転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様こんにちはです、第39話目更新でございます。
今回は前回の続き、迷い子の容体を診る事やロック達との対話等になります。
それにより何が齟齬なのかお楽しみに下さいませ。
では、本編へどうぞ。


第39話『歴史の齟齬と水と油』

 ロックが医者を呼ぶと約束してから15分が経過した頃、白衣を着たエルフが宿屋に到着し

 女の子が寝かされている部屋にノックして入って来た。

 

「賢王ロック様の命により馳せ参じました。

 それで、患者はその魔族の女の子でしょうか?」

 

「その通りです、どうか診察して下さい」

 

 医者は鞄を持ちながら部屋を一瞥するとベッドで咳き込む魔族の女の子を見て患者はその子かと周りに聞くと、サラが頭を下げながら診察する様にお願いをしていた。

 この国での発言力はエミルよりサラの方が上の為エミル達も頭を下げる程度にお願いのサインを送ると、医者は頷きながら女の子の前に立っていた。

 

「其処に患者がいるなら誰でも診察します、例え相手が魔族であってもです。

 では先ず痛み止めを処方してから回復魔法(ライフマジック)を掛けつつ血を少々注射で抜き、鑑定眼(アナライズ)で血液中の中に何か菌が居るか否かを確認します」

 

「お願いします」

 

 医者は患者ならば例え魔族でも診察するとまで断言すると、痛み止めを飲ませてから回復魔法(ライフマジック)を掛け始め、更に血管に注射を打つと其処から血を少し抜き専用の採血管を鑑定眼(アナライズ)で見ると、医者は少し険しい顔を見せた。

 

「如何しましたか? 

 まさか、この子は難病でも?」

 

「いえ…ただ珍しい病…『ロート熱』の菌が見つかり少し驚いたのです。

 この病は300年前に治療薬が完成し、200年前に根絶した筈の病なんです。

 放って置けば生命に関わる病です………が、治療薬は常に何があっても良い様に備蓄されてますので1日待てば治療薬を持ってきますので、この風邪薬を飲ませながらその子に付いてあげて下さいませ。

 では、薬の手配をして来ます」

 

 ロマンは医者の顔を見て難病かと思ったが、医者曰く根絶した病気を患っているらしくそれで顔を険しくしたらしかった。

 その後医者は基本的な風邪薬の処方箋をサラ達に渡しながら薬の手配をする為に宿屋から去って行った。

 それからエミル達は治らない病気では無いとしてホッと一息吐いていた。

 

「良かったですね、不治の病じゃなくて」

 

「そうだな、ロート熱は魔界側も600年前に根絶している。

 だが問題は病の方じゃ無い…エミル達、この子に鑑定眼(アナライズ)をしてみろ」

 

「えっ?」

 

 キャシーは女の子が治らない病気では無かった事に喜びながら額を撫でていると、手を握っているシエルが病が問題では無いと発言し、更にはエミル達に鑑定眼(アナライズ)をする様に要求する。

 エミルは太々しいと思いながらも言われた通りに鑑定眼(アナライズ)を使った。

 すると、この女の子のレベルが名あり魔族基準の220をオーバーし、レベル300を叩き出していた。

 

「なっ、レベル300⁉︎

 魔族ってこんな子供でも普通にこのレベルになれるの⁉︎」

 

「そんな訳あるか、魔族であろうが地上界の者同様子供に其処までのレベルに辿り着く力は無い! 

 …だが偶に、レベル220を超えてこの世に誕生してしまう魔族の子供も存在する。

 そんな子は少し特殊な方法で体内魔力の制御を教わらない限り内なる魔力が身体を壊し尽くすんだ。

 私が生まれる以前の世の中では忌み子だの何だの呼ばれ親から捨てられてた…らしい」

 

 エミル達この幼い女の子がレベル280と地上界では普通では考えられないレベルを持っていた為、シエルにこれが普通かと聞くと違うと断言される。

 しかし偶に生まれながらにレベル220を超えて誕生すると話され、シエルが誕生するより前の魔界では忌み子と呼ばれ捨てられる存在だったと聞き、エミル達も魔界側の事情を聞き固唾を呑んでいた。

 更に特殊な体内魔力の制御をしないとならないと聞きエミル達は黙って聞いていた。

 

「その特殊な体内魔力の制御法だが、こうやって他の魔族がそう言う子の魔力を吸い上げながら我々が付けているレベルの枷を外部から付けて、身体に魔力が馴染む様にしながら地上界でもやる体内魔力の操作を覚えさせる。

 これが我々魔族の特殊な子の育て方だよ」

 

 するとシエルは女の子の魔力を吸い出しながら外部からレベルの枷を少しずつ付けて魔力が身体に馴染む様にして残りは体内魔力の操作を覚えさせると説明し、現にシエルは今この場でも女の子の手を掴みながら魔力を吸い上げていた。

 それをアザフィールもダイズも止める様子は無く、如何やらシエルの話通りの対処が正しいらしかった。

 

「そう…でもこの子は何処かの時間軸から迷って来ちゃった子なんでしょ? 

 同族とは言え貴女親身になり過ぎよ、もしかしてこの子は貴女の知り合いなの?」

 

「いや知らない、知らないが………私が親身になる理由があるとすれば私もこの子と同じく生まれながらの名あり魔族で、しかもアザフィールに引き取られるまで違法な奴隷として家族に捨てられた所為だな。

 この子が兄を呼ぶのに親に助けを求めないからもしかしたら私の様に捨てられた子かも知れないと考えたからだよ。

 だから放って置けないんだ、こう言う子は」

 

 そうして周りの空気がしんみりとする中でシャラは何故シエルがこの子に親身になるのかと問うと、シエルは少し身の上話を挟みながら自身もこの女の子と同じ様な存在であり、親に助けを求めていなかった点を踏まえて昔の自分自身の様に感じているらしく同情等の感情で知らない子供を救おうとしていると明かしていた。

 

「…貴女も人の子なのね、シエル」

 

「悪いか、エミル? 

 私とて救える命が目の前にあれば救うさ、例え元の時代に帰せばこの行為が無意味になる時の迷い子であってもだ」

 

 エミルやロマン達はシエルの事は超然とし、何を考えているか分からない魔族としか思っていなかった為、人並みの感情を見せる彼女に今までのイメージが崩れて優しさがある者と映り、シエルはそれに少し噛みつきながら女の子に対処療法を施し続けていた。

 彼女の言う様に元居た時代に帰せば無意味になるとしても、シエルの目にはこの子を救うと言う意志が感じられた。

 

「…言って置くが、ソーティスを倒すまでしか同盟は無い。

 その後は私達は殺し合う運命だ、余計な感情を挟んで来るな」

 

「っ、分かってるわよこの強情っ張り‼︎」

 

 それを横目に見たシエルは今回のソーティスの件が終われば殺し合う運命だとして彼女にとって余計な感情を挟もうとするエミル達に釘を刺すが、エミルにはそれは強情を張っている様に見えた為最後に悪口を添えてエミルは外方を向く。

 すると窓側にいたエミルは近衛兵が宿屋に近付いている事に気付きドアの方に身体を向けるとノックが為され、シエル以外は視線を向けた。

 

「サラ第1王女殿下、セレスティア王国エミル第2王妹殿下、勇者ロマン殿、天使リコリス様、そして…魔族の将ダイズ殿。

 賢王ロック様がお呼びです、王の御前までお越し下さいませ」

 

「俺まで? 

 …成る程、アイリスならばシエルと師父アザフィール殿を押さえられると踏んでのこの面子か。

 良いだろう、賢王殿の前まで案内しろ」

 

 近衛兵達はサラ、エミル、ロマン、リコリス、更にはダイズにロックが呼んでいると伝えると、ダイズまで誘われた事に魔族陣も興味を持ち近衛兵を見ていた。

 するとダイズはアイリスを残す意味も捉えてこの面子になったと納得してロックの下に案内され始めた。

 

「エミル殿、ロマン君達、何かあれば我等を呼んでくれ」

 

「其方もね、ネイルさん」

 

 其処にネイルが何かあれば呼んで欲しいとエミル達に言うと、エミルもソーティス討滅の同盟を結んでたり女の子を救おうとしてるとは言えシエルやアザフィールが居る以上警戒心は一定に保ち続ける必要がある為ネイル側も呼ぶ様にと話してから部屋を後にし始める。

 

「賢王ロックの判断は正しい、所詮我々は本来なら敵同士、警戒して監視するのが正常だ」

 

「はいはい、それじゃあ行くわよロマン君、サラ、リコリス。

 それからダイズ、変な事しないでよ」

 

「ふっ、戦衣装を整えてない者に襲い掛かる程見境が無いと思われて心外だな」

 

 最後にシエルがエミルの背中越しに本来は敵同士で警戒し合う事が正しいと話していると、エミルはもう彼女の言動に振り回されたく無い為軽く遇らう。

 更にダイズに襲い掛かるなと意訳して言うとダイズも軽口を叩きながらエミル達に囲まれる形で宿屋を出てロックとリリアナの居る宮殿内に入り始めた。

 

「賢王様、予言者様、客人と魔族の将を連れて来ました」

 

「ご苦労、では近衛兵達は下がりたまえ。

 魔族の将ダイズ相手では1国の兵全てが相手でも止められない上に悪戯に犠牲が増えてしまうからな」

 

 そうして直ぐにロック、リリアナの2人の前に立ち、近衛兵達はロックの指示により下がらされた。

 エミル達もダイズ1人が暴れればフィールウッドを落とすのも容易いと考え、また腹を割るなら他の者が居ない方が良いとも考え近衛兵達が出て行くのを待ち、そうして最後の1人が出たのを確認した後エミルから話を切り出した。

 

「それで賢王ロック様と予言者リリアナ様、私達を呼んだ理由は何故魔族、しかも将2人とその副官の1人と共に居るのか、ですよね?」

 

「その通りだエミル達。

 魔族に屈したとは思わないが、何か理由があるなら説明して欲しい。

 天使リコリスもその説明に加わって欲しい、我々も少し混乱しているんだ」

 

 早速エミルはロック達が混乱してる原因である魔族、それもシエル達と共に来た事を切り出し、ロックも説明して欲しいと頼み込んで来た為自身達の遭遇した事、ソーティス関連の事、更に時間改変現象(タイムパラドックス)の事をリコリスと共に説明を始めた。

 その間にダイズは何もせず佇みながら話を聞いていた。

 

「…彼方なる者ソーティス、時間跳躍魔法(タイムジャンプ)、それに時間改変現象(タイムパラドックス)に時の迷い子。

 俄かには信じ難い話だが、天使リコリスも此処まで補足説明を入れて話しているからには間違い無い話なのだろう」

 

「何とも恐ろし事でしょう、あらゆる時間軸に介入し歴史を改竄するとは、其処に生きた者達の証を否定し変えてしまう行いです…」

 

 ロックやリリアナはソーティスや時間改変現象(タイムパラドックス)の事を聞き自身の蓄えた智慧を上回る未知の領域の話に頭を押さえるが、リコリスの説明やエミルとロマンにサラの真剣な眼差しに嘘偽りが無いと判断して彼女達を信じる事にした。

 それと同時に長寿故の智慧者である為その恐ろしさまで理解していた。

 

「それから魔族の将ダイズ、改めて聞きますが本当にソーティスを倒すまでの間は魔族は聖戦の儀に当たる行為をしないのですね?」

 

「ああ、魔王様もソーティスが居ては目障りだと話して魔族を全て魔界に引き上げさせた。

 聖戦の儀停戦が決まったのは奴が目覚める3日前だがな」

 

 更にダイズもリコリスに問われ、魔王の停戦命令が出たのはソーティス覚醒の3日前と明かし、それ以前に一旦全ての魔族を帰還させたと言う。

 そのニュアンスからはソーティスに関連付いた撤退だとエミル達は感じていた。

 此方も嘘は吐いていないと感じエミルは日記に注釈をメモしていた。

 

「それで、この国に来たのはあの迷い子を助けるためだけでは無いのだろう? 

 恐らく我々が知る今の歴史とサラやエミル達の知る歴史に齟齬があって来たのだろう? 

 だからこそソーティスの話をした、違うか?」

 

「流石お父様! 

 そうなの、私達はシリンダーツに着く前にソーティスと戦って、その後に人で賑わってたシリンダーツの街の人々が消えて荒廃した街の跡に変貌したの‼︎

 お父様、1ヶ月前のグランヴァニアの戦いの話を互いに共有して何処が違うか確認させて‼︎」

 

 それ等を聞き終えたロックはその聡明な智慧を絞り、エミル達が来た理由を当てるとサラはシリンダーツ前での戦いやそのシリンダーツでの出来事を話し、グランヴァニアの戦い…アギラの動乱を互いに共有して何処が本来の歴史と違うかを確認し合おうと話した。

 

「アギラの動乱での食い違い…グランヴァニアで人々が………成る程。

 なら開戦理由は4国会議でアギラの部下達の襲撃があり、エミル達がそれ等を退けた後に虐殺を受けてるグランヴァニアの民を救おうとロマン君が言い出した、で合ってるか?」

 

「うん、その後に私達は試練の問いを突破した人を増やして、戦いに備えた後にグランヴァニアに向かって征き、それからフィロ皇貴妃様とリヨン第3皇子を助けたんだよね?」

 

「はい」

 

 ロックはそれを聞き少し考え、エミル達と自分達の知る歴史に摩擦が無いかを確かめるべく動乱の始まりから話し、其処からサラがフィロとリヨンを救った事を話すとリリアナが頷く。

 ダイズやリコリスも此処までは食い違いは出てないと判断し、黙って聞いていた。

 

「それからフィロ様のお願いで第1収容所群の人達を救ったけど………けど、魔血破(デモンズボム)で…‼︎」

 

「ああロマン君、アレの為に救った民達の命は失われた。

 そしてオーバーロードドラゴンが投入され、そのブレスによりランパルド前国王とフィロ皇貴妃、リヨン第3皇子が『巻き込まれて焼滅してしまった』、此処まで合っているか?」

 

 それからロマンが第1収容所群の話を切り出し、魔血破(デモンズボム)やギャラン達、犠牲になった者達に手を振わせるとロックやリリアナも悲痛な面持ちになりながら話した。

 だが此処で歴史の齟齬が判明する。

 それはオーバーロードドラゴンが放ったブレスで本来はランパルド前国王の右腕が焼かれるだけの筈が前国王も、フィロ親子も焼かれ死んでしまったとロックは語っていた。

 

「そ、そんな、あの戦いではお父様は2人を庇って右腕を焼かれただけで済んだ筈‼︎

 なのに3人共亡くなるなんて…‼︎」

 

『エミル‼︎』

 

「…そうか、其処がエミルやサラ達の知る歴史と今の我々の歴史の決定的な違いなのだな。

 あの戦いではランパルド前国王殿やフィロ皇貴妃殿達は生き残っていたのか…」

 

 エミルは突然の父やフィロ親子の死に驚愕し取り乱してしまい、膝を突き掛けるがサラやロマンが支えて何とか立たせる。

 しかしロックやリリアナはヴァレルニア港街での戦いでランパルド達は生き残っていた事を知り愕然とし、頭を抱えていた。

 

「じゃああんなに賑わっていたシリンダーツの街の人盛りが時空の柱が出た後に消えたのは…フィロ様達が死んだ事になって皇族が全員居なくなったから…グランヴァニアは国家として機能しなくなったから…⁉︎」

 

「その通りだ、サラ達がアギラを倒した後に残ったグランヴァニアの民達は各国で引き取ろうと言う話になったのだ。

 そしてセレスティアもランパルド前国王殿が死した為アルク第1王子が国王に…」

 

 それからサラはグランヴァニアの街があの様に荒廃した原因はフィロ達の死と言う時間改変現象(タイムパラドックス)で現在の歴史が書き変わった所為だと確信し、アルクが王になった経緯も異なりエミルはこれが歴史を改竄する事かと思い知らされてしまった。

 

「これで改竄点が確定した、ヴァレルニアの戦いでランパルド、フィロ、リヨンの3名が死亡した事が時間改変現象(タイムパラドックス)の一因だ。

 それをシエル達に話し、擬似特異点(セミシンギュラリティ)の使命を果たしソーティスを殺すぞ」

 

「あ、待ちなさいダイズ‼︎

 地上界での勝手な行動は慎みなさい‼︎」

 

 するとダイズは歴史の改竄点を見極めた瞬間これ以上話す事は無いと雰囲気を醸し出して森の宮殿から徒歩で出歩き、それをリコリスが追い勝手な行動を慎む様に促そうとしたがそのまま宿屋まで先に行かれてしまった。

 それ等を見ていたエミル達はロックとリリアナに指示を仰ぐ様に視線を向ける。

 

「ふう…いざ自分達と娘達の間で認識の違いが露呈すると此処まで愕然とする物なのだな…ではサラ、そしてエミル殿下にロマン君よ、賢王の勅令としてアギラの動乱での歴史改竄を正して来るのだ‼︎」

 

『はい、賢王陛下‼︎』

 

 ロックは歴史の齟齬を目の当たりにして頭を押さえながらもサラ達に毅然としてアギラの動乱時の改竄点を正す様に勅令を下し、エミルやロマンも共に跪き頭を下げて承るとダイズとリコリスを追って宿屋まで走り始める。

 その後ろ姿をロックは見送りながら1つ溜め息を吐いた。

 

「まさか天界に招かれた次には時空、歴史に関わる事件に巻き込まれるとは………エミルやロマン君にサラ、ルルにアル、そしてネイル達あの動乱を首謀者を滅し収めた仲間達は我々の予想を大きく超えるな、リリアナ」

 

「ですねロック。

 これも偏に彼女達の絆と、それ等を中心に様々な物を呼び込む天命からでしょう。

 善し悪し、何方も含めて」

 

 ロックはあの動乱の最後にアイリス達に天界へ招かれたと思えば次には時空を乱す敵と戦う事になったエミルやサラ達を自身達の想像を超えた存在になったと改めて思い知らされると、リリアナはそれを彼女達が築き上げた絆と天命による物だと締め括り後ろ姿を見送っていた。

 そう、エミル達はロック達の遥か前を歩み止まらずにいるのだ。

 それを見送るのもまた長く生きた者の使命と2人は思うのであった。

 

 

 

 一方現代の魔界にて、とある屋敷に2人の魔族の男が集まり只管何も無い空間に目を閉じながら跪き何かを待つ様にじっと動かずにいた。

 否、待っていたのだ。

 魔法元素(マナ)の淀みが発生するこの時を魔族の兄弟は650年もの間待ち続けていたのだ。

 

【カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

「ふむ、良く帰還を待ってくれてたな我が助手、『ネロ』と『ヴァイス』よ」

 

『はっ、お帰りなさいませソーティス様!』

 

 其処に時間跳躍魔法(タイムジャンプ)でソーティスが現れ2人の魔族、ネロとヴァイス兄弟を助手と呼びその2人もソーティスを様付けし跪きながらその姿を見て喜びを露わにしていた。

 

「660年前にお前達に俺の研究や実験の書物を全て破棄して潜伏する様に命じた。

 なるべく魔王に目を付けられぬ一般魔族としてな」

 

「はい、しかしそれも今この時点で雌伏の時は終わり我等兄弟も雄飛するのです、貴方様の下で‼︎」

 

 ソーティスは650年前より更に前、自分が魔王に封じられる可能性を考えネロ達に自身の研究を知られぬ保険を掛け、兄弟の弟ヴァイスも雌伏が終わるとして面を上げてあらゆる時間軸に跳ぶ彼の者を崇拝していた。

 それこそ魔族が魔王に心酔するかの如く。

 それ等を見てソーティスは2人の魔族兄弟は時を経ても自分への想いは変わらぬと見定め2人の額に指を当てる。

 

「では研究の成果としてお前達のその脳に直接時間跳躍魔法(タイムジャンプ)の術式を刻もう。

 これでお前達も第2、第3の特異点(シンギュラリティ)だ…ふっ‼︎」

 

【キィィィィィン‼︎】

 

『うっ、ぐ、うぅぅ‼︎』

 

 ソーティスは指に魔力を込めると2人の脳に時間跳躍魔法(タイムジャンプ)の術式を刻み込み、ネロ達は苦しむがそれすら受け入れて耐えに耐えた。

 彼等にとってはこの痛みは650年間のソーティスとの離別に比べれば何ら苦痛では無いのだ。

 そうして数分後にソーティスが指を離すと、2人の目が一瞬光る。

 

【バッ、ブゥン、カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

 すると3人は手を天井に翳すと時計の魔法陣が現れ、3人は何処かの時間軸へと跳ぶ。

 そう、ソーティスは構想していた実験の1つ『本来会得すべき魔法を課程を飛ばして脳に直接刻み込み、その魔法を使える様にする』を成功させ、ネロ達を第2、第3の特異点(シンギュラリティ)に変える事に成功した。

 

「よし、実験は成功した。

 これで俺は自由自在、あらゆる時間軸に特異点(シンギュラリティ)を作り上げる事が出来る様になった!」

 

「流石です、我等が主ソーティス様」

 

 この結果にソーティスは自らの研究が正しかった事を証明し、満足していた所でネロ達は再び跪き自らの主を讃えた。

 更に2人はソーティスの横に立てる悦びを噛み締め、650年の忠誠が果たされる時が来たと感じ取っていた。

 

「さて…実験は成功したので2人には先ず任務を与えたい。

 魔法暦2035年土の月その1の28日へ跳び、其処でセレスティア国王ランパルドとグランヴァニア皇貴妃フィロとその息子リヨン皇子を殺せ。

 タイミングや方法は任せる、俺は俺で別の時間軸で行動を起こす」

 

『はっ、畏まりましたソーティス様‼︎』

 

 それからソーティスは2人の魔族兄弟に魔血破(デモンズボム)が爆破した時間軸に跳びランパルド達を殺す様に命じるとネロ達は快諾し、時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を使いその時間軸まで跳ぼうとしていた。

 

「それから…今回の件でアザフィールのみならず狂戦士ダイズ、更に我々時の果てを見ようとする特異点(シンギュラリティ)への特効として魔剣ベルグランドを振るうシエル、更には地上界の現代の勇者一行と天使アイリス達が動いている、十分に気を付ける事だ」

 

「ダイズにシエル…地上界侵略の将ですか。

 分かりました、気を付けます。

 行くぞヴァイス」

 

「おう兄者‼︎」

 

【ブン、カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

 最後に今回の件ではシエルやダイズ達、エミル達にアイリス達に気を付ける事をネロ兄弟に告げるソーティス。

 2人はその名を聞きアザフィールのみならず厄介な魔族が動き、天使アイリスまで居る事に何処の陣営も相当時間改変現象(タイムパラドックス)を警戒していると理解すると2人は時間跳躍で消え、その時間軸にはソーティスしか居なくなった。

 

「さて…勇者の血筋、特に2度も攻撃を当てて来た勇者ロマン、奴とシエル達をアイリス達には注意を払わんとな…ふっ!」

 

【カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

 そうしてソーティスも時間加速魔法(タイムアクセル)無しで自身に攻撃を1回、更にそれを受けてからもう1回自身に傷を与えた勇者ロマンやシエル、アイリス達に警戒心を強めながら時間跳躍魔法(タイムジャンプ)で再び何処かの時間軸へと跳んで行く。

 こうして彼の『研究』と言う魔の手が世界の喉元に迫りつつあった。

 無論これを止められるのは現状エミル達だけである………。

 

 

 

「そうか、グランヴァニアのヴァレルニアでランパルド達が死にあの国が滅びたと言う事になったか。

 大方の予想は出来ていたが、それならシリンダーツの現象も説明が付く」

 

「確かにそうですね。

 ならヴァレルニアに再び向かうと言う事で良いでしょうね」

 

 その頃エミル達は先に出て行ったダイズ達を追い宿屋に戻り、全員にロック達との歴史の齟齬を説明するとシエルは女の子の手を握りながら納得し、アイリスもヴァレルニアに向かう事を確定させ周りも頷いていた。

 

「所で、その子の状態は如何なの?」

 

「今こうして身体を壊す体内魔力を吸い上げているが…この子の潜在能力が高過ぎてこうして吸い上げてもなお魔力が減らずに肉体への負荷が減らない。

 エミル、お前は何か良い案は無いのか? 

 この子を助けたい、しかしこのまま此処に留まる事は出来ない、お前の発想力でこの子を救え」

 

 そんな中エミルはシエルに魔族の女の子の容体を聞き取ると、この女の子の潜在能力が高過ぎるらしく体内魔力の吸い上げで追い付かない程の魔力量を小さな身体にあると言われる。

 更にシエルはエミルにヴァレルニアに向かいたいとこの子を救いたいを両立させる良い案は無いかと無理難題を押し付け始める。

 これにエミルはこの難題押し付けを他人の命が懸かってる為何も言わず考え出し、すると直ぐに思い付いた事があった。

 

「少し聞くけど、吸い上げた魔力は自分の物に変換してるのよね?」

 

「ああ、其処から魔力浪費をしてプラマイ0の状態にしてるが如何した?」

 

「ならいっその事、この子の魔力を使って無理の無い魔法を空に放ったら如何よ? 

 自分の魔力に変換してるなら出来るでしょ?」

 

 するとエミルはこの女の子の魔力を使いシエルが魔法を放つと言う彼女がこの子の魔力を自身の物に変換していると言う部分に着眼し、シエルに提案した。

 すると彼女は少し考え始め、可能か否かを頭の中で整理し始めその答えを出した。

 

「…やった事は無い、がやれない事では無いな。

 良いだろう、その案を使わせて貰おう」

 

「けっ、エミルが態々考えてやったのに感謝の言葉すら無いのかよこのプライドマシマシ女は?」

 

 結論としてシエルはこの案を使えると判断して魔力を相変わらず吸い上げながらエミルの提案を使うと宣言する。

 するとアルは自分の仲間が知恵を出して作った案に対し礼は無いのかと発言して何とか丸く収まってる子の面子に亀裂を生じさせかねない発言をする。

 

「礼なんて要らないわよ、この子を救えたらそれで良いって思ってるだけでシエルに礼を言われたい訳じゃ無いから」

 

「それに礼を言うならこの子を完璧に救い、元の時代に送り届けたらになる。

 それまでは簡単に感謝の言葉は述べないぞ。

 それに我々は元々」

 

「はいはい敵同士敵同士、分かったから私の案の準備を整えなさいよ」

 

 それをエミル側から礼を突っ撥ねる文言を口にすると、シエルも礼はこの女の子を元の時代に送り届けるまで述べないと完全に2人は水と油の様な反応を見せ、ダイズ達を含めて頭を抱え始めていた。

 

「…あの、ダイズ…」

 

「何だ勇者ロマン?」

 

「なんか………この2人案外似た者同士だからこうやって同族嫌悪、みたいな反応になってるのかなぁ…って…」

 

「奇遇だな、俺も不機嫌なシエルが2人に増えた気分だ…」

 

 そんな中ロマンはダイズに対しエミルとシエルが似た者同士故に同族嫌悪をしていると話をするとダイズも不機嫌な状態のシエル…頑固で意固地になり簡単に折れなくなる事を知る為、2人が似ていると肯定していた。

 それを聞いていたアザフィールも幼い頃のシエルもエミルの様な感じであり、彼女の近くに居る所為で地の部分が出ていると思っていた。

 

「ねえロマン君、一体誰が誰と似てるって言ったのかな?」

 

「おいダイズ、貴様一体誰が誰と似てると言った?」

 

 すると2人は似ていると言われた事が不服だったらしく、同時にロマンとダイズに誰が似ていると抗議をすると言う何処から見ても似た者同士な反応を見せ、サラやネイル達は超然としたシエルの地を見てこれがシエルの全体像だと知り不思議と受け入れられる様な感覚になっていた。

 

「兎に角、先ずこの子のロート熱を治してからエミルの案を実行する。

 だからお前達はもう寝ろ、私はこの子の看病をしてる」

 

「あのねぇ…交代で診に来るに決まってるでしょうが」

 

 それから不機嫌が治らないシエルはロート熱の治療薬を待ち、それからエミルの案を実行すると言って全員に寝る様に話した。

 それも自分だけ寝ずの番をする宣言をしながらである。

 それを聞いたエミルは当然の如く交代で診に来ると話し、2人の水と油振りにこれでソーティスと言う共通の敵を倒せるのかと肩を落とすロマン達であった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
迷い子の病気は魔界も地上界も根絶した病気で、更には子供ではあり得ないレベルを持ち魔力量も異常な為に女の子が体調を崩してしまっている事や救う方法が判明。
更にはランパルド、フィロ、リヨンが時間改変現象(タイムパラドックス)で死亡した事になってる等が判明しました。
更にソーティスは着々と助手や別の時間軸で行動を始めました。
そしてこの章の書き方についてはソーティス達の存在の為時間軸がバラバラに書いてる部分がありますがご了承下さいませ。
なお時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を直接脳に刻まれた2人は他の時間操作系魔法まで自動的に使える様になってます。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。
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