻止する為に自分達に出来る事=魔族シエルから教えられた事から片付け、神剣は後回しにする選択をすると言う物だった。

 更に個人的な感情を挟むが魔族シエル達4人組に借りを返さないと気が済まないと言う物だった。

 

「アルの言い分は分かったわ、他の皆は?」

 

「私は…私は知りたい。

 アレスター、あの子が何を掴んだかを、何故あの子が殺される様になったか、あのエンシェントドラゴン襲撃は本当に偶然だったのか、知りたいの!」

 

 次にサラがアレスターが掴んだ物や彼が何故死に行く事になったかを知りたいと叫び、彼の姉として知らなければならない事が増えた為アルに同調しこれで方針変更側に2人が寄る事になった。

 それを聞きエミルが頷いていると次はルルが話し始めた。

 

「私も楔の泉探索に賛成するわ。

 実際如何言った物かは分からないけれど、確かお母様と賢王ロック様が不思議な泉を200年前に偶然発見した話があるわ。

 もしかしたらそれが件の泉かも知れない」

 

 ルルはリリアナやロックが200年前、偶然発見した泉の話をすると全員の目の色が変わり、もしかしたら楔の泉の1個目を早速見つけたのかと思いながらルルを見つめていた。

 

「僕は…僕の意見なんだけど…皆に合わせたってならない様に言うけど、知らなければいけない気がするんだ。

 魔族シエルが何故わざわざ僕達を試す様な真似を取るのか、その真意を。

 それと…楔の泉について教えたって事は、穿った見方をすると相手も大体の場所を絞り込めてるんじゃないかな? 

 ならそれを知る僕達が魔族達を止めて魔王の出現を止めないといけないと、僕は思うんだ!」

 

 最後に不安な表情を見せながらもロマンはその口で楔の泉探索をすべきだと自身の考えを持ちながら発言し、更に魔族シエルが何故この様な相手を試す様な真似をするのか、重要な情報を流したのは既に場所を絞り込み始めているのでは無いかと自身の考えを発言する。

 その上で魔王が門から出現するのを止めなければと、皆に同調気味にならない様に話すとエミルは全員の意見を聞き終え頷き始め、頭の中の行動方針に変更を加え始めて口を開く。

 

「皆の意見は大体同じみたいね。

 なら私は今後の方針転換としてゴッフェニアには行かずフィールウッド国の中央王村『ロックヴィレッジ』に向かうわ。

 賢王ロック様達に楔の泉らしき物を聴きに行くと同時にアレスター先生の知り得た事を解き明かそう。

 アレスター先生の遺品はフィールウッドに送られているから其処で閲覧して何方も同じ国で解消出来るかも」

 

 エミルは方針転換によりゴッフェニアに向かう事を変更し、フィールウッド国のロックヴィレッジに向かう事とし、其処でロック達が見つけた泉が楔の泉か確かめるのと並行しアレスターが掴んだ何か…地上界の限界レベルを超えるヒントを得る為彼の保管された遺品を閲覧しそれを知る事に決めてロマン達もそれで同意をした。

 

「それじゃあ何時から向かい始めるの?」

 

「今から。

 あんな化物レベルの魔族が出たもの、悠長に明日からなんて言ってられないわ。

 と言う訳で、食事を摂ったら直ぐに港へ向かってフィールウッド国へ行くわ! 

 早速1階に降りて食事して来ましょう!」

 

 サラは何時からとエミル聞くと、今からと返答が即座に返って来て理由も魔族シエル達の様な化物レベルの魔族が居る事を確認した為悠長な行動をしていられないと発言して盗聴防止結界(カーム)を解き1階に下り始めた。

 

「よし、そう言う事なら俺様達もさっさと行くぜ‼︎」

 

「うん、行こうロマン君、ルル!」

 

「分かったわ」

 

「うん!」

 

 その後にアルやロマン達も続き、さっと朝食を摂ると宿泊費等を払い、馬屋で預かってた馬車に乗り込みセレンの街からミスリラント本国1の港『ジルコン』へと馬を走らせ始める。

 

「(あの夢が私の持つ魔王像や完敗から来た負のイメージなら………それが実現しない様に頑張らないといけない。

 ………あんな光景は、ごめんだから…)」

 

 その間にエミルはあの悪夢の光景を思い出し、荒廃する地上界や知人、何よりリリアナ達前世の仲間達やロマン達今の仲間達、全てが無慈悲に失われ何もかもが魔族達の思い通りにならぬ様にと恐怖心を押し殺しながら決心し街道へと出てジルコンを目指した。

 

 

 

 しかし、エミル達の馬車がジルコンへ向かう場面を目撃する者が居た。

 それは銀髪のロングヘア額に赤い水晶を輝かせる褐色肌の少女………エミル達が現在最も警戒する者、シエルが居り、その背後にはアザフィール達まで佇んでいた。

 

「そうだ、それで良い。

 そうしなければアギラ達小悪党がのさばる結末を迎える。

 そんなつまらない結末など興味無いし見たくも無い。

 だからせいぜいアギラ如きには勝って見せろよ、エミル一行様?」

 

「では征きましょうシエル様、我等が『目的』が為に」

 

 シエルは彼女なりの思惑があるのかアギラ一派がのさばるのを良しとしない発言をし、何かエミル達に期待するかの発言をしながらアザフィール達と共に転移魔法を使いその場を去る。

 この魔族達の目的は何か? 

 それを知る者は『盟約』を交わしたダイズ位しか現在は居なかった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
誓いの翼(オースウイングズ)は魔族シエルが敢えて示した道を行く事になり、そしてシエル達は何らかの思惑を持って行動してますがそれが判明するのはまた随分先になると思われます。
更に魔族ダイズと言う名あり魔族の3派閥がある事になり、ダイズも『魔剣』を持つシエルと『盟約』を交わしていると言う複雑な関係に…。
これらが意味する所まで長いですがお付き合い頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願い致します。

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