転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様おはようございます、第5話目更新でございます。
今回はタイトルにある様な行動をエミルが取ります。
では、本編へどうぞ。


第5話『エミル、糾弾する』

 エミルとロマンがリリアーデ港街を守った日の夜、宿屋ではエミルとロマンの活躍を祝う為に宴会が開かれ、2人は中央席でぶどうジュース(※本当にただのジュース)をジョッキに注ぎながら、周りがガヤガヤと飲み食いする中でエミルは王族らしくテーブルマナーを守りながら食事をしていた。

 

「あの、エミルさ…エ、エミル。

 やっぱり王族なのにこんなどんちゃん騒ぎな宴会って馴染まない…よね?」

 

「いいえ、こう言った祝杯はどの様な形であれ私は大好きよ。

 勿論私は王族として、お父様達の品位を落とさない様にマナーを守りながらの参加になりますがね。

 それよりエミル君も一杯食べて一杯飲んで下さいな。

 折角の祝杯です、楽しまなきゃ損しか無いのよ?」

 

「あ…う、うん、分かったよ」

 

 ロマンはエミルがテーブルマナーを守りながら食事をする事に窮屈なのではと感じたが、それは王族らしく振る舞う為に仕方無い事であると言われた後にテーブルにまた料理が運ばれて来てエミルはロマンに沢山食べる様に促し、ロマンもこれ以上は宴会に無粋だとして運ばれて来た料理を食べていた。

 

「それにしても前のパーティはロマン君を追い出した上に食糧もお金も与えずに何処かに行ってしまうなんて如何かしてますね。

 それでロマン君が死んでしまったら世界の大損失所では無いのに」

 

「あ、あはは…でも、川の水とかを飲みながら此処まで来れて、それで外に張り紙であの広告を見たからエミルと出会えたから、ある意味では追い出されたのも悪くない…かも?」

 

「ロマン君、それ悪い意味しか無いよ」

 

 するとエミルはロマンを追い出した前の冒険者パーティの事を話し始め、金も食糧も与えずに追い出した為ロマンがもし道端で飢え死んだら如何するのかと不満を漏らす。

 だが追い出されたロマン本人はそれがきっかけでエミルと出会えた為ある意味良かったと話してた…が、矢張りエミルには悪い意味しか見出せない為ぶどうジュースを飲みながら次の食事に手を付け始めた。

 

『バタンッ‼︎』

 

「おうおうおう、何か楽しそうな宴会やってんじゃないか‼︎

 俺等も混ぜろよ〜!」

 

 すると宿屋の戸を勢い良く開けて、外から平均レベル97の剣士、剣士の腰巾着なシーフ、荷物を持たされてる魔法使いの少女、見た目から明らかにギャランと同類の女戦士と言った柄の悪いパーティと付き合わされてる1名が宿屋内に入り周りを見渡し宴会に混ぜろとリーダーの剣士が言い放って来た。

 

「あ、『ギャラン』達だ…」

 

「もしかして、2日前にロマン君を前に追い出したパーティ?」

 

「…うん」

 

 ロマンはリーダー格の剣士、ギャランとその仲間を見て萎縮し、それを見たエミルは敢えて彼に2日前に食糧を渡さず追い出したパーティなのかと問う。

 するとロマンは小さく頷きながら肯定し、エミルは面倒な事になったと認識していた。

 

「おっ、彼処に居るのは役立たずのロマンじゃねぇか! 

 おいお前等、彼処に弱虫君が居るから行こうぜ〜‼︎」

 

「あっはは、何か女の子の魔法使いと一緒にチビチビと食べてるし仲間外れの慰め合いかなぁ?」

 

「いやマジウケるわ」

 

 するとギャランは仲間の女戦士とシーフに声を掛けてエミル達の席まで歩いて来る。

 するとギャランは料理が置かれているテーブルの腰を付けると言うあり得ない行為に出て、取り巻きの2人はロマンを囲み魔法使いの少女はオドオドとしながら荷物を置きながらエミルの側までやって来た。

 

「ようようようロマンくぅ〜ん? 

 よく食糧も金も無く此処まで来てこの女魔法使いちゃんに集ってるなぁ? 

 やっぱ役立たずは役立たず、この嬢ちゃんに土下座でもしてご飯を食べさせて貰ってるのかぁ〜?」

 

『ギャハハハハハハハハ‼︎』

 

 ギャランと2人の仲間はロマンに絡み付き、ロマンの事をやれ役立たず、エミルに土下座して食べさせて貰ってる等俗な笑みを上げていた。

 一方エミルや宿屋に居る面々は宴会の主役の1人がこうも悪口を言われていては気分も悪く、更にエミルはギャランを『見た事がある』為尚更悪感情を抱いていた。

 

「あ、あの、ギャランさん、マナーが悪いです」

 

「あぁん何だぁ荷物持ちぃ‼︎」

 

「ひっ‼︎」

 

 すると魔法使いの少女がギャランに意見を出すが、ギャランは威圧してそれを黙らせてしまう。

 エミルは理解した、この魔法使いの少女もロマンの様にカースト制を敷かれ、ギャラン達に奴隷以下の扱いを受けているのだと頭の中で図式が出来上がった。

 

「ギャ、ギャラン、『キャシー』に僕が居た時以上の酷い事をしてるの⁉︎

 そ、そんなの本当に酷いよ…!」

 

「あぁん何だぁ‼︎

 一丁前にレベルだけ160とか行ってるだけの金食い虫が‼︎

 てめぇはもう俺達のパーティから追い出されてんだよ、何も言う権利なんざ無いぜ‼︎」

 

「そんなの、可笑しいって‼︎

 大体、キャシーは2日前に見た時より肌荒れしてるし目に隈が出来てるじゃないか‼︎

 い、幾らもう追い出されて無関係な僕でもこんなのは異常だって言い続けるよ‼︎」

 

 ロマンはキャシーと言う魔法使いの少女の状態が自身が居た時よりも明らかに酷くなっている事をギャランに糾弾するが、当のギャランやその仲間2人はロマンに嫌味な表情で睨み付けながら無関係な奴は出しゃばるなと言った文言を飛ばす。

 しかしロマンは弱気ながらも持って生まれた優しさからかキャシーを庇い続ける様に叫びながら席を立ち、ギャラン達が異常だと言い放つ。

 

「ったく、これだから田舎村の勇者様は…」

 

「おほん、失礼ですがセレスティア王国『ベヘルット侯爵家』の『ロード』・ベヘルット侯爵様、テーブルには料理が置かれており座る場所ではありません。

 そしてパーティメンバーの酷使や不当な締め出しはギルド協会から禁止されている行為ですよ。

 なので侯爵家の家門に泥を塗る様な行為はお止め下さいませんか?」

 

 ギャランはロマンの正義感にうんざりしながら田舎村の勇者如きと愚弄していた。

 そうしてこれ等一連のギャラン達の蛮行に遂にエミルは動き出し、ギャランの一族であるベヘルット侯爵家の名を出しながらテーブルマナーやギルド協会で禁止されている行為を口に出し注意する。

 

「あぁ! 

 何なんだてめぇは‼︎

 俺は侯爵家の息子なんだ、金さえ払えば何だって許されるんだよ‼︎

 それが分かって俺に指図してるのかぁこの田舎の魔法使い如きが‼︎」

 

「…あちゃ〜…」

 

 するとギャランはエミルの注意に侯爵家だから金さえ払えば全てが許されると高らかに叫び、彼女を指差しながら身分の差があると言わんばかりに罵声を浴びせる。

 すると周りに居た冒険者の1人がやってしまったと言わんばかりにあちゃ〜と呟き、目の前に居るロマンは穏便に済めばそれで良かったのに地雷を踏み抜いたとして顔を伏せて後はエミル側に全てを委ねると言った姿勢を見せた。

 

「あら、田舎娘で申し訳ありませんロード・ベヘルット侯爵様。

 そう言えば、私はこう言った者なのですが、失礼ながらこの勅令書を一読下さいませ」

 

「あ、ああ? 

 ちょ、勅令書? 

 ………な、な、セ、セレスティア第2王女エミル殿下……⁉︎」

 

『えっ⁉︎』

 

 エミルはロマンの態度を見てこの蛮行に終わりを告げよう、そう決意した瞬間勅令書をギャランに見せ、その内容を一読させた。

 そしてギャランは自分の侯爵家より遥か上の王族の姫に喧嘩を売ってしまったと知り血の気が引いて行き、更に取り巻き2人もギャランの口から出た王女殿下と言う単語に同様に青褪めてしまい、3人でガタガタと震え始めてしまう。

 

「お金で全てが許される、その愚考でギルド協会の敷いたルールを無視し、パーティメンバーを奴隷よりも酷な扱いをし、この祝杯の場でテーブルに腰を付け料理を台無しにし、挙句私の仲間であり友であるロマン君に罵声を浴びせた…。

 私に罵声を浴びせるのは結構ですが、それ等の蛮行は無視出来ません。

 受付嬢さん、『ギルドナイト』をお呼び下さい‼︎

 セレスティア王国第2王女エミルの名の下に彼等に拘束命令を出します‼︎」

 

「は、はい、承りました‼︎」

 

「あちょ、あっ‼︎」

 

 エミルは自らが見聞きしたギャラン達3人の蛮行に遂に自らの名の下に冒険者ギルド協会の法の番人ギルドナイトを受付嬢に呼び寄せる様に命じ、受付嬢もそれを聞きギャランの声になってない静止を無視して宿屋の奥へと走り出す。

 そして取り巻き2人は旗色が悪くなった為声を出さずに逃げようとしたが、周りの冒険者達にギャラン毎拘束されてしまう。

 

「ち、畜生、何で、何で…‼︎」

 

「何故こうなったか分からない様でしたら牢の中でじっくりと考え、そして2度と同じ事を繰り返さぬ事です。

 最も、この様な状況では冒険者ランク剥奪、そしてベヘルット侯爵殿まで貴方の不祥事を財力で黙殺していたのならベヘルット侯爵家は爵位剥奪も免れないでしょう。

 であるなら、貴方達が見下した者達と同じ目線に立ち自分達の罪を懺悔なさい」

 

 頭の中が真っ白になり、テーブルから退かされ床に膝を突くギャランにエミルは王族としての立場から彼が見下した者達と同じ目線に立ち懺悔する様に、またベヘルット侯爵家は爵位剥奪は間違い無いとも言い全てを失いながら罪を償う事になると暗に告げた。

 そして程無くギルドナイトが転移魔法(ディメンションマジック)で到着し、ギャラン達3人を捕らえて協会本部に連行して行った。

 

「…エミル、君はやっぱり本物の王女様なんだね」

 

「ふう、出来ればこんな事したくないのよ。

 王族としてマナーを守る程度ならまだしも、今みたいな王族の名の下に引っ捕らえよ〜とか色々苦手な物が多いんだから…」

 

 ロマンはエミルが改めて本物の王女だと思い知り、キャシーを救った事やこんな自分の為に怒ってくれた事を感謝していた。

 しかしエミルは社交辞令や今の様な物は大変苦手であり、それは寧ろアルクやレオナ達兄姉達の分野である為ドッと汗を流しながら椅子にゆっくり腰を付けていた。

 

「あ、あの、エミル王女殿下、この度は私をお救い頂き誠にありがとうございました。

 この御恩は一生」

 

「あ〜、そう言った物は大丈夫よ気にしなくて。

 それより、私に恩を感じたのなら貴女の目で、耳で、手で、足で、貴女の知らない世界を冒険して。

 そして何時か再会した時に私にそのお話を聴かせて、貴女の冒険譚を。

 それが私が貴女に求める物よキャシーちゃん」

 

 するとキャシーはエミルに恩を感じ一生忘れないと言おうとした所、当のエミルはキャシーに何かの恩返しは求めず、それよりもキャシーが自ら描く冒険譚を何時の日か聴かせて欲しいと言い握手を求めた。

 

「…うう、はい、王女様。

 私、未だ知らない物を見て聞いて何時の日か王女様にそれ等をお話致したいです…‼︎」

 

 その瞬間キャシーの涙腺は決壊し、止めどなく涙が溢れながらエミルに冒険譚を聴かせる約束を握手しながら交わした。

 

「じゃあ次からはあんな連中みたいなのには引っ掛からずちゃんとした冒険者パーティメンバーと一緒に冒険してねキャシーちゃん。

 幸い貴女のレベルは92だし、あんなの以外の何処のパーティでもやっていけるよ」

 

「はい…はい…‼︎」

 

「………うん、これならキャシーは新しい道を進められるね。

 ありがとう、エミル」

 

 次にエミルはキャシーにギャラン達の様な悪徳パーティに引っ掛からない様に注意し、更にレベルは92と英雄と呼ばれる領域に近い為何処でも上手くやって行けると話して自信を持たせる。

 キャシーもこれに懲りて人選びはしっかりしようと気を付けると心掛け、ロマンも自分が追い出されてから気掛かりだったキャシーがこれからは真っ当なパーティと共に冒険や魔物退治をする未来図を浮かべ、エミルにありがとうと告げるのであった。

 そのエミルはロマンの言葉にサムズアップで返していた。

 

 

 

 それから翌日、エミルの下に転送魔法(トランサーマジック)でベヘルット侯爵家の爵位剥奪が早急に行われた事や、ギャラン達が今まで行って来た悪事により冒険者ランクも剥奪、冒険者ギルド協会から永久追放になったと書簡が送られて来ていた。

 それをロマンにも見せロマンもこれでキャシーみたいな子が減る事に繋がればと考えていた。

 

「そう言えばロマン君、貴方が追い出された冒険者パーティって他にもあるんだよね? 

 それを訴えるって事は?」

 

「ううん良いんだ、特に酷かったギャラン達と違って他は僕だけが追い出されて、キャシーみたいな子は居なかったから…。

 それに話し合いで決まった事だし、彼等が何処に居るか僕には分からない上に訴える気は無いから…」

 

「…そっか。

 ロマン君が良いならそれで良いんだけど」

 

 エミルは他のロマンを追い出したパーティを問い質すと、当の本人は他のパーティはギャラン達程では無いと伝え、そして自分だけがそんな扱いなら幾らでも我慢出来る為今回はキャシーを救おうと動いたのだ。

 更にロマンは自分を追い出したギャラン達より前のパーティ達は今何をしているのかも分からないと伝えてそれ以上は求めないと言う雰囲気を出し、エミルもロマンがそれでOKならと言いながら1階へ降りた。

 

「あ、エミル王女殿下! 

 おはようございます!」

 

「受付嬢さんおはようございます。

 …そう言えばキャシーちゃんは何処に?」

 

「はい、実は朝早く祝杯の場でギャラン一行を取り押さえてくれたパーティに引き取られてそのまま旅立ちました。

 そのパーティはこのフィールウッド国で有名な冒険者達の集まりで、決してギャランパーティの様な事にはならない事を私が保証致します」

 

 1階へ降りたエミルは受付嬢からキャシーのその後を聞き、どうやら有名冒険者パーティに引き取られたらしい。

 この受付嬢が確実に信頼出来ると其処まで太鼓判を押すなら信じる事にし、キャシーの未来に幸がある事を祈っていた。

 

「あ、それとエミル王女殿下の冒険者ランクの協議が終わり、冒険者ランクの紙が本部から送られて来ました!」

 

「あ、そう言えば色々あり過ぎたから自分の冒険者ランクの事を忘れてた! 

 それで、冒険者ランクはどの位になりましたか?」

 

「ふふ、それはですね………今のエミルさんと同じBランクからスタートになりました‼︎

 此処から依頼を熟して、Aランクまで如何か無理なく頑張って下さいませ‼︎」

 

 そしてエミルの冒険者ランクも決まった事が受付嬢から告知され、ミニクラーケン襲撃やギャランパーティの拘束等ですっかり忘れていたランクの是非を聞くと、エミルは今のロマンと同じBランクからスタートとなり手渡された魔法紙(マナシート)にもそう書かれていた。

 

「Bランク…最高ランクであるAの、一個下…〜〜っ‼︎」

 

 エミルはそれを見て早速Bランクから始まる事に心が躍り、魔法紙を魔法袋(マナポーチ)に収納し、エミルはロマンに手を翳し、ロマンも何かとそれに合わせるとエミルからハイタッチをして爛漫な笑顔を見せていた。

 

「では、今後ともギルド協会をご利用下さいませ! 

 ギルド協会の違反事項は敢えて説明致しますが、渡した魔法紙(マナシート)に記載されていますので違反しない様にご注意下さいませ」

 

「大丈夫ですよ、ルールを守って無茶はしても無理はしないが私の信条ですから! 

 じゃあロマン君、早速防具屋に行って防具を新調しよう! 

 大丈夫、私まだ400万G(ゴールド)以上残っているから‼︎」

 

「あ、ちょ、エミルゥ⁉︎」

 

 受付嬢の違反事項の敢えての説明に先程の無茶せずと言う言葉と一緒にエミルはルールを守り、無茶はしても無理はしないと信条を語った後ロマンの手を引き防具屋でボロボロなロマンの防具を新調しようと言う話になる。

 そんな押しの強いエミルにロマンはタジタジになりながら手を引かれ、宿屋から外へと出て行った。

 

「………新たな冒険者に幸があらん事を」

 

 その後ろ姿を見ていた受付嬢は150年この仕事をして来た中で初めて現れる嵐の様に激しく、しかし花の様に美しい新人冒険者にその旅路………魔王討伐と言うとてつも無く大きな使命を帯びた魔法王女とその王女が見出した勇者。

 この2人の行く末に幸多き事を祈りながら扉が閉まる寸前に頭を下げてその去り際を見送るのであった。

 

 

 

 それからエミルとロマンは、エミルがミスリルローブを買った武器屋兼防具屋に立ち寄り、早速品定めを始めていた。

 

「うーん中々見つからないなぁ…これでもあれでも無いし…」

 

「えっと、エミルは何を探してるの?」

 

「えっ、それは勿論職人王ゴッフ一門が作り上げた武器と防具だよ。

 ほら、君の剣や防具に同じシンプルな金槌の紋様があるでしょ? 

 これが初代勇者パーティの一員で伝説として語られる武具を数多く作り出したドワーフの王様の使う紋様なんだよ。

 まぁ職人王様自体は300年前に弟子を漸く取って引退したって各国情勢の授業で教わったけどね」

 

 ロマンはエミルが何を探しているのかを問うと、本人はロマンの武器や防具にあるシンプルな金槌の紋様の物を探しているらしく、それはミスリラントの職人王ゴッフとその弟子が作り上げた物と聞きそれを知らなかったロマンは驚いていた。

 

「えっ、この剣や防具があのゴッフ様とそのお弟子様が作り上げた物なの⁉︎

 …このミスリルソードは父さんの形見で、それと同じ紋様の物を自然と選んでいたんだけど…」

 

 ロマンは父の形見のミスリルソードがそんな由緒正しい物と知らず驚き、更に同じ紋様の防具は確かに他より値段が高かったが身体に馴染む様な感覚があった為気にせず買っていた為再びタジタジになっていた。

 ギャランが金食い虫発言をした理由とは恐らくゴッフ一門の防具を買っていた事が一因だとロマンは知り、しかしそれでもギャラン達のやり方は許せなかった為同情は出来なかった。

 

「成る程ね〜…っと、漸く見つけた‼︎

 ゴッフ一門作ミスリル製戦士用防具‼︎

 お値段何と20万G(ゴールド)‼︎

 まぁ、やっぱり値段は張るけどこれ位の価値が無いと可笑しい、それがゴッフ一門の武具‼︎」

 

「おっ、やっぱりまたゴッフ様とそのお弟子さんの防具を買うのかい王女殿下! 

 なら勇者君のサイズに仕立てて………今なら街を救ってくれたりあの柄が悪い冒険者に一泡吹かせた事にサービスして出血大サービス20%オフの16万G(ゴールド)だ‼︎」

 

 エミルはロマンの剣が父親の形見と知り、ならこの後『やる事』には使ってはならないと思いながらも遂にゴッフ一門作の戦士用ミスリル製防具一式を発見し、それをレジに提示すると店長はロマンの身長に合うサイズを仕立てた上で、街をミニクラーケンから救った英雄とギャランパーティを永久追放した事にサービスして16万G(ゴールド)で売ると宣言する。

 

「おっとそんなにサービスしてくれますか…ならはい、20万G(ゴールド)払ってお釣りは要らないよ!」

 

「って元の相場のままじゃないかーい!」

 

 エミルは王女と言う事や街を救った事は兎も角ギャランパーティの件までこの店に伝わってる事を知り、この分では街中にギャラン達が冒険者ギルドから永久追放された事が広まってると思いつつ、其処までサービスされると逆に買うのが退けてしまう為か元の相場のお金を支払い釣りは要らないと話しながら防具を持ち着替え室にロマンを入れる。

 

「さあ、宿屋で洗濯された私服に新品の防具を着て私に見せて!」

 

「う、うん…よーし、袖を通して…」

 

 エミルはカーテン越しにロマンのボロボロになってたが洗濯して綺麗になった私服に新調された防具が装備された所を見せてと頼み、ロマンはそれに応えてレギンスやガントレット、無駄に重く無くしかし防御力が高いアーマーや盾を装備し始める。

 

「(…うん、やっぱり駄目だよね)」

 

 するとエミルはロマンのある言葉からこれから直ぐに実行しようとする事に、一部許容出来ない物が出来たと脳裏で考えそしてその案に静かに修正を行い、更にその先の旅路の道筋にも変更点を付け加えて行く。

 そしてエミルが思案し終わると同時にロマンの着替え終わりその姿を見せる。

 

「わぁ、やっぱり似合う! 

 私の見立ては確かだった!」

 

 ロマンは青と白を基調とした私服にミスリル製の防具一式を装備させ、丁度エミルの赤と黒を基調としたミスリルローブと対になる色合いとなり更に元々容姿は並以上だったロマンにしっかりとした防具が合わさり、未だ弱気に見えるがそれでも新調前の時よりも格好良くなったとエミルは思っていた。

 

「んじゃお古の防具は俺が引き取らせて貰うから、魔王討伐の旅に最初に買った防具は此処で買ったって事を2人共覚えてくれよな‼︎」

 

「は、はい、こんな素敵な防具ありがとうございます‼︎」

 

「それじゃあおじさん、またリリアーデに来たらお世話になるからその時もよろしくお願いしますね!」

 

 そして店主はロマンのボロボロになっていた古い防具を引き取り、2人に魔王討伐の旅に初めて立ち寄った店である事を覚える様に頼みながら見送る。

 それをロマンはこの防具を仕立ててくれた事に礼を述べ、エミルはまたリリアーデに立ち寄った時は立ち寄ると約束をして店の外に出て港前まで移動する。

 

「さてと、此処まで移動したらロマン君、少し道の端に寄って動かないでね」

 

「えっ、う、うん」

 

 するとエミルはロマンを道の端に立たせて動かない様に指示し、ロマンは素直にそれを聞いてジッと立つとエミルは杖を掲げ体内魔力を活性化させ、足下に魔法陣が現れる。

 

「じゃあ、ロマン君の防具一式に軽量化、防御力アップ、魔法ダメージ減衰魔法祝印(エンチャント)の3種を最大限のIV、刻みま〜す‼︎」

 

「えっ、わぁ!」

 

 するとエミルはロマンの防具全てに3種類の魔法祝印(エンチャント)を掛け、防具に3つの印が刻まれる。

 この支援魔法は武器や防具に様々な効果をI〜IVまでの効力で付与する物である。

 IとIIは例えば防御力アップ効果を引き出す代わりに重量増加デバフも掛かる様になるが、IIIからデバフ効果が消え、最大のIVになればIIIの効果量を上回る効力を発揮するのだ。

 

「す、凄い…魔法祝印(エンチャント)のIVの3種類を複数の物に同時掛けなんて、エミルは相当魔法の熟練度を上げたんだね…!」

 

 ロマンはそれを3種同時に掛け、更に支援魔法はその種類の魔法を何度も何度も繰り返して使わなければIVを使える様にならない為エミルを相当な努力を重ねた魔法使いなのだと認識する。

 

「うん、まぁね〜。

 魔王討伐を目指して最北の世界樹でレベル163まで修行したからね〜」

 

 当のエミルはライラの時の知識や技術を引き継いでいる為、やろうと思えばレベル18程度でも支援魔法IVは使える。

 しかしキチンとした効力や攻撃魔法の熟練度に応じた威力上昇を発揮するには『その肉体』で何度も同じ魔法を繰り返さなければならないとエミルは途中で気付き、最北の世界樹で攻撃魔法のみならず支援魔法の練習を欠かさなかったのだ。

 

「(修行前に転生魔法の弊害に気付いて助かったわ。

 でないと私はライラの時の技術継承に胡座を掻く所だった…4歳の時に火炎弾(バーンバレット)を使った時の違和感に気づいて正解だったわ)」

 

 そしてそれを4歳の時の魔法の天才児と周りに言われた際の魔法行使で熟練度も振り出しに戻ってる事に気付けた事は僥倖だったとエミルは思いながら船着場の旅客船を見ながら次の行動指針を、修正を加えた物をロマンに話し始める。

 

「ふう。

 ロマン君、私本当は貴方の剣にも威力上昇や強度上昇、軽量化魔法祝印(エンチャント)を付ける気だったわ」

 

「えっ、そうなの? 

 それじゃあ」

 

「でも私はその選択を捨てたわ。

 だってその剣は貴方のお父様の形見でしょう? 

 そんな物に勝手に魔法祝印(エンチャント)を掛ける程私は非常識な人間じゃないわ」

 

「あっ…エミル…」

 

 エミルはロマンの剣に魔法祝印(エンチャント)を掛ける選択肢があったが、父親の形見である事からそれを勝手に手を付けて良い訳が無いと彼女は思い、ロマンもまた剣に関してはかなり気遣ってくれた事を理解し魔法祝印(エンチャント)を気軽に頼もうとした自分に少し心に喝を入れてその先の言葉を紡がなかった。

 

「だから、その少し刃毀れもしてる剣を私は打ち直して貰ってしっかりと最後まで使える様にして貰おうって思ったの。

 他でも無いその剣を作った人、ゴッフ一門のお弟子さんに頼み込みに行こうと思うの」

 

「剣を作ってくれた人…つまり僕達の次の目的はそのお弟子様を探す事なんだよね?」

 

「そう、武具職人でもあり150年前にレベル78でエルフの女性と一緒に冒険者ギルド協会に登録して当時初の登録時Cランク発行をされ、今は私達と同じBランクになってるドワーフの男性…。

 ゴッフ一門のお弟子さん、『アル』さんを探しに行くわよ!」

 

 ロマンが自身に喝を入れる中、エミルはロマンの刃毀れしている剣を作った本人に打ち直して貰う事を告げる。

 それによりロマンは最初の旅の目的は自分の剣の打ち直すゴッフ一門の弟子を探す事と理解する。

 そしてエミルはそのゴッフ一門の弟子のドワーフは150年前にレベル78で相方のエルフの女性と共に冒険者登録をした者…武具職人アルを探す旅をすると海に指差しながら宣言するのだった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
ロマンを追い出したパーティですが、特に酷かったのはギャランパーティで、他は意見の食い違いの結果互いに違う道を取ろうとと話し合ったりしてロマンはパーティを出て行ってます(勿論お金や食糧は渡されてます)。
そしてエミルの王女としての立場が光ったり、次の旅の道筋が決まる回でした。
さて、今回は魔法の属性について説明致します。
魔法は火、水、土、風、光、闇の原始属性に風と水の派生属性の雷、氷が存在します。
原始属性は下級、中級、上級、最上級の4種魔法がありますが、派生属性は下級と上級しかありません。

次回もよろしくお願い致します。

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