転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様こんにちはです、第30話目更新でございます。
いよいよこの作品も30話目に突入し、アギラとの戦いも佳境を迎え始めました。
両陣営の差を見比べながら話を楽しんで頂けたら幸いです。
では、本編へどうぞ。


第30話「作戦会議、行う』

 戦闘終了後のヴァレルニア港街跡にて。

 エミル達は犠牲になった者達に簡易的な黙祷を捧げ、その魂が天に昇る様にと冥福を祈り上げていた。

 その中で天使達は忙しなく動き、失われた物資の補填、遺体の送還を国まで直接飛んで行き各国に哀悼も含めて要求し始めていた。

 

「ありがとう、天使の皆様方。

 お陰で我々は救われました」

 

「…いえ、我々は礼を言われる立場ではありません」

 

 右腕を失ったランパルドはアイリス、リコリスに頭を下げ、他の王も漸く天界が動いた事を知り1つ溜め息をしながらそれを見ていた。

 が、アイリスは礼を言われる立場では無いと何処か後ろめたさを感じさせる様な物言いをし、リコリスはアイリスのフォローに回ろうとした………だが、此処でエミルがロマンを連れてアイリスの前に立ち睨む様な表情を見せていた。

 

「エミル、ロマン君、一体何が」

 

「陛下、これから我々2人は天使に対し傲岸不遜の問い掛けをします。

 ですが、それを止める事無き様にお願い致します」

 

「僕からもお願いします」

 

 ランパルドはエミルとロマンの様子を見て何かと思うと、2人は直ぐに天使達に余りに失礼極まり無い質問をするとして彼等を驚かせ、ロマンまで同じ側に立つ為サラ達も何事かと思いその様子を見ていた。

 

「…私達への問い掛けとは何か…いえ、内容はもう決まってますよね、貴女方は」

 

「ええ、私達からする質問は3つよ、1つはアレスター先生がいきなり現れた事から天使は何時からグランヴァニアに潜伏していたの? 

 2つ、貴女達はアギラがあんな策、いや、ドゥナパルド4世達を虐殺する事まで何時から、何処まで把握していたの? 

 そして3つは2つ目の質問を答えてからするわ」

 

 アイリスはエミルやロマンがする問い掛けに対して予想が付きながらそれを聞き始め、エミルは1に何時グランヴァニアに潜伏開始したか、2にアギラの謀略を何時、何処まで把握してたかを問いた。

 するとリコリスが前に出ようとした瞬間アイリスがそれを静止し、エミルの問いに答え始める。

 

「1の何時から潜伏したかは2日前、何とかギリギリバレない状況下での介入をするにはそれしかなかった。

 2は…全て把握していたわ。

 皇帝達や民に対する虐殺も、魔血破(デモンズボム)も、何もかも」

 

 アイリスはエミルが問いた事を淡々と答えて行き、2の問いの答えを聞いたサラやネイル達は唖然とし、4国会議時点から既にアギラの謀略を全て把握していたとするアイリスに驚愕、或いは怒りの感情を向ける者が大多数だった。

 それを聞いたエミル、ロマンは拳を強く握り締め、第3の問いに移り始める。

 

「なら第3よ、貴女達天界はそれ等全部を知りながら何故直ぐに動かなかったの‼︎

 動けばアギラの謀略を全て止められた、こんなに犠牲者が出る事は無かったのに何故よ、答えなさい天使アイリス‼︎」

 

 エミルは怒りに身を任せ、第3の問いとして初めから直ぐ動かなかった理由を問い質し始める。

 そうすれば第1収容所群のグランヴァニアの民達は爆弾に変えられ爆死する事無く、オーバーロードドラゴンが数万の兵を焼き払う事無く、果てはセレスティアや全ての国で虐殺行為が行われず犠牲はもっと少なかったと糾弾し、答える様に叫んでいた。

 対するアイリスの答えは…。

 

「…全て私の責任であり力不足が招いた事態だ、そして貴女達には私を殴り、叩く権利があるわ………煮るなり焼くなり好きにして良いわ」

 

「良い覚悟ね天使様は…‼︎」

 

「…だったら、僕達は叩かせて貰うよ‼︎」

 

【バシン、バシン‼︎】

 

 アイリスは全てが自分の責任、力不足だと発言し、煮るのも焼くのも好きにする様にと答える。

 それを聞いたエミル、そして温厚なロマンもアイリスの頬を2人で叩き、ロマンは涙を流しながらその手を出していた。

 

「お前達、アイリス姉様何たる無礼を‼︎」

 

「良いのよリコリス、私の妹、弟達も‼︎

 全ては天使の最高位に居る私の力不足が招いた過ちなのだから彼等にはそれを糾弾する権利があるわ‼︎」

 

 それを見たリコリスは光の刃が付いた籠手を装着し、他の天使達も光の矛を装備するが、アイリスは今居る地上界の戦士達は自身を糾弾する権利があるとして再び静止させる。

 その瞬間ロマンがアイリスの首根っこを掴みながら叫び始めた。

 

「何で動かなかったんですか‼︎

 貴女達がちゃんと動いていればギャランも、収容所の人達も、連合軍の兵も、誰もが悪戯に死ぬ事無く事は済んでいたんですよ⁉︎

 楔の泉を狙っているって明確なルール違反があったのに何で介入しなかったんですか‼︎」

 

「…すまない、私の責任だ…そう、私の…」

 

 ロマンは泣きながらアイリスを、天界を糾弾し彼女達の法の執行者としての立場を正しく行使していればこうならなかったと叫び、その手に籠る力が強まっていた。

 それをアイリスはただ自身の責任だとロマンの目を見て話し、その瞳には悲しみが満ちていた。

 

「止めなさい勇者ロマン‼︎

 アイリス姉様はアギラの謀略を察知してから毎日毎日、何度も神様に我々の介入の許可を得る為に奔走し時には神様に矛さえ向けていたのよ‼︎

 そんな姉様を責めるのは間違って」

 

「リコリス、間違っていないわ。

 全ては私の力不足、神様の首を縦に振らせられなかった私の怠慢、そして何より私が神様の代わりに全ての球団を受ける立場なのだから。

 だからリコリス、下がりなさい」

 

 其処にリコリスが割って入り、アイリスは神に天界の介入を何度も進言した事や創造主たる神に矛すら向けた事を口にし、この事態を避けようと奔走していたのだと話した。

 しかしアイリスは神の代わりに全ての糾弾を受ける立場であり、自身の力不足と言う認識を変えず彼女を下がらせ、割って入らせた為にロマンとも距離が離れてしまうがそれでも彼の目をじっと見ていた。

 

「…ふう、このままじゃ埒が明かないから単刀直入に聞くわよ。

 アイリス、天界は何故こうなるまで介入を拒み、悪戯な犠牲を出したのか? 

 私の責任だの何だの抜きにして神様の思惑を話しなさい」

 

 それらのやり取りを見ていたエミルはこのままでは話は平行線のままで前に進まない為、天界の総意たる神の考えを口にする様に話しこの事態の根本の原因を探りに入る。

 するとアイリスは重い口を開きながら言葉を紡ぎ始める。

 

「…神様はアギラや魔王の思惑が天界の介入その物、天界すら戦場に変えて3世界の支配を目論んでいたからと仰られたわ」

 

「魔王が…!」

 

 アイリスはアギラ、更に魔王の思惑を口にし天界すら支配しようと言う恐るべき野望を抱いている事をエミル達に話し、彼女達はそれらを聞き自分達が大いなる野望の一端に巻き込まれていると理解して額に汗を伝わせる。

 

「神様はそれを恐れて天界の介入を遅らせ、でも魔血破(デモンズボム)の人体爆弾としての使用等を未来視していよいよ介入を開始する様に宣言されたわ。

 但し、魔血破(デモンズボム)等を使用しないなら楔の泉を護るだけに留めよと付け加えながら…神様も魔族の善性を信じたのよ、結果は…」

 

 更にアイリスは神がそれを恐れたが故に天界の介入を拒み静観を貫いた事、しかし未来視でいよいよ見過ごせない虐殺が始まるとして遂に介入を許すも、魔血破(デモンズボム)やオーバーロードドラゴンの使用をしなければ楔の泉防衛にのみに留める気だったと話し、魔族の…アギラの善性を信じての行動制限を掛けていた。

 しかし結果は虐殺が起き、アギラに善性無しとして断罪が決まった様であった。

 

「…そう。

 でもそれなら楔の泉1個を破壊される程度なのに過剰反応し過ぎじゃ」

 

「その認識は甘いわエミル、今の魔王は楔の泉が3つ正常に働かなければ縛れない程の力を有し、1つでも破壊されれば地上界は死滅(デッドエンド)を迎えてしまうわ。

 だからこそ私達は虐殺前に特に楔の泉に監視を付け、奴の策を崩す瞬間を待ったわ。

 そして…その監視者が泉を守護結界で固めてからやって来たわ」

 

 更にエミルの認識では楔の泉は1個破壊されても残り2つの機能で門と魔王を縛れてる筈なのに異様にガードを固めた理由をアイリスから言われてしまいゾクッと背筋が凍る感覚を彼女は覚える。

 何故ならあの時アギラが泉破壊を完遂したら悪夢通りになってしまったと考えたからである。

 それによりエミルの中で分かっているフィールウッドの1個を死守から全て死守に切り替わる。

 

【ビュン‼︎】

 

「よっと、ふう。

 アイリスさん、頬が腫れていますね。

 回復魔法(ライフマジック)は要りますか?」

 

「良い、これは殴られる権利を行使しただけだから」

 

 そんな中アイリスが監視者と呼ぶ者、アギラと対峙していた天使化したアレスターが共に居た名無し天使達と転移魔法(ディメンションマジック)を使い皆の下に跳ぶとアイリスに回復をしようかと言うが、これは殴られる権利を行使…つまり自分から殴られに行ったと話しており、アレスターはまだまだ蟠りがあると感じながら頭を掻いていた。

 

「先…生………カルロの話で天使になったと聞きましたが、まさか本当に…!」

 

「はい、次の輪廻転生までの間は天使になる様にと特別に天使化しました。

 それにしてもアルク様、レオナ様、そしてカルロ様にエミル様は本当に成長なされた………教師としてこれ程鼻が高い事はありませんよ」

 

 そのアレスターの姿を見たアルク、レオナはカルロの試練の問いの話から彼が天使になったと聞かされており、それがあのアギラの策を破り今目の前に居ると思い感涙に咽びそうになるとアレスターも4人の生徒が生前の自分を大きく超えた事を見て此方も感涙を流し、それを拭いながら全員を見て話し始めた。

 

「さて皆さん、天界の対応に不満不平があるとお思いですが少なくともアイリスさん達を許してあげて下さい。

 私はこの目で見てきました、彼女達が地上界の皆さんの為に1日も早い介入を神様に進言し、その度に落胆しては新たな証拠を見つけてはまた進言を繰り返した………他人で別世界の人達を心配して、また本当に見守り有事にこの世界に来ようと努力なされてました。

 なのでどうか、此処は1つ穏便に事を収めて下さい」

 

 すると次にアレスターは天界の対応についてを話し、その中でアイリスがかなり苦労し、証拠を見つけては進言して1日でも早く介入をしたい事を見て来たと告げる。

 そうして彼も天界側になった為アイリスが殴られに行った様に魔法使いの帽子を外しながら頭を下げて連合軍、エミルやネイル達に穏便に済ます様にとお願い…しながらエミル達枷を外した者達に天界独自の魔法でアレスターの視点から視たアイリス達の行動の記憶を見せて彼女達の優しさを感じて貰おうとした。

 

「…はあ、分かりましたアレスター先生。

 如何にもこの天使達は神様の決定に毎日不満を抱えながら生きてきたみたいですし、私達が戦うべきはアギラ達魔族の方ですからもう荒波は立てませんよ」

 

 そして激昂していたエミルやロマンもアレスターの記憶を垣間見てこの天使アイリス達が何処までも優しく、何処までも地上界の為に動いて来た事を知り、またこの怒りをぶつけるべきはアギラ達と捉えてもうこれ以上の不毛な言い争いをしない様にするのであった。

 

「ふう、アレスター…私は神様の代行で来たんだ、だから殴られる権利があったのに」

 

「そう言う少し頭が固いのもアイリスさんの欠点ですよ? 

 地上界の事を自分の事みたいに心配していた美点も加味すると、やっぱり貴女は優しい頑固者ですね」

 

 アイリスはアレスターの行動に神の代行としての殴られるべきと言う物を丸く収められた事にジト目で見ており、それをアレスターは優しい頑固者と称して美点と欠点を述べる。

 それにはリコリスも頑固者に同意しつつ顔には出さず、アイリスは溜め息を吐きもうこれ以上殴られに行けば話しが拗れる為もうこの話は終わりにし、次に進もうと考え始めていた。

 

「さっ、此処は守護結界と盗聴防止結界(カーム)を何重にも張らせて貰ってますので食事をして次の戦いに備えましょう! 

 此処はアギラが支配する領域なのですからね」

 

「…そうですね、傷付いた人達は回復魔法(ライフマジック)で治癒を、他の料理が出来る者は残った船から食糧を取り出してお腹を満たしましょう! 

 次なる戦いの為に!」

 

 するとアレスターは手を叩くと何重にも結界を張った為食事と次の戦いに備える様にと話し、エミルもそれに賛同して魔血破(デモンズボム)やオーバーロードドラゴンのブレスに巻き込まれなかった船から食糧を取り出し料理と傷付いた者に回復魔法(ライフマジック)を掛ける様に促しながら声を張り上げる。

 すると兵士達は死者への哀悼を胸に秘めながら立ち上がり行動を開始するのだった。

 

「アレスター先生…試練の問いで散々話したからもう何話せば良いか分からないけど…俺、これからも先生みたいな教師になりたいです! 

 魔法と絶技の違いはありますが」

 

「はは、そうですね。

 カルロ様、貴方が良き教師になる日を次の輪廻転生まで見守らせて頂きますよ。

 さて…」

 

 するとカルロがアレスターに近付き、彼に恩師の様な教師になる事を目の前で誓うとアレスターはその日を心待ちにして見守ると応える、但し輪廻転生の順番待ちと言う条件付きで。

 その次にアレスターはロマンに目を向けて近付くと、ロマンは初めて会う天使化したエルフにサラに似た面影…姉弟だから当然の雰囲気を感じながら何故来たのか首を傾げていた。

 

「…うん、やっぱり君はケイ君やテニアさんの息子さんですね! 

 大きくなられましたね、優しい顔立ちはテニアさん寄りで、強い正義の心を持った目はケイ君にそっくりです!」

 

「え、えぇ⁉︎

 あの、父さんと母さんを…」

 

「はい知ってます、あの2人に魔法や絶技の手解きをしたのは私ですからね。

 それと赤ちゃんの頃にもお会いした事がありますよ」

 

 そのアレスターは何とロマンの父と母の名を口に出し、ロマンも何故知ってるのかと思うとアレスターが彼等の先生になった事を知り、此処でロマンは生前の両親から告げられた物教えの良い恩師のエルフがアレスターと知り親の縁を辿り不思議な巡り合わせが今相成った事に感動を覚え、この話をロマンから聞いていたカルロは矢張りかと思いながら見守っていた。

 

「ねえねえアレスター、天界ってどんなとこなの⁉︎

 天国、本当に天国なの⁉︎」

 

「アレスター…会いたかった…‼︎」

 

「わわ、サラ姉さんにリン姉さん⁉︎

 いきなり飛び付かないで下さいよ驚いてまだ慣れない翼で叩いちゃう所ですよ⁉︎」

 

 その時ロマンの背後からサラとリンの姉妹が天使化した最愛の弟に飛び付き、2人でアレスターを困らせる様子が見られたが遠目でそれを見ていたアルやルル、そして何より父親のロックは嬉し泣きをしながらその光景を目に焼き付けていた。

 もう2度と会えないと思われたアレスターの姿を目に刻む為に。

 

 

 

 一方その頃、シエル達の取り計らいで命辛々グランヴァニア宮殿跡に撤退したアギラは目の前にある大量の魔血晶(デモンズクリスタル)に魔力を送り、肉体が消滅した魔族達を復活させ始めそれを直ぐに終えていた。

 

「ええい天使共め、天界め、そのまま臆病風に吹かれて殻に閉じこもっていれば良い物を私の策を狂わせやがってぇぇぇぇぇ‼︎」

 

「ア、アギラ様どうかお怒りを沈めに」

 

「黙れ無能共‼︎

 大体貴様らがもっと地上界の塵芥、特に魔法使いエミルや勇者ロマンを殺してればこんな事にはぁ‼︎」

 

 アギラは部下達を復活させた途端に癇癪を起こし、身を案じる部下にまで当たり散らしエミルとロマンさえ殺せば後は如何ともなると話し、特にエミルとロマンを警戒している事を露わにしながら部下達に止め処なく怒りの言葉を口にしていた。

 するとその宮殿跡に足音が3つ響き、全員がそちらを向くとその方向からシエル、ダイズ、アザフィールがアギラに向かって歩いて来ていた。

 

「如何したアギラ、何をそんなに癇癪を起こしているんだ? 

 たかが天界の者共が少し早く介入した位で」

 

「そのタイミングが問題だったんだ‼︎

 後少しだけ遅ければ魔王様は降臨なされたのに…くそ、忌々しい天使共、アレスターめ‼︎」

 

「たらればを話すな見苦しい、それより悪いニュースを2つ持って来たから良く聞け」

 

 シエルはアギラの癇癪を余裕ある笑みを浮かべながら天界の介入が早かった程度と話すと、アギラはタイミングが悪過ぎたらしくもしもアレスターさえ居なければ…そんな可能性を話した。

 しかしたらればを嫌うダイズが睨み付ける様にそれを切り捨て、悪いニュースを2つ持って来たと話しアギラを注目させる。

 

「先ずは俺達の盟約、戦力提供の話だがお前は自らの趣味に走り過ぎ俺の忠告たるアリアの話を聞けすら無視した。

 よって俺からはアリア、シエルからはオーバーロードドラゴン2体を没収する」

 

「なっ、待て⁉︎

 オーバーロードドラゴン2体を投入すれば未だ戦局は」

 

「アギラ」

 

 ダイズは第1に忠告等を無視し地上界の者達の絶望に染まる瞬間を見たいと言う趣味に走ったアギラに対し貸出した戦力を没収すると宣告するとアギラの横にいたアリアはダイズの横へと行く。

 するとアギラはオーバーロードドラゴン2体を投入すればまだリターンが来ると話そうとした瞬間アザフィールが大剣を床に突き立てながら睨み付けていた。

 

「貴様は盟約の内容を忘れ、悪戯に戦力を減らした。

 更には魔王様降臨前に天界の介入を許した、その愚策極まり無き行い、万死に値する!」

 

「なっ、わ、私を今殺すのか⁉︎

 私は魔王様から地上界の侵略を任された幹部、お前はシエル達の師とはいえ今はシエルの部下! 

 任された大役に差がある者の首を刎ねるのか、魔王様の許し無しに⁉︎」

 

「その『魔王』様から最後通告だ、アギラ」

 

 アザフィールはアギラの愚策を糾弾し、多くのアギラ派の魔族がいる前で今にも首を刎ねる殺気を出していた。

 アギラはそんなアザフィールに魔王から大役を任された身である事を口にしその幹部の者を一介の魔族が魔王の許し無しに殺すのかと口にする。

 が、其処に同じ身分のシエルから魔王からの最後通告と言う言葉を口にされ、アギラは滝の様な汗を流し始める。

 

「もしも今躍進気味の魔法使いエミル達を殺せたら今までの失敗を全て無かった事にする。

 だが敗北すれば処断はシエル達に任せるとの事だ。

 良かったな、未だ名誉挽回のチャンスがあるじゃないか」

 

「が、あ、ぐっ…‼︎」

 

 シエルは魔王が現在レベルが380を超えたエミル達を殺せたら今までの失敗は無しに、次に失敗すれば間違い無く彼女達に殺される事を告げられ喉から言葉を出そうにも出せない状態になった。

 それをシエルは和かな笑顔で名誉挽回のチャンスがあると告げた為、周りの魔族達は矢張りダイズやアザフィール、そして何よりシエルを敵に回すのは命がないと悟り後退ってしまっていた。

 

「ではアギラ、次の戦いが名誉挽回のチャンスだ。

 アレスターとリコリス、そしてアイリスは私達3人が止めてやろう。

 その間にお前は誓いの翼(オースウイングズ)正義の鉄剣(ソードオブユースティティア)を殺せ。

 良いな…と言っても拒否権は無いから必ず遂行しろよな、魔界1の策士様?」

 

 シエル達は最後通告を言い切ると振り返りながら自分達はアイリス達を止めると話し、その間にアギラにはエミル達とネイル達を殺す様にと話してその場を少し歩き転移し去って行く。

 それをアギラは玉座に座りながら手摺に手を打ち付け、エミル達に怨嗟の感情を抱きながら口を開き始めた。

 

「良いだろう………殺してやる、絶対に殺してやるぞ、エミル、いや、ライラ共…‼︎」

 

 アギラは今までに無い余裕が完全に消え失せた口調でエミルをライラと呼びながら千里眼(ディスタントアイ)で守護結界や盗聴防止結界(カーム)内に居るであろう彼女達に飽く無き憎悪をぶつけようと決意するのであった。

 

 

 

「あれで奴の尻に火は付いただろうか?」

 

 グランヴァニア宮殿跡から転移したシエル達は空中で策に溺れ過ぎたアギラは漸く小細工抜きに行くのかを尻に火が付いたと表現しながら言うとシエルは振り返り冷淡な表情で語り始める。

 

「如何転ぼうが私には構わない、ライラのてんせ…いや、『エミル』達が死ねばそれまで、アギラが負ければそれまで。

 何方にせよ私達が最後にやるべき事は変わらんさ…お前もそう思うから狂戦士(バトルマニア)として私と盟約を交わした、違うかダイズ?」

 

「…ふっ、違わんさ」

 

 シエルはライラの転生者と見ていたエミルを漸くこの世界に生きる『人間』と見始め、そのエミル達とアギラが何方が負けて死のうと自分達が『最後にやるべき事』は変わらないと話し、ダイズも狂戦士(バトルマニア)として違わないと話しアザフィール、アリアを伴い再び転移する。

 その内にアギラすら知らぬ魔王と比べれば小さな願い(野望)を秘めながら。

 

 

 

 それから連合軍は天使の計らいで亡くなった者達の遺体を綺麗な状態で家族の下に送り届けたり、食事で腹を満たした中でアイリス達天使を含めた作戦会議が行われ、其処には無理を押して未だ戦闘に参加しようと言う右腕を失ったランパルドの姿もあった。

 

「では作戦は以下の通りだな。

 我々は天使達と共にグランヴァニア宮殿跡前に転移で向かいアギラ派の魔族や魔物、そしてアギラを斃しこの戦いを終わらせる。

 幸いにして他の収容所群は天使の守護結界で守られ、魔血破(デモンズボム)も説明が行われながら解除されたと聞く。

 ならば後はアギラを潰して戦いを終わらせるのみだ」

 

「それはそうだがランパルドの坊主、右腕が無いのに戦いに出るのは自殺行為だぜ? 

 それでも行く気か?」

 

 ランパルドはアルクやマークス、エミル達やネイル達にアイリス達を囲みグランヴァニア宮殿跡前に転移しアギラを斃す事に集中出来る環境が整った為アギラ達を潰し戦いを終結させようと話す。

 するとゴッフが失った右腕を見ながらその状態で戦場に出るのは自殺行為と警告し、それでも行くかと職人王として問いていた。

 

「ふっ、私は魔法使いだ。

 其処まで前に出なければ死にはしないさ、じゃじゃ馬娘のエミルと違ってな」

 

「お父様…いえ、陛下…」

 

 ランパルドは魔法使いとして後衛に陣取り、エミルの様にロマンと共に戦場の中心に立たなければ死にはしないと話し、それを聞いたエミルは悲しげな表情を一瞬浮かべたが直ぐに戦場に立つ者の顔に戻り父王に畏敬の念を送っていた。

 

「それで、もしもシエルやアザフィール達が乱入したら如何するの? 

 ハッキリ言って今の僕達でも勝てる気がしないよ」

 

「シエルの相手は私がします、魔界最強の剣士にして魔剣ベルグランドの担い手…今は未だ只のオリハルコンソードしか使ってませんが、万が一アレを使われたら止められるのは私しか居ません。

 なのでリコリスが魔界の第2の将であり同盟者のダイズ、魔界の英雄アザフィールはアレスターが相手をして下さい」

 

『はい!』

 

 次にロマンがシエル達の乱入が発生した場合の可能性を考慮すると、シエルの相手はアイリスが取ると答え、彼女からはシエルに負けない自信に満ちた声が出ておりアル達もこの天使なら任せられると思い始める。

 次にアイリスはリコリスはダイズ、アレスターはアザフィールと指定して乱入者に対する対応を取り決めていた。

 

「では、我々連合軍と天使達の混成部隊はグランヴァニア宮殿跡への路を切り開き、誓いの翼(オースウイングズ)正義の鉄剣(ソードオブユースティティア)にアギラを討たせる………それで良いかな、皆の者?」

 

「妾も構わぬ、妾の国を荒らした魔族と魔物を1匹でも多く殺せればそれで良い」

 

 最後にロックが駒を用意し、エミル達とネイル達を見立てた駒を宮殿跡に居るキング、アギラを討たせると話しそれで構わないかと問い掛けるとサツキ女王もヒノモトを荒らした者達を殺せたらそれで構わないとして了承し、リリアナも頷きこの作戦で行く事を決めた。

 

「よし、作戦が決まった‼︎

 全員集まれ、集まれ‼︎」

 

 そうして決まった防衛網突破作戦を説明する達アルクが声を張り上げ全員を立たせ国ごとに並ばせ、そして天使達は左右を囲みながら少し地面から浮きながら話を聞き始めた。

 

「我々の次の作戦が決まった、それはグランヴァニア宮殿跡防衛網突破作戦だ‼︎

 先ず我々連合軍と天使達が宮殿跡に集まる魔族達を引き付ける、そして誓いの翼(オースウイングズ)正義の鉄剣(ソードオブユースティティア)がその防衛網を突破、一気にアギラを討ち取る‼︎

 幸い収容所群の魔血破(デモンズボム)は無力化されたと聞く、ならば後は戦うだけだ‼︎」

 

『オォォォォォォォォォ‼︎』

 

 アルクは兵士達全員にグランヴァニア宮殿跡防衛網突破作戦の概要を説明し、自分達連合軍と天使がアギラ派の魔族や魔物の防衛網を破壊し、エミル達にアギラを討たせると言うとてもシンプルな作戦を伝える。

 更に収容所群の心配も消え、後はただ戦うだけと叫ぶと兵達も失われた命への怒りの叫び声を上げ応える。

 するとアルクの横にアイリス、リコリス、アレスターが立ち天使達に説明を始める。

 

「我々も聖戦の儀の法を犯したアギラ派の魔族達を断罪し、その為に地上界の勇士達と共に戦う。

 だけど貴女達は魔族シエル達を見掛けても戦わないで、彼女達は私達3人で相手するわ、良いわね私の妹、弟達?」

 

『はい、アイリスお姉様‼︎』

 

 アイリスは聖戦の儀の法を犯したアギラ派の魔族、魔物を討伐する為連合軍と共に戦う事を口にし、されどシエル達は自分達が相手をする為手出ししない様に忠告を出すとアイリスの妹、弟達は同時に応えそのような運びになった。

 

「では行くぞ、転移魔法で宮殿跡の10キロ前で陣形を組みそのまま戦場へと征かん‼︎

 恐るな戦士達よ、汝らの勇気が明日を切り開く力となるのだ‼︎

 全霊を込めて戦え、そして魔族達に打ち勝つぞ‼︎」

 

『オォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎』

 

 最後に各王達が馬に跨りアルク達の横に立つと隻腕のランパルドが勇気を振り絞り、全霊を込めて戦えと命じると皆が剣や槍、斧、弓、杖を掲げて応えて己が力全てを振り絞る事を誓い合うと巨大な魔法陣が彼等全員の馬の足下に浮かび始めた。

 

「さあいざ征くぞ、この戦いの決戦の地へ‼︎」

 

【ビュゥン‼︎】

 

 ランパルドの最後の一言を合図に大規模転移魔法(ディメンションマジック)が発動し、目標地点から10キロ離れた地点にフィロとリヨン、更に護衛の天使達数名を残して転移する。

 そしてあれだけ騒ついた声が一気に無くなり嵐の前の静けさとも言うべき静寂がフィロ達を包む。

 

「我々グランヴァニアを救いに来て下さった戦士の皆様、天使様達、どうかご武運を…」

 

 最後に齢12のリヨンが連合軍と天使達の武運をフィロと共に膝を突いて祈り、この戦いが地上界の勝利に終わる事、これ以上の無駄な赤い血が流れない様に祈りながら2人はジッとその場で祈り続けていた。

 例えそれが届かないとしてもずっとずっと願いを込め続けていたのであった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
アギラは最後通告により後が無くなり、更にアリアやオーバーロードドラゴンを回収された為正面から戦うしか無くなりました。
一方連合軍は天使を加えてこれまた正面から衝突し、アギラをエミル達の手で斃す様な作戦になりました。
そして次回ではアイリス達やシエル達の戦いも確定しており、それを描写しながらグランヴァニア最後の戦いを描けたら良いなと目標にしてます。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。
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