転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

49 / 49
皆様お久し振りでございます、第49話目を更新致しました。
ストックを少しずつ書いていますので失踪はしてません。
完結までの道筋は既に思い描いてますのでそれまで長いお付き合いお願い致します。
では、本編へどうぞ。


第49話『誓いの翼達、遊戯を破る』

 サラが泣き始めてから10分が経過し、未だ彼女は泣いているがそれでも彼女は立ち上がり、涙が止まらずとも前を見ていた。

 その悲壮感に満ちた姿にシエルは改めてサラを見て問い掛け始めた。

 

「改めて問うぞサラ、行けるか?」

 

「………うん、行こう…お父様達の下に…‼︎」

 

 サラは大丈夫と言う言葉は一切使わず、ただ行こうとしか言わずに居た。

 それはもう決意を固めたと言う意思表示であり、それ以上の問答は無用と彼女側から自身に言い聞かせた証だった。

 

「じゃあ行く前にロマン君、ルル、アイリス。

 貴方達に『看破魔法(ディテクション)II』を授けるわ。

 シエルの眼は魂の色が見えるから必要無いわよね?」

 

「ああ、だがもしも使う時が来るなら私からも変身魔法(メタモルフォーゼ)IIと少し精度は落ちるが他人にも掛けられる様に改良されたIIIを授ける。

 何方も看破魔法(ディテクション)IIで看破されるが、これを我々の内で広めて置けば何かに役立つかもしれん。

 さあ、術式を解読しろ」

 

 それからロックヴィレッジに向かう前にエミルからは看破魔法(ディテクション)IIを、シエルには何かに使えるとして変身魔法(メタモルフォーゼ)IIと他人に掛けられる様になったIIIを術式を見せてそれぞれに授けると、ティアも変身魔法(メタモルフォーゼ)IIだけは使える様になり、早速使い人間の女の子の姿に化けた。

 

「ティアちゃんやるわね〜。

 ………さて、じゃあ出発よ‼︎」

 

『OK‼︎』

 

「ではロックヴィレッジの宮殿内へ‼︎」

 

【ビュン‼︎】

 

 最後にエミルがティアを褒めながら出発の合図を取るとその場に居た殆どが返事し、アイリスとシエルが今回転移役となりロックヴィレッジに宮殿内へと跳び始める。

 そうしてすっかり転移先に選ばれた宮殿の玉座前に全員が跳ぶとロックやリリアナは歓迎状態となりながら全員を出迎える。

 賢王達の懐は広いのだ。

 

「サラ、エミル殿下、ロマン君ようこそ王村へ………ロマン君? 

 君は少し大人になったかい、何処か雰囲気が変わった気がするよ」

 

「…歴史改竄で『死んだ両親が生存している』と変えられた物を『直しました』。

 そして、親離れをしようって心に決めてきました」

 

『なっ…⁉︎』

 

 ロック達はサラやエミル達を迎え入れた所、ロマンの雰囲気が変わった事をロックが気が付き何かあったかを尋ねると、ロマンは両親の歴史を改竄された事を話し、更にそれを直し親離れをすると簡略的に伝える。

 それを聞いたロック達は考えていた遂に人の死を生に変える歴史改竄をロマンの両親でやられたと聞き、改竄者達の悪辣さに拳を作り始めるのだった。

 

「失礼ながらロック様怒りをお鎮めに、この件は既に『終わりました』。

 ですが私達はある確認の為に此処へ来たのです。

 ロック様………『アレスター先生は元気ですか』?」

 

「エミル殿下、アレスターなら『自室に居てそろそろ来る』と近衛兵が………まさか、『そうなのか』⁉︎

 アレスターが………‼︎」

 

 エミルは怒りに震わせるロックを諌めると、次にアレスターは元気かと尋ねる。

 するとロックはアレスターは此方に向かって来ていると話した…その瞬間サラは目を伏せ、エミルは矢張りかと言った様子を見せた。

 その反応にロック、リリアナはまさかと思い始め、特にロックが青褪めて行った。

 

「失礼します、アレスター只今馳せ参じました。

 …『お久し振り』ですねサラ姉さん、エミル様、アイリス様。

 私は『覚えてます』よ」

 

「アレスター先生………」

 

 その時背後からアレスターが現れ礼をしながらエミル達の側まで歩いて行く。

 その間にアレスターは久し振り、『覚えている』と言う単語を出し、歴史改竄の認識があると言った様子を見せていた。

 それに気付いたエミル達は頭を下げ、アイリスとシエルは時間操作系魔法会得者故に時間改変現象(タイムパラドックス)に完全では無いが耐性があると理解していた。

 

「アレスター…一つ問いたい…お前が生きているのは…間違っているのか?」

 

「はい、陛下。

 私が生きている歴史は間違っていますよ」

 

「…そんな…」

 

 ロックは恐る恐るアレスターに自身が生きてる事は間違いか否かを問い質すと、アレスターは苦笑しながら間違いだとハッキリと告白し、ロックの気力を削いでしまった。

 だが修正すれば嫌でも分かる為、今予め教えるのが良いとアレスターは考えていた。

 

「アレスター………それじゃあ、何処から違うのか、分かるの?」

 

「はい、私達が赴いた世界樹でエンシェントドラゴンに襲われましたが、『とある方に救われて生き延びました』。

 そのとある方とは…其処の近衛兵さん、此方に来て下さい」

 

「えっ、何かありましたかアレスター様?」

 

 サラはならばと何処が違うかと問い掛けると、如何やらアレスターは何者かに救われたらしく、その為生き延びたと話した。

 更にその何者かを答える際に、宮殿内に居た近衛兵に声掛けをして呼び掛ける。

 するとその近衛兵は近付いて来る………するとエミルは見覚えが無い為試しに看破魔法(ディテクション)IIを使用し、その近衛兵を視た。

 

「‼︎」

 

極氷結(コキュートス)‼︎』

 

 その瞬間エミルとアレスターはノータイムで息を合わせ、窓や出入り口を極氷結(コキュートス)の氷で塞ぐ。

 それを見てロマン達は驚いていた、その刹那シエルがベルグランドを引き抜きその近衛兵に向かって魔力を込めて斬り付けるが、それを近衛兵は爆転をして避けていた。

 

「甘い、闇氷束(ブラックフローズン)‼︎」

 

「って、だから人間が何でボクの作った変身魔法(メタモルフォーゼ)を看破出来るの」

 

「遅い」

 

【ザンッ、ブシュゥゥゥゥ、ゴロッ‼︎】

 

 だがエミルはその近衛兵に対し闇氷束(ブラックフローズン)を使用し、手足を凍らせて動けなくする。

 その近衛兵…化ていたナイアはとうとう観念して変身を解きながら何故バレたのか分かっていない様子を見せていたが、シエルに斬首され鮮血が床に流れ落ちた後斬られた首が床に落ち、ナイアは青い炎に包まれた。

 

「…可笑しい、改竄者達の1人のナイアは倒されたのにレベルアップしない、如何言う事なの?」

 

「奴の特異体質、『実体のある分身魔法が使える』所為だな。

 奴はその実体のある分身を使い様々な悪辣を働いた。

 オマケに本体と分身は全て互いの情報共有が出来る。

 其処に特異点(シンギュラリティ)のあらゆる時間軸に跳べるが加われば…ふっ、厄介だな」

 

 だが、本来なら此処で熟練度元素(レベルポイント)が発生するのに何も無い為エミルは疑問符を浮かべていた所、シエルがナイアの特異体質の実体のある分身魔法を使えると言う物をエミル達に語った。

 その性質に特異点(シンギュラリティ)のあらゆる時間軸に跳べるが加われば、どの時間軸でも情報共有出来る為シエルは厄介と発言した。

 

「なら此方のカードを余り切らずに相手を追い詰めましょうか。

 幸い何で変身魔法(メタモルフォーゼ)を看破されたか知らないみたいだし恐らく行ける………そう言えば、あいつがこの魔法を?」

 

「はい、彼女の特異体質と彼女が創ったこの魔法でナイアは『千の顔を持つ実体無き魔女』と呼ばれ、現魔王とアザフィールに捕らえられ殺されるまでに様々な『死の遊戯』を繰り返してました。

 捕らえられた理由も悪辣な遊戯を繰り返し、それを無数の分身共々アザフィールに突破された為であります」

 

 それを聞いたエミルはならばとカードを切らない様にしながら戦うと話しつつ、アイリスからナイアの二つ名を聞きそのままだと感じ、最期もアザフィールに遊戯を突破されて終わったと聞き、彼が魔界の英雄と呼ばれてる理由を悟りながらアレスターを見ていた。

 

「良く合わせられましたとお考えですねエミル様。

 当然です、私はエミル様の教師であの近衛兵は『正しい記憶』に存在しない者でしたから、この者が天使化した際に与えられた知識にあった魔女ナイアだと決め打ちし先ずは逃れられない環境を作ったのですっと」

 

【パチン、パキパキン‼︎】

 

 アレスターはノータイムでエミルに合わせられた理由を話し始め、様々な観点から見てあの近衛兵こそがナイアだと気付き決め打ちをしたと話し、更に指を鳴らして氷を砕き魔法の天才の所以を此処で見る事になりアイリスも改めて感心していた。

 

「(………アレスターさん、さっきからサラと会話してない…)」

 

「サラ、如何して家族なのに会話しないの! 

 これが最後になるんだよ、だったら弟さんと何か話してよ‼︎」

 

 しかし………ロマンとティア、更にエミルは此処である事に気が付いた。

 サラとアレスター、姉弟の2人が全く会話していないのだ。

 それをティアが2人を交互に見ながら何か話そうと促していた。

 だが…サラとアレスター、2人は似た笑顔を見せ、サラが漸く口を開いた。

 

「ごめんねティアちゃん、何か話さないとって思ったけど…いざ出会うと何も話す事が無くなっちゃった。

 多分泣いたお陰で決心がついたんだと思うんだ」

 

「つまりお互い語るべき事はもう無いんですよ。

 …敢えて言うなら、後は任せました位なんです」

 

 サラとアレスターは互いに語るべき言葉が無いと話し、アレスターがティアの頭を撫でながらサラの方を向くと最後の一言に使うべき後は任せたを言ってしまい、サラも一筋の涙を流しながらサムズアップし、エミルに近付いた。

 

「…さあ行こっか、アレスターの最期の場所に」

 

「サラ…分かったわ、なら私は何も言わない。

 アレスター先生、お世話になりました!」

 

「はい、行ってらっしゃいませ、皆様」

 

【ビュン‼︎】

 

 サラはティアを抱き寄せてエミルにアレスターが死した場所に行く様に促すと、これ以上は留まっても意味が無いと悟りアレスターに世話になった礼をするとセレスティアの『最西の世界樹』に全員で跳び後にはロックとアレスター達しか残らなかった。

 

「アレスター…」

 

「こんなの認められないって顔をしてますね父さん。

 ええ、残酷なこの歴史改竄を認める訳には行きませんよ………そうだ、父さんが納得するまで話し合ってみませんか? 

 其処まで時間は無いと思いますが、せめて今生の別れとして…如何ですか?」

 

 ロックはこの様な事を認められないと思い、それを察したアレスターはあくまでも自分は死んでいるべきだとニュアンスで話し、サラの様に我慢はしていない未練無き笑顔を見せる。

 更にロックは未だ納得してない父に納得するまで話し合おうと提案した。

 それを聞きロックはアレスターの決意は変わらない事を察し、顔を伏せた。

 

「ロック…」

 

「では立会人としてリリアナ様も聞いて下さい。

 私が死した後に特別に天使化して地上界を見守っていた事や天界がどんな場所かを…」

 

 ロックの心情を案じるリリアナも悲痛な顔を見せる中、アレスターは天使化した事、天界が如何なる場所か、自身が正しい歴史の中で経験した事をゆっくりと話し始めた。

 その間にロックは頷きながら涙を目に溜め、最愛の家族の1人との最後の時間を過ごすのであった。

 

 

 

【カチカチカチカチ、カチャ、ビュゥゥゥゥン‼︎】

 

「よし、9歳の時の最西の世界樹に辿り着いた‼︎

 後はどんな改竄が起きるか目を凝らすわよ‼︎」

 

「OKエミル、さあナイア………何処から来るの…‼︎」

 

 それから最西の世界樹に着き、直ぐ様異常発生点に跳躍し何処が異常だったかアレスターに聞き既に把握しているエミルとサラ達。

 特にサラはナイアが何処から来るのかと矢を引きながら待ち構え、エミルはアレスターと幼いカルロが修行中の場面を目にしながら、これも変えてはならないと思い透視(クリアアイ)千里眼(ディスタントアイ)を使用しながらナイアを探した。

 

【カチッ‼︎】

 

「っ、来た………ってヤバっ‼︎」

 

【ビュン‼︎】

 

結界魔法(シールドマジック)V」

 

 時が止まった瞬間エミルは来たと感じ森の中を見た瞬間、全員を一斉にアレスターはカルロの前に転移させ結界魔法(シールドマジック)Vを発動させる。

 ロマンは何があったか………それを聞こうとした瞬間結界に向かって来る者が居た、それも『複数(ひとり)の魔族』が。

 

「なっ、ナイアが何人も⁉︎」

 

「これが実体ある分身ね‼︎

 本当最悪、同じパワーで結界を同時に破壊して来ようとしてる‼︎

 皆、この分身魔族を倒して‼︎」

 

「合点だぜ、ずぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 ロマンはナイアが複数体居る事に驚き、エミルも同じ攻撃力で結界を攻撃している事を最悪と表現し、今攻撃しているナイアを倒す様に指示を出す。

 するとアルが早速動き、攻撃しているナイアをオリハルコンアックスで叩き斬り、今攻撃して来た3人分は倒した。

 だが、それと同時に森からナイアが宙を飛びながら数えるのも面倒な程ワラワラと現れ始めた。

 

『あっははははは‼︎

 現代で監視役のボクが殺られちゃったからゲームのルールを変更させて貰うよ‼︎』

 

『五月蝿い、同時に喋るな、1人で話せ‼︎』

 

 複数人のナイアは同時に喋り、同じ声が反響して響く様な感覚を覚えながら不快に思ったエミルは苛立ち始め、シエルもまた1人で話せば良いのに全員同時に喋った為此方も苛立ちを募らせ遂に同時に同じ意見をナイアに叫ぶ。

 するとナイア達は手をたたき、1人が手を挙げて代表として話しはじめた。

 

「いやぁごめんごめん、御尤もな意見ありがとうと同時に不快にさせちゃったね! 

 それで何だけど、さっきも言った様に君達に仕掛けるゲーム内容変更を伝えるよ!」

 

「ゲームですって‼︎」

 

 ナイアの1人は平謝りしながらゲームの内容の変更を一方的に話し始め、エミルはこの分身魔族が言うゲームに理解が出来なかった為怒りのまま叫んだ。

 それはロマン達も同じであり、結界内から睨み付け始めていた。

 

「そう、元々は『変装したボクを見破ってアレスターをちゃんと此処に導いて元の死に方にする』簡単な物から、『変装が通じないからこの時間軸内に居る無数のボクからアレスターとカルロを守る』にハードなルールに変更したのさ‼︎

 君達が悪いんだよ、ボクの変身を勝手に看破したんだからね‼︎」

 

 向こう側の言い分によれば、無数の変装したナイアの分身を見破りアレスター達を此処に導けば良かったものを、エミル達が看破魔法(ディテクション)IIで現代のナイアの変装を見破った為に力技のナイアの群れからアレスター達を守るに変更したと話し、身勝手な言葉に全員怒りが満ちはじめた。

 

「それじゃあ第1ゲームスタートだよ、ちゃんとアレスター達を守るんだよ‼︎」

 

『あははははははは‼︎』

 

「五月蝿いこの変人‼︎

 皆、アレスター先生達を守りながら戦うわよ‼︎」

 

 するとナイア達はゲームスタートを宣言し、嘲笑いながらアレスター達に向かい始める。

 するとエミルはそれを変人と叫びながらアレスター達を守る様に全員に指示を出した。

 更に戦闘開始と同時に恒例の身体強化(ボディバフ)時間加速魔法(タイムアクセル)をエミルが使用し、全員を支援する。

 

『(…第1(・・)?)』

 

 だがそんな中でロマンとサラはナイアが第1ゲームと口にした事を疑問に思い、何かこの後にあるのではと勘繰りながら剣を振るい、矢を放ち続けていた。

 

「勿論時間跳躍でこの結界内にも入るから気を付ける様に」

 

【ザン、ブシャッ、ゴロッ、ボォォォ‼︎】

 

「手の内を明かすな、三流ゲームマスター」

 

 するとナイアの1体が同じ時間内を跳躍し結界内に入り込み襲い掛かろうとした瞬間、シエルが時空の腕輪の反応から先読みしてベルグランドを首に向かって斬り払うと、そのナイアの首は刎ねられ青い血が流血しながら青い炎に包まれた。

 

「あはは、反応速度は流石だねシエルちゃん‼︎

 じゃあ数で来られた場合は如何するか!」

 

「僕達で対処するに決まってるでしょ‼︎」

 

【カンキンキンカン、ザシュッ、ザン、ブシャッ‼︎】

 

 ナイアはシエルの反応速度を称賛すると、次に数で攻められたらと話した瞬間、ロマンが真っ先に突撃して5人以上のナイアを的確に対処していた。

 前までならば3人が限界だった筈が、心の持ち様が変わった為か更に多くの数を対処出来る様になっていた。

 しかも何れも斃しながら時間稼ぎに徹し、他の仲間が来るまでの対処であった。

 

「おやおや勇者君、ポクのお陰で何か吹っ切れたのかい?」

 

「お陰様でね! 

 それからナイア!」

 

「真横注意だぜ、オラァァァァ‼︎」

 

 そんな鉄壁の対処をするロマンに挑発するかの様に自分のお陰で変わったと話した。

 それをロマンは皮肉として受け流しつつ、時間稼ぎに徹したお陰でアルがナイア達の横からアルが遂に到着し、斧を爆震斧を発動しながら回転し振り回して合計20名以上のナイアを1度に両断した。

 

「ふぅ怖いこわ」

 

【ビュンビュンビュンビュンビュンビュン、ザシュザシュザシュザシュザシュザシュッ‼︎】

 

「余所見してる暇があったら私も注意しなさいよね、ナイア‼︎」

 

 その回転乱舞を避けた6人のナイアが胸を撫で下ろしてると矢が飛び、分身ナイアの魔血晶(デモンズクリスタル)を頭ごと貫き絶命させる。

 今この中で最も怒ってるのはサラであり、その証拠に全員がナイアを攻撃し易い様に矢で誘導したり、射抜いたりする等何時も以上の活躍をしていた。

 しかしナイアはまだまだ出現し、周りを埋め尽くす。

 

「おやおや、随分と全力全開だねぇ。

 でも忘れたのかな、君達はこれがゲームだって」

 

【シャキンッ、ブシャッ‼︎】

 

「こんな下らない物を遊戯と呼ぶなら底が知れるぞ、ナイア」

 

 するとナイア達は全力を発揮するエミル達にゲームだと言おうとした瞬間、リョウがナイア数体の胴体を斬り裂き、その言動から其処が知れるとまで話しつつ血を拭った。

 するとエミルは気付いた事があり全員に指示を飛ばす。

 

「皆、このナイア達は防御を全くしていないし熟練度元素(レベルポイント)が無い‼︎

 恐らく本体はこの中には居ないからどんどん攻撃して分身を全滅させましょう‼︎」

 

「分かりましたよエミル、雷光破(サンダーバースト)‼︎」

 

 エミルはこのナイアが全て分身だと気が付き、更に分身故か防御もしない事に気が付き攻撃を更に続ける様に叫ぶ。

 それを聞いたアイリスは早速雷光破(サンダーバースト)でナイアを複数薙ぎ払い更に光の矛を構えて次々とナイアを倒し始める。

 

「絶界魔剣、ベルグランド‼︎」

 

「暗黒破、光流波ぁ‼︎」

 

【ズバァァァァァァァァァ‼︎】

 

 更に其処にシエルがベルグランドの魔力を解放し、サラが誘導させた空に向かってルルの光、闇の絶技と共に振るった。

 それにより今居るナイアの3分の1以上が消滅し、更に其処からナイアの分身が増える事が無くいよいよ終わりが見え始めて来ていた。

 

「皆、もうナイアが増えてないよ、頑張って‼︎」

 

「分かったわティアちゃん‼︎

 じゃあ景気付けに燋風束(マグマバインド)‼︎」

 

「からの『雷光弓』‼︎」

 

 その状態をエミルに抱き付いたティアが叫び全員を鼓舞すると、エミルとサラが真っ先にそれを受け燋風束(マグマバインド)による炎の竜巻を威力を絞り発動、森に火が付かない様にする中サラが雷光弓でそれ等を撃ち抜き分身達を次々に絶命させる。

 

「痛いなぁ。

 たく、分身も全体共有だから死ぬ感覚も伝わるんだ、ちょっとは手加減」

 

「するかこのイカレ外道底辺ゲームマスター気取りの三流魔族が‼︎

 俺様の斧のサビになってもう一片人生を輪廻転生して来やがれやオラァァァァァァァァ‼︎」

 

【ズバァァァァァァァァァ‼︎】

 

 ナイアは死すら感覚共有してしまう為に手加減を要求するが、アルが真っ先にそれを斧で薙ぎ払い斬り裂く。

 これによりナイアの要求は真っ向から粉砕される事となった。

 

「だけど甘いよ‼︎」

 

【キィィィィィン‼︎】

 

「って、最初より結界の範囲が人1人分に狭まってる⁉︎

 こんな結界操作を今の魔法使いは出来る訳⁉︎」

 

 だがその時ナイアの分身の2体がアレスターとカルロに時間跳躍の奇襲を仕掛けた…のだが、結界魔法(シールドマジック)の常識である最低でも人3人分までしか範囲を狭められないと言う前提をエミルの結界が崩し、何とアレスターとカルロて丁度埋まる範囲まで結界を狭めると言うナイアも聞いた事の無い結界の使い方をされ、彼女は驚愕していた。

 

闇氷束(ブラックフローズン)‼︎」

 

【パキパキ、キン、プンッ、バキィィィン‼︎】

 

「残念だったわね、手の内を晒し過ぎよ‼︎」

 

 其処にティアを抱き抱えたエミルが闇氷束(ブラックフローズン)でナイア2体を凍結、そのまま杖で殴って砕き手札(カード)を晒し過ぎだと叫びながら更に魔法を使い全体を攻撃、支援を欠かさず行い、抱き抱えられたティアが体内魔力回復用ポーションをエミルに飲ませて魔力切れを起こさせない様にする。

 

「たく君達ぃ、ポクはゲームマスターなんだよ? 

 なのに何でこっちの意図を無視してゲームを進め」

 

「お前のゲームなんか、知るかぁぁぁ‼︎」

 

 ナイアは自分が仕掛けたゲームが上手く行かない事に地団駄を踏み、何故自分が楽しくなる様な趣旨通りにゲームを進ませないかと叫ぶと、数が減った為更に縦横無尽にロマンが戦場を駆け抜けナイアを次々に斬る。

 そうしている内に3分の2以上の分身ナイアが消え去り、残るは28体のナイアのみになっていた。

 

「残りは28か、ならばこれで消えろ‼︎

 光ある所闇あり、生は死に反転し全てを蹂躙し尽くす、絶界魔剣ベルグランドォォォォ‼︎」

 

『うわぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

 その残り数を数えていたシエルは次々に空中に誘導されている分身ナイアをベルグランドの2発目の魔力放出で塵も残さず消し去り、後5体地上に残るだけとなった。

 

「クソ、クソ、クソ、まるでかつてのアザフィールの様に幾ら分身を用意しても1撃で全て消し去る脳筋バカが居るからちっとも上手く行かない‼︎

 やっぱりあいつの関係者と私達は相性最悪だ‼︎」

 

「(私達…?)」

 

 残った分身ナイアの代表がいよいよ怒りを爆発させてシエルを見ながらアザフィールが力技で分身を消し去る、ゲームを土台から破壊する、挙句捕えられてしまい処刑を待つ身になった事を思い出し彼の弟子であるシエルを指して相性最悪と話した。

 その際に『私達』と話した事をエミルは聞き逃さず頭の中に留めた。

 

「さあ残り5体、決めますよ皆さん‼︎」

 

「勿論よアイリス、これで終わりよ‼︎」

 

『うわ、くそ、ギャァァァァァァァァァァ‼︎』

 

 そうしてアイリスが残り5体だと叫び、全員に終わらせる様に叫ぶとサラが最後に吠え、他の4体をロマン達が片付けると残りの1体はサラの矢により針山の様に身体中に突き刺さりながら絶命、これによりナイアの分身の全てが消滅する事になった。

 それにより戦闘が終了して残るはアレスターが歴史通りに死ぬかを見届けるのみになった。

 

「…さあ、奴から継続していた時間停止魔法(タイムストップ)を解除して歴史通りに進むかを確かめるぞ」

 

「はい…ナイアの血は炎となり消えましたから森に隠れて見届けましょう」

 

 それからシエルが周りにナイアが居ない事を確認すると時間停止魔法(タイムストップ)を解除して残りの確認をすると話し、アイリスも賛同して森の中に隠れて様子を見始めた。

 するとアギラが空に現れ、エンシェントドラゴンを呼び寄せるとそのまま操り始め、歴史通りにカルロが逃げようとして転び、其処にブレスが放たれアレスターが庇い、そのアレスターも魔法で迎撃し両者致命傷を負う事になった。

 

「アレスター………くっ‼︎」

 

 それ等を見ていたサラは弟が死に掛けているのに何も出来ない事を歯痒く感じながらそれを見届け、歴史通りに全てを運ぼうと手に血が滲み出す程握りながら決心していた。

 それを見ていたエミル達もサラの悲しい決意に水を刺さぬ様に動かない様にしていた。

 

【カチッ‼︎】

 

「っと、此処で第2ゲームだよぉ‼︎

 それ〜‼︎」

 

【ビュンビュン‼︎】

 

「っ、ナイア‼︎」

 

 すると再び時間停止魔法(タイムストップ)が発動し、此処で第2ゲームとしてアレスターとカルロに対して彼等の近くに現れたナイアがナイフを投げた。

 そのナイフはナイアの魔力を帯びており、サラの矢の様に止まった時の中も突き進む様になっておりエミルやアイリスは反応が遅れナイフ迎撃が間に合いそうになかった。

 そうしてナイフはアレスター達に目掛け飛ぶ………。

 

『邪魔するなぁぁぁぁぁぁ‼︎』

 

【ビュンビュン、カキキン‼︎】

 

 だが此処でロマンがナイフに対し『時間遅延魔法(タイムスロウ)』を発動しナイフの速度を極限まで遅くし、サラが弓兵の反応速度とアレスターの危機と言う2つの事柄が絡み合い守る事に一級線のロマン並の反応で矢を放ち速度遅延したナイフが迎撃され、ナイアは必ず成功すると思ったゲームを破られ目を見開いていた。

 

「な、何故ゲームが失敗する⁉︎

 この距離、このタイミングなら成功する筈なのに」

 

闇氷束(ブラックフローズン)‼︎」

 

「っ‼︎」

 

 ナイアは何故第2ゲームが失敗したのか理解出来ず、慌てふためく中エミルは漸く反応が間に合い闇氷束(ブラックフローズン)を放った。

 それを見たナイアは今度は『避ける』行動を取り、凍結させられない様に空中に避けた。

 

「今度は避けたな? 

 なら貴様は本体か、な‼︎」

 

「やばっ‼︎」

 

【ブゥン、カチカチカチ、ズシュ、ビュン‼︎】

 

 其処にシエルが最高速度で突撃してベルグランドを突き刺そうとしていた。

 それを見たナイアは今度は時間跳躍魔法(タイムジャンプ)で逃げ始めた。

 そうしてナイアは時間跳躍で逃げた…が、ベルグランドの刃先には青い血が付着しており、それは突撃攻撃が当たっていた事を意味していた。

 

「ロマン君、サラ、アレスター先生達は大丈夫⁉︎」

 

「うん、僕が咄嗟にナイフに時間遅延魔法(タイムスロウ)を発動させて」

 

「私が迎撃したから何とか…‼︎」

 

 するとエミルは慌ててロマンとサラにナイフの方は大丈夫かと聞くと、2人はしっかりと対処したから大丈夫だと話すと、アイリスが矢やナイフを全て回収し、エミル達に頷くとシエルも含めてまた森の中に入った。

 

「…それにしても良くアレを迎撃出来たな2人共。

 何故奴がまた来るって分かった?」

 

「…ナイアが『第1(・・)ゲーム』って言ってたから油断出来なかった、からだよ」

 

「右に同じくね」

 

 するとアルは何故ナイアの迎撃が間に合ったかをロマンとサラに尋ねると、如何やら2人共『第1ゲーム』と言う言葉に引っ掛かりを覚えた為に悪足掻きが来ると想定したらしく、それが功を奏しこの迎撃が間に合った様だった。

 それを聞いたエミル達は今度からナイアの言葉に注意しようと思い、今度はエミルが引き継いだ時間停止魔法(タイムストップ)を解除した。

 

「私の生徒には、指1本触れさせはしませんよ………ぐ、うぅ…‼︎」

 

「アレスター先生‼︎

 クソ、このトカゲ野郎がぁぁぁぁ‼︎」

 

 アレスターが杖を構えながらも倒れた中、カルロは虫の息のエンシェントドラゴンに止めの1撃を放ち遂にドラゴンは斃され地面に倒れ伏せた。

 それを見た過去アギラは撤退し、カルロは倒れたアレスターに話し掛けていた。

 

「…これで歴史通りになるけど、最後まで見るかサラ?」

 

「…ううん、このまま帰るよ。

 後はカルロ君とアレスターの2人の時間、ナイアもベルグランドでダメージを受けたからもう来ない筈。

 だからもう良いんだ………このままだと、私が皆にアレスターを助ける様にお願いしちゃうから…」

 

「…分かった、ならば帰還しよう」

 

 エミルはこれで歴史通りになるが、サラに最後まで見届けるかと尋ねるとサラはこのまま見てれば誰かにアレスターを救う様にと頼んでしまうと話し、幾ら擬似特異点(セミシンギュラリティ)は歴史に影響を与えないと言っても最低限のルールがあると思いながら苦笑していた。

 それを聞いたシエルも帰還準備に入り始める。

 

「…分かりましたよサラ。

 これでエミル、貴女や彼女の転換点は守られました」

 

「あ…そうか、私はアレスター先生の死からレベルを163まで上げる事になったんだ…」

 

「そしてサラは弟のアレスターの死から冒険者業に更に没頭する事になったんだぜ…」

 

 そんな中アイリスがエミルやサラの歴史の転換点は守られたと口にすると、エミルはアレスターの死からレベルを500年前までの最低基準値まで上げると決意した事を思い出していた。

 更にアルがサラはアレスターが死んだ故に冒険者業に更に没頭し始めた時と口にし、2人の生き様に関わる転換点だったとロマン達は理解した。

 

【キィィィィィン、カチカチカチカチカチカチ、ビュゥゥゥゥゥゥゥン‼︎】

 

 そして全員で時空の腕輪を掲げ、時間跳躍をしてその場から消え去った。

 この場に過去のカルロとアレスターを残して。

 

 

 

「ア、アレスター先生………俺、俺の所為で…‼︎」

 

「あ、あはは、生徒を守る事が教師の義務ですから気にしないで下さい、カルロ様…だから、気にしないで、下さい…」

 

 それからカルロは自身の所為でアレスターが死に掛け、もうポーションで治らない…回復魔法(ライフマジック)でも治せるか怪しい状態となっていた。

 だがアレスターは生徒を守る事が自身の使命だと話し、死の間際に立たされてもなお笑顔を絶やさずにその生命が事切れるまでカルロを安心させようと努めた。

 

「(ああ、此処で私はもう終わるんだな…アルク様とレオナ様はもう心配は無い、けど気掛かりがエミル様だ。

 無茶しないか、少し心配ですねぇ…それに、家族を遺して逝くのも、避けたかったですね…。

 そして何より…)」

 

 その心の中でアルク達やエミル、サラ達家族を思い起こし、死の間際には様々な事が思い浮かぶとアレスターは初めて知りながら様々な事を考えた。

 そのアレスターが最後に考えた事は…。

 

「…カルロ様…貴方には、貴方にしか無い才能、私みたいに教師になる才能が、あります。

 如何かそれを自覚なさって、邁進し続けて、下さい。

 ………それが、私の最後の、願い…で、す………」

 

「先生、先生‼︎

 いやだ、死なないで、先生ぇぇぇぇぇ‼︎

 うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 目の前に居るカルロが他の3人と違う才能、自身の様な物を教える才能がある事を伝えそれを自覚し邁進して欲しいと願いを伝える事だった。

 そうしてアレスターは安らかな笑みを浮かべながら瞳を閉じ、2度と目を覚ます事は無かった。

 それをカルロは悲しみ、叫び声を上げながら降り始めた雨も気にせずアレスターを抱きながらドラゴンが世界樹に向かったと報告を受けた騎士団が来るまで泣き続けるのであった………。




此処までの閲覧ありがとうございました。
これでエミル編その2後半は終わりました。
次回からは再びネイル達の話になります。
重ね重ねになりますが鈍足亀更新ですがどうぞよろしくお願い致します。

次回もよろしくお願い致します、よろしければ感想、指摘をお願い致します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。