転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様こんにちはです、大変お待たせしました第46話目更新でございます。
今回は少し時を遡りネイル達の視点で物語が進みます。
では、本編へどうぞ。


第46話『正義の鉄剣達、調査する』

 時は巻き戻りネイル達正義の鉄剣(ソードオブユースティティア)がエミル達誓いの翼(オースウイングズ)と別れた後、アザフィールとダイズの監視によりアギラは何も出来ない様にされつつ、彼がリストアップした事件の被害者宅を訪れては線を引く作業の繰り返しで行っていた。

 

「ふう、此処も変化は無しだったな。

 …だが変化があれば、その者を死に戻さねばならなくなる。

 エミル殿達は気付いているのだろうか…」

 

「多分…エミル様なら、誰にも言わず独りでやり遂げようと…」

 

 それからミスリラント本国に跳んだネイルが再び線を引くと、ネイルはこの作業の先にある可能性、もしもリストにある者が生きていた場合再び歴史通りに死ぬ様にしなければならないと気付いており、それを予めガム達にも説明していたがネイルは寧ろエミル達の方が心配になっていた。

 それをキャシーはエミルは独りでやろうとすると話し、ネイルもエミルなら確かにと思っていた。

 

「ふう、それが地上界の者の美点であり弱さだ。

 何でも独りで出来ると思っている内は半人前だ、例えそれが仲間を結果的に傷付ける物に繋がる事象の解決であろうとな」

 

「耳が痛い限りなんだな〜」

 

「だがダイズの言う通りだ、もしもエミルがそうするなら袋小路に当たるだろう。

 それを如何にするか、それが彼女の今の課題だろう」

 

 それを聞いたダイズは地上界の美点と弱さを兼ねたその考えを師父アザフィールの教えである『独りで何でも出来ると思う内は半人前』を語り、アザフィール自身もエミルが袋小路に突き当たる事を予想し、それを如何するかが彼女の課題だと語る。

 それを聞いたネイル達も自分達の正義は独りでは成せないと考え、横にいる仲間達と共に正義を貫こうと改めて頷き合っていた。

 

「…何でもよろしいけど、何故私は手枷を付けられたままなのか⁉︎

 私はソーティスの被害者、魔王様の忠実な僕ですぞ⁉︎

 なのにこの扱いは」

 

「黙れ愚者、貴様を自由にしたら何を起こすか分からない上に特異点(シンギュラリティ)なんだ、今死なれたらソーティス思う壺なんだよ! 

 だから貴様は何も言わず枷に繋がれたままキリキリ歩け‼︎

 ったく、口を開けば被害者面、これなら口も塞いだ方が良いかもしれんな‼︎」

 

 そんな中手枷を付けられたまま変身魔法(メタモルフォーゼ)を使用しているアギラは自身は被害者なのだと発言し扱いに対して不満を漏らすと、ダイズが理由を懇切丁寧に話し、更に口を塞ぐ事も検討し始めていた。

 それ等を聞いていたネイル達もアギラが被害者発言をするのは門違い、悪逆の限りを尽くした者である故に快い表情を見せずに睨む様に見ていた。

 

「良かったなアギラ、今貴様の首を刎ねずに済む理由があってな…」

 

「う、うぐぐ………わ、分かりましたよ、私は本来の歴史では敗者、ならば勝者の弁を聴きますよ…‼︎」

 

『(嘘だ)』

 

 アザフィールも大剣の柄に手を掛けながら威圧し、この場で殺されない事を幸運に思う様に話すと、アギラは観念して勝者の弁を聴くと発言する…が、これを直ぐに全員に嘘と見抜かれた為、ネイル達は警戒心を最大限にし、背中から襲って来ても良い様にするのであった。

 

 

 

 一方何処かの時間軸。

 そこにはナイアが席に座りながら他を待っており地上界の菓子を食べながらソーティス達の帰還を待ち侘びていた。

 

【カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

「ソーティス様と共に戻りました………ナイア、ヴァイスは何処に?」

 

「ああ〜済まないねぇ、私は何度か避けろとか命令したんだけど聞かなくて………死んじゃった♪」

 

 そこにソーティス、グレイ、ネロが時間跳躍で現れると、ネロはヴァイスの姿が見えない事にナイアに何処かと尋ねると、ナイアは済まないと口にしながら巫山戯た態度を見せながら死んだと口にした。

 

【ドガガラガラァ‼︎】

 

「貴様…私の弟をよくも…‼︎」

 

「いやだから想定外だったんだって。

 何あのエミルって魔法使い、頭可笑しいの?」

 

 するとネロは怒りに任せテーブルを蹴飛ばしナイアの首根っこを掴み持ち上げ、その明らかに分かる憤怒に身を焦がした状態になっていた。

 しかしそれでもナイアは想定外だったと話し、エミルが想像を上回る厄介者だったのだと軽く口を開いていた。

 

「止めろネロ! 

 それでナイア、エミルが想定外とは如何言う事だ? 

 私はあの女は切れ者であり前世はライラと言う初代勇者一行の魔法使いだったと伝えたが?」

 

「いやそれがね、私の全く知らない未知の攻撃魔法を創って使ったと思ったらあ、コレやべ当たったら死ぬって危険信号がビンビンに立ってね〜。

 そうして避けず結界で防ごうとしたヴァイスは当たった右腕と頭が文字通り『消滅』して、ね」

 

 ソーティスはそんなネロの手を掴み上げ、切れ者と伝えた筈が何があったかをナイアに問うと彼女は未知の攻撃魔法でヴァイスを殺し、ナイア自身も当たれば死ぬと確信して避けたと話した。

 更に特徴として当たった箇所から『消滅』したと話すと、ソーティスは思い当たる節があるのか眉を顰め始めた。

 

「…まさか…いや、俺でも不可能な事を…」

 

「ソーティス様、ヴァイスは何故死んだかお教え下さい! 

 このままでは私ネロは憤怒で身を焦がしてしまいます‼︎」

 

「…恐らく全ての魔法属性を均一に融合させ、それを放ったのだろう。

 時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を会得した俺でも不可能な事をエミルは実現した、その結果がこれだと言う訳だ」

 

 ネロは怒りに身を震わせながらソーティスに問い掛けると、そのソーティスも自身には不可能だった全魔法属性の融合し放つ魔法を創り上げた、結果ヴァイスが死んだと話しネロはそれ等を聞きエミルに対し怒りを燃やし、ナイアは道理で危険だと理解したのだった。

 

「はん、役立たずが1人減っただけでは無いか。

 何をそんなに悔しがる、代わりなどソーティスが幾らでも生み出せるだろうに」

 

「何だと…グレイ貴様ッ‼︎」

 

「止めろネロ、グレイも口を慎め! 

 ヴァイスは俺の助手だったのだ、それを喪い何もかも手痛いのだ!」

 

 其処にグレイが全く空気を読まずヴァイスを役立たず呼ばわりし、ネロに火を付け掛けた所でソーティスが2人の間に割って入り掌底を2人の腹の目の前で止め、この渦中を無理矢理鎮めた。

 するとネロは俯きながら時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を発動させようとしていた。

 

「待てネロ、何処へ行く?」

 

「『ニグラ』の迎え、そして魔法使いエミルが私の大事なものを奪ったなら私も奴から仲間を奪ってやります…。

 アギラの特異点(シンギュラリティ)化が終わり、残る研究は後2つ。

 もう私が居らずともソーティス様ならばそれ等を完遂し、時の果てを見る事が出来ましょう…では、これにてお別れです」

 

【ブゥン、カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

 ソーティスはネロに何処に行くかと語気を強めて話させると、彼は最後の仲間ニグラの迎えとエミルから仲間を奪うと伝え、更には残る研究議題は2つでありそれ等を完遂し主が時の果てを見る事が出来ると信じ、ネロは憤怒に身を焦がせながらエミル達が居る時間軸に跳んで行った。

 ソーティスに今生の別れとも取れる言葉を残しながら。

 

「…ふう、出来ればネロ達と見たかったよ。

 140年もの間研究に付き合い、私が復活して共に私が来る場所を予測して待っていたのだからな…」

 

 ソーティスは自身の願いとしてネロ兄弟と共に時の果てを見たかったと発言し、長い間研究を空論と呼ばずに付き合った事への思い入れがあるのだった。

 それをナイアは残念と思い、グレイは酒に溺れ如何でも良いと感じると三者三様であった。

 

 

 

 一方現代、ミスリラント本国を周りながらリストに線を付け、遂にミスリラントでのアギラによる暗殺事件調査は終わりを迎えるのだった。

 

「うむ、ミスリラントは変化が無い様ですな」

 

「ええ、アギラ事件の死者は死者のままでした。

 ならヒノモトやグランヴァニアを調査しましょう、ダイズ達も早く来なさい」

 

 ネイルはゴッフェニアを最後に線を引きアギラの起こした事件ではミスリラントに変化は無いとネイル達は安心し、リコリスは他の担当の国を回る様にダイズ達にも促し歩き始めさせた………が、ダイズだけは何故か動かすゴッフェニアの街並を見ていた。

 

「ダイズ、何故来ないのです?」

 

「可笑しい…ゴッフェニアは確かに豊かな街だが………こんなに『職人の数が少なかった』か? 

 ………何かある、間違い無く。

 リコリス、ネイル達今直ぐ職人王に謁見するぞ‼︎」

 

「え、ダイズ様〜⁉︎」

 

 するとダイズはミスリラント本国で政治側担当の侵略をしていた甲斐があり、ミスリラント本国の職人の数を頭の中に叩き込んでいた。

 その為彼にのみ、或いはアルが此処に居れば勘付いた事、『職人の数が少ない』に気付きダイズは早速ゴッフに謁見しようと言う話になり職人王の宮殿に足を進めて行ってしまった。

 

「全く…だがダイズの話が本当なら何かアプローチが違う可能性がある、ネイルよ奴を追おう」

 

「確かに此度の事件は怪しきはとことん突き詰めねばなりませんからな。

 アザフィール殿、皆、行こう‼︎」

 

「…仕方無いですね」

 

 アザフィールもダイズが宮殿に向かい始めた事でエミル達と違うアプローチがソーティスに為されているのではと言う疑問が浮かび上がり、ネイル達も怪しく思えば突き詰める事とし、アザフィールの後に付いて行くのだった。

 それを見ていたリコリスも仕方無いと思いつつ、アギラの手枷に付けた縄を引っ張りながら元魔族の将も含めて宮殿内へと勅令書を見せつけながら入って行く。

 

「おうおうおう、早速ワシ等が作った勅令書を使いながら入って来やがったなオイ‼︎」

 

「急な訪問に際し申し訳無く思います。

 ですが、魔族の将ダイズ殿が何かに気付いたらしくその話を聞こうと思い馳せ参じました」

 

 ゴッフは早速勅令書を使って宮殿に入ったネイル達をアルの師匠と分かる口調で出迎えると、ネイルはダイスが何かに気が付いたと話すと彼は髭を弄りながらダイズを見つめていた。

 

「職人王ゴッフ殿、1つ聞きたい事がある。

 この王都に居る鍛治職人の数を教えてくれ」

 

「あん? 

 ……137だ、勿論馬鹿弟子を入れてな」

 

「…矢張り少ない」

 

 ダイズはミスリラント本国王都ゴッフェニアに居る鍛治職人の数を尋ねると、ゴッフはアルを入れて137と答えると、ダイズはハッキリと少ないと口にし、全員を見た。

 

「少ないとは?」

 

「そのままだ、ゴッフェニアには『本来485の鍛治職人が居り毎日職人勝負』をしていたんだ。

 なのにこの街に入ってから職人勝負の喧騒が少なかった…」

 

 ネイル達は少ないと言う言葉に反応しその意味を問うと、ダイズはゴッフェニアには485もの鍛治職人が居たと話し、更に毎日職人勝負をしていたとも説明していた。

 

「…そういや、やけに職人の声が少なかった!」

 

「確かに、1年前のゴッフェニアと比べても明らかに違っていた‼︎」

 

 それを聞きネイル達は思い出してみると1年前のゴッフェニアの喧騒がやけに少ないと今になり気付き、リコリスは地上界の仕事事情に疎かった為分からずに居た。

 

「ふむ…ではゴッフ殿、この国の職人事情は一体如何なっているか、説明して貰いたい」

 

 するとダイズは何処からか眼鏡と手帳とペンを取り出し、ゴッフに国の職人事情を尋ね始めた。

 しかも変身魔法(メタモルフォーゼ)を使い、政治家ザイドの時の格好になりながらである。

 

「う、うむぅ…職人事情か。

 確かにお前の言う様にゴッフェニアが栄華に満ちていた時はあったんだ。

 だが、50年前に突然出来た街にセレンも此処も、何処も彼処も職人を独占されちまったんだ」

 

「その街の名は?」

 

「忘れられねぇぜ、あの憎らしい都市…『シェブグラニス』をな‼︎」

 

 ゴッフはダイズに尋ねられた事に答え、50年前に突然出来たシェブグラニスと言う都市に何処も彼処も職人を独占され、憎らしげに椅子を叩きその日が忘れられない様だった。

 

「では、その都市の場所は?」

 

「元『マグネウム』だった場所だよ‼︎

 だが彼処は独立都市を謳いやがって納税だけはしてこっちの干渉を一切合切受けやがらねぇアホ臭え都市だぜ‼︎」

 

 ダイズはゴッフの言葉に耳を傾けながらシェブグラニスが元マグネウムだった事、更に現在は税は納めても干渉は受け付けない独立都市を謳い国の王の干渉すら跳ね除けると言う有様だと話された。

 

「それではまるで国ではありませんか⁉︎

 そんな都市、明らかに存在その物が可笑しいですぞゴッフ様‼︎」

 

「ワシもそう思ってるわい‼︎

 だが…いざ使節団を送っても全員何故か腑抜けて帰って来ちまうんだよ‼︎」

 

 ネイルはシェブグラニスがまるで現在の5国体制になる前にあったとされる大陸内に幾つも偏在した小国を思い起こし、ゴッフに対しまるで国だと指摘したが、ゴッフ側も送った使節団が役立たないと嘆きながら頭を抱えていた。

 

「ふむ…ならば改竄箇所は明らかにマグネウムと言う都市その物だな。

 なら改竄を直しに行くぞ、こんな寂れたミスリラントは見るに堪え兼ねる」

 

「待ちな、行くなら彼処の領主夫人に気を付けやがれ‼︎

 使節団は全員奴に腑抜けさせられた‼︎」

 

「…分かりました、気を付けましょう」

 

 ダイズは手帳に結論としてマグネウムが改竄箇所であるとし、ペンや眼鏡と共に懐に仕舞うと其処に向かい始めようとした。

 するとゴッフが警告として領主夫人に気を付けろと話し、全員その夫人に何かあると知り、全員で礼をしてから宮殿を後にして行く(因みにアギラは床に這い蹲れていた)。

 

「さて、マグネウム近くに転移するぞ。

 準備は良いな?」

 

「ああ…それとダイズさんや、何故そんなにミスリラントに肩入れするんだい? 

 何か思い入れがあるの?」

 

 宮殿から出た後ダイズは変身魔法(メタモルフォーゼ)を解き、マグネウム近郊に転移すると話し、仕切り始めていた。

 その様子にガムがミスリラントに思い入れがあるのかと問い掛けると、ダイズは笑みを浮かべながら話し始めた。

 

「俺は元来の狂戦士(バトルマニア)だ、だから勝負に対して拘りを持ってるのさ。

 そう、勝負とは何方も誇りを賭けて己が魂をぶつけ合う事だと………だからシエルとくだらない勝負でも本気で勝ちに行く。

 それと似てるのさ、この国とヒノモトの決闘はな」

 

 ダイズは自らの矜持に基づき勝負に魂を賭けてぶつかり合うと話し、それがミスリラントの職人勝負やヒノモトの決闘が似ている為、この2国が特に好きな様子を見せていた。

 そのダイズだからこそ、ミスリラント侵略担当になったのだと逆説的に証明出来てしまっていた。

 するとネイル達は頷き始め、円陣を組み武器を掲げ始めた。

 

『我等正義の鉄剣(ソードオブユースティティア)、その意思決定によりミスリラントの改竄修復を執り行わんとすべし! 

 全てはか弱き人々の自由と生命、そして魔族の将ダイズ殿の誇りを守らんとする正義の意志である事を我等は此処に誓う‼︎』

 

「お前達…ふっ、シエルが甘いと言う訳だ。

 だが、嫌いじゃないぞその魂の誇りは」

 

 ネイル達は誓いの儀でダイズの誇りすら守る事を此処で誓い合わせ、リコリスやダイズがそれぞれ本来なら敵なのにと感じつつ、ダイズはその正義の誇りに共感を覚え嫌いじゃないと話し、ネイルに向かって拳を向けるとネイルも拳を出し、互いに軽く拳を突き合わせ魔界と地上界の括りを超えた魂の繋がりを得ていた。

 

「ふ、私が見ぬ間に地上界もダイズも大きくなったな…」

 

「あーもうむず痒い‼︎

 そう言う友情展開は良いから早く目的を果たしに行けよ‼︎

 時空の乱れによる時間制限があるのを忘れてるのかお前等ぁ‼︎」

 

 アザフィールはその光景を見てぶつかり合うべき敵同士が繋がり合う事に弟子の成長や地上界の者達の心の豊かさを感じ取り笑みを零していた…のだが、此処でアギラが自身の嫌う展開その2が起きた事に背中を掻き立てたくても手枷で出来ない為足をジタバタさせながら早く目的地に行けと騒ぎ始めていた。

 

「全く空気を読まないバカだ…では行くぞネイル、アザフィール殿、リコリス‼︎」

 

『応‼︎』

 

【ビュン‼︎】

 

 そうして少しアギラに気分を害されながらもネイル、ダイズ達は転移魔法(ディメンションマジック)を使い目的地近郊まで一気に転移する。

 ダイズは寂れたミスリラントを元に戻す為、ネイル達も同じく、そしてダイズの誇りも守る為に。

 正義を掲げる者と狂戦士はこうして手を組み目的の為に全力を注ぐのであった。

 

 

 

「うふふ…」

 

【ブゥン、カチカチカチ、ビュン‼︎】

 

 しかしそれを歓迎しない者も当然居た。

 その者は時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を使用しダイズ達の後を追うのであった。

 

 

 

【ビュン‼︎】

 

「こ、これは…⁉︎」

 

 ネイル達は転移して元マグネウム、現シェブグラニス近郊に辿り着くとその街並に息を呑んだ。

 その街は上層部と下層部に分かれており、上層はゴッフェニアに負けぬ程の豊かさを持ち、しかし下層はとても都市と呼べないスラム街となっており、その歪さが手に取る様に分かる物だった。

 

「こんな…こんな貧富を明白にし過ぎた歪な都市は存在して良い訳が無い‼︎

 ソーティスか、それともネロとヴァイスか、こんな街を作り上げた者は‼︎」

 

「確かに、彼処にはミスリラントの誇りと魂は無い…あるのは欲望と死骸、夢を掴み弱者を搾取する者、夢に敗れ強者に搾取される者………そんなミスリラントではあり得ない縮図で出来た物だ、アレは!」

 

 ネイルはこの歪な都市はあってはならないと断じ、作り上げた者に怒りを露わにしていた。

 それはダイズも同様でありミスリラントの誇りと魂が一切無いとして拳を握り、此処にアルが居れば特攻してしまっていただろう。

 

「皆さん、怒りは皆同じですから先ずは領主と領主夫人について聞きましょう‼︎

 こう言う時には情報は役立つんです‼︎」

 

「流石キャシーちゃんね、じゃあ街に潜入しましょうか!」

 

 其処にキャシーが情報収集を優先するべきだと話し、その冷静さに全員頷き始め、再び転移してスラム街の人が多い場所に転移し、それと無く人盛りに混じると適当な人物に話しかけ始めた。

 

「失礼其処のドワーフ殿、少し話は良いか?」

 

「…あぁ?」

 

 ネイルは見てくれから話し易そうなドワーフを見つけ、話を掛け始めた。

 そのドワーフは見てくれはスラム街の住人らしく貧相な格好はしてるが、まだ瞳に熱があると感じ取り、夢を諦めていないと感じながら声を発し、耳を傾けた。

 

「我々はこの街に来たばかりで不慣れなのだが、この街の領主殿とその夫人殿について話して貰いたい」

 

「この街の領主…元マグネウム領主の『ゴルドル』だよ、あの欲丸出しのコンチクショウめ………。

 夫人は…悪いが名前は分からないんだ。

 と言うかこの下層部に居る連中全員知らないんじゃないだろうか? 

 知りたいなら何とか上層部に上がる事を目指しな、けど殆ど無理だろうけどさ…」

 

 ダイズが手帳を取り出すとマグネウムの項目を見て其処の冴えないドワーフのゴルドルが領主と知り此処は自然と考えた。

 しかし、夫人の名前が下層部は分からないと聴き何か不穏な気配をネイル達は感じ取り、上層部の方を見上げながら顔を険しくしていた。

 

「…分かった、では何とか上層部へ向かう方法を探してみるよ。

 情報ありがとう、50G(ゴールド)だが受け取って欲しい」

 

「こ、こんなに良いんかい⁉︎

 あんた等、神か…?」

 

 それからネイルは情報料として50G(ゴールド)を渡し、礼を述べると貧相なドワーフはネイル達を神と呼び、讃えていた。

 そんな様子を他の住民達も血眼でネイル達を見ていた…が、アザフィールが眼光で威圧すると全員散り散りになりその場でネイル達に近付く者は居なくなった。

 

「では次は上層部を目指すぞ。

 キャシー、シャラ、頼む」

 

『はい‼︎』

 

【ビュン‼︎】

 

 それからネイルはキャシーとシャラに転移を任せると、全員で上層部の人混みの中に転移し、先程の様に人混みに紛れて情報収集を行おうとしていた。

 しかし下層部はあの有り様では仕方無いとは言え、上層部も職人勝負がされておらずミスリラント本国らしからぬ光景だった。

 ネイル達がその異様さを可笑しいと感じながら周りを見ると、先程のドワーフの様な目をした身形の良い職人が居り、ネイルはその者にターゲットを絞り話し掛けた。

 

「失礼其処のドワーフの方、少しよろしいか?」

 

「あ、何だい何か買うのか?」

 

「いや、此処の領主夫人殿について話を伺いたいのだが、知っている事は無いかね?」

 

 ネイルは変に取り繕う事無くストレートに領主夫人についてを問い掛け、自分達はその件の領主夫人側には居ない事を示し、何か情報が出ないかと身構えていた。

 するとドワーフの男は周りを見て、それから顔を寄せるジェスチャーをしてネイルとダイズが顔を近付けた。

 

「あ、アンタ等ゴッフ様の使節団か何かなのかい?」

 

「まぁ、そんな者だと考えて欲しい。

 それで、夫人殿の情報…名前や普段の素行について聞きたいのだが、良いかな?」

 

 ドワーフの男は如何やらネイル達をゴッフが寄越した者だと解釈した為、話を合わせる為にほんの少しだけ方便を使う。

 するとドワーフの男は慌てた様子を見せ、ネイル達に話を更に始めた。

 

「だ、だったら早く帰った方が良い‼︎

 此処の領主、て言うか夫人はやべえ奴なんだよ‼︎

 もし目を付けられたゴルドルみたいに骨の髄まで搾り尽くされちまうぞ‼︎」

 

「何、ゴルドルが領主では無いのか?」

 

「んなもん表向きだよ、ゴルドルはもうとっくに夫人に搾り尽くされておっ死んだって話だぜ‼︎」

 

 するとドワーフの男は夫人はやばいと話し始め、ゴルドルの様に絞り尽くされると話し、ネイルやダイズ達はその話を聞き驚愕し、更に詳しく聞けばゴルドルは既に死んでいる可能性があるとまで話され、ガムやムリアは固唾を呑みながら話を聞き続けた。

 

「良いか、此処の領主夫人…ゴルドルから領主の座を奪った女は本当は魔族だって話だぜ‼︎

 不思議な魔法で誰でも彼でも魅了して虜にしちまうんだ‼︎

 俺はそいつが堂々と出て来てこの上層部の中央の塔に男も女も連れてかれるのを見たんだ‼︎

 だからアンタ等も早く逃げた方が良い、長生きしたいならその方が良い‼︎」

 

 身形の良い職人ドワーフは領主夫人が魔族であると小声だが鬼気迫る様に話し、更に魔法で誰でも虜にすると口にしていた。

 更に証言として上層部の中央の塔に男も女も連れて行かれたと主張しダイズが手帳にそれ等を全て書き記して懐に仕舞った。

 それを確認してネイルが最後に一言話し掛け始めた。

 

「ありがとう、そんな危険な状態の中こんなに話してくれて感謝する。

 その礼と言っては何だが………我々が必ずこの街を解放し、貴方達を自由にしよう」

 

「な、アンタ等正気かよ⁉︎

 俺は散々警告したかんな、死んでも後悔するなよ⁉︎」

 

「大丈夫、何故なら…正義は必ず勝つからだ!」

 

 ネイルは情報提供の礼として街の解放………つまり、このドワーフに及び付かないが歴史改竄を直すと宣言した。

 対するドワーフは警告を散々してこれだった為、後で後悔するなよと言い放つ。

 だがネイルは正義は必ず勝つと自信満々にドワーフに振り返りながら言うと人混みの中を歩きながら中央の塔を見据えた。

 

「それでダイズ殿にアザフィール殿、魔界には誰彼も魅了する魔法が存在するのか?」

 

「心当たりならある、しかしそれは私が780年前に斬首した魔族が持った究極の魅了魔法だった…。

 もしもソーティスが時間跳躍魔法(タイムジャンプ)を刻み特異点(シンギュラリティ)にさせたのなら、心を強く持て。

 さもなくば彼の者に心を支配されるだろう」

 

 それからネイルが時空の腕輪を使う前に最終確認として誰でも掛かる魅了魔法が存在したかを話すと、アザフィールが斬首した魔族が持つ魔法の中にあったと話した。

 そして心を強く持たなければ支配されると話しながら時空の腕輪を構えた。

 其処には赤い字で魔法暦1985年土の月その2の16日と字崩れしながら表示されていた。

 

「俺も聞いた事がある、何人もの魔族の男と婚姻を結び女とも堕落した関係を結び、シエルの様な生まれながらの名ありの者を数多く当時の魔界に誕生させたが、育てる事無く更なる標的を求め、ただ只管愛されて居たかったとされる魔界1の大淫婦………シエルの家系を辿ると辿り着いてしまう女、大罪の魔族の片割れニグラ。

 その毒牙に掛かった者は数知れず、だったな」

 

 ダイズも淡々と語り始め、何人もの魔族の男が毒牙に掛かり、シエルやティアの様な子を産み落としては育てず、ただ自分だけが愛されたかったとする女魔族。

 シエルの家系図にも載ってしまっている者、ニグラの話をしていた。

 更にダイズがこの話を語る目はまるで親の仇を見据えている様な目であった。

 

「じゃあ、そのニグラって魔族の女性がこの街を作り上げたかも知れないんですね?」

 

「その真実を知るならば時空の腕輪を掲げる事です。

 さあ行きましょう、彼の時間軸へ‼︎」

 

【バッ、キィィィィィン、カチカチカチカチカチカチ、ビュゥゥゥゥゥゥゥン‼︎】

 

 最後にキャシーがこの歪な街を作り上げた者がニグラかも知れないと話すと、リコリスが真実を確かめるべく腕輪を掲げる様に指示を出した。

 そうしてアギラを伴いながら全員が時空の狭間へと跳ぶ。

 この先にあるミスリラントが変貌した真実を知る為に。

 

「…もしもニグラが相手ならば再び斬首してくれよう。

 それこそが奴を1度殺し、シエルを育て上げた我が使命也」

 

「俺もニグラが相手なら手加減など絶対にしない。

 必ずこの手であの淫婦を砕いてくれる………シエルの名誉を傷付けるあの女だけはな…‼︎」

 

 その狭間の中でアザフィールはニグラが相手ならばシエルを育て、更に本人を殺した者として斬首すると語り、ダイズもまた右手に血が滲み、時空の狭間にその青い血が流れ消える程強く握りしめていた。

 この2人の意気込み…否、殺意はアギラやムリアが震え上がる程凄まじく、そして恐ろしい物であった。

 

「(何故ニグラと言う魔族が相手ならアザフィール殿やダイズ殿は殺意を此処まで込める? 

 シエルの血筋を穢した大罪人だからか? 

 それとも、他に理由があるのか…? 

 …いや、幾ら考えても分からぬのだ。

 ならば変わらない1つの事実をみなければ…)」

 

 これ等を見ていたネイルは何故アザフィールやダイズが此処まで殺意を滲ませているのかが理解出来ず、可能性の1つとしてシエルの血筋を、名誉を穢す存在なのだからなのかと考えたが、一つの事実を見るまで幾ら考えても堂々巡りになると途中で思考を止める事にした。

 矢張りどんな可能性よりも一つの事実に勝るものは無いのだから。

 

「(…恐らくニグラが相手として、彼女を見ればネイル達も理解する筈。

 何故2人が此処まで殺意を抱くかを)」

 

 そして、その答えを知る天使リコリスはネイル達がニグラを目撃すれば何故2人が共通の敵と共に戦う者が怯える殺意を抱くかを嫌でも知ってしまうだろうと考え、ならばその嫌悪が続かぬ様にこの手でニグラを処断しよう、そう考えながら時の針が逆回りする様子を見ていた。

 

【カチッ‼︎】

 

 それから時の針は12を指し、いよいよ過去に跳び終える。

 そう感じ取った戦う者達は剣を、槍を、斧を、杖を、拳を振るうイメージを立てていた。

 そして、ネイル達は光に包まれるのだった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
次なる敵はニグラと言う大罪の魔族です。
彼女が如何なる者か、またどんな性格等はまた次回に。
そして此方側は余り仲間内の衝突が無い予定です。
それだけ溝がある人が居ないと言うのが原因です。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。
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