転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様こんにちはです、第40話目更新でございます。
いや〜、此処まで長く続いてますがまだまだ話はこれからなのでよろしくお願い致します。
では、本編へどうぞ。


第40話『迷い子、目覚める』

 エミル達が魔族の女の子を救ってから1夜が明けようとしていた頃、最後の交代にエミルとロマンが訪れ、部屋にノックして入って来た。

 

「本当に交代で診に来るとは、ダイズもアザフィールも含めて暇人か?」

 

「あの2人は多分アンタの事も心配してるんじゃないの? 

 あの場で指摘しなかったけど、他人の魔力を吸い上げて自分の物に変換して浪費するって簡単に言うけどそれってコップに水が一杯詰まってる所に更に水を足す行為よ。

 体内魔力は魔法行使をしない限り消費される量は少ないからアンタ、無理してるでしょ?」

 

 シエルは最後に来たエミルとロマンに暇人と非肉を言うが、それを無視してエミルは魔族と言えど地上界の者と変わり無いと言う彼女が女の子の体内魔力を吸い上げている際に言った言葉から彼女が今無理していると指摘する。

 ロマンも馬鹿では無い為同じ様な事を考えていた為エミルの言葉に確信を持ちながらシエルを見ていた。

 

「だから如何した? 

 私の勝手でそうしてるだけだ、お前達には」

 

「関係あるわよ、アンタはソーティス対策の戦力の要なのよ? 

 それが無理して倒れました〜なんてギャグな事になって貰いたく無いのよ」

 

「えーとつまり、僕もエミルも君の事が心配だから必要以上に無理は止めてって事なんだよ、うん」

 

 シエルは関係ないと言う雰囲気で突っ撥ねようとしたがエミルもシエルと言う魔族を『戦力』として見てる為無理は見過ごせなく、ロマンが意訳して心配していると話す。

 何故意訳が必要でロマンなのか、それは今までの会話から2人を会話させるとシエル側は徹底的に無視、エミル側は噛み付くと言った光景が此処まで続いた為仲間内やダイズ達から意訳役が必要とされ、その貧乏くじをロマンが引いた為であった。

 

「ふん、私の心配よりも自分達の心配をしてろ。

 お前達もソーティス討滅には欠かせない『戦力』だからな」

 

「そりゃどうも、私達は十分休んだからもう結構ですよ〜だ。

 それよりアンタの方をね」

 

「あ〜もう2人共少し止まって、寝てるこの子の前なんだから!」

 

 するとシエルも自身の心配をエミル達にされたのが不服だった為お返しとしてエミル達に冷ややかな視線を送り、対するエミルは噛み付くとロマンが2人の間に割って入り、寝込む女の子の前で喧嘩に発展しそうな事態を押さえる。

 すると2人は視線を外し無言になり部屋に重い空気が漂っていた。

 それに堪え兼ねたロマンはシエルに話を掛ける。

 

「…シエル、1日中この子に付きっ切りな上に体内魔力を吸い上げているんだよね? 

 この子みたいなちょっと特殊な子ってこんなに付きっ切りにならないと駄目なの?」

 

「…いや、この子は前例が無い程魔力を秘めて身体やレベルが付いて行ってない。

 普段なら…アザフィールが私にしてくれた様に3時間もあれば済むのに1日中などあり得んと言った感じだな。

 それにロート熱もある、余計に付きっ切りにならなければならない状態にあると言える」

 

 ロマンはこの女の子に付きっ切りになってるシエルにこう言う子にはこれが普通かと尋ねると、シエルは自身の身の上を交えながら踏まえると病気もあり前例が無い状態だと告げてエミルにも予断を許さない物だと分かる様に話した。

 するとエミルはそんな子に自身が提案したこの子の魔力を使った魔法行使は大丈夫なのかと考え始めていた。

 

【コンコンコン、ガチャ】

 

「お待たせしました、ロート熱用の特効薬を持って来ました」

 

「! 

 早いお仕事ありがとうございますお医者様!」

 

 すると部屋に昨晩の医者が部屋に入り、カバンから瓶を出してロート熱用特効薬を見せた。

 まだ日が昇らない内に仕事を済ませた医者にエミルとロマンは頭を下げ、シエルも頷く様に頭を下げていた。

 

「さて少し失礼して…」

 

「ゴホッ、ゴホッ………ん、ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ…」

 

 すると医者は患者である女の子の身体を少し持ち上げ、特効薬たる薬液をゆっくりと飲ませた。

 そうして3人が見守る中薬は全て飲み干され、再び医者が寝かせ始めた。

 

「これで朝日が昇ってから2時間もすればロート熱は完治します。

 しかし、それ以外の症状は私には見当も付かない為如何しようもありませんが…」

 

「其方は私に任せろ、対処法は分かってる」

 

 医者は朝日が昇り2時間経てばロート熱は完治する事を告げるが、流石に医者の目は誤魔化せないらしく他の症状もある事は分かったらしい。

 しかし対処法は分からないと告げるとシエルがそれを知ってると答え、後は魔族の領分だと雰囲気で察しさせる。

 

「分かりました、では患者の今後はお任せします。

 ですが、日が昇って2時間経つまでは安静にさせて下さい」

 

「分かってる、世話になった。

 金は…ふむ、これ位か。

 取り敢えず5万G(ゴールド)払う、釣り要らない」

 

 医者は後の事はシエル達魔族に任せると、魔法紙(マナシート)に代金を書きシエルに渡すと、シエルも魔法袋(マナポーチ)から5万G(ゴールド)を支払う、それも釣り要らずで。

 それを見たエミルとロマンはチラッと代金書を見ると法外な代金を要求してる訳では無く、単にシエルが感謝料込みで支払ってると考察していた。

 そうして代金を受け取った医者はそのまま去って行った。

 

「さて日が昇るまで後30分、更に其処から2時間と念の為の15分経過観察してからエミル、お前が出した案を使わせて貰う。

 その後はこの子にレベルの枷を付けてからこの子を連れてヴァレルニアに向かう。

 理由はアイリス達に聞けば少しは分かる」

 

「あれこれ言わせようとしないわねコイツ………」

 

「あの、其処までツンケンしないでこの子を連れてく理由を教えてくれても…多分世界の修正力関係なんだろうけど…」

 

 それからシエルは再び女の子に付きっ切りになりながら時間管理を話し、計2時間45分後にエミルの案を使うと話した後、その後にする事を話しつつこの子も同伴させる事を告げてからジッと黙り込む。

 それに対しエミルはジト目、ロマンは出来るだけ波風立てない様に理由の説明を求めた。

 但し2人は世界の修正力に関係していると予想は立てており、其処からの答え合わせを求めていたのだ。

 

【コンコンコン、ガチャ】

 

「医者が帰ったので見に来ましたよ。

 それでシエル、この子の容体は如何に?」

 

「日が昇ってから2時間経つまでは安静に、念の為経過として15分様子を見る。

 それからエミルの案を使い、この子の中にある膨大過ぎる体内魔力を見た目相応の魔力量分まで練り上げて魔法を空に放つ。

 その後レベルの枷を付けて体内魔力が適正値を上回らない様にしながら同伴させる」

 

「分かりました、その予定で行きましょう」

 

 そんな中件のアイリスが部屋を訪れ、シエルに女の子の容態を尋ねるとシエルは今後の予定込みで2時間45分は安静にさせると説明した後視線を女の子に戻し、過剰な体内魔力の吸い上げに集中する。

 アイリスもそれを聞き予定はその通りにすると話し納得した様子を見せた。

 

「ねえアイリス、この仏頂面が何も言わないから聞きたいんだけど何でこの子を同伴させなきゃいけないの? 

 世界の修正力関連って予想は出来るんだけど教えてくれないかしら?」

 

「おい其処の魔法使い、誰が仏頂面だ誰が」

 

 エミルは早速シエルに指差しながら仏頂面が説明しないとして女の子の同伴理由を問い質し始める。

 但しその仏頂面発言にシエルは反応しオリハルコンソードに手を掛けよう…としたが、此処は宿屋且つ自分達は居させて貰ってる立場且つ女の子を安静にせねばならない為剣に手を掛けるのを止めて睨むだけにしていた。

 

「はあ、この2人はこの調子なのですね…同伴させなければならない理由はこの子が時の迷い子であり、常に特異点(シンギュラリティ)擬似特異点(セミシンギュラリティ)の近くに居ないと世界の修正力が働き掛けて短ければものの10分、或いは私が知る中では最長3日で消滅の兆候が現れ、そして消滅します」

 

『やっぱり…』

 

 エミルとロマンは呆れ気味なアイリスから同伴させなければならない理由を聞き、自身達の予想通り世界の修正力で消えない様にする為だと聞き口を揃えてやっぱりだと発言しシエルに脳天気では無いとエミルは見せ付けていた。

 無論その態度にシエルは無表情で見る、と言うより睨み付けていたが睨まれた本人は『教えないからだ』と言う態度を見せていた。

 

「これが迷い子のこの子を常に連れて行かなければならない理由です。

 因みにこの目測は今現在の時間では無く『世界がこの子を認識した瞬間』です。

 その時間をリセットするには当然私達がこの子の側に行かなければなりません」

 

「つまり、世界の目を誤魔化す為にもこの子は私達の側に居続けなきゃ駄目な訳ね…」

 

 更にアイリスは今1分1秒と流れている現在の時間では無く世界そのものがこの子を認識してからの時間と言う目測も話し、その時間をリセットするには自分達が側に居なければならないと話し、これをエミルは日記に警告文として残してロマンと2人でこの子は絶対に側に付いていなければならないと思っていた。

 

「更に迷い子を側に置く理由は時空の腕輪にどの時間軸から迷い込んだかを感知させ切る為にあります。

 そうしなければ元居た時代に送れません」

 

「成る程…」

 

 アイリスは付け加えて迷い子を側に置く理由は元居た時代に帰す為だと話し、2人は魔族とは言えまだ幼きこの罪無き子を送り返す為には矢張り自分達が側に居続ける必要があると理解し、女の子を見ていた。

 

「…エミル、この子を送り返そうね」

 

「勿論よ、魔族とは言えただの子供なんだから…」

 

「…ふん、甘過ぎるなお前達は。

 その内寝首を掻かれても知らんぞ?」

 

 ロマンはエミルに改めて女の子を送り返す決意を語ると、彼女もこんな子が訳の分からないまま消える理不尽な結末を避ける為それに頷いていた。

 そしてそれ等を聞いていたシエルは甘過ぎるとエミル達に言うが、見ず知らずの子に必ず兄に会わせると宣言したシエルにも言える事だとエミルは思うが、これ以上拗れるのも不毛な為喉に留めたまま時間経過を待つのだった。

 

 

 

 それから日が昇り全員が部屋に1回様子を見に来てから2時間12分が経過し、部屋に付きっ切りになっていたシエルやそれを見ていたエミル達も部屋に軽めのパン類を持って来て貰い、それを口にしてからも女の子の様子を見続けていた。

 

「すぅ…すぅ…」

 

「薬、凄い効き目だね。

 もうすっかり咳をしなくなって熱も下がってるよ」

 

「魔力を吸い上げてるのもあるが、矢張りロート熱の特効薬を飲ませた事が大きいな。

 これならエミルの案も問題無く出来そうだ」

 

 ロマンは薬の効き目に絶賛し、あれから2時間以上経過してすっかり快復し始めており病気が治らない不安が無くなりエミルと共に胸を撫で下ろしていた。

 更にシエルも特効薬を飲ませた事が大きいと地上界の医者も医学も捨てた物じゃないと内心評価しつつ、エミルの案を使う事も問題無さそうだと思っていた。

 

「…日が昇ってから2時間15分経過、そろそろ行きましょうシエル様」

 

「よし、この子をゆっくり運ぶからお前達邪魔するなよ?」

 

「いやしないわよ、何処の鬼畜外道野郎なのよ私達は?」

 

 それから部屋に食事を運んでから残っていたアザフィールが時間になった事を知らせるとシエルは女の子を抱き抱えて外に出ようとした瞬間、エミル達を見てその邪魔をするなと発言した。

 が、聞いていたエミルも流石に外道では無い為と反論すると全員の脳裏にアギラが浮かぶが直ぐに振り払いながら下へ降りて行く。

 

「あ、その子良くなったんだね! 

 それからシエルに報告、エミルの案を使う為に必要な広場をお父様に言って借りて、住民も家の中に一応避難させたから直ぐ向かおう!」

 

「ほう、それは重畳だな。

 では早速その広場へ向かうぞ」

 

 宿屋の飲食スペースに降りたエミル達にサラ達がそれに気付き、代表でサラが駆け寄りロックにエミルの思い付いた案を使うスペースを確保しつつ野次馬が来ない様にしたと報告すると、シエルは満足気な笑みを浮かべて早速向かい始めた。

 アザフィールもパンが乗ってた皿を受付に運ぶと直ぐに後ろに付いて行き、サラの案内の下木々が開けた広場に辿り着いた。

 

「ふむ、これなら周りの被害を気にせず空に向かって魔法を放てるな…。

 では早速始めるぞ、貴様達少し離れてろ。

 少し派手になるぞ?」

 

 そうして辿り着いた広場はシエルが想定した広場と合致し、周りの被害を気にせず空に魔法を放てるとしながら派手になると話してアザフィールすらも下げて広場の真ん中に女の子を寝かせて左手で右手を掴みながら、自身は上を向き右手を空に掲げた。

 

「さて、一応森に火が付くのは厳禁だから使う魔法は水、そしてこの子の中の体内魔力を一気に適正量にするなら最上級魔法を使うのが妥当だな。

 無論攻撃力を0にしてな。

 さあ行くぞ…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

【バチバチバチバチバチ、ゴボゴボゴボゴボ‼︎】

 

 そうしてシエルは周りの配慮をしながら魔法を選び、女の子の体内魔力を一気に練り上げる為に大水流(タイダルウェイブ)を使用すると宣言すると女の子の魔力が一気にシエルの魔力に変換され始め翳した手の先には巨大な水の塊が出来上がりつつあった。

 

「うわデッカい‼︎

 今のエミルが全力で作ったくらいデッカい‼︎

 あの子の体内魔力ってあんなにあるの⁉︎」

 

「だがこれならあの子も救えそうだなエミル殿………エミル殿?」

 

 サラやアル達はシエルの手により作られた魔力の水の球体の大きさについてエミルの全力で例え、それ程巨大な魔力の塊が出来上がってると全員に知らしめる。

 だが上手く魔法が発動し、撃つ準備も出来つつあったのでネイルはエミルに大丈夫そうだと声を掛けた。

 だが………当のエミルは顔を険しくし、それを観たキャシーやシャラも目を凝らして『視た』瞬間慌てた様子を見せ始めた。

 

「拙い、皆離れて‼︎

 ガムやアル達も離れて、あの魔力の塊をシエルはコントロール出来てないわ‼︎」

 

「な、何だって〜⁉︎

 ………うわ本当なんだな、このままじゃ暴発するんだな〜‼︎」

 

 シャラは全員に離れる様に叫び、特に前で見てるガムやアル達に離れる様に促し始めた。

 その理由をムリアも魔力の流れを視で判断し、あの魔力の塊をシエルでさえコントロールが出来ず暴発する最悪の事態が迫りつつあると叫んでいた。

 

「ぐ、うぅぅ、まさか、これ程の体内魔力が潜在しこの身体に収まってるとは………通りで私が魔力の吸い上げなんかしても、焼け石に水、でしか無かったのか…‼︎」

 

 女の子の魔力を変換しているシエル本人も実際やってみた瞬間彼女すらも把握し切れていなかった体内魔力の底が魔法を使い漸く理解したが、そんな物をこの小さな身体に収まった事自体が正に『前例が無い』に尽きた。

 更に言えば今までの吸い上げも焼け石に水、もっと言えば巨大な湖の水をバケツで掬い上げる様な物だったと判断した。

 

「く、うぅぅ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 シエルはアイリスとの全力の戦いでしか歪ませなかった顔を見せながらレベルの枷を外し、文字通りの全力で魔力を変換、コントロールしようとしていた。

 それに伴い魔力の塊は更に巨大化し始めていた。

 だがその様子にダイズやアザフィールもこれでダメなら被害を最小限且つシエルが生き残る手段…遺憾ながら女の子を見捨てる選択をしようと覚悟し、視線を送り合って確認をしていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、う、ぐぅぅぅぅ‼︎」

 

「な、バカな、レベル800のシエルでもあれをコントロール出来てないのか⁉︎」

 

 それからシエルは当然の選択として全力を振り絞り魔力変換とコントロールをしようと躍起になる。

 が、初めこそ当初よりも更に巨大な水の塊を作り上げてコントロールし切っていた様に見えたが直ぐにシエルは再び苦痛に表情を歪ませ始め、ルルもあの未踏の領域に立つシエルの全力でも駄目なのかと声を上げていた。

 

「…これは、ソーティスへの対抗策を失う訳には行きませんから…リコリス」

 

「…分かってます、アイリス姉様」

 

 すると天使の2人も断腸の思いを表に出しながら、ベルグランドを操るシエルを喪う将来的なリスクを思考しダイズやアザフィールの様に女の子を見捨てる選択を取ろうとして足に力を込め始めた。

 そして…この事態に他の誰にも聞こえない小声で何をするかを示し合わせ真っ先に動き出した2名が現れる。

 

「アイリスやダイズ達、その選択待ったぁぁ‼︎」

 

「くっ、はぁぁ‼︎」

 

 何とエミル、ロマンが真っ先に動き出し、アイリス達も迂闊に近付けば魔力の濁流に巻き込まれ弾かれる所をエミルが先導し魔力の暴威が少ない部分からシエルと女の子に近付き、2人はシエルの右手を自身の片手で握り、もう片方の腕を翳してシエルの魔法コントロールの外部補助を行い始めた。

 

「うっわ、これ、きっつぅ…‼︎」

 

「こんな物を、この子は…そしてシエルは…‼︎」

 

「なっ、貴様等本当の馬鹿か⁉︎

 離れろ、この魔力で貴様等もボロボロになるでは済まない、身体が保たずに死ぬぞ‼︎」

 

 エミルとロマンはいざやって来て魔法の外部補助をした瞬間、その膨大な魔力量に身体が千切れそうになる感覚を覚えながらもシエルの補助を続ける。

 それを見たシエルは2人を本気で馬鹿だと思いながらこのままでは死ぬとハッキリと告げて離れる様に促した。

 しかし、2人は補助を続ける。

 

「くっ、うぅぅ…アンタはね、ソーティスへの切り札その1なのよ‼︎

 こんな所で、この子諸共死ぬなんて許さないから‼︎

 それに…‼︎」

 

「1人で駄目なら、2人! 

 2人で駄目なら、3人で、シエルもこの子も生きる道を作り上げるんだ‼︎」

 

 先ずエミルが前半は打算的にシエルが喪われた際の戦力ダウンは計り知れない為、後半は此処でこの罪無き子と共に死ぬ事を許さない感情的な物で動いた事を話した。

 更にロマンが理想論ではあるがこの3人でシエルも女の子も生きる道を作り出す事を語っていた。

 これを聞きシエルは本格的に2人が馬鹿だと結論付けていた。

 

「ぐっ、エミル、ロマン‼︎」

 

「くぅぅ、さっきよりも圧力が強くてもう近付けない…‼︎」

 

 そんなエミルとロマンを地上界の仲間達が何とか近付こうと1歩を踏み出そうとした。

 が、2人が補助に回った為更に魔力の塊は更に巨大化しその荒れ狂う暴威を強めた為、最早レベルの枷を外したアイリス達しか近付く事が出来ない状況になりサラやネイル達は吹き飛ばされない様にするのでやっとな状態だった。

 

「くっ、シエル…今、どれ位この魔力の塊に変換出来たの…⁉︎」

 

「大方、8割だ‼︎

 後少しで…この子の魔力適正量まで体内魔力を練り上げられる…‼︎」

 

「何だ、後2割ね…‼︎

 だったら、このまま余裕でやってやろうじゃないのよ‼︎」

 

 そうして中心点に居るロマンはシエルに大体の目測を聞くと、これで8割と返事が返って来て後2割でこの子の魔力適正量まで練り上げると話した。

 それを聞いたエミルは残り2割程度なら余裕だと強がり、今にもバラバラになりそうな身体に鞭を打ちながらシエルの補助を更に続けた。

 

「ぐぅ、うぅぅぅぅぅ‼︎」

 

「絶対に、救うんだ、シエルもこの子もッ‼︎」

 

「ぐっ、ぐぅぅぅ、あぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

【ギュゥゥゥゥゥゥン、バチバチバチバチバチバチ‼︎】

 

 エミル、ロマン、シエルはそれぞれ持てる力や技術、更に意地と根性を振り絞り女の子の中の荒れ狂う体内魔力を更に練り上げ、超巨大な水の塊を遂に作り上げた。

 此処でエミル達はこれが暴発しない様にこの塊を整え出し、吹き荒れる魔力の暴風を抑え始める。

 そうして其処には綺麗な、しかし余りに巨大過ぎる…直径1キロを超える水の塊が宙に鎮座していた。

 

「────よし、今だ撃つぞ‼︎」

 

「何時でも良いわよ、シエル‼︎」

 

大水………流(タイダル………ウェイブ)‼︎』

 

【ボォォォォォォォォッ、バシャァァァァァ‼︎

 ザァァァァァァァァァァ‼︎】

 

 シエルは2人にもう撃つと宣言するとエミルは何時でもと答え、ロマンも空を向いていた。

 そうして3人同時に超巨大な水の塊となった大水流(タイダルウェイブ)が放たれ、それが空中で弾け飛びこの日フィールウッドの例年を上回る大雨がロックヴィレッジ周辺で降り注ぎ一応家屋内に避難していた国民達が大騒ぎとなっていた。

 

結界魔法(シールドマジック)V!」

 

 それを見たエミルやキャシー達は直ぐに結界魔法(シールドマジック)Vを張り自分達に大雨が降り注がない様にすると、その雨は互いに前が見えなくなる程の降水量であり王村全体は一気に水浸しになり、中には床下浸水所か床上まで浸水し足首まで水が浸かる家屋も出始めそれが約2分間続いていた。

 

「…降り終わったわね。

 じゃあ結界解除して………うわぁ、何処も水浸し…」

 

「まさか此処まで体内魔力の量が凄まじいとは思わなかった、これは私の落ち度だ。

 それよりこの子だ、後はレベルの枷を填めて………よし、一通りの処置は終了だ…ふう、一苦労したな」

 

 シャラが雨が降り終わったのを確認すると魔法使い組が結界を解除した。

 すると雨の被害を見て周りが引いてる中、シエルはこの魔族の女の子の潜在的な魔力を見切れなかった落ち度だとハッキリと認めていた。

 その間にレベルの枷を填めて彼女は汗を拭きながら尻餅を突き、処置終了を宣言した。

 するとエミルとロマンも仰向けに倒れ始めた。

 

「わっ、エミルにロマン君大丈夫⁉︎」

 

「うぅ、縛られし門(バインドゲート)を使った時みたいに神経がズタズタになるかと思った…誰か私達に回復お願い、ちょっと動けない…」

 

「全くお2人は無理をなさって‼︎

 はい、回復魔法(ライフマジック)IVです‼︎」

 

 エミル達を見たサラ達は2人に駆け寄るとロマンは口も動かせない、エミルは前世の縛られし門(バインドゲート)を使用した際の反動並みの物が来そうだったと口にして動けない為キャシーが無理をした2人に回復魔法(ライフマジック)を使い治癒を開始していた。

 

「ふん、この程度で動けなくなるとは情け無いな」

 

「そう言うシエル様が1番無理をなされてる様に見受けられますが?」

 

「違いない、お前鼻血が出ている事に気付いていないぞ」

 

 その2人を見てシエルは情けないと口にしたが、そのシエルは右手がズタボロになり鼻血が垂れている事に気付かないと言う明らかにエミル達よりボロボロになっている事に気付いていないと言う無理をし過ぎて身体の感覚が麻痺している事を証明していた。

 その為アザフィールとダイズが2人掛かりで回復に努め始めていた。

 

「はぁ、取り敢えず3人が回復してこの子が目を覚ましたら色々聞き取ってからヴァレルニアに向かいますよ。

 ………エミルとロマン、2人の行動が功を奏しましたわ、ありがとう2人共。

 お陰でシエルとこの子の命を天秤にかける事態を避けられました」

 

「は、ははは、僕達は何時も通り無理はせず救える命は救うを貫いただけだよアイリス。

 ただ…今回は予想以上に無理をしちゃった…イタタタ‼︎」

 

 アイリスはこの様子から3人の回復を待つのと女の子が目を覚ますのを待つのを宣言しつつ、最悪シエルと女の子の命を天秤にかけると言う残酷な結果を回避出来た事をエミル達に礼を述べていた。

 すると口が動かせる様になったロマンが無理せず多少無茶を通しても命を救うを行った結果だと話し始めた。

 が、今回は無理の方面が強かった為エミル共々仲間達に耳を引っ張られてしまっていた。

 

「…ふう、回復完了ですよ無理をしたお馬鹿さん2人組さん。

 起き上がってみて下さい」

 

「キャシーちゃん怒ると怖い、今後怒らせない様にしよう…っと、身体の痛みは消えて魔力の使用も問題無し。

 ありがとうシャラさんにキャシーちゃん、ルルにムリアさん」

 

「僕もだ、ありがとう皆」

 

 そして耳を1番強く引っ張ったキャシーがエミル達に起き上がる様に言うとエミルはキャシーが起こると仲間内でロマンの次に怖いと感じつつ、起き上がって火の玉を掌の上で作り握り潰すを2人でやるともう身体も神経も問題無いとして全員に礼を述べていた。

 

「…さて、シエル様も回復が終わりましたぞ。

 起き上がって下さい」

 

「了解だアザフィール、それからダイズ、少し付き合え」

 

 するとシエル側も終わったらしく、アザフィールから起きる様に言われるとシエルは立ち上がった後、剣を引き抜きダイズに付き合えと要求する。

 

「良いだろう…はっ‼︎」

 

【ガンガンガンキンキンキン、ビュッ‼︎】

 

 ダイズもシエルの要求を呑むと拳を作り、女の子から離れた彼女の剣とダイズの拳が何度か打ち合った後互いの首筋に拳と剣が寸止めで添えられ、その後2人は構えを解きシエルは剣を鞘に仕舞った。

 

「うむ、此方も問題は無い」

 

「そして今ので2589勝2596敗7201分けだな」

 

「…何やってんの、あの2人?」

 

「矢張り奴は俺と同じか…」

 

 シエル側も打ち合いが終わり互いに問題無い事を確認し、シエルは何時もの無表情に近い表情に戻りダイズも引き分けと言う結果に少し納得出来てない様子を見せた。

 それ等を見たエミルはツッコミを入れるが、地上界側は水を得た魚の様なリョウ以外誰1人として答えられず、アイリス達はまた怪我したら如何すると頭を抱え、アザフィールは無言で見守るだけだった。

 

「う、ううん…」

 

「‼︎

 ちょっと皆女の子が目を覚ましそうよ、強面って自覚ある人は下がってて!」

 

「そのガキンチョがビビらねぇ様にする為だろ、分かってるわそんな事」

 

 そんな空気の中女の子の意識が浮上し始めた事を察知したエミルは周りに女の子を怖がらせない様に強面な者達は下がる様に叫ぶと真っ先にアルが反応して理由も添えて広場の通路の入り口側まで下がり始めた。

 更にガムやムリアとリョウ、ダイズとアザフィールも強面の自覚がある為下がり結果男性はネイルとロマンしか残らず女性陣中心に女の子を囲まない程度に集まった。

 

「ううん…此処は………?」

 

「気が付いたみたいね、良かった…」

 

「えっ………っ⁉︎

 お姉ちゃん達、誰なの⁉︎

 此処は何処⁉︎

 お兄ちゃん、何処に居るの⁉︎」

 

 そして遂に女の子の意識は完全な覚醒を果たし、エミルが気が付いた事に胸を撫で下ろすと当の女の子は意識がハッキリした時点で見知らぬ者達が自身の周りに居て自身も良く知る場所から見知らぬ場所に居る事にパニック状態になり兄に助けを求める声を上げながら後退りを始める。

 

「待って、私達は貴女がとある街で倒れていた所を見つけて病気の治療をしていたの! 

 だから貴女に害意を加えはしないわ‼︎」

 

「嘘、お兄ちゃんが私を捨てるはずないもん‼︎

 お兄ちゃん助けて‼︎」

 

 パニックになった女の子にサラが事情を簡単に話して治療していたと説明していたが、女の子にはそれが=最愛の兄が自分を見捨てたと感じそれを否定しながら周りを見て兄に助けを求めた。

 

「…ああ、君の兄は君を捨てる訳が無い。

 そんな身形が良い服を与えて此処まで育てた君との間には我々には計り知れない大きな絆があるだろう。

 だが此処は一旦我々の目を見て信じて欲しい、我々は人攫いでも奴隷商人でも無い、君を助けた集団だと」

 

 するとシエルが女の子の目線に立ちながらその言葉を肯定しつつ、彼女とその兄には絆があると強く言い切り且つ害意を齎す存在では無い、一旦は自分達の目を見て信じて欲しいと話した。

 それ等を聞いた女の子は目の前の見た事の無い者達の真剣な眼差しを見て、兄が自分を愛し守ったものに少し似ていると感じ落ち着き始めた。

 

「…お兄ちゃんみたいな真剣な目………じゃあ、此処は何処なの? 

 お兄ちゃんは一体何処に? 

 私のお家は?」

 

「それを説明するには少し長くてややこしい物を話さなきゃいけないの。

 だから先ずはお互い自己紹介しましょう? 

 私はエミル、こっちはロマン君とシエル。

 貴女の名前は?」

 

 女の子はその目から少しだけ信じる気になり、更に当然な質問を始めるとエミルとロマンも前に出てややこしく長い説明になるとして先ず前に出た自身を含む自己紹介から始めてシエル同様女の子の目線に立ちながら彼女が名前を口にするのを待った。

 それから数回、名前を言う事を躊躇う仕草を挟みながら女の子は意を決して自身の名を口にし始めた。

 

「………『ティア』、私の名前は、ティア…」

 

「そう、ティアちゃんだね。

 改めて僕はロマン、君の力に必ずなってあげるからね」

 

「ふう、シエルだ。

 私も君の力になると誓おう、私の連れとエミル達の仲間共々な」

 

 そうして女の子、ティアは漸く名を口にした瞬間ロマンやシエルもエミルからの紹介から改めて名を口にし、この小さな子の力になると誓いを立てる。

 それを聞いていたサラやルル達も、アイリス達やキャシー達も同様であり皆快くティアを迎える。

 そしてその眼差しを見たティアも、兄の様に信じられる存在か否かを見極めようとするのであった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
迷い子の正体がティアであると気付いていた方は多いかも知れません。
はい、この子は非戦闘員ですが今章のキーマン的少女でエミル側とシエル側を繋ぐ子であります。
元来の性格がどんな物かお楽しみ下さいませ。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。
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