転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様お久し振りです、第26話目を更新しました。
今回は魔族、アギラ派との戦争準備に入る回になります。
では、本編へどうぞ。


第26話『4国連合、グランヴァニアへ征く』

 魔族襲撃から1夜が明け、4国で魔族に殺された民達の国葬が執り行われ、エミル達はセレスティアで参加し、雨が降り頻る中喪服を着用し黙祷を捧げていた。

 

「何で、何であの子が死ななきゃいけなかったの⁉︎

 未だ5歳だったのに…あぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

「くっ、爺様…‼︎」

 

「兄上ぇぇぇぇぇ‼︎」

 

 国民の中に犠牲になった者の遺族達も居り、理不尽な死による永遠の別れに涙を流し今にも精神が壊れそうな程に叫んでいた。

 その間にエミル達は静かに拳を握り締め、今日執り行われる第2回4国会議、それも現在も虐殺が執り行われているであろうグランヴァニアについての話し合いにエミル達も参加する予定であった。

 

「…何時の世も、こんな理不尽が変わらず、そして天界ではこれを聖戦と呼ぶ…これの何処が…‼︎」

 

「エミル…僕もそれは思ってるよ。

 それに、こんな虐殺が起きてるのに未だ天界は動かない…本当に理不尽だよね、こんなの…‼︎」

 

 その中でエミルとロマンはこんな物が聖戦であるわけが無いと感じ、また天界が未だ動かぬ事も含め全てが理不尽だと感じ天を見ながらこの様な法を定めた神を初めて、2人は悪感情を抱くのであった。

 

 

 

 それから数時間後の昼、円卓会議室から大客部屋へと会議の場が移りエミル達誓いの翼(オースウイングズ)、ネイル達正義の鉄剣(ソードオブユースティティア)、そしてアルク達王子王女一同や親衛隊長マークス等も参加し大所帯になりながら会議が始まった。

 

「では先ず各国の被害状況について。

 セレスティアは…見ての通り特に我々が狙われた為美しきライラックの街並みが見る影も無く、国民も兵士と合わせて2000以上の犠牲者が出た」

 

「他は…犠牲は押さえられなかったが、王が居ない事から激しい攻撃はされず合計数百の死傷者が出た。

 500年前の戦争と違って前準備が整ってたとは言えコレだ、敵魔族共の恐ろしさが伝わるぜ」

 

 先ず被害報告から始まり、各国から書簡で送られた兵や民達の被害はセレスティアが狙われただけあって1番多く、かと言って他国が被害0だった訳も無く全員が全員アギラの悪逆に対し怒りを露わにし表情も険しかった。

 

「そして、此度の暗殺計画をエミル王女殿下達が警鐘を鳴らさねば更に犠牲者は増えただろう。

 先ずはエミル王女殿下達、そして殿下達と共にレベル250の壁を超えた2組の冒険者一行に感謝を」

 

 その中でロックはエミルやキャシー達が警鐘を鳴らさなかったなら犠牲は更に大きくなり、最悪自分達の命すら無かったと感じ全員が立ち上がりエミル達に頭を下げると、エミル達も無言で立ち上がり礼を受け返した。

 そうして全員が席に座り込み、会議を続ける。

 

「それで、総合的な兵の数はどれ程になりましたか? 

 我々セレスティアは5万9000以上をギリギリ維持出来ております」

 

「ミスリラントは8万のままだ」

 

「ヒノモトも1万2000のままじゃ」

 

「フィールウッドも5万9000以上ですぞ」

 

 その次に残った兵力を話し始め、戦争に参加可能なレベル150オーバーの兵士達は合計20万は未だ超えており、水晶石の映像の奥で殺戮を繰り返したアギラ達との戦いは可能となっており、またグランヴァニアに派兵する予定もこのまま会議が進めばエミル達は決まると思っていた。

 但しある1点を除けば。

 

「それで、今も海の向こうで虐殺を受けているグランヴァニアの連中は如何する? 

 助けるか、それとも無視して魔族と戦うか?」

 

 そう、問題はグランヴァニアの国民達の救済をするか否かにあった。

 確かにドゥナパルド4世が殺害され、その臣下も全て皆殺しに遭った後国民達も間違い無く鏖殺対象である。

 しかし、元々魔族信奉者だった為、それさえ受け入れ死を望む者さえ居るかも知れない。

 そんな狂った国民性を持つのがグランヴァニアであった。

 

「確かにグランヴァニアの国民を助けるメリットは薄い、だが同じ地上界に生きる者として放って置く事も出来ないのも事実。

 さて如何したものか…」

 

 ランパルドはこの難しい議題に対して悩み、地上界に生きる者同士として救うかそれともみすみす見過ごすかの選択を迫られ、1人では決められない様子を見せていた。

 すると………その中でロマンとエミル、2人が同時に手を挙げ、エミルは先に挙げたロマンに発言権を譲り、ロマンもそれを受け立ち上がりながら発言し始めた。

 

「あの、子供の勝手な意見と捉えて結構なのですが、グランヴァニアの人達を此処で救わないのは違うかなって思います。

 確かに僕も初めは無関心で何ら感情を抱いてませんでした。

 けれど…それでもやっぱりこの世界に生きる人々であり、あんな理不尽に命を奪われて行く中で僕達が手を差し伸べないのは、初めの頃に感じたグランヴァニアの人達の印象と何ら変わらなくなる、そんな気がしてなりません‼︎」

 

 ロマンはこの重い空気の中で発言する勇気を振り絞り、自身が初めに感じていたグランヴァニアの印象で無関心を貫いていたが、あの様な虐殺を見た後では矢張り同じ世界に生きる者として救わないのは違うとロマンは思った為、各国の王達に出し救い出そうと言う意見を出した。

 その次にエミルが立ち上がり、バトンタッチを受けながら発言を始める。

 

「ランパルド国王陛下に各国諸王の皆々様方、私セレスティア王国第2王女エミルもまた同じ意見にございます。

 幾ら魔族信奉者とは言え、彼等も地上界の者。

 其処は絶対に変わりません…故に、此処で救わねば我々はアギラと同類と化すでしょう! 

 ならば、一刻も早く救いに行くべきだと進言致します‼︎」

 

 如何やらエミルもロマンと同意見だったらしく、今この時にグランヴァニアの国民達を救わねばアギラの様な外道と同レベルに堕ちると発言し、一刻も早く救うべきだと言う考えを周りに出した。

 するとネイルも手を挙げ、発言を始める。

 

「私もロマン君やエミル殿達と同じ意見であります。

 アギラの悪逆を見過ごす事は私の正義に反する行為です‼︎

 ならばこそ、正義を成す為に我々は武器を取り、グランヴァニアの国民達を救いに行くべきだと進言致します‼︎」

 

 ネイルもまたアギラの悪逆を見過ごす事が出来ない、彼の正義の心がグランヴァニアの民を救う様に燃えており、もし此処で彼を止めてもネイルだけでも動こうとし、正義の鉄剣(ソードオブユースティティア)メンバーは既に覚悟が決まっており彼等もまたネイルに付いて行く気だった。

 そしてそれはサラ達も同じであった。

 

「(…ああロアよ、もしお前が生きていたらこの子達の様に魔族を信奉する者でも救いに行ったのか…?)」

 

 その様子を見ていたロック達誓いの剣(オースブレード)、特にロックはグランヴァニアの民達を救おうと言うロマンにロアの影を見出した為、自身達が何時の間にか凝り固まった思考となりグランヴァニアに憎悪に近い嫌悪を示していたと自戒しつつ、ロアなら関係無くエミル同様救いに行ったかを考え始めそして己が考えを改め始めていた。

 

「…君達の意見は理解した。

 ではこの此度の諸国王暗殺計画を防いだ勇士達と同意見の者は立ち上がって欲しい」

 

【ガタガタガタ、ガタ!】

 

 ランパルドはエミル達の意見に頷きその意見を理解した上で周りの王や王子達に彼女達グランヴァニアの国民達を救う意見と同じ者は立ち上がる様に話す。

 するとランパルドを含め、その場に出席した全員が同意見となり反対派は1人として出る事は無かった。

 

「…我が子等と諸王達の意見を私も見させて頂きました。

 ではこれより我々はグランヴァニアに船を出し、魔族により命の危機に晒されている民達を救い出そう‼︎」

 

「では我々は直ぐに自国に戻り兵達を結集し、グランヴァニアへと向かう準備をしよう!」

 

 ランパルドは全ての意見を纏め上げ、グランヴァニアの国民達を救うべく派兵すると決め、ロック達も同様に直ぐに自国に戻り軍の派兵準備を始めようとし、ゴッフもサツキも頷き出入り口に向かおうとした。

 

「あ、国へお帰りになるのであるならば私とキャシーちゃんとシャラさんが転移魔法(ディメンションマジック)でお送り致します‼︎

 今の我々ならばグランヴァニアも千里眼(ディスタントアイ)で覗く事も可能です‼︎」

 

「何と、枷を外したものはその様な事も可能なのか…ならば妾達を直ぐに国へ送って貰えぬか?」

 

『はっ‼︎』

 

 その時エミルが枷を外した自分達ならばこの場から諸王達の国の玉座、更にはグランヴァニアまで千里眼(ディスタントアイ)で覗きつつ転移が可能だと話し、サツキは純粋に驚愕しながら自身達を国に送る様に命じるとエミルはミスリラント、キャシーはフィールウッド、シャラがヒノモトに王達を送り届け、直ぐに帰還し次にアルク達を見ていた。

 

「では次にアルクお兄様達とマークスにやって貰いたい事があります。

 お兄様達にはこの国の世界樹に向かい、其処でアレスター先生が遺した修行法…我々はその性質から試練の問いと呼んでおります。

 それを完遂し、複合属性絶技に魔法を覚えて頂き戦力増強を図って頂きます。

 よろしいですね?」

 

「国中の兵達が集まるまで時間はそれなりに掛かる、ならばその間にアレスター先生が遺した物をやるのが1番効率的だな…よしエミル、早速その修行法をさせてくれ‼︎」

 

 次にエミルは国中の兵が集まる時までにアルク達兄姉達やマークスを試練の問いと呼ぶ事にした修行法をする事と複合属性魔法、絶技の取得等をする事を告げるとカルロもそれが効率的だとし、そのままエミルの転移でセレスティアの中で1番安全な世界樹にまで跳ぶ。

 

「じゃあキャシーちゃん、私の妹にリンって子がいるんだけど、その子や他の子達を私を連れて行って試練の問いをさせる様にしてくれないかな?」

 

「なら俺様はシャラに頼むぜ、頼れる兵の知り合いを即戦力に変えてやるぜ!」

 

『はい!』

 

 その次にサラはキャシーにフィールウッドに再び跳ぶ様に頼み、妹にして内偵のリンや自身が戦力として申し分ない物達に試練の問いをさせる様に説得しに行くと頼み込み、アルはシャラにミスリラントに跳び知り合い達を即戦力に変換する様にと頼むと、2人は早速跳びそれぞれが動き始めた。

 

「じゃあ僕は…ルル、一緒にヒノモトに来て女王様に特に強い人達を選んで貰って試練の問いに挑戦させて戦力増加を図ろう。

 僕達は女王様を救ったし、多分顔パスで通れる筈」

 

「は、はい…いざと言う時は、月下の華の名を…出しますから………じゃあ、跳んで下さい…」

 

 最後にロマンがルルと共にヒノモトに跳び、サツキ女王に頼み特に強い者達を選び試練の問いをさせる様に頼み込みに向かい、残ったムリアやガム、ネイルは手ぶらにならない様にランパルドに頼み込み馬に乗り兵達セレスティア各所に兵を集める様にと伝令の手伝いを頼まれる。

 

「では私は西側を、ムリアは南側、ガムは北側に伝令を送り兵を集めるぞ。

 事は人命に関わる、急ぎ兵達を集まらせるぞ‼︎」

 

「了解っすネイルさん‼︎」

 

「じゃあ行って来るっすよ兄貴達〜‼︎」

 

 そうして残った者達もまた兵を集めるべく国の各所を周り各々が人命を救うべく使命を帯び動き始めた。

 これに魔族達の妨害があるかと思い、エミル達はそれぞれ警戒を強めたが特に妨害も無くすんなりと試練の問いや複合属性絶技、魔法、そして兵の集結等が進み始めるのであった。

 

 

 

 一方天界では遂に始まったアギラの虐殺計画についてアイリスとリコリスが神に進言し、神に首を縦に振る様に何度も話し合っていた。

 その議論はアイリスが一度感情を爆発させた為か白熱化し、周りの天使やアレスター達はまた矛を構えないか心配で伺っていた。

 

「神様、アギラが遂に虐殺を始めました‼︎

 これでも我等は静観しろと、黙って見過ごせと言うのですか⁉︎

 お願いです、我々天使を地上界に派兵させて下さい‼︎

 でなければ次のアギラの策は止められません、お願いします我等が父たる神様‼︎」

 

「…ああ、視える…魔族アギラの手で地上界に住まう子等が悪戯に死に行くその光景が…」

 

 アイリスの地上界を憂う発言に横で聞いていたリコリスもまた黙りながらも心中は同調しており、2人で首を縦に振らせようとした。

 その時神は瞳を閉じ、未来を視通す力を発揮し、アギラの虐殺計画により命が悪戯に失われる光景を眼にし、心を傷めていた様であった。

 

「なら何故我々を派兵させぬのですか⁉︎

 以前の様な答えは最早聞きませぬ、納得の行く理由をお教え下さい‼︎」

 

「…我々が介入し、アギラを滅し聖戦の儀の正常化を図る。

 確かにそれこそが正しく、また命を守る事に繋がる。

 しかし魔王、彼の者は天界すら攻撃対象に定めている。

 実際、アギラは魔王の命でこの天界すら戦場にさせんとしている」

 

『なっ⁉︎』

 

 そうしてアイリスが以前よりも明確な答えを求め、再び矛を構えようとした瞬間、神の口から現魔王は天界すら攻撃しようと画策している事を話し天使達全員を驚愕させる。

 魔族、特に魔王が天界すら狙ってると言う答えは前代未聞であり、それを聞きアイリスとリコリスは驚愕の余り立ち上がってしまう。

 

「私は我が子達を不安にさせず、またアギラが滅せられようと第2第3の楔の泉を狙う者を魔王は擁立しその野望を完遂させようとするだろう………私はそれが恐ろしく、静観しか選択肢が無かった」

 

 神は例えアギラを消しても第2第3のアギラの様な者が立ち、再び楔の泉破壊を狙う事を恐れる余り静観していたと口にしていた。

 神はこの天界が戦場になり、混沌と化す事に恐怖していたとまで話していた。

 

「だが、此処まで命が悪戯に失われると言うのであるならば…」

 

 しかし、それに言葉を続けさせ神は未来を視た時の自身達が適切なタイミングで介入しなかった際の失われてしまう命を考え、そして瞳を開きアイリスやリコリス達を見据えながら神としての命令を下すのであった。

 その命を聞いたアイリス達は黙って跪き、そして翼を広げ地上界を監視する泉へと飛ぶのであった。

 

 

 

 一方、グランヴァニアへの派兵が決まった地上界にてシエル改めてエリスはこの2日間慌ただしく各国の武器輸入輸出を繰り返し資料と二者面談する時間が増えていた。

 

「エリスお嬢様、次はミスリラント、フィールウッドへの武器輸出のサインを。

 それからラーガ…いえ、アギラめが極秘ルートを使いミスリル鉱石4tを用意しろと催促しております」

 

「4tとか馬鹿げてる、200kgで我慢なさいと書簡で伝えて。

 さて後は魔界に流す分も含めてあれこれサインをしてそれから…」

 

 エリスはアギラが馬鹿げた量のミスリル鉱石を密輸する様に催促を促した事を一蹴し、アザフィール改めアズも静かに了承し、この戦いに於いては中立を保ちながら両者の行く末を観察するつもりであった。

 

「(さて、この戦いは何方が果たして勝つか? 

 アギラが勝てば地上界はそれまで、地上界が勝てばアギラもそれまで。

 何方が生存競争で生き残るか…見させて貰うぞ、特に誓いの翼(オースウイングズ)達よ…)」

 

 エリスは戦いの行く末を考察しながら、この戦いは傍観者として事の成り行きを見守り、何方が生き残るかを見守り、特にエミル達にムリアの交渉でもあったアギラ失脚に期待しながら何方が勝っても可笑しく無い密輸を含めた貿易手腕を見せ、決戦の日まで待ち続けた。

 

 

 

「お久し振りですお兄様、早速私が作った作戦案を目に通して下さい」

 

 一方グランヴァニアではアギラの下にダイズの副官、彼の妹のアリアがオーバーロードドラゴンと共に辿り着き、手渡した資料にはオーバーロードドラゴン1体やレベル260オーバーの魔族やその他の魔物の混成部隊による地上界連合軍上陸直後の奇襲、戦力に打撃を与えた後アギラの『趣味』を使い更なる打撃を与えオーバーロードドラゴン2体とグランヴァニアに集結中の全戦力で地上界の軍を殲滅する案が書かれていた。

 

「ふむ、悪くない戦術だ…だが駄目だね‼︎

 私の趣味を優先させる為に此方の作戦を展開し、オーバーロードドラゴンはその詰み場面で使わせて貰うよ‼︎

 無論…この大陸にある楔の泉、遂に見つけたから奴等に水晶石を通して守る対象を何も守れない絶望を与えてやるんだ、くくくく…‼︎」

 

 アギラは妹が立てた案を悪くないと言いつつその案の神を目の前で破り捨てて、代わりに自身が考えた『趣味』全開の案を押し出し、アリアの案を踏み付けながら嬉々としてその作戦を説明し、それを聞いたアリアは考え込み修正案を出そうとした。

 

「ならこの作戦は使うタイミングを考えねばなりません、

 であるなら、彼等の主戦力が船に乗り直して出航した時点で」

 

「ええい五月蝿い、この案が奴等軟弱な地上界の者の精神を壊すんだ‼︎

 お前は黙って見ていろ‼︎」

 

 しかしアギラは修正案を一切聞かず、自らが描いた台本をそのまま作戦としてするとし、ダイズから言われたアリアの言う忠告を聞くのをしっかり忘れ、地上界の者達が自分の掌の上で踊り狂い絶望する様を夢見ていた。

 だが、それ等を聞いていたアリアはこの時兄が何も変わっていないのと同時に考えていた事があった。

 

「(これは…勝てる戦いを趣味でぶち壊して負けるパターンですね。

 なら、ダイズ様の言う通りにし、私やオーバーロードドラゴンの内2体は泥舟に付き合う気は無いわ。

 1体だけその時に残して行くからそれで自分が勝てる戦いを自らの手で逃した事を知るが良いわ、愚かな兄アギラ…)」

 

 アリアはダイズから「言われた負け戦に最後まで付き合うな、ある程度渡した戦力を回収して俺の下に戻れ」を忠実に守り、腹の底で既に負け戦が確定した事でアギラに見切りを付け、そのまま退散する事を決め決戦の日まで兄のくだらない言葉を流し続けるのであった。

 

 

 

 そうして迎えた兵士集結の日。

 セレスティアの各港に最大1万の兵が乗船可能な船内に空間圧縮魔法が掛かった軍用魔法船を集結させ、食糧から武器に至るまで様々な物を積み込ませ出港の時を今か今かと待っていた。

 

【ドドドドドド‼︎】

 

 その時戦場に立つセレスティア王国騎士団計5万9000以上の兵士達が馬に乗り集結し、船に乗り込み始めた。

 その中にはランパルド国王や転移で直接港に跳んだエミル達修行組が姿を表し、ランパルドに話し掛け始めた。

 

「陛下、我々王族とマークスは試練の問いを完遂、そしてエミル、カルロ指導の下複合属性魔法と絶技を会得に成功しました!」

 

「うむ、レベルも260オーバーとなり見違えたぞアルク達よ。

 では早速船に乗り込み出港準備を整えよ‼︎

 グランヴァニアへの船旅は魔法使い達で風を起こし通常より早く駆け抜け3日で先ずヒノモトにと辿り着き、そこから半日でグランヴァニアの船を付けられる湾岸へ辿り着き、兵士達を進軍させるぞ‼︎」

 

 アルクは兄妹やマークスの代表となり修行の成果が出たとして報告し、ランパルドも少しだけ笑みを零した後直ぐ様アルク達全員に船に乗り込み出港準備を整える様に命じるとアルク、レオナ、カルロ、マークスは転移を用いて別々の船に乗船し、エミルはランパルドの護衛の為王船に乗り込もうとした。

 その時背後から転移の音が聞こえ、キャシーやシャラの手でサラとアルが、そしてロマン達も転移して誓いの翼(オースウイングズ)が集結する。

 

「皆、如何やらそれぞれ行動を起こしたようね、成果は?」

 

「バッチリ‼︎

 試練の問いを受けさせたい人達を完遂させたよ‼︎」

 

「それだけじゃ無く複合属性絶技とかも覚えさせて来たぜ‼︎

 じゃぁキャシーとシャラはネイル達の所に行け、俺様達はもう大丈夫だ‼︎」

 

 エミルは全員が自分と同じ行動に出たと感じ、成果を聞くと全員が全員満足と言った表情を見ぜていた。

 それからアルはキャシーとシャラにネイル達と合流させる様にと言うと2人は頭を下げてネイル達と合流、アルク達の船に乗り込み物資を乗せる手伝いを始めていた。

 

「じゃあ私達も乗り込んで準備を」

 

「ねぇ皆、あのアギラって魔族について話があるから少し船の端で話しないかな?」

 

「サラ? 

 …分かったよ」

 

 それからエミル達も物資搬入を手伝おうとした所でサラが何故か真顔でアギラについて話があると言い、フードを取ってるルルやロマン達も何かあるなと感じ取り、邪魔にならない船の端に立ち話を聞き始めた。

 

「それで、俺様達にあの屑野郎の話があるって何なんだ?」

 

「うん…アギラはね、エンシェントドラゴンを嗾けてアレスターを殺した魔族なんだ」

 

『⁉︎』

 

 アルは何の話かと単刀直入に聞くと、サラはアギラこそが当時のアレスターとカルロの下にエンシェントドラゴンをけしかけ、それを見ながらアレスターを死に追いやった魔族だと告げると全員驚愕し、エミルは深呼吸して気持ちを落ち着かせサラに話を続けさせる。

 

「それは確かなの?」

 

「うん、試練の問いで見せられた魔族の顔と国中の水晶石を乗っ取って映ったアギラの顔は一緒だったよ。

 だから私から提案したいの、アギラは私達の手で斃そうって。

 もうアレスターやグランヴァニアの王達みたいな悲劇を繰り返させない為にも」

 

 エミルの問い掛けにサラは真顔で間違い無いと告げ、今まで変な隠し事や嘘を吐いてないサラの口からそれが出た為全員でそうなのだと納得する。

 更に彼女からの提案によりアギラは誓いの翼(オースウイングズ)の手で斃すと告げられ、エミルはシエルが提示したムリアの家族の安全に関する交渉で誰がアギラを殺すないし失脚させるかを全く指定されてない為、頭の中でOKを出しつつ皆に視線を送り答えを聞く。

 

「俺様の斧の錆にしてやる準備は出来てるぜ?」

 

「アレスターやセレスティアの国民達、グランヴァニアで今も犠牲になってる人達の悲劇を止める為に、私も賛成よ」

 

「エミルも賛成なんでしょ? 

 なら僕達でアギラを倒そうよ‼︎」

 

 アル、フードを取ったルル、そしてアギラの悪意ある行動に怒りを未だ抱いているロマンもアギラを倒す事に積極的になっており、全員の意見を聞いた後エミルは無言で円を組み、ロマンやサラの片腕を握り誓いの翼(オースウイングズ)流の誓いの言葉の準備に入ると全員瞳を閉じ、言葉を紡ぎ始める。

 

『我等誓いの翼(オースウイングズ)は悲劇を止める為、アギラをこの手で斃す事を誓います』

 

 今度は何等指し示しも無く自然で言葉が重なり、全員アギラを斃す事を誓いセレスティアの国民達、グランヴァニアの人々、そしてアレスターや恐らく同様の手口で死んだ者達の悲劇をこれ以上連鎖させぬべく誓いを立ててエミル達はグランヴァニアのある方角を見つめる。

 その時彼女達の背後で兵士がランパルドに話し掛け始めていた。

 

「陛下、物資の搬入は全て終了の旗が各船から上がりました! 

 王船も同様ですので何時でも出港可能であります‼︎」

 

「うむ、では我が命の下グランヴァニアに向け出港せよ‼︎

 帆を張り、水の魔法と風の魔法を欠かすな‼︎」

 

 王船の物資搬入班長の兵が全ての船が物資搬入完了の旗を上げた事を望遠鏡で覗き、それ等をランパルドに説明した瞬間ランパルドは王命により出港する事を声を声を張り上げる。

 騎士団の魔法使い達も水と風の魔法を使い船のスピードを意図的に上げる用意を始める。

 

【ブォォォォォン‼︎】

 

 更に1人の兵士が備え付けてある巨大な船笛を吹き、全ての軍船に合図を送ると向こうからも同様の音が鳴り響き、それが合図となり先ず王船が錨を上げ帆を張ると出港を開始、見送りに来た国民達や参加出来ないレベルの兵士達に見送られながら全ての船は大海原を駆け抜け始めた。

 

「いよいよ、グランヴァニアへ突入だね皆」

 

「えぇ…待ってなさいよアギラ、貴方の残忍な行いは私達地上界に住まう者全てが止めてみせるわ…‼︎」

 

 ロマンが戦いを予感しながら海の先を見る中でエミルもアギラを斃す意志を明確に見せながら5人で船首の先を見つめ、グランヴァニアへの到着を待った。

 それから1日半が経過した頃にはフィールウッド、ミスリラントの軍船も合流し大船団がグランヴァニアに向けて進んでいた。

 そしてこの後の予定はヒノモトに寄りグランヴァニアに行くと言うシンプルな物であり、全員が戦いに向けた眼を光らせるのであった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
試練の問いについて、エミル達が正式名称を言い当てたのは偶然であります。
そして此処からアギラ派との本格的な戦いになります。
アギラの悪辣さやエミル達の地上界を守る為の戦いを何とか上手く描きたいと思います。
因みに他の冒険者達はあえなく落選しました(レベル120未満が多過ぎた)

此処までの閲覧ありがとうございました、よろしければ感想、指摘をお願い致します。
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