転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様お待たせ致しました、第45話目更新でございます。
今回は前回よりの続き、ロマンが後押しされた後のお話になります。
では、本編へどうぞ。


第45話『ロマン、離別する』

 エミル達は軽く朝食を済ませた後、広場でロマンが来るのを待っていたが、少々時間が過ぎて行き彼を待ち続けてから約10分程度が経過した。

 その間にエミル達は文句の1つ言わずも準備運動をしていた。

 全ては昨夜のロマンの言葉を信じているからである。

 

【ザッザッザッザッザッ‼︎】

 

「あ、おはようロマン………君…」

 

 そんなエミル達の前にロマンは走ってやって来た。

 その姿を見たエミル達は元気に迎えようとした………が、ロマンは息を切らしながら、更に大泣きしながらエミル達の前に現れた為、誓いの翼(オースウイングズ)達全員朝に何かあったのかと思いながらも切り込めずに居た。

 

「………何かあったのか、ロマン?」

 

「…父さんと母さん、昨日の話を聞いてた…‼︎

 でも、僕が正しいって思う事をやれって…‼︎」

 

 エミル達がこの様子の為シエルが何があったか問い掛けると、ロマンは朝の両親との会話を息を途切れ途切れに、涙を流しながら俯きつつ話し、エミル達は昨日の話を聴かれながらもケイ達がロマンを見送った親としての覚悟、愛情を感じ取りこの歴史の修正は失敗出来ないと此方も覚悟を改めロマンを見ていた。

 そのロマンは…涙を拭き、しかしまだ流れ落ちながらもエミル達を見ながら決心した表情となっていた。

 

「…じゃあ行くよ、僕が勇者として旅を始めるきっかけになった世界樹………セレスティアの『安寧の世界樹』に‼︎」

 

【ビュン‼︎】

 

 ロマンは全員に向かって転移魔法(ディメンションマジック)を使用し、12歳の時に事件が起きた安寧の世界樹にエミル達を転移させた。

 其処は安寧の名が良く似合う、最北の世界樹とは真逆の森そのものが澄んだ場所となっていた。

 

「此処はレオナお姉様も修行に使った場所…此処でアギラが…」

 

「さてロマン、お前が今回は時空の腕輪でこの土地に起きた改竄点を感知するんだ。

 何せ、お前の両親が生きているとなるとお前が擬似特異点(セミシンギュラリティ)になってなければ今のレベルを得たり、そもそもエミルと出会ってたか怪しくなる歴史の転換点だからな」

 

 エミルは周りを見て、レオナが使ったこの土地で事件が起きたと思い、少し痛ましく思っていた。

 するとシエルがロマンに対し腕輪を構える様に指示を出していた。

 そして言い方はキツいが、もし此処でアギラが起こした事件がなければそもそもエミルと出会いがあったかも怪しいと話し、サラ達も今更ながら気付きこれは大きな時間改変現象(タイムパラドックス)だと思っていた。

 

「勿論だよ…改竄が起きたのは絶対あの時、魔法暦2032年火の月その2の9日、僕の誕生日だ…‼︎」

 

 ロマンはシエルが言った言葉を飲み込み、腕輪を構えながら事前にどの年月に改竄が発生したかを発言した。

 すると腕輪には間違い無く魔法暦2032年の火の月その2の9日と赤い文字がノイズや文字崩れを起こしながら現れ、エミル達も改めて誕生日が親の命日などアギラの悪辣さを理解するに至っていた。

 

「さあ皆行くよ、僕の知る歴史に………正す為に‼︎」

 

「ええ、勿論よロマン君‼︎」

 

【キィィィィィン、カチカチカチカチカチカチ、ビュゥゥゥゥゥゥゥン‼︎】

 

 そしてロマンの合図で全員が腕輪を抱え、ティアは今回はロマンと手を繋ぎながら時空の狭間に跳ぶ。

 更にティアはロマンの目が並々ならぬ決意に満たされた事を察し、其処から何か声を掛けようと思っても何も声を掛けられなかった。

 

【カチカチカチカチ、カチャ、ビュゥゥゥゥン‼︎】

 

 そしてヴァレルニアの様に時計の針が12で止まった瞬間全員で3年前の安寧の世界樹に辿り着いた。

 それから全員で少し隠れていると全員が12歳の頃のロマンがケイと剣の稽古をしている場面を目撃する。

 

「父さん、母さん…」

 

「さてアギラ、あの屑野朗は何処に居やがる…‼︎」

 

 ロマンが感傷に浸り、しかし直ぐに決意を前面に出して剣を引き抜くと全員でアギラを探し始めた。

 すると、過去のロマン達を挟んで自分達の反対側の丘にアギラが悠々と転移し、ロマン達を見ながら何かを口にしていた。

 

「あの悪魔、何を言っている?」

 

「えっと読唇術で多分だけど、『目障りな勇者の血筋よ、此処で惨たらしく死ね』じゃないかな………うん、ムカっとするね!」

 

 リョウはアギラが何を話しているのかと少し気にすると、サラがその眼と読唇術から悪意しか無い言葉を吐いていると察し、今にも矢で射ろうとしてしまい掛けてた。

 

「おい、それより改竄点を探すぞ。

 こんな単純な地形だ、何かあれば」

 

【カチッ‼︎】

 

 だがシエルはサラの弓を押さえ、改竄点を探す事に全員の労力を割き始めた。

 シエルの言う通り世界樹と言う単純な地形から何かあれば直ぐに見つかる………そう彼女が口にしようとした瞬間時間停止魔法(タイムストップ)が発動し、対面側のアギラの心臓の部位に剣が突き刺さり、更に頭の魔血晶(デモンズクリスタル)も後ろから砕かれ、首を刎ねられる事態が発生した。

 

「ひっ⁉︎」

 

「なっ、アイツはヴァイス‼︎

 それと………あの女魔族は誰だ⁉︎」

 

「兎に角時間停止魔法(タイムストップ)は継続させて貰う‼︎」

 

 そのアギラ殺害を実行した犯人は何とヴァイスと、見慣れぬ女魔族であり、それにティアは怯え、ルルは驚いていたがシエルが解除され掛かった時間停止魔法(タイムストップ)を上書きで継続させ、アイリスがティアも連れて全員を対面側の丘に転移し2人の前に8人が立ちはだかった。

 

「来やがったな女魔法使いエミル‼︎

 ヴァレルニアの借りは返してやるぜ‼︎」

 

「それから初めまして、かな? 

 ボクの名はナイア、よろしく頼むよ」

 

 するとヴァイスは剣に付いた過去のアギラの血を拭うとエミルに剣を向け、借りを返すと叫び今にも飛び掛かろうとしていた。

 が、それを女魔族ナイアが前に立ち押さえるとよろしくとフレンドリーに挨拶をしていた。

 

「ナイア…確か780年前に現魔王とアザフィールに処刑された大罪の魔族‼︎」

 

「私も聞いた事がある、虐殺から破滅確定の『お遊び』と称した悪辣な行為を行った魔族、アギラなんかが可愛く見える程の恐るべき魔族だったとな‼︎」

 

「何ですって⁉︎」

 

 するとナイアの事をアイリスとシエルがアギラを超える大罪の魔族だと称し、それを聞いたエミル達は身構え、ナイアを必要以上に警戒していた。

 これも全てアギラを超える悪辣と聞いたためである。

 

「おやおや、ボクはまだ何もしてないのに凄い嫌われようだ。

 まあ過去で何かやっても刺激が足りないから現代で色々やりたいのにソーティスがまだその時じゃないって止めるからさ〜、ヴァイスを使ってちょっとアギラを殺すしか出来ないんだよね〜」

 

 対するナイアはエミル達からの嫌われ振りに苦笑し、しかし地震は現代で事件を起こしたいと意訳で話していた。

 が、ソーティスに止められているらしくヴァイスを使いアギラを殺す程度しか出来ないと嘆く真似をしていた。

 

「巫山戯るな、アギラをこの時点で殺せばミスリルゴーレムが現れずケイ達が生き残る改竄が発生するだろう‼︎

 そして貴様………アギラを殺したと言う事は、私にあそこの2人を殺す様に仕向けてる、違うかこの愉快犯‼︎」

 

「…ピンポンピンポ〜ン‼︎

 正解だよシエル‼︎

 いやぁ、アギラを殺せば後は君達が彼等を殺すしか改竄を直せないよね? 

 ボクはそれでどんな反応をするか見たいからこの過去の三流を殺したんだよね〜!」

 

 だがシエルやサラ、エミル等知恵が回る者はアギラがこの時点で死ぬと改竄を直しに来た自分達でケイとテニアを殺さなければならなくなると指摘すると、ナイアは愉快犯らしくそれでエミルやロマン達がどんな反応をするか見たいと言って宙に浮いていたアギラの首を何処かに投げて嘲笑っていた。

 

「何て悪辣な…私達に人殺しをさせたい為にもう特異点(シンギュラリティ)化したアギラの過去を…未来に何ら影響が無い物を敢えて殺すなんて…‼︎」

 

「この愉快犯め、アンタには手加減なんかせずこの手で‼︎」

 

 アイリスはナイアの悪辣さに辟易し、エミルも杖を構えてティアを庇いながらナイアにターゲットを絞り始めていた。

 だが、ヴァイスはこれを無視されたと感じ取り癇癪を起こし始めていた。

 

「エミルてめぇ‼︎

 てめぇは俺の獲物だ、余所見すんじゃねえ‼︎」

 

「エミル、ティア‼︎」

 

 癇癪を起こしたヴァイスは怒りのままエミルに突撃すると、ロマンとシエルが止めに入りその剣と大きな図体を何とか止めていた。

 それを見たエミルはヴァイスも邪魔だと感じ取り始めていた。

 

「アハハ、さあ楽しい遊戯の始まりだよぉ‼︎

 君達も存分に踊ってね‼︎」

 

 そうしてナイアが遊戯の始まりだと宣言し、エミル達に躍る様に要求しながら自身も魔法を使いエミル達を攻撃し始めた。

 エミルは早速全員に身体強化(ボディバフ)IVと時間加速魔法(タイムアクセル)を掛け、身体能力とスピードを上げる。

 更にエミル達への攻撃を見たアイリスがルルと共にナイアの対応に移り、激しい魔法戦が開始された。

 

「ほらほら、闇氷束(ブラックフローズン)だよ!」

 

「余り調子に乗らない事です、雷光破(サンダーバースト)‼︎」

 

【ドォォォン、ガシャガシャン‼︎】

 

 アイリスはナイアの闇氷束(ブラックフローズン)を相殺しようと雷光破(サンダーバースト)の雷光で黒き氷を砕こうとした。

 だが若干、ナイアの方が威力が上回った為か黒き氷がアイリスの側まで迫る。

 

「アイリス、結界魔法(シールドマジック)V‼︎」

 

 其処にルルが結界魔法(シールドマジック)を使用し、黒の氷からアイリスを守ると彼女が相殺し切った分の残った攻撃だった為ルルでも防御可能だった。

 そして黒の氷を結界と共にルルが砕くと、目線で1人が駄目なら2人と会話し、アイリスも頷くと2人はオリハルコンダガーと光の矛を構えてナイアに接近戦を始めた。

 

「おっと、うわ、ひゃあ危ない! 

 ボクは根っからの魔法使いタイプだから絶技は門外なんだけどなぁ、爆震剣‼︎」

 

「いやそれは杖でしょうが、嵐瀑剣‼︎」

 

 ナイアは2人の攻撃を避けながら魔法使いタイプだと口にしながら、杖で爆震剣を発動させた為ルルも嵐瀑剣を発動させ火と土、水と風の複合属性絶技が衝突した。

 

【キィィィィィン‼︎】

 

 その時、ナイアの杖から明らかに鳴ってはならない金属音が響き、ルルは杖に視線を送ると、杖の一部が剥がれ中から仕込み刀が現れそれがルルのオリハルコンダガーと衝突していたのだ。

 

「ふぅぅぅぅ、はぁ‼︎」

 

【ガァァン‼︎】

 

「ほら押し負けた、だからボクは魔法使いタイプで」

 

「そんな物信用なりませんよ、雷光槍‼︎」

 

「もう、氷黒剣‼︎」

 

【キィィィィィン‼︎】

 

 鑑定眼(アナライズ)でレベルが830もあるナイアがルルに押し負けたのを絶技が不得意だと、魔法使いタイプだと叫んでいたがアイリスは一切信用せず雷光槍で矛に白き雷光を纏わせ突撃すると、ナイアも氷黒剣で黒き氷を纏わせた仕込み刀で応戦する。

 すると先程のルルと同様アイリスの威力の高い絶技が相殺された。

 その結果から、ルルの時は手加減していた事が証明された。

 

「手加減…舐めてくれるわね…‼︎」

 

「ほらほらムキにならないで、これは遊戯なんだからさ‼︎」

 

 ルルは手加減された事にムキになり、ダガーを構え首筋を狙い始めるとナイアはあくまで遊戯と主張し、仕込み刀で応戦しながら急所狙いを全て捌いていた。

 其処にアイリスも追加し、2人で攻撃していた…そんな時にリョウが刀でナイアの横から一閃し、彼女の顔に傷が出来上がった。

 

「2人でダメなら3人だが…不要だったか?」

 

「ふっ、絶妙なタイミングでしたよリョウ‼︎」

 

「…傷…ボクの顔に傷………あーあ、これは遊戯だって言ってるのに、何で分からないかなぁ‼︎」

 

 リョウは2人に絶好のタイミングで援護された為、2人が親指を立てているとナイアは顔に傷が出来た事で不機嫌になり、遊戯から『殺戮』に切り替えて3人に襲い掛かり、計4本の武器に1本の仕込み刀で応戦し、明らかにさっきと動きが違うと3人に思わせながらも何とか応戦をする。

 

「魔法使いぃぃぃぃ、俺と戦えぇ‼︎」

 

「行かせる訳無ぇだろうがアホンダラァ‼︎」

 

「エミルやサラの所には行かせないよ‼︎」

 

「ほら、お前達の怖い怖い魔剣が首を狙ってるぞ、思う存分避けろよ‼︎」

 

 対するヴァイスは頭に血が上っており、エミルと戦う様に叫ぶがアル、ロマン、シエルの3名で止められてしまい、更にシエルには魔力を放出しながらのベルグランドの斬撃が飛び、それはヴァイスは避けながら3人に拮抗し戦況は3対1が2つ出来上がっていた所だった。

 

「………よし、ぶっつけ本番行ってみるか………サラ、ナイアをヴァイスの側まで誘導して‼︎」

 

「エミル? 

 …うん、分かったよ‼︎

 ほらほらナイアさん、彼方の方にご案内ですよ‼︎」

 

【ビュンビュンビュンビュンビュンビュン‼︎】

 

 この状況を見てエミルは決心してサラにナイアをヴァイスの側にまで誘導させる様に指示を飛ばす。

 サラもそれを聞き頷き、キレてるナイアに執拗に矢を放ち、ナイアはそれを避けてるとベルグランドの斬撃を避けてるヴァイスと背合わせになり、これを狙ったエミルはナイアとヴァイスと一直線に並ぶ様にティアを伴いながら移動して『魔法』を放つ用意をした。

 

「皆、射線上から離れて‼︎

 さて、時を弄ぶ者達、受けなさい‼︎」

 

 エミルは全員に『魔法』の射線上から退避する様に指示を出すと、全員がエミルの指示でバラバラに避けると、もう巻き込まれないと感じたエミルはこの2人に問答無用で『魔法』を放った。

 それは一筋の白き『光』であり、それが一直線に2人の敵対者に向かって行った。

 それを見たナイアは一目で『これはヤバい』と感じ回避態勢を取った。

 

「ああん、今更光属性単体の魔法なんざ効かねぇんだよ魔法使い‼︎

 暗黒破ァ‼︎」

 

「バカ、避けっ…‼︎」

 

 だがヴァイスはその『光』を光属性魔法と思い、暗黒破を使い相殺しようとした。

 ナイアは直ぐに避けろと言おうとしたが間に合わず、その『光』は暗黒破を飲み込み、棒立ちのヴァイスに一直線に向かって行った。

 

「は、はっ‼︎

 そっちの威力が強かっただけで後は防御出来るんだよ、結界魔法(シールドマジック)IV‼︎」

 

「だから避け…うわっ⁉︎」

 

【ズガァァァァン‼︎】

 

 ヴァイスは頭に血が上っている為、暗黒破を『相殺』されたと思い込み、結界魔法(シールドマジック)で残った威力を防御しようとしていた。

 だがナイアは本能的に何か『ヤバい』と感じ取った為ヴァイスに避ける様に叫ぼうとした………が、それをいつの間にか空中から接近し、零距離でベルグランドの真の魔力を放つシエルに阻まれ、ナイアはこれを避けるので一杯一杯であった。

 

【ピキピキ、パキン‼︎】

 

「…はっ?」

 

【バァァァァァァァァァッ、シュゥゥゥゥゥゥ…‼︎】

 

 一方ヴァイスは防御出来る、そんな自信があり全力の結界を張っていた。

 だが、その『光』は結界すら飲み込む様に、否、飲み込みヴァイスの右手から胸元、更にその上を『光』が包んで行った。

 そしてそれが消えた瞬間ヴァイスは右腕の前腕部全てと胸元から上が光に包まれていった部分から『消え去り』、血も噴き出す事無くヴァイスはそのまま倒れ死亡した。

 

「だから避けろって言ったんだよあのおバカ…‼︎」

 

「さあ次はアンタの番よ‼︎」

 

「絶界魔剣…‼︎」

 

 ナイアは死んだヴァイスを見ながら、エミルの放った『光』を避ける様に指示したのに無視した彼をハッキリとバカだと言い放ちながら汗を拭いていた。

 自身も当たれば只では済まなかった為である。

 するとエミルは先程の『光』をまた杖の先から見せ、更にシエルがベルグランドの力を解放していた。

 これは所謂詰みであった。

 

「………はは、ボクは誰かが踠く遊戯は好きだけど、自分が明らかに詰んだ遊戯の方は苦手かな…‼︎

 と言う訳でさようなら皆様、また次の遊戯をお楽しみに‼︎」

 

【ブゥン、カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

 ナイアはこの状況を見て自身の趣向を語りながら時間跳躍魔法(タイムジャンプ)で逃亡する。

 それを見たエミル達は武器の構えを解き、しかし時間停止魔法(タイムストップ)は解除せずにエミルに駆け寄ると、全員に熟練度元素(レベルポイント)が付加され、エミル達は一気にレベル750に、アイリスとシエルは其処までレベルは上がらず820となった。

 

「す、凄いよエミル、自分よりレベルが上のヴァイスを斃しちゃった‼︎」

 

「エミル、あの魔法は何なの? 

 何だか…『怖い』感じがしたよ…」

 

 サラは純粋にエミルがレベル785のヴァイスを斃した事を喜んでいた。

 その一方でティアはあの魔法を『怖い』と話し、両者で意見が食い違いエミルはこれが正しいと感じ、ティアの頭を撫でていた。

 

「あの魔法はね、時間操作系魔法に属性が存在しないことに着目してね。

 そんな物があるなら『全属性を融合させた無属性』も創り上げられるんじゃって思って、結果はあの通り相殺も防御も許さない魔法が出来上がったわ」

 

「全属性を、融合⁉︎

 相反する属性すら全て混ぜ込んで、それで魔法を創った⁉︎

 前代未聞ですよ、そんな魔法…‼︎」

 

 エミルは先程の魔法の種明かしをし、時間操作系魔法に属性が存在しない事に着目したエミルは『8個全ての属性を融合させ無属性を創り上げた』と話した。

 アイリスは無論創世期からそんな物は聞いた事が無い為驚愕し、更に相反する属性すら融合させた事も偉業であり、エミルは改めて魔法の天才だと全員が感じていた。

 

「でもこれぶっつけ本番だったから下手したら腕が消滅してたかもね。

 …あ、名前は勿論『消滅魔法(ディストラクション)』ね」

 

「ぶっつけ本番って…そんなテストもしてない魔法を使うなんて、エミル無茶が過ぎるよ‼︎」

 

 しかしエミルはこの魔法、消滅魔法(ディストラクション)はぶっつけ本番で使った事を明かし、更に下手すれば腕が消滅していたとまでさらりと言った為、サラも流石に今回は無茶が過ぎている為怒っていた。

 だがエミルは少し悪びれた後直ぐに首と胴体が離れたアギラの死体に駆け寄り、ロマンが過去に話した状況を再現するには最早自分達がやるしか無いと考えを移していた。

 

「…ねえシエル、ミスリル鉱石はこの場所にあるわよね?」

 

「…ええ、過去のアギラがこんな状態だから私がやるわ。

 貴方達、少し離れて…ロマン?」

 

 エミルはこの土地にミスリル鉱石があるかと尋ねると、シエルは透視(クリアアイ)を使いあると断じる。

 そして過去のアギラが殺害された為自分でやるしか無いと考え、丘に座り込み魔物を創成する術式を展開しようとした………だが、丘からロマンが離れずに膝を突きながら下を覗いていた。

 まるで詫びる様な姿勢で。

 

「…シエル、お願い、やって………父さん達の歴史を、『元に戻して』あげて…‼︎」

 

「ロマン…分かった、お前の願い、聞き届けよう」

 

 ロマンはシエルに両親の歴史を元に戻す…つまりこの場で死なせる様に願いながら堪えた涙を流し始めた。

 シエルもこれ以上ロマンを苦しめる真似をさせぬ様に時間停止魔法(タイムストップ)を解除後、魔物創成術を使いミスリル鉱石に魔素を集中させ、ミスリルゴーレムを創り上げた。

 

「ミ、ミスリルゴーレム⁉︎

 何でこの場所に魔物がっ…‼︎」

 

「ロマン、逃げなさい‼︎」

 

「父さぁん、母さぁん‼︎」

 

 そうして眼前の丘下にミスリルゴーレムが現れ、ケイとテニアがロマンを庇いながら戦い始め、過去のロマンは泣き続けたまま腰が抜けて逃げられず両親に向かって叫んでいた。

 それから直ぐに雨が降り始め、エミル達もこの光景を目に焼き付ける為に丘の先に立ちケイ達が剣や魔法を駆使して何とかミスリルゴーレムに傷を付けるまでに至った。

 

「よし、後すこ」

 

【ドガァッ‼︎】

 

「っ、ゴフッ…‼︎」

 

【ドン、ゴロゴロゴロ、カラァン、バギッ‼︎】

 

 ケイはミスリルゴーレムの核がある部位にヒビが入った事で油断したのか、ミスリルゴーレムの剛腕をモロに受けてしまい吹き飛ばされ、持っていた剣が手から離れ、ゴーレムに踏まれて砕かれると同時に背中に携えていた鞘に収まった剣がロマンの前まで飛んで来ていた。

 

「あ、あなたぁぁぁ‼︎」

 

【ドガァッ‼︎】

 

「…コヒュッ………」

 

【バサッ、ゴロゴロゴロ‼︎】

 

 更にケイが吹き飛ばされた事に気を取られたテニアはミスリルゴーレムの接近に気付かず、腹に打撃をそのまま叩き込まれまるで蛙が潰れたかの様な声で過去のロマンの前まで吹き飛ばされ、口から血が垂れながらその目に光が映っていなかった。

 つまり…テニアは今の1撃で死亡したのだった。

 

「と、父さん、母さん………あ、あぁぁぁぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

【ガシッ、シャキンッ、ガキンガキンガキンガキン‼︎】

 

 過去のロマンは母が殺された、父が動かなくなった、その事実で脳が満たされ、そして目の前には父が大事に携えていた剣が転がっていた。

 その為過去ロマンは剣を鞘から引き抜き、ヒビ割れた箇所に何度も攻撃を開始した。

 エミル達はあの剣に見覚えがあった、それはアルが打って譲り、そして形見となったミスリルソードであった。

 

「…ごめんなさい、父さん母さん、ごめんなさい………‼︎」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

【ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン、ピキピキパキィッ、ズシャッ‼︎】

 

 ロマンはこの場で死んだ父と母に詫び続けながらこのゴーレムと過去の自身の死闘を目に焼き付け、5分か10分、或いは1分かも知れない。

 そんな曖昧な時間の中でヒビ割れた箇所を何度も何度も刃毀れしても攻撃を続け、そして遂にゴーレムの核が露出した瞬間過去ロマンは剣を突き刺し、ミスリルゴーレムの核を潰した。

 

【ガラガラガラ、ガラァ‼︎】

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…くっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 こうして漸くミスリルゴーレムを倒した過去ロマンだったが、両親を救えなかった事実に無力感に苛まれ虚しい雄叫びを上げるしか無かった。

 そして現在のロマンもその光景に涙を流し、両親の2度目の死を体験し心を抉られる様な感覚に陥っていた。

 

「…これでロマン、貴方の歴史の転換点は守られました。

 帰りましょう、我々の時代に。

 シエル、汚れ役ご苦労様でした………」

 

「気にするな、私が魔族で過去のアギラの代わりに魔物を創成出来る、それだけの話だ」

 

 アイリスは過去のロマンの両親が確実に死んでいる事を遠めながら確認し、シエルにも汚れ役を率先して引き受けた事に頭を下げていた。

 だがシエルはアギラの代わりをしただけと話し、それ以上は何も言わなかった。

 

「(…あ………そう、よね、昨日あれだけ騒ぎ合えたんだから、シエル貴女は…)」

 

 だがエミルは此処で1つ気付いた事があった。

 それは一瞬シエルが後ろめたそうに目を下に逸らした事だった。

 エミルは今までシエルを『超然的な敵』だと思っていたが、昨日の言葉の殴り合いや今の目を逸らした事で漸くシエルの『地の部分』を理解した。

 それは、口だけは強く保っているがロマンに後ろめたく思う…つまりは彼に対して詫びていると。

 

「シエル…」

 

「…大丈夫だティア、問題はない。

 さあロマン帰るぞ、我々の時代に」

 

 今まで魔族と戦い続け、目が曇ったエミルと違い純真なティアにはシエルも無理しているとその目に映り、心配をしていたがシエルは笑みを…今のエミルの目には作り笑いにしか映らないもので大丈夫だと発言し、ロマンに帰る事を促した。

 それを聞いたロマンは雨と涙に濡れながらティアの手を掴み、腕輪を掲げ始めた。

 

「…何処が大丈夫なのよ、アンタは…」

 

「私は魔族の将だ、ならばどんな物を抱えようが平然としなければならない。

 それが私だ」

 

 エミルも手を掲げ始めると、シエルに対し皮肉を口にすると彼女は自身の立場を口にしながら常に平然としなければならないと話され、この部分はノブレスオブリージュで滅多に弱みを見せないアルクを思い起こさせ、エミルは本当に漸くシエルと言う魔族の性格を、自分達は案外似た者同士だったと本当の意味で理解し始めていたのだった。

 

【キィィィィィン、カチカチカチカチカチカチ、ビュゥゥゥゥゥゥゥン‼︎】

 

「…父さん、母さん…」

 

 そうして時空の腕輪が時空の狭間にエミルとロマン達を跳ばし、ロマンが俯きながら濡れていた服が時空の狭間に水滴ごと流され、まるで何も無かった様に乾き始めていた。

 アル達もこの結末に気分が落ち込み俯きまともにロマンの顔が見られずにいた。

 

『………気にするな、ロマン!』

 

『貴方は、貴方が正しいと思った事をしただけよ…』

 

『………えっ⁉︎』

 

 するとロマンの耳にケイとテニアの声が響き、その声は他の皆にも聞こえたらしく顔を上げて驚いた表情を見せていた。

 

【カチカチカチカチ、カチャ、ビュゥゥゥゥン‼︎】

 

 そしてその声が響いた直後に現代の安寧の世界樹の原っぱにロマン達は降り立ち、あの声について誰かが聞こうとしても聞けない、そんな状況の中ティアの手を握りながら左腕を胸に付けたロマンは空を見上げ始めていた。

 

「………父さん、母さん…く、うぅぅあぁぁぁ………‼︎」

 

【ビュオォォォォォ!】

 

「あ………暖かい、温もりの風…これ、ロマンの両親の…!」

 

 そしてあの声は幻聴なんかでは無い、キチンとした両親の別れの言葉だったのだと思ったロマンはただただ只管泣き続け重い空気を作り出していた。

 その時季節外れの暖かい風がエミルやロマン達を包み、草花が空に舞い上がっていきながらからエミル達はこの風がケイとテニアの想いの具現だと感じ、ロマンは暖かな風に身を包まれながら涙を流し続けるのだった。

 

 

 

 一方その頃、別の時間軸に逃げたナイアはエミルの最後に見せた魔法やベルグランドの厄介さを噛み締めながら他の皆がこの時間軸に帰って来るのを待っていた。

 

「あーやだやだ、あんな魔法使い聞いてないし。

 ボクも危うく死ぬところだったじゃないか…全く、アザフィールの弟子のお嬢ちゃん並に厄介じゃないか魔法使いエミル、そしてその仲間達」

 

 更にソーティスからエミルと言う魔法使いの厄介さを聞いてはいたがあんなのだとは思っていなかった為愚痴りながら床を蹴り、次あった時はあの魔法の対策をしなければならないとすらかんがえていた。

 更にエミルとシエルだけで無く他の者達も要警戒と魔法紙(マナシート)に書きながらテーブルの上に置いた。

 

「…でも本当におめでたいよね、君達はまだ何も『気付く事すら出来ていない』んだから…ふふふふふふ、あははははは!」

 

 だが、そんなエミル達の姿を思い出しながらまだ何も気付いていないと何かを指しながら話し、そしてテーブル席に座りながら邪悪な意志が込められた笑い声を上げ続けていた。

 一体エミル達が何に気付いていないのか? 

 また時空を乱す者達は何を知っているのか? 

 それは、この時点で知る者はナイアやソーティス達位であった…。




此処までの閲覧ありがとうございました。
ナイアが仕掛けた遊戯とはロマン達にケイ、テニアの生存した歪んだ現代を見せつつ過去でアギラを始末し、ロマン達自身の手でケイ達を殺させると言う悪辣な物でした。
そしてロマンやエミル達はその遊戯を完遂する形で歴史修正を行いました。
因みに最後の方に聞こえたケイ達の別れの言葉は幻聴か現実かは内緒とさせて頂きます。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。
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