転生魔法女王、2度目の人生で魔王討伐を目指す。   作:”蒼龍”

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皆様おはようございます、第8話目を更新致しました。
今回は主要人物達の会話に重点を置く回になります。
その中で意外な人物関係が分かったりするかもしれません。
では、本編へどうぞ。


第8話「エミルとロマン、会話する」

「さて、私達について聞きたい事があるならジャンジャン言ってよ! 

 何でもは答えられないけど、答えられる物は絶対答えるよ!」

 

 エミルとロマンの2人がサラ達と同じ席に座った瞬間、サラは爛漫と言う言葉が似合う綺麗で明るい笑顔を見せる。

 それに合わせてルルもフード越しに頷き、アルはまだエミルの魔法祝印(エンチャント)の件で不機嫌なのか酒を更に頼み飲みながら、先程騒いだ事を料理を運ぶガルの妻『リィナ』に謝りながらチップを渡していた。

 

「えっと、それじゃあ……皆さんは何故アイアン村、僕の故郷へ来たのですか?」

 

「ああそれはね、ルルが予知で私達と君達がこの村で出会うって内容を視たからなんだよ! 

 ルルはね、リリアナ様の1人娘でリリアナ様の予知を受け継いで、リリアナ様と同じ位的中率が高いんだよ‼︎

 外した回数なんて両手の指で数える程度しかないの‼︎」

 

「ええ、リリアナ様の娘さん⁉︎

 凄い人の集まりなんだ、このパーティ…!」

 

 先ずロマンが当たり障りなく、何故アイアン村にサラ達が来た事を尋ねると何とルルは初代勇者一行の予言者リリアナの1人娘だと知りロマンも、そしてエミルもリリアナの娘やその予知により巡り合わせた事等に驚きながらルルを見ていた。

 

「…あ、あの………予知ならお母様の方が外さないですし、私は………シーフとして冒険してた方が…気が楽、何です…なので、私の事は様付けとかさん付け、しないで下さい…少し恥ずかしい、です」

 

「は、はい………ルルはシーフなんだ…。

 エミル、皆さんのレベルってどれ位なの?」

 

「えっとね、アルが162、サラが158、ルルはロマン君と同じ160だね。

 皆も相当のレベリングと高濃度魔法元素(マナ)吸収を繰り返したんだね」

 

 するとルルはフード越しに喋り、気恥ずかしそうにしながら自分より母の方が凄いと話しつつ、さん付け等をせずに呼び捨てして貰う様に頼み込んでいた。

 それを聞いたロマンは早速ルルを呼び捨てにしながらエミルに3人のレベルを聞くとサラ以外が160に到達しており、158のサラを入れても平均レベルは160を叩き出しており、エミルをして相当なレベリング等を繰り返していたと言わしめていた。

 

「まぁ俺様の武具職人の納期がある時期は一旦解散してそれぞれの仕事優先で仕事を終えたらまた集まってを繰り返しだからよ、本当ならゴッフ(ジジイ)のレベル250を超えたい所だが、それも中々出来ずにいるんだ。

 だからこそゴッフ(ジジイ)やその仲間達である賢王や予言者は本当に強えんだよ」

 

「…そうですね、ゴッフ様達は強いですよ」

 

 しかしながらこのパーティはゴッフの本業の繁忙期には一旦解散しそれぞれの本業、サラは王女の責務、ルルは恐らくリリアナの子として第2の予言者として活動をしているだろうとエミル達は思いながらそれが理由で中々レベル250に届かないとしてアルはゴッフをジジイと呼びながら本当に強いと尊敬している様だった。

 それを聞きエミルは彼等は本当に強かったとその当時の姿を思い描きながら笑みを浮かべるのだった。

 

「(そしてリリアナの子であるなら恐らくは……彼女は『ダークエルフと人間』のハーフ。

 リリアナには愛する人が居て、更に殿方も相思相愛婚だった。

 でも、私達のある取り決めでリリアナの夫を誰であるかを秘匿する事にした…そしてその子供…ルルももしかしたら…)」

 

 更にエミルはリリアナの事を特に思い浮かべ、その殿方は人間で相思相愛の末に婚姻を結んだ事を知っていた。

 しかし初代勇者一行の取り決めで夫の存在は秘匿され、その子供となればある可能性も頭に浮かべていた。

 しかし、それでもエミルは自分の『決めた事』を曲げる気は無いとしてルルには悪く思うが自分のプランを進める気でいた。

 

「じゃあ他に聞きたい事とか無いかな、無いかな?」

 

「…では個人的に、お話したい事があります、サラ、いいえ、サラ王女殿下。

 それは私の先生だった方、魔法講師アレスター先生の事です。

 あの方がセレスティア王国の専属魔法講師をしていらっしゃったのはご存知ですよね。

 …他でも無い、アレスター先生のご令姉であらせられる貴女なら」

 

「…うん、知ってるよ。

 死んじゃったアレスターが貴女達ランパルド国王陛下の推薦でご子息達の講師になって、皆の才覚を凄いって評価してた事を手紙とかで良く聞いたり見たりしてたから。

 それで、あの子の死に顔は如何だったの? 

 私はフィールウッドに運ばれた時の顔しか知らないから教えてくれないかな?」

 

 次にサラが何か他に聞きたい事は無いかと聞くと、エミルは王女としてアレスターの事を話したいと考えていた事を実行し、サラもそれを聞き少し苦笑気味になりながら弟が生徒達を高く評価していた事を聞いたり手紙のやりとりで知ったと話した。

 そしてフィールウッドに運ばれた際の死後の顔しか知らない為、エミルにどんな死に顔だったのかを問いた。

 

「…先生の最期を見届けたのは私のお兄様のカルロ第2王子でしたが、その後に運ばれて来た弔い部屋での顔は拝見しております。

 そのお顔は………生徒を守り切った事からの安堵か、安らかに眠る様に目を閉じておりましたわ、サラ王女殿下」

 

「…そっか、そうだよね。

 あの子が誰かを呪ったりする人じゃないし、ましてや生徒を守った末だったって話だったから満足して神様の下に旅立ったんだって改めて分かったよ。

 ありがとうございました、エミル王女殿下」

 

 エミルは嘘偽り無く死んだ後に弔い部屋に運ばれた際の顔を返答すると、サラも死因を知ってる為納得し改めて弟が満足して神の下に旅立って行った事を話すとサラはエミルに握手を求めて来る。

 無論それを拒む訳無く握手をする。

 するとサラの手が少し震えていた事を察知しながら思考し始める。

 

「(震えてる…無理も無いですね。

 サラは第1王女にしてロックの第1子、既に450年以上は生きておられる…もしかしたらロアを見た事もあるかも知れない方だ。

 対するアレスター先生は第3子にして第1王子、150年前に漸く生まれた男児にして魔法の天才だった。

 でもエルフからしてみれば余りに若過ぎる年齢で死んでしまわれた…辛く、悔しくある筈ですよ…)」

 

 エミルはサラが450年以上、正確には480年生きるロックの第1子である事をアレスターの世界の国々の王族達に関する講義で教わり、そのアレスターは第3子でまだ150年程度しか生きていないエルフからしてみればまだまだ若く早過ぎる死であった。

 それを考えればエミルは理不尽に何もかも奪う魔物や魔族達への怒りの炎が余計に、但し静かに燃える事を感じていた。

 

「………さて、しんみりしちゃったしお口直ししながら今度は私達からエミル達に聞きたい事があるよ! 

 エミルやロマン君は何で魔王討伐を目指すのかな? 

 私はお父様からその使命を受け継いだからだけど、2人は何でかな?」

 

 そうして握手を止めたサラは次にエミル達に何故魔王討伐を目指したのかを問い質して来る。

 自身も魔王討伐の使命をロックから継いだ事を明かしながら、2人を見やり返答を待っていた。

 

「あ、あの、じゃあ僕から。

 僕はエミルから君が真の勇者だって誘われる形で魔王討伐をする事になったんだ。

 でも僕自身は話し合いで終われば、とかも考えてたんだけどエミルに諭されてそれは無理だって知ったんだ」

 

 サラの問いに先ずロマンから答え、エミルに勇者勧誘で誘われそこで勇者の資質を見出され魔王を斃す旅に同行する事を話す。

 更に魔王と話し合いで決着出来れば良かったとも話して無益な争いを好まない優しさや、まさか斃すべき相手と話し合いで解決しようと言う斜め上の考えを抱き、生きて来た勇気ある部分もサラ達に見せ彼女達を感心させる。

 しかし話し合いの部分はエミルに無理だと言われている事も明かしていた

 

「じゃあ次は私ね。

 私は勿論アレスター先生の理不尽な死がきっかけだけど、私の場合生まれた後物心付いた時から魔王討伐をしようって考えてたわ。

 だってこれは私達の先祖である『ライラ』様の悲願、なら『私』が叶えるんだ、そう思いながら今お父様の勅令で旅をしているわ」

 

 次にロマンを旅に誘った張本人のエミルが答え始め、アレスターの理不尽な死からがきっかけとしつつ、現代に生まれ物心付いた時から魔王討伐を考えていたとしながら4人に明かした。

 それは『ライラの時』からの悲願であり、その転生者である『自分』が達成しなければならないのが本当の理由であるが、これを一族の悲願と言い換えながら国王の勅令で旅をしていると話した。

 

「すっごいよエミル‼︎

 物心付いた時から一族の悲願を胸に生きるって相当な決心だよ‼︎

 それにロマン君も、誰も思い浮かべなかった視点から戦いが終わればって考えるのは周りから色々言われるけど、それを持つのは勇気ある事だよ‼︎

 無益な戦いも嫌いそうだし、本当に勇者ロア様みたいな方だよ君‼︎

 そしてそのレベル、人間の寿命で其処まで上げたのは2人が長寿の私達以上に血の滲む努力をした証だよ‼︎」

 

「…ふん、認めてやるぜ、お前等の魔王討伐の想いは『本物』だってな」

 

 サラはそれを聞きエミルやロマンの凄さを実感し、エミルには悲願達成の使命感の大きさ、ロマンには無益な争いを拒む優しさと勇気を兼ね備えてる事を溢れんばかりの笑顔で満足気に話していた。

 更に長寿の自分達と違い寿命が短い人間の2人が自分達以上に血の滲む努力をした事も褒め称え、不機嫌だったアルもそれらを聞き少し機嫌を直した様子だった。

 

「そ、そうかな………と言うより、サラはご先祖様を見た事が?」

 

「うん、私は480年生きるエルフ、ルルは490年も生きるダークエルフと人間のハーフだからロア様を2人共見た事あるよ!」

 

「は、はい、あの方は、本当に素晴らしい勇者、でした」

 

 ロマンはロアの様だと言われ苦笑気味になるが、此処でサラは初代勇者ロアを見た事があるかと聞くと、サラは480年生きた中で、ルルも人間とダークエルフのハーフと490年も生きていると明かしながら見た事があると話した。

 そしてルルも此処でおどおどした口調ながらハッキリとした声でロアは本物の勇者だったと答えた。

 

「ルルは人間とダークエルフのハーフで、2人共ロア様が死んでしまわれた時に立ち会った生き証人なんだ…凄いな…」

 

「単に長生きなだけだよ〜。

 それにしてもロマン君もだけど、エミルも流石はルルが視た『予言に記された子』だよ、魔王討伐の意気込みが半端ないよ!」

 

「…えっ、予言に記された、子?」

 

 ロマンは長寿組の2人がロアが没した時代に立ち会った生き証人であることをすごいと口にするが、サラは単に長生きなだけと其処まで凄くはないと話していた。

 そしてエミルをルルが視た予知にある予言に記された子と呼ぶと、エミルは素っ頓狂な声を上げて何なのかを3人に聞き始めた。

 

「ああ、お前は14年前に俺様達が魔物討伐の依頼後に突然ルルが視た予知にあった奴なんだよ。

 その内容は『世界の命運を握りし彼の子、この世に誕生せり。

 その者世界を左右する選択を取りし者也、神託を受けし者達は彼の者の旅立ちを待つべし』だ」

 

 アルはエミルの疑問に応える様にルルが14年前、つまりエミルが生まれた時に予知でその存在を知り、更に自分が世界の命運を握っているとまで話され空いた口が塞がらず、ロマンも驚きながらエミルの方を見ていた。

 

「つまり俺様達はお前が旅立つその時を待ってたんだよ。

 そしたらお前関連の3度目の予知で魔王討伐やら真の勇者を見出して俺達を探してるから必ずアイアン村で待つ事とか色々とぶっ飛んだ事をやってるから俺様達はコイツは間違いねぇ、世界の命運を握ってやがると感じて予言の待ち合い場所のアイアン村でお前達を待つ事にしたんだ。

 丁度俺様も久々に会いたい奴等が居たから願ったり叶ったりだった…だがそいつ等は3年も前に死んじまったと言われちまったがな」

 

 更にアルは言葉を重ね、ルルはエミルが魔王討伐の旅に出たり、ロマンに真の勇者の資質を見出した事すら予知し、更には3人を探してるとまで当てられそしてアイアン村で待つ事すら予知により定められていたと知り此処まで当てられるとエミルもロマンもリリアナ譲りと言われた予知の的中率に驚愕していた。

 

「(さ、流石リリアナの子…物すっごい予言の的中率よ………それにしても私が世界の命運を握る、ねぇ。

 寧ろ命運を握ってるのはロマン君じゃ?)」

 

「あ、それと貴女に関する2度目の予知は『1人の勇者、悲しみを背負い故郷を旅立つ。

 その勇者、世界の命運を握りし彼の子に巡り逢いし運命也。

 しかし勇者と関わる事無かれ、勇者の資質を高める為艱難辛苦に向かわせるべし』だったんだよ。

 だから私達3人は勇者勧誘はせずに旅してたのよ」

 

「それって………僕の事、だよね、間違って無ければ…」

 

 エミルがルルのリリアナ譲りの予言的中に脱帽し、しかし世界の命運を握るのは勇者、つまりロマンの方だと感じていた。

 其処にサラが2度目の予言の内容を話し始め、其処には明らかにロマンの事を指す内容が予知されていた事が窺い知れ、更にサラ達側からロマンに関わってはいけないと制約付きの予言であった事まで聞き、ロマン本人は自信が無いながらも自分の事かと3人に問いていた。

 

「ああ、2度目と3度目の予言を照らし合わせばお前の事になるぜロマン。

 悲しみを背負ってとか言うのが何なのか分からんかったが………この村に来て知っちまったよ。

 まさか、お前にがケイと『テニア』の息子だったとはな。

 2人が死んでるのを初めて知って愕然としちまったぜ、俺様も」

 

「えっ、アルさ…ア、アルは父さん達を知ってるんですか⁉︎」

 

 するとアルが予言を照らし合わせれば勇者がロマンの事を指すのを話し、更に2度目の予言に記された『悲しみ』をこの村に来て初めて知り、且つロマンの両親の名を出してロマンに両親を知ってるのかと聞かれ、酒を飲みながら答え始めた。

 

「ああ、ケイは冒険者で俺が店に武具を直接納品してる時に初めて出会って、俺様の武具の良さを見抜いてその店で買って行ったんだ。

 そして俺様が作ったと知ってビックリ仰天してな、あれは面白かったぜ。

 オマケにそれをテニアに見られてそれがきっかけで2人は冒険して、そして結婚してからは冒険家を引退するって俺に言いに来たんだ」

 

「あ、因みにアルは気に入らない奴は客でも追い返す頑固者ね」

 

 如何やらアルはロマンの両親の旅の始まりに立ち会った者らしく、その時のエピソードを嬉々として語り、サラが頑固だと語るアルに此処まで言わせるのは本当の上客だったのだとロマンは知り、自分の両親の偉大さをまた1つ知れて嬉しさで笑みが溢れていた。

 

「そして息子が10歳の誕生日を迎えて、しかも勇者だった事を初めて俺様も聞いた。

 で、あの子に修行が終わったら俺様の打った最高の武器をあげたいって2人で話して来やがったから特別にミスリルソードを打って譲ってやったんだ」

 

「…父さん…母さん…」

 

 更に話は続きロマンが10歳の誕生日を迎え世界樹での修行を始める際に、それが完遂した暁にはアルの打った武器を渡したいと話に来ていた事を聞き、其処でミスリルソードを打ち鍛え譲った事を語り、ロマンはこの剣は元から自分に渡される予定の物だったと知り剣の柄頭に手を掛けながら両親の愛に涙を流しそうになりながら堪え、話を聞き続ける。

 

「そしてそれから5年が経過したからもう修行は終わってるだろうって思って予言もあったからアイアン村に来たら………2人は3年前にミスリルゴーレムに襲われて死んじまってた、息子はケイの形見のミスリルソードを持って旅立っちまったって村の連中に言われたんだ。

 だから俺様は花屋に立ち寄って墓地に花を供えたんだ、別れの言葉を掛けながらな」

 

「あの花はアルが…本当に、ありがとうございます」

 

 そしてアルは村に来て2人の死を初めて知り、さらに息子のロマンは形見のミスリルソードを持って旅立ったと言う事を聞き急ぎ花屋で花を買い墓に供えたと話す。

 2人が見たあの花束はアルが供えた物と知りロマンはアルに礼を述べて頭を下げた。

 アルは別段特別な事をした認識では無い為そっぽを向いていたが、黙って聞いている為これが彼なりの礼等の受け取り方なのだとエミルは思っていた。

 

「それで、しんみりした所で空気を一新するために聞くをだけど、エミルやロマン君は何で私達に会いに来てくれたのかな?」

 

「ああ〜それはですね、ロマン君の剣を打ち直して貰いたいからなんです。

 ロマン君、アルに剣を見せましょう」

 

「うん。

 あの、これが父さんの形見のミスリルソードなんですけど…」

 

 そうしてサラがジョッキのお酒を飲み直し、場の空気を帰る為に何故エミル達が自分達に会いに来たかを聞くと、エミルからロマンの剣を打ち直す様に話す。

 そしてロマンがアルに剣を鞘毎渡すとアルは唸る様に声を出し始めた。

 

「コイツは間違いねぇ、ケイ達にやったミスリルソードだ。

 さて、具合は…」

 

【シャキン】

 

「…ふむ、手入れは欠かされてないが刃毀れや刀身にダメージが目立つ。

 こりゃ打ち直しが必要だったのにそれが出来ねぇまま使い続けた結果だな。

 だが此処まで状態が悪いのに折れる様子が無いのは間違い無く担い手が良い腕をしてるからだな。

 よし良いぜ、この剣は俺様が直々に打ち直してやる、明日の朝に鉱山に向かうぜ」

 

 アルはロマンの剣をまじまじと見ながら指で刀身を叩いたり等をして今の強度を確かめ、それにより確かに剣はボロボロにはなってるが折れる心配も無い、ロマンの使い方が良かった為と言いながら剣の打ち直しと明日に鉱山に向かう事が決められると同時に鞘に戻したロマンの剣を返却する。

 

「あ、ありがとうございます‼︎

 お代は必ず支払い」

 

「ああ金なら要らねぇよ、俺様達は食い扶持に困る程貧乏じゃねぇしな! 

 それにコイツはお前の親に譲ったモンだ、それを更にその息子から金を取ったら俺様やゴッフ(ジジイ)の一門の職人魂を穢ちまう」

 

 ロマンは剣を打ち直す事を承諾したアルに礼を言い、それに掛かる代金を支払うと言おうとした所でアルが金は要らないと言い放つ。

 その最大の理由としてロマンの両親に譲った物であるその剣を直したとしてロマンから金を貰ってしまうとアルや師のゴッフの一門の職人魂を穢すと言う武具職人にしか分からない独特の感性による物だった。

 

「…で、でも」

 

「はぁ、それでも代価を払いたいなら…おい宿主、俺様からコイツ達に依頼を出したい‼︎

 内容は一緒に鉱山へ行ってミスリル鉱石を採掘する、報酬はコイツの剣の修理だ‼︎」

 

「はい、依頼を受託しました! 

 と言う訳でロマンに王女殿下、これを受託しますかい?」

 

 しかしそれでもロマンが引き下がらない為何とアルはロマンの剣を直す為のミスリル鉱石の採掘依頼を出し、その報酬に剣の打ち直すと言う依頼に対する対価を取り決めてそれをガルに叫びながら委任させる。

 そしてガルもそれを魔法紙(マナシート)に書き正式な依頼とするとロマンとエミルに受けるかと敢えて確認して来る。

 当然エミルの中の答えは決まってる為、ロマンを見ながら彼に返答を任せた。

 

「………はい、受けさせて頂きます!」

 

「あいよ、それじゃあエミル一行様に武具職人アルさんからの依頼を正式な受けた事を認めますぜ! 

 当然依頼の破棄には違約金が発生しますが…アルさんは如何しますか?」

 

「当然この話は無し、その程度だったってして2度と俺に会わねえって誓って貰うぜ! 

 このゴッフ(ジジイ)の弟子であるアル様と言う世界2位の武具職人に2度と会えねぇ、これ以上に無い違約金だぜ?」

 

 ロマンはエミルの表情を読み取り依頼を受ける事を元気良く返事すると正式な依頼として組まれ、違約金はアルに2度と会えない=腕の立つ職人に武具の修繕依頼を出せないと言う普通なら別の人に頼む選択肢があるが、アルはゴッフ一門を任されてる職人。

 彼の右に出る者が居るとするなら師のゴッフしか居ない為違約金として成立する物だった。

 

「はいでは………ロマンと王女殿下が依頼を受けた事を此処に証明します、魔法紙(マナシート)を渡しますので受け取って下さいな!」

 

「はい!」

 

 そしてロマンは受付まで歩き依頼が書かれた魔法紙(マナシート)を受け取りに行くと正式に依頼を受けた事がギルド協会に認められた判を押されエミルの初依頼はアルの鉱石取りの手伝いとなるのであった。

 

「ねっ、1度決めた事は曲げない頑固者でしょアルは? 

 でも腕は間違い無く保証出来るから絶対破棄しちゃダメだよ〜? 

 破棄したら本気でアルは見捨てに掛かるから」

 

「たく、俺様の腕をコイツ等にとって見ず知らずのお前に保証されても全く信用ならねぇっての! 

 兎に角明日だ、明日鉱山に向かうからそれまで力を付ける為に飲んで食うぞ!」

 

「は、はい…小口ながら、食べたり飲んだり、します…!」

 

 次に席に戻ったロマンと座って様子を見てたエミルにサラがアルは頑固者だが腕は確かだと言うが、それをアルはエミル達には見ず知らずの女に保証されても信用出来ないと本人の目の前で言い放ち、サラはブーイングを出すが明日の依頼の為にアルはガツガツと料理と酒を飲食し出し、ルルもチマチマと小口ながら食べ始めていた。

 

「じゃあ私達も料理を食べて明日に備えようロマン君!」

 

「うん、リィナさん注文を頼みます!」

 

 そしてエミルとロマンも料理を頼み始め、運ばれて来る肉料理やかぼちゃをふんだんに使った料理を食べ始める。

 更に宿屋にある風呂場でそれぞれ男性陣、女性陣に時間を分けて入り用意された2階の宿泊室のベッドに寝て英気を養うのであった。

 その中でロマンは剣を修復出来る事、エミルは初依頼を熟す事に心を躍らせながら睡眠を取り、その日は何時も以上に寝つきが良かったのだった。

 

 

 

 そうして迎えた翌朝、朝日が登り切る前に起きたエミル達とサラ達はほぼ同時に2階から1階に降り、するとリィナがテーブルを拭きながら5人が降りて来るのを待っていた。

 

「あらおはようございます、多分鉱山へ向かうから朝日が出る前に起きると思ってましたよ。

 直ぐに朝食をお持ちしますのでお待ち下さいませ!」

 

「はいリィナさん!」

 

 リィナは5人が鉱山に向かうならば朝日が登り切る前に起きて来ると冒険者達に長年料理を運んだ経験則から分かっていた為直ぐに5人の朝食に体が温まるお茶を用意し、5人はそれ等を食べ切りご馳走様の挨拶をするとリィナに見送られながらかぼちゃ亭を後にし、馬屋に預けていた馬と馬車を受け取り代金を払って門から外へ馬を歩かせ、そのまま一旦アイアン村から出て行った。

 

「さて、俺様達が向かう鉱山はミスリラント領の中の鉱山でもミスリルが採掘出来て1番近い『アグ山』の第2採掘場だ! 

 採掘道具は俺様の魔法袋(マナポーチ)の中に入ってるからお前等全員に貸してやるぜ!」

 

「分かりました、現地での採掘指示はよろしくお願いします」

 

 村を出た後のアグ山への道をサラ達の馬車(手綱はサラが握ってる)が前を行き、アルは馬車の荷台の中からサラ達含むエミル達4人に採掘道具を貸すと気前良く言い放ち、エミルとロマンは彼の指示を聞きながら採掘しようと決めながら馬車を運転して行った。

 エミルは冒険者になり初の、ロマンは形見の剣の今後が掛かった依頼を失敗しない様に心掛けながら東の方角から朝日が出始め、その温かな光に照らされながら目的地に向かうのであった。

 

 

 

「キシシシ、見ぃ〜つっけた〜!」

 

 しかし、その2つの馬車から800メートル後方の更に鳥達が飛ぶ様な上空にて、浮遊しながらエミル達の姿を捉える者が居た。

 その者は褐色肌に額に赤い水晶が付き、漆黒の鎧を付けし者………アギラの全体への忠告を聞きエミル達の命を狙い功績を立てようと画策した名も無き魔族であった。

 そしてエミル達はその魔族に狙いを定められた事を未だ知らずに居たのだった。




此処までの閲覧ありがとうございました。
エミル達とサラ達には図にすると意外な繋がりがあり、それ等が結び付いて今回の会話回になりました。
因みにルルは人間とダークエルフのハーフだからと言って純血のダークエルフより寿命が短くなる事は無いです、この世界のエルフやダークエルフ、ドワーフはそんな種族です。
そして最後に不穏な影がチラつきましたが…それは次回、牙を剥きます。

次回もよろしくお願い致します。

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