転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

7 / 49
皆様おはようございます、第7話目更新でございます。
今回いよいよエミル達がアイアン村に向かう話になります。
其処で待つサラ達の対応は如何なるかお楽しみ下さいませ。
では、本編へどうぞ。


第7話「エミルとロマン、出会う」

 リーバ港に到着した3日目。

 2日目に海賊団を捕らえ、その後は船は何のトラブルも無く港に辿り着き、エミルとロマンは3日振りに大地に足を付ける。

 

「さあ来い、今までの略奪行為の代償を支払わせてやるからな!」

 

「トホホ…王族殺害未遂まで加わって一生牢獄暮らしかよ…」

 

「ブツブツ言わずにキリキリ歩け‼︎」

 

 そのエミル達を襲ったディスト海賊団全員はセレスティア王国軍王族親衛兵団とギルドの緊急依頼を受けた冒険者パーティに引き連れられ何台もの馬車で中央都市ライラックまで運ばれて行くのをエミルとロマンは見送っていた。

 

「王女殿下、ご無事で何よりです! 

 殿下と船を守った勇者ロマン、君にはこの親衛隊長の『マークス』が幾ら感謝しても仕切れない! 

 本当にありがとう、勇敢なる少年君!」

 

「い、いえ! 

 船を直接守ったのはエミル………王女殿下でありますし、僕は本当に微力ながら加勢しただけですよ‼︎」

 

 するとロマンは親衛隊の隊長マークスに頭を下げられ、エミルを守った事に深く感謝されていた。

 しかし此処でもロマンは自身よりエミルの方が活躍していた事、自分は微力な加勢だったと引き腰になりながらマークスに謙虚過ぎると思わせる程エミルを立てていた。

 

「あはは、マークスは顔が強面だけど誠実で親衛隊長として数々の実績を積み重ねた誠実な人だから、そんな人に褒められたロマン君は十分凄いよ。

 それでマークス、この後私達はロマン君の剣を打ち直す為にミスリラント領のアイアン村に行く用事があるから直ぐに行ける馬車の手配をお願いしたいんだけど、駄目かな?」

 

「ふむミスリラント領に。

 いえ、王女殿下の命であるならばこの親衛隊長マークスは人道に反さぬ限り従い申し上げます。

 では馬車屋に直ぐ手配致しますので少々お待ちを」

 

 するとエミルはロマンの肩に手を掛け、マークスが親衛隊長として厳格にして誠実な人物と紹介しその彼に褒められたのは凄い事だと説明する。

 ロマンはそれに実感を持てていなかったが、その横でエミルはロマンの剣を鍛え直す為にミスリラントのアイアン村に直ぐに行きたいとマークスに頼み、そのマークスも人道に反さない様なら王女殿下であるエミルに意見しないとして馬車屋に向かう。

 

「…親衛隊長さん、か。

 そんな人に僕は褒められたのにそれを無碍にしてちょっと僕って駄目だよね」

 

「そんな事無いよ、マークスはさっきのエミル君の発言で機嫌を損ねる様な人じゃないよ! 

 だってあの人は冒険者ギルドで実績を積み重ねた後お父様に直々に親衛隊に所属する事を頼まれた誠実な人物なの。

 其処から更に実績を重ねて遂に人格と実力を認められて親衛隊長に抜擢されたから、さっきのを気にする程器の小さな人じゃないから!」

 

 ロマンはマークスの言葉に及び腰になり過ぎた事を反省しながら駄目な奴と自分を戒めるが、其処にエミルがフォローに入りながらマークスの人柄を説明した。

 実際エミルが知るマークスは人道に反さないなら王族の命に忠実に従いつつ、そうでないなら意見をし考え直す様にと言われる程に誠実が鎧を着た人物とされ、レベルも4年前は115、現在は123と親衛隊長に相応しい実力を持つ人物であった。

 

「王女殿下、アイアン村行きの馬車の手配が完了致しました、直ぐに出発出来ます!」

 

「あ、早いねマークス! 

 おほん、馬車の手配に感謝致します、親衛隊長マークス」

 

「ありがたき幸せにございます。

 では王女殿下、陛下の勅令による旅路にご健闘をお祈り致します、どうか無理をなさらぬ様にお気を付けて下さいませ!」

 

 するとマークスは直ぐに戻り馬車の手配が完了したとエミルに報告を入れる。

 そして公の場である為エミルは跪く彼の手を取り、その仕事の早さを王女として労う。

 マークスもそれを頭を下げながら重く受け止め、エミルが手を離してから立ち上がり国王の勅令である魔王討伐の旅に健闘を祈っていた。

 そしてエミルとの会話を終えたマークスは隣に居たロマンに視線を送り言葉を投げ掛け始める。

 

「ロマン君。

 君は少し謙虚過ぎる、が、それと同時に誠実さや人道に反する行いを許さない正義を私は感じた。

 だからこそ敢えて申し上げよう、この旅路に同行出来ない私の代わりに王女殿下の御身をお守りする事を任せます!」

 

「えっ、あ、は、はい‼︎」

 

「…うん、良い返事だ、流石は王女殿下が見出した勇者だ。

 では王女殿下の期待に応えられる様に君の健闘も祈るよ、王女殿下をよろしく頼みましたよ!」

 

 マークスはロマンの一挙一動から彼の人柄を見抜き、エミルの旅に同行出来ない自分の代わりに彼女を守る様にロマンに頼み込む。

 それを聞きロマンはいきなりだった為驚きながらも返事をし、それを聞いたマークスはエミルの目に狂いは無いしっかりと人間が出来た勇者だと判断し、そして健闘を祈るとの言葉とエミルをよろしくと言う責務を任せると言うロマンに期待を寄せている事を示しながら馬に乗り去って行った。

 

「凄いよロマン君、マークスに期待されるって本当に将来有望な勇者だよ貴方は‼︎」

 

「…僕に、期待、健闘を祈って………。

 うん、その期待や信頼を裏切れない人がまた増えた…マークスさん、必ずエミルの事を守って魔王討伐を果たします‼︎」

 

 エミルはマークスが期待を掛けた事は誉れあるとしてロマンの両手を握りながら話すと、そのロマンは馬で去り行くマークスの背中を見つめながら期待や健闘を祈ってくれた、その想いを裏切らない様にしようとより一層気を引き締めるのであった。

 

 

 

 それから花束を買い手配された馬車に乗り込みエミルが手綱を握り、ロマンが隣に座り2時間。

 国境門に辿り着き見張り番にエミルは勅令書を帽子を外しながら見せ、その見張り番達は王女殿下が此処に来た事に驚きながらも馬車を通し、直立立ちをして馬車を見送っていた。

 

「さて、ミスリラント領のアイアン村にはこの馬車の速度で何事も無ければ更に3時間、日が落ちるより前には必ず辿り着ける計算になるわ。

 ロマン君、嫌な思い出も沢山あると思うけど故郷に帰る気持ちは如何かな?」

 

「うん…父さんと母さんの命日には必ず帰る様にしてたから其処まで足が重くなる事は無いよ。

 いじめっ子達も僕と同じ15やもっと大きくなって少しは物の見方も変わってる筈だから、嫌な気持ちは特に無いよ」

 

 エミルはこのまま何もなければ後3時間あればアイアン村に辿り着くとして、ロマンに故郷に帰る気分を尋ねるとロマンは両親の命日には必ず帰ってる事、かつてのいじめっ子達も成長してもう昔みたいな事はない筈として嫌な気持ちは特に無いと話しエミルに笑顔を向けていた。

 

「(…嫌な気持ちは無い、か。

 でもロマン君、貴方の口から『良い気持ち』があるとも私は聞いてないよ。

 それってつまりは、嫌な思い出…特にご両親を失った事に縛られて辛い気持ちでいるって事だよね…)」

 

 しかしエミルはその笑顔が苦笑であると感じ、更にロマンの口から良い感情があるとも聞いていない事から、エミルは彼が辛い思い出に縛られてしまい故郷に帰る事は本当は辛くなっていると穿った考え方をしており、その源流は間違い無く両親の死であるとエミルは手綱を握る力を強める。

 しかしロマンの口からそれが出ない為これ以上は踏み込めないとしてエミルは歯痒さを感じながらアイアン村に馬を走らせるのであった。

 

 

 

 そして3時間後、何事も無くアイアン村の木の門の前に到達し、門番がロマンの顔を見るなり直ぐ様後ろを振り向いた。

 

「おお〜い、ロマンが帰って来たぞ〜‼︎」

 

 すると門番は門を開けながら声を張り上げると、村の中から人々が門側に集まり始め道を譲りながらも馬車の周りを村人達が囲みロマンに話し掛け始めた。

 

「あらロマン君、数ヶ月振りね!」

 

「ロマンにいちゃんおかえりなさい!」

 

「ロマン、またレベルが上がったじゃないか‼︎

 160とか俺達の見れない先を行って、お前は本当に勇者だよ‼︎

 隣の女の子もレベル163の魔法使いとかヤベェよ‼︎」

 

 村人達は老若男女、様々な人が馬車に居るロマンに一斉に声を掛けて彼の帰郷を祝っていた。

 それら全員にロマンは手を振ったり握手したりと本当に村で勇者として持て囃されているとエミルは感じ、この環境もまたロマンの現在の性格を作ったとして良き部分もあれば悪しき部分もあるとさえ感じていた。

 

「…おほん、皆様、私達はとある方達を探してこのアイアン村までやって来ました。

 何方かご存知の方はいらっしゃらないでしょうか? 

 冒険者パーティでエルフのサラさん、ダークエルフのルルさん、そしてこのミスリラント領でも顔を知らない人は居ない筈のドワーフのアルさんなのですが」

 

「えっ、ロマンや嬢ちゃんはアルさんを探して来たのかい‼︎

 それなら丁度この村の『ガル』一家が営む宿屋、『かぼちゃ亭』に宿泊してるぜ! 

 何でも魔王討伐を目指す勇者と魔法使いの女の子を待ってるとかで………て事はロマンが魔王討伐を⁉︎

 お前本当に凄えや‼︎」

 

 するとエミルは周りに集まった人々にアル達がこの村の何処に居るか尋ねると、ロマンやエミルのレベルを測った青年がかぼちゃ亭と言う宿屋に泊まっている事を話し、更に魔王討伐をロマンやエミルが目指している事を告げると彼を中心にお祭り騒ぎになり、馬が少し驚き足を止めた為エミルは手綱を引きながら「どうどう」と言い止まる様に馬に指示した。

 

「あ、あはは………兎に角ガルさん達の所で泊まってるんだね。

 なら馬車を馬屋に預けて村長様に顔見せたら尋ねるよ、ありがとう『エヌ』」

 

 そしてロマンはこのお祭り騒ぎに苦笑しながら先ず村長に顔を見せてから宿屋に行く事を伝え、更にアル達の居場所を教えたエヌと言う青年に礼を言いながら馬屋に行くと話す。

 すると周りの人々は馬屋までの道を開けるとエミルは馬に進む様に指示を出し、そして馬屋に馬車と馬を預けて地面に足を付ける。

 

「ふう…それでロマン君、あの中に昔のいじめっ子達は居た?」

 

「う、うん、エヌがそのリーダーだったんだ。

 ただ、あの様子だと本当に落ち着いて大人になったって感じがするよ」

 

「ふむふむ…まぁロマン君がそう言うなら信じるし、それよりも早速村長様に挨拶をしましょう」

 

 村を歩く中でエミルは集まった人々の中に昔ロマンを虐めてた者は居るのか問うと矢張り居たらしく、しかも気前の良さそうな青年エヌがそのリーダーだったとロマンは告げる。

 しかし同時にロマンは気にしていない様子だった為エミルはそれ以上は言わずに村長への挨拶と、『もう一つの用事』を済ませてからかぼちゃ亭に向かう道筋を立てて村長宅に向かった。

 

「よし、それじゃあ…村長様、奥様、僕です、ロマンです!」

 

【トントントン!】

 

 そしてロマンは村長宅のドアの取手に手を掛け、名前を出しながらノックをすると鍵が開き、扉の先から初老の女性が現れロマンを見るなり驚いていた。

 

「あらロマン君‼︎

 ご両親の命日以外で帰って来るなんて珍しいわね‼︎

 お隣のお嬢ちゃんは旅の仲間かしら?」

 

「はい、申し遅れましたが私はセレスティア王国第2王女のエミルと申します。

 以降お見知り置きを、村長夫人様」

 

「ええ、王女殿下⁉︎

 そんな方が仲間になっていらっしゃるなんてロマン君は本当に凄い子ね‼︎

 あなた、ロマン君とセレスティア王国の王女様がいらっしゃっりましたからお出迎えの準備をしますわよ‼︎」

 

 すると出て来た村長夫人ロマンが親の命日以外で帰った事やエミルを見てロマンの仲間かと首を傾げると、エミルは礼節として魔法使いの帽子を取り、ミスリルローブの裾を掴み頭を下げる。

 すると村長夫人エミルを王女と知りそんな者を仲間にしたロマンを凄いと言いながら夫の村長に出迎えの準備をする様に叫びながら中に戻って行った。

 

「本当に凄いのはエミルなんだけどね」

 

「いやいやロマン君だって凄いわよ! 

 だって勇者としての資質もそうだし、レベル160なんて相当のレベリングや高濃度魔法元素(マナ)吸収をしなきゃ辿り着けない領域なんだから!」

 

 そんな村長夫人の凄いと言う言葉にロマンはエミルの方が凄いと口にしていたが、エミルはロマンの勇者としての資質もその鍛え上げられたレベルを相当なレベリング等をしなければ辿り着けないと言い放つ。

 その言葉にロマンは苦笑しながらも受け取り、そのまま村長夫人が来るまで黙って待ち続けた。

 

「お待たせ致しました王女殿下、ロマン君! 

 中で粗末ですがお茶菓子をご用意致しましたのでどうぞお上り下さいませ!」

 

「はい、失礼致します」

 

「お邪魔します」

 

 そして村長夫人は直ぐに準備を終えてパタパタと戻って来ておもてなしの準備が出来たとしてエミルとロマンを村長宅へと上げる。

 2人は挨拶しながら客間に入ると、初老の男性が立ちながら2人を待っていた。

 

「おおロマン、久し振りだな、元気にしてたか? 

 そして王女殿下、この様な粗末なお出迎えしか出来なかった粗相をお許し下さい」

 

「はい村長、お久し振りです」

 

「いいえ、此方も突然の訪問をした次第。

 ですので変に気遣いをなさらないで下さいませ」

 

 初老の男、村長はロマンの肩を叩きながら帰って来た事を喜びながら元気だったかと言い、更にエミルに村長的に王族を出迎えるのに不十分な物しか用意出来なかった事を謝罪していた。

 するとロマンは笑顔で久々に村長に会えた事を喜び、エミルは突然の訪問だから仕方無いと話して気にしない様にお願いしていた。

 すると村長夫人は2人の椅子を引き、座る用意をして2人は座ると出された茶菓子を礼儀良く堪能していた。

 

「それでロマンに王女殿下、何故この様な田舎村に訪問を? 

 ロマンに至ってはご両親の命日以外で帰る事は滅多に無いのに」

 

「それはですね、この村にロマン君が扱う剣を打ったゴッフ一門のお弟子様のアル様がいらっしゃるからです。

 私達は刃毀れや汚れ等の悪い状態のロマン君の剣を鍛え直して貰う為にフィールウッド国で出会ってから此処までやって来ました」

 

 それから村長と話し合いになり、突然この村に来た経緯を簡潔にエミルが説明し、フィールウッド国から此処まで来たと話していると村長は少し考える素振りをする。

 

「フィールウッド…もしや貴女様が魔王討伐の勇者を募った魔法使い様でしたか‼︎

 この村にもその張り紙が届き、かぼちゃ亭で貼られてましたから良く存じ上げております! 

 そうでしたか…そしてロマンの剣は確かにゴッフ様のお弟子様が打ったと彼の父親である『ケイ』から伺っておりました。

 そしてそのアル様がこの村に来て…これも1つの星の巡り合わせでしょう」

 

 会話の中で村長はあの張り紙の件を思い出し、かぼちゃ亭に貼られていたので知っていた事を話す。

 更にロマンの父、ケイの剣はアルが打った物だとも覚えており、その本人すら村にやって来ている事から星の巡り合わせと話して運命的な物を感じていた。

 

「はい、私達もこれは1つの運命として巡り合わせを神様に感謝しております。

 そして村長様達への挨拶ともう1つ…ロマン君のご両親のお墓に献花してご挨拶をしたらかぼちゃ亭に向かおうと道筋を立てておりました」

 

「そうでしたか…ならこの時間帯でしたら1泊村に滞在すると良いでしょう。

 この近くでミスリルが取れる鉱山まではとてもではありませんが、今からでは夜になるまでに村へ戻る事は出来ません。

 そして夜道は夜盗や魔物の跋扈する時間帯、王女殿下やロマンを危険に晒したくはありませんのでどうかご滞在をお願い申し上げます」

 

 そしてエミルも運命めいた巡り合わせを神に感謝しながら、村長への挨拶を終えた後にもう1つの用事…ロマンの両親の墓に献花し挨拶をし、それからアル達の居るかぼちゃ亭に向かうと話す。

 すると村長はこの村の近くでミスリルが取れる鉱山に今から行けば日が落ちるまでに村に戻って来れないと話し、1日の滞在を促した。

 エミルもロマンも確かに夜は魔物が活発化する為互いに隣に居るパーティのパートナーにもしもがあってはと考え、滞在する方に思考を落ち着ける。

 

「分かりました、ではアイアン村に滞在させて頂きます。

 それでは村長夫妻様、突然の訪問に美味なおもてなしをして頂き誠にありがとうございました」

 

「いえ、こちらこそこの村の名物のかぼちゃパイや紅茶を美味しいと言って頂きありがとうございます。

 ではロマン、ご両親に挨拶して来なさい」

 

「はい、村長に奥様、ご馳走様でした。

 …じゃあ、僕の両親の墓に案内しますね」

 

 そしてエミル達は村長への挨拶が終わり、名物のかぼちゃパイと紅茶をご馳走した夫妻に感謝しながらロマンが両親の墓がある共同墓地へとエミルを案内し始めた。

 因みに公の場であった為ロマンはエミルを呼び捨てする事無く拙い礼節の手を引きながらではあるがしっかりと案内をし、そして直ぐに墓地へと辿り着く。

 するとロマンの両親の墓に比較的新しい花が添えられていた。

 

「…あれ、父さん達の墓に誰かが献花している?」

 

「あ、本当ね。

 村の誰かが花を?」

 

「そうかも知れない…けど、この花添えられてからまだ新しいからきっと父さん達の知り合いの誰かが村に来て花を添えてくれたんだと思う。

 この村のルールで共同墓地に花を添える日が決まってるし、その日までまだ時間があるから…」

 

 エミルは村の誰かが花を添えたのかとロマンに聞くと、彼も誰が添えたか分からず、そもそもこの墓地に花を添える日は決まってる為村の外から両親の知り合いが花を添えた可能性も唱え、2人は不思議がりながらも献花をし墓の前でお祈りに話を掛け始めていた。

 

「…父さん、母さん、久し振りだね。

 僕、新しい仲間が出来たんだ。

 此方の魔法使いのエミル。

 エミルはセレスティア王国の王女様で、本当に凄い人なんだよ。

 自信家で、強くて、優しい…そんな人なんだ」

 

「初めましてロマン君のお父様、お母様。

 私はセレスティア王国第2王女のエミルです。

 彼は私を凄いと言いますが、ロマン君も本当に素晴らしい人です。

 その優しく、勇気ある人柄や強さは私の魔王討伐と言う悲願達成に1歩前進させて貰わせて頂きました。

 なので、これからも彼に大いに助けられる事になりましょう。

 立派な息子さんを育ててくださった事をとても感謝しております…」

 

 2人はそれぞれの思いや互いの良さを互いの目で見た物を思い出しながら話し、更にエミルはロマンが毎年命日に献花しに来る程互いを愛していた事を頭で理解し、ロマンを大切に育てた事に感謝しながらこれから彼が自分を助け、ロマンがエミルを助ける未来図を立てながら再び祈りを捧げるのだった。

 

「…それじゃあエミル、かぼちゃ亭に行こう。

 日が傾き始めたし、幾らセレスティアの近くでもミスリラント領は本国並に夜は寒くなるから早く屋内に入ろう」

 

「そうですね、では行きましょうかロマン君。

 さようなら、ロマン君のご両親様方。

 また何時か村に赴く事があればお伺い致します」

 

 そして、日が傾き始めた為ロマンがエミルに話を掛け、エミルも彼の両親に最後の挨拶を済ませた後2人でかぼちゃ亭まで歩き始めるのであった。

 

「それでエミル、かぼちゃ亭は村の中でのギルド運営の宿屋さんで、僕は其処で冒険者登録をして当時レベル77だったからCランクで旅に出る事になったんだ」

 

「つまりロマン君には色んな思い入れがある場所であり、旅の始まりの場所なのね。

 そんな所にアルさんが泊まってるって運命的だよね〜」

 

「うん、小さな村だけど宿屋ならもう一軒あるのにね………あ、此処がかぼちゃ亭だよ!」

 

 その案内の間にロマンはエミルにかぼちゃ亭こそがこの村のギルド運営の宿屋であり、ロマンが両親を失った際にレベル77で冒険者登録をし旅立った様々な物が詰まった場所だとエミルは口にし、其処にアルが泊まってるのも運命的だと話しながら2人はかぼちゃ亭に辿り着き扉を開けて中に入った。

 

「いらっしゃいロマン! 

 村の皆から君が帰って来たって大騒ぎになってたから来ると思ってたぜ! 

 何でも魔王討伐を目指す女魔法使いさんと一緒に来たんだってな!」

 

「お久し振りですガルさん。

 はい、そして此方に居る魔法使いの女の子、エミルがその魔王討伐を目指す子なんです」

 

「初めまして、魔法使いのエミルと申します」

 

 すると客がそれなりに居るかぼちゃ亭受付に立つ男性、ガルが入って来たロマンに村の騒ぎから此処に来ると思いながら待っており、更に魔王討伐を目指すエミルと共に来た事も伝わっており、ロマンはその魔法使いのエミルを紹介すると当のエミルはローブの裾を摘みながら挨拶をし、ガルは驚いた様子で彼女を見ていた。

 

「こりゃ驚いた、張り紙じゃ分からなかったけど直に見たら分かったよ、貴女はセレスティア王国の第2王女殿下じゃないですか! 

 そんな方とこの村が誇る勇者のロマンが魔王討伐に………まるで500年前の初代勇者一行の再来みたいじゃないですか‼︎」

 

「あはは、そう言われましたら私は初代女王のライラ様に当たりますね、勿論ロマン君はロア様に。

 それでなのですが、私達は探し人が居てこの村に来ました」

 

 ガルはエミルを王女だと見抜きながら、その王女魔法使いと勇者が魔王討伐の旅をする事を初代勇者一行の再来と話すとエミルは自身をライラみたいだと言い(実際前世はライラである)、ロマンをロアに見立てそれを横で聞いてるロマンは少し恥ずかしがりながら苦笑していた。

 そしてエミルは本題の人探しをしている事を明かしながら話を始める。

 

「それも聞いてますよ、ゴッフ様のお弟子のアルさんを探しに来たのでしょう。

 そのアルさんなら」

 

「俺様なら此処に居るぜ、王女殿下様よぉ!」

 

 ガルはエミル達がアルを探している事も聞き及んでいたらしく、その居場所を教えようとした所で宿屋の客席の一角から声が上がり、エミルとロマンがそちらを見ると爛漫な笑顔で手を振る弓を携えたエルフの少女に、ローブのフードを深々と被る体格的に見れば女性が、そしてドワーフの低身長に合わせた左右対称に巨大な刃が付いたの斧を背負い、更に手投げ斧も装備している髭が立派なドワーフが居た。

 

「(エルフの女の子に…あっちは多分ダークエルフの女の子、そしてドワーフの男性! 

 間違い無い、この人達だ!)」

 

「(あのドワーフの方は、やっぱりアルさんだ! 

 直接会った事は無いけど、間違い無い!)」

 

 エミルは直感し、ロマンもドワーフの男性を見て理解する、この3人がサラ、ダークエルフのルル、そしてゴッフ一門のアルだと。

 するとアルがジョッキの酒を飲み終えると席から立ち上がりエミル達の方にやって来る。

 

「ふむ、如何やら勇者の坊主の武具は俺の作った物一式らしいな。

 王女殿下様のミスリルローブもエルフの服職人と共同で編んでミスリルで仕立て上げた物だ。

 目の付け所は褒めてやる、俺様の作り上げた物を選んだんだからな」

 

「それは光栄に存じ上げます、ゴッフ様のお弟子様のアル様」

 

「アルで良い、様付けなんか痒いぜ。

 …所で、お前さん等俺様が魂を込めて作り上げたもんに魔法祝印(エンチャント)を掛けてやがるな?」

 

 アルは自身が作り上げた物を使うエミル達の目利きを褒めると、エミルはゴッフの弟子としてアルに礼節を以て話し掛けるが、本人は如何やらその手の物は痒くなると言い他人から様を付けられるのを拒んでいた。

 するとアルは続けて自身が作り上げた防具に魔法祝印(エンチャント)を掛けた事を見抜き、サラが「あ〜」と言いながら頭を押さえた所を見てエミルは何か拙い事をしたのかと思い始めた。

 

「あ、あの、アルさん? 

 エミルが掛けてくれた魔法祝印(エンチャント)が何か拙い事が?」

 

「ああ、大いにあるさ勇者の坊主。

 何せ………俺様が魂込めて作り上げた芸術品にして武具に勝手に魔法祝印(エンチャント)なんて小細工を掛けるのが俺様は気に食わないんだよ‼︎

 王女殿下様よぉ、そんな小細工が必要無い俺様の作り上げたもんに誰の許可を得て俺様の武具に魔法祝印(エンチャント)を掛けやがった‼︎」

 

 如何やらアルは自身が作り上げた物に絶対の自信があり、それに魔法祝印(エンチャント)を掛ける事を大いに嫌う性格らしくエミルに食って掛かり始めた。

 エミルは彼はライラの時に世話になったゴッフと違い魔法祝印(エンチャント)によるバフで自分の作った物にチャチを付けられたと感じる質だと思い、正直に謝ろうと思った。

 

「…それはごめんなさい、私は良かれと思ってロマン君の防具やこのローブに魔法祝印(エンチャント)を勝手に掛けてしまいました。

 貴方がご自身の作り上げた物に絶対的な自信と誇りを持っていると知らずに。

 この非礼は許して頂けるまでお詫び致します」

 

「あぁん? 

 詫びだぁ? 

 一度掛けられた魔法祝印(エンチャント)は武具が壊れない限り外れねぇんだよ、そしたら俺様の防具はそんじょそこらなもんじゃ壊れねぇから一生詫び続けるって事だぞ分かってんのか!」

 

「はい、それは大いに。

 なので詫び続けます、申し訳ありませんでした」

 

 エミルはアルに頭を下げ、勝手な事をした詫びを入れると言うとアルは自分の防具が壊れない自信があるらしく一生詫び続けるのかと問うと、それを肯定しながら頭を下げ続けていた。

 するとサラとルルがアルに近付き彼を押さえ始めた。

 

「ほらアル、エミル王女殿下は勇者君の力をもっと引き出したいから魔法祝印(エンチャント)を掛けてるんだからさ、イチャモンを付けるのは止めなってばぁ」

 

「イチャモンだぁ⁉︎

 俺様はゴッフ(ジジイ)の弟子として作り上げたもんは滅多に壊れないのとそんな小細工抜きでエンシェントドラゴンだろうが何だろうが通用する自信があるんだよ‼︎

 それを」

 

「はいストップ‼︎

 もうこれ以上は他のお客さんにも迷惑になるから押さえてよ! 

 じゃないとアルの髭を抜くよ!」

 

 サラはアルのヒートアップを止める様にエミルとの間に入り、彼女がロマンの為に魔法祝印(エンチャント)を掛けたと話しながらアルの文句をイチャモンと言い放つ。

 するとアルは自身の作り上げた物に対する愛着心から来る物をイチャモン呼ばわりされた事に更に怒るが、サラが髭を抜くと言うと舌打ちしながらエミルにこれ以上何かを言うのを止めた。

 

「ごめんね、アルってばこんな頑固者で気に入らないお客にも出てけ〜って言うタイプなの。

 気を悪くしないでねエミル王女殿下に勇者ロマン君」

 

「あ、私の事はエミルと呼んでくれて構いませんよ。

 そして以降お見知り置きを、賢王ロック様のご息女、サラ王女殿下」

 

「あ、私の方もサラで良いよ、多分だけどこれから長い付き合いになると思うし! 

 ささ、こっちに来て一緒にお話しましょ!」

 

 サラはアルの頑固振りを説明して謝ると同時に、エミルとロマンの事を互いに気軽に呼び合い更に自然とテーブルに招き話をする形になった。

 それを聞いていたルルはフードを取って褐色でサラやエミルに負けない美少女の顔を見せ、1回頭を下げるとまたフードを被り直した。

 

「な、何だか嵐みたいなパーティだよねエミル。

 でも、アルさんは頑固だけど自分に自信を持ってサラさんも元気一杯そうだよねエミル」

 

「ええ。

 そしてルルさんも何だか不思議な感じがするけど良い人そう。

 夜もこれからだから沢山話がしたいわ」

 

 それ等を見てロマンもエミルもアルは頑固者だが3人共根は良い人物だと思い2人で同じテーブルまで歩いて行きロマンの剣を含め沢山話をしようと決めるのであった。

 しかし、その中でエミルはサラを見ながらある事を考えていた。

 

「(…そう、話をしないといけない。

 私の先生のアレスター先生がどんな風に私達兄妹達を指導して、そして何故死んでしまったのかを。

 だってサラさん、彼女は『アレスター先生の実のお姉さん』なんだから…)」

 

 それは自分達の講師であり、魔法の天才と謳われた者、エルフの青年でありサラの弟…つまり賢王ロックの実子であったアレスターについてどんな風に自分達に講義し、そしてどの様に死んだのかを説明すると言う王女でもあり生徒でもあったエミルの重く辛い話をすると言う覚悟の要る事であった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
アルは自分の作った武具に勝手に魔法祝印(エンチャント)を掛けられるのが嫌いな人物でした。
つまり頑固者です、はい。
そしてアレスターは実はエルフでサラの弟でした…。

さて、今回は絶技の説明を致します。
絶技は魔法と同じく8属性存在し、技の種類は1属性につき下位と上位の2つになります。
そして技名は例えば風の下位絶技なら『疾風剣or疾風斧or疾風槍』と技名に使ってる武器の名前が入ります。
例外は光属性と闇属性の絶技になり、此方は名前が固定されてます。

次回もよろしくお願い致します。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。