ヒカリちゃんはキングと遊びたい 作:SSKキング
「やっぱりだ」
「うん、そうだったね」
「思った通り」
「抜け穴はどんなモノにでもある」
光で覆われた町は無傷だった。
町の住人も勿論無事だった。
でも、殆どが唖然と空を見上げて固まっている。
ある者は、まるで神に祈りを捧げてたり、またある者は腰を抜かしたり。
一概に言える事は、まだ殆どが逃げていないという事。
「生き物たくさんだ」
「砲撃だったら簡単だったのにね」
「メンドウだけど、殺す」
「いいと思うよ」
「でも、油断だめ。この規模のバリア張れるヤツ、紛れてるかも」
そして、そんな光の中から悍ましい怪人の姿が現れればどうなるか。
神の御業と思ったこの光景が、更に耳を劈く様な轟音が幾度も轟く場で、奇怪で異形で醜悪な複数の頭を持つバケモノが降りてきたとなればどうなるか。
【うわああああああああああ!!】
固まってた人達も一斉に正気を取り戻す事が出来た。
ただ、上手く逃げれているか? と問われれば甚だ疑問である。
怪人警報も出ていない現状での襲来。
更に言うならヒーロー協会本部があるこのA市に大規模な怪人が現れたなんてこれまで無かった事に対する絶対的な安心感が覆ってしまった今。
この混乱しきった頭が、脳が、身体に全速力で逃げる様に指示出来ていたか? と問われれば疑問なのもムリは無い。
異形な姿の怪人が、己の腕を巨大な槌に変える。
それは人一人余裕で潰せるサイズであり、ここまでくれば攻城兵器だと言っても良い程の威圧感を備え、空から降りてくる。
「メンドウだけど、警戒するには1人1人潰していくと良いかも?」
「良いと思うよ」
「術者仕留めれば、後は船が皆殺す」
「でも、油断駄目。未知の相手、強い相手と思ってやる」
「うん。これまでにも有ったしね。全部殺してきた。油断は駄目。でも自信は持って」
悠々と降り立ち、巨大な槌を振り上げ、まずは照準を腰抜かして座り込んでる中年デブに向ける。
「ひっ、ひっっ、た、たすけ―――」
一通り眺めた後———。
「どうみても弱小種族。塵以下」
「そうだね。殺すの凄く簡単。でも数多い。船じゃなきゃ時間かかる」
「こんな種族があのレベルのバリア張る? 理解不能」
「はぁ。……いや駄目。弱くても、油断よくない」
攻撃するまでも無い、と判断。
ただ、頭を撫でるだけ、何なら歩いただけで潰れる様な強度くらいしかないのは視ただけで解る。
最初こそ油断なく全力で攻撃しようとしたが………涙と鼻水、失禁で見るに堪えない姿に成ってからは、その決意も萎えるというものだ。
油断駄目、と口々に出してる頭でさえも、半ばため息を吐くのだから。
取り合えず、この星に来て潰した相手第1号と言う訳で、踏みつぶそうとしたその時だ。
「そんな狼藉、許せると思うか?」
「「「「!」」」」
甲冑に身を包んだ男が、それを阻む。
A級2位ヒーロー イアイアン。
S級4位ヒーローアトミック侍の弟子であり、A級トップクラスのヒーロー。
一瞬の内に間合いに入りこみ、必殺の斬撃、居合を放つ。
そして、一息つく間もなく、頭の1つが切り離された。
ヒーロー協会屋上部にて。
死んだ魚の目をしていたキング。
直立不動で放心していたキングが目を覚ます。
「―――――ちょっとヒカリ氏」
「ん?」
記憶をどうにかこうにか揺り起こし、一体自分の身に何が起きたのかを冷静に分析し、何より直ぐ隣で笑ってる彼女の姿を見て絶対なる安堵をし……取り合えず抗議する。
「いきなりやられたらビックリするでしょ!?」
「やー、さっすがキング! 正直、ちょっと悲鳴上げたらどうしよう? って後で心配してたけど大丈夫だったね! 折角のキング像が台無しになっちゃう」
カラカラ、と笑うヒカリ。
キングは抗議はしているものの、やっぱり安心を与えてくれた事に対しては感謝しかない。
いつもいつも振り回されて死ぬような目に遭ってきたが、それでも運要素がいくらかあれど、このヒカリが居なければ、サイタマが居なければ間違いなく死んでいたという自覚はある。
でも、ある程度の文句を言うのくらいは感謝して貰いたいモノ、である。
「んっん~~…… 皆逃げてるみたいだね」
「あ、ああ。シッチ氏が通達して、軍を動かしてるみたい。元々その手の訓練はしててくれたのも良かった、って言ってたよ。幾らここがヒーロー協会本部のある都市でも、危険意識は高かったみたいだね」
年々増え続ける怪人災害。
A市は安心安全都市だと思っていたのも嘘ではないが、幾度となく迫る脅威に対し、圧倒的な力を持つ者、人ならざる力を持つ者は別にして、無辜の民はどうしても己の身を護る事が出来ない。
鬼レベルの怪人は、重火器をもってしても対応しかねるモノが殆どだから。
だからこそ、怪人は【災害】と称している。
人が災害に対して出来る事一番の有効な手段は逃げること、だから。
「見た感じ、4人くらい下に駆け付けてる?」
「うん。バング氏、金属バット氏、アトミック侍氏、プリズナー氏の4人が地上に降りてるよ。ヒカリ氏から連絡貰った通りに説明して」
「くぅ~~~~っっ、それでこそキングだよっ!! 燃えるねっ!!?」
「は、はははは………」
はしゃいでるヒカリといつも対照的なのはキング。
この相互関係はこのままずっと変わらないだろう。
まさにヒカリとヤミ………。
「(いやいや、闇だなんてそんな高尚な、それも格好良い表現など駄目駄目………。演じる事は出来たとしても、有事の際は俺は有象無象以下。基本塵も同じ……ああ、ヒカリ氏の傍に漂う微生物……これで良い)」
調子に乗らない。絶対に乗らない。勝手な判断断固NG。
これまで培ってきた処世術を今も100%活用している。
ヒカリが傍に居る事で安堵感は抜群に増したが、それでも初心は決して忘れないのがキングなのだ。
「キングさん!!」
そんな時だ。
サイタマ・キングに続いて、ブチ開けた? 穴から上がってきた者が居たのは……。
「いきなり驚くじゃないですか。と言うか、核兵器も耐えるシェルター破るって。相変わらず凄いんだからっ!」
その名は童帝。
S級5位の類稀なる才を持つ天才少年……だが、今の彼は年相応な幼い子供の様だ。
キングの力? の一端を見れてはしゃいでる子供。
余りにも頭が良すぎて、色々と不便だろうなぁ……と、何処か他人事ながらも心配していたキングにとっても良い事かもしれない。無論、自分以外に目を向けてくれたら、の話にはなるが。
「う、うむ。後日、メタルナイトに修繕・改善依頼するが良いだろう。……外からは堅牢かもしれないが、内側からはこうも脆い事が分かった」
「なるほど……。確かに外からの衝撃には強くても、内部からだったら……勉強になります」
「は、ははは………」
いつの間にかヒカリはいなくなっている。
傍に来て、姿を消してしまっている。
耳元で台本の様に色々として欲しい演出、リクエストをしてくれるのは正直擽ったい。
「キング。俺もやはり勉強になる。先生から言われた通り、キング。お前に学ぶべき所がまだまだ多くあるようだ。先ほどの他ヒーローたちへの発破もそう」
4人のヒーローたちが外へと出た。
それは、意図して……とは言えないかもしれないが、キングの言葉が有ってこそだとも言える。
キングが守っている地上に、怪人が降り立った。
協会のセンサーや、街中の防犯システムでもその姿をしっかりと捕える事が出来ている。
それでいて、キングの【ヒーローの時間】と言う言葉。
【敵は遊星からやってきた存在。―――今こそ、その力を見せ、示す時だ】
キング1人で滅する事が出来るのでは?
そう思った協会職員、無論S級ヒーローの中にさえも居た事だろう。
だが、それを見越して、誰一人としてたった1人に任せてヨシとするヒーローなどいないという事、その本質を見抜き、鼓舞を与えた。
如何に全ての怪人の天敵であり、人類最強のヒーローと言えど、その全てを守り抜くのは困難。倒す事が出来ても、守る事は難しい。それがこれまでの犠牲となった町や人達の数でも現れている。
だからこそ、未曾有の災害時、キングは己の力を示すだけでなく、真に守るべき者がハッキリしているその姿勢を見せた。
それに感銘を受け、更に高揚し、我こそがと立ち上がったのだ。
―――――——と、ここまでジェノスが盛り上がってくれたキング像。
勿論、目を輝かせてる童帝も似たようなものである。
「うんうん! でも、地上はキングさんの守りやあの4人が行った事で良いとしても、やっぱり一番の問題はあのバカでかい兵器だよね」
そして、ずっと燥ぐ子供モード……になってる訳ではない。
すぐさま現在の問題点を洗い出す。
「あの上空にいたんじゃ、中々手が出せない。乗り物を用意してもあの弾幕をかいくぐるのは難しいよ。キングさんが居なかったら、多分A市1000回は壊れてるんじゃないかな?」
クールダウン、リロード時間? でもあるのか、ある程度の
そもそもな話、あの頭上の宇宙船? の中に本当にあれだけの数の砲弾が備わっているのか? と言う疑問もある。
何せ一発一発がトンデモなくデカい。機関銃掃射! の如く勢いで撃ち続けてくるところを見ると弾丸生成でもしているのか、若しくは転送装置の様な未知の技術力なのか……
兎に角解らない事が多い。
それを防いでるキングには改めて尊敬と羨望を向ける思いではあるが、考える事が多そうだ、と童帝は頭を悩ます。
「この光も全てキングさんの堅牢な守り。とするなら、その逆、攻勢に打って出るとすれば、キングさんならどうする? あなたのプランを聞いてみたいな」
同じく昇ってきたのは筋骨隆々、筋肉ムキムキなヒーロー界一の怪力男、超合金クロビカリ。
格闘戦に置いてはシルバーファングと双璧を成す無類の男ではあるが、この手の戦闘に関しては、中々活用しにくい、と言うのが痛点。
思いっきり投擲を試してみたが、所々に穴は空くものの、殆ど焼け石に水。
―———ドッドッドッドッドッ
そして、一際高鳴るキングエンジン、その圧を感じた所で
「……俺がヤッても良いが、それをヨシとしないのが彼女ではないか?」
ちらり、とキングが視線を向けるのはタツマキだ。
今も何か気分が悪いのか機嫌が悪いのか、頬を膨らませて不貞腐れてる様子。
キングの視線や、キングが言わんとしている事の意味を理解したのか、今度は顔に幾つもムカつきマーク? を作って全否定。
「ちょっと!! 私がいつ、そんな子供みたいな事言ったっていうのよ!!? 私だって1人で片付けられるけど、あんたの見せ場を取っちゃうのも大人気ない、って思ってたから先手譲ってあげてんのにっ!!」
「ちょっ、た、タツマキちゃん。キングさんを怒らせちゃ不味い。幾ら温厚でも殺されるぞ」
クロビカリにどうか抑える様に、と間に入ろうとするが、タツマキはその間を縫ってキングの前へ。
「そもそも、あんたが1人でやれるって言うなら、証明して見せなさいよ! 実際、アンタが戦ってるトコなんて、殆ど見た事ないんだから!」
不思議な光の力で全て解決(笑)
みたいなのは幾度も見た事がある。巨大な超能力を有する戦慄のタツマキであっても、それは出来ない芸当。
文字通り、見た通り、あの光は全てを消失させる力を持っているのだ。
超能力では無しえない更なる高みな力に思えてならず、それでもそれを全否定してライバル視しているのがタツマキ。
この世界に入る切っ掛けは、
「(た、タツマキ氏……近い近い! なんか、圧が凄い凄い!! ちょっと、ヒカリ氏どうすれば――――!??)」
宙を浮き、迫ってくるタツマキ。
戦慄するのは彼女の通り名の通り……だが、こうも間近であの巨大な強大な力を目の当たりにするのはハッキリ言って心臓に悪い。
如何にサイタマやヒカリである程度の耐性がついたとは言っても、自分自身の力じゃないのだから。
『ん? あ~ ちょっと待ってちょっと待って。サイタマに確認取ってる最中だから。メッチャ渋られてるケド。……うんうん。ほら、また今度はスイーツじゃなくて、お肉奢ってあげるから。それで良い? 大丈夫だよ。だってまだ下の方に力入れてるし。そもそも、サイタマ喰らってもケロっとしてるじゃん? 服? まぁ、その辺は頑張って! って事で』
そんなヒカリだが、どうやってキングの傍でサイタマとの連絡やり取りをしているのか……(もうキング自身は、それを考えたりしないが)どうやら先に先陣切って飛び込んでいったサイタマと何やらやり取りをしている様だ。
何を確認するの? と言う疑問は直ぐに解消される。
耳元で囁く【キングの台詞】を聞いて………。
「(んじゃあ、
「―――――――ゑ?」