ヒカリちゃんはキングと遊びたい   作:SSKキング

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キングお役御免!

 

光———。

 

その言葉が連想させるモノとはどんなモノだろう?

 

人々の暮らしに欠かせない照明?

全てを照らす太陽?

光と闇と言った属性観点から鑑みた正義?(個人的な意見含む)

 

 

等々と、連想されるモノは多岐に渡る事だろう。

ただ、やはり光に感じるのは【優しさ】である、とここに言いたい。

朝日を浴び、光がそこに射すとき、暖かな優しさに包まれる。

光と闇は相対するモノではなく、光とは影を生み出すモノ。

 

だからこそ、光は優しい。

 

 

ただ――――例外が存在するとしたら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「測定……不能? 全てのデータが……きょ、虚数値に…………」

 

 

ゲリュガンシュプは、今まさに光が齎すモノを、唯一の例外をその身で体感していた。

 

これまで幾つもの星に侵攻し侵略し、蹂躙し、全宇宙の覇者と呼ばれるお方の下で、飽くなき欲を満たす為に、他者を蹂躙し続けてきたそのツケが返ってきた、とでも言うのだろうか……。この光には絶望を、狂気を感じる。

 

 

眼下から突如発生した原因不明の高球体。超高エネルギーだという事は理解できるが、理解できないのが、計器で測定不能だという事。

こんな事、未だ嘗て遭遇した事が無い。

 

自分達の主であり、全宇宙で唯一無二絶対の覇者ボロスでさえ、【計器カンスト】と言う表示は現れているというのにも関わらずに、だ。

その上改良に改良を重ねた超高度な技術を用いたこの船の計測器が……。

 

 

 

「…………………」

 

 

 

そのエネルギーを感じ取ったのは、横で控えているボロスも同じ。

それはゲリュガンシュプの様にただただ恐れ戦き、戦々恐々とし、言葉を失っている……と言う事ではない。

 

ただただ、その身で感じたいと反射的に、本能的に思ったからだ。

 

 

だが、その本能的なモノでさえも、ここで遮られる。

 

 

『あっちゃ~~~! 始まったか。くそっっ、巻き込まれねぇ様にもっと離れておくか』

 

 

大型モニターに映し出されている男、船に侵入してきた原住民の姿と声が入ってきたから。

 

 

「ゲリュガンシュプ」

「は、はっ!!」

 

 

ボロスはただただ短く、命令を下す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この男をここまで案内させろ。……この船がそれまでもっていてくれれば(・・・・・・・・・・・・・)、の話になるがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはサイタマの記憶。

 

 

「ねーねー、やっぱりこういうの、どう? 超破壊拳(ビッグバンインパクト)ぉぉ~~!!」

「却下」

「えーー、なんでーー! かっくいいじゃん!」

 

 

郊外にある海辺にて、サイタマとヒカリは揃って特訓していた―――――のではなく、海の幸を食べに来ていた。

色々とケチな為、サイタマは万年金欠。ヒカリはヒカリでただただ楽しい事を第一優先にし、惜しみなく経済を回す様に使うので、基本的に貯金は無い。

 

だから、自分達でササっと狩ったり釣ったり突いたりして、素材をゲットし仲良くなった海辺のお店の店長さんに色々譲る代わりに捌いて貰う、と約束を交わしたのだ。

愛嬌があり、愛らしさもあり、社交性もそれなりに兼ね備え、見た目幼いヒカリだから出来る芸当。更にちょっとした怪人退治(キング無しver)もやっちゃったので、互いにwinwinな関係性となってたりもしている。

 

 

 

そんな時にふとヒカリがサイタマに提案したのが所謂《ワザ名》だ。

ありとあらゆるマンガを、バトル系のマンガを聖典とし、沢山読んでカッコイイのを選出し、更にサイタマのパンチと連想させて、これ! と決めたのだが肝心なサイタマは乗り気じゃなかった。

 

 

「なんか小恥ずかしい、って前から言ってんだろ? 必殺技言いながら攻撃すんのも前はかっけーって思ってたけど。そもそも必殺技出す前に相手終わっちゃってるし……」

「だから、その辺は加減を覚えるんだよ、サイタマっ! 必ず殺す技が無造作に出ちゃってるから、カッコよさが薄れてるだけだって! ほらほら、前のでっかいのやっつける時。普通にワンパンするんじゃなくて、彼方に吹き飛ばす! 勢いでやってたら私がフォローしなくても町助かってたでしょ?」

「……や、その節はマジで感謝だ。あの怪人に潰されてたらって考えると……大変だ。あそこのスーパーはこの辺でもかなり安いし」

 

 

サイタマはそういうと、次に少しだけ考えて――――。

 

 

「普通のパンチ。でいいや」

「えええ、なんかカッコ悪くない? 強めのパンチの時も《強めのパンチ》で済ませちゃうの?」

「んっんん――――じゃあ、もいっこ考えてた切り札。マジ殴り」

「大して変わってないじゃん!」

 

 

折れないサイタマ。

何とか改名に持っていこうとするヒカリだったが……。

 

 

「ん? いや待って。ひょっとして一周回って……カッコよかったりする? 必殺マジ殴り?」

「マジシリーズな。パンチだけじゃなくて、蹴りとか頭突きとかその他諸々。ほれ、使いやすいし、言いやすいし、良い感じだろ? ……そもそも、ヒカリの言うカッコイイ技名言い終える前に倒してたら、何かむなしいし……」

「そっかそっか……、じゃあ、私もサイタマに倣ってちょっとやって見ようかなぁ……、んーと、んーと……必殺マジシリーズ」

「ちょっ、オイコラ!!」

 

 

ひょい、と空に向かってヒカリは放ってしまった。

後々、大変な騒ぎになって、海鮮系がお預けになってしまう最悪な未来が待ってるのも知らないで……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マジ・レーザーぁぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が集う。

もっと集う。沢山集う。物凄く集う。

もっともっと強く、もっともっと明るく。

 

 

何かを生み出すからこそ、そこには優しさがある。

 

 

でも、この光は生み出す筈の影をも容赦なく呑みこむ。

 

 

光が通った先は―――――何も残らない。

衝撃音も何もない。

 

音すらも呑みこみ、形となって結果だけを残す。

 

 

ボロスの船、後方部完全消失。

全体の67%が消失。

船がまだ浮いている理由は、動力球が健在だった。それだけの事であり、狙いが外れていたから無事だっただけだ。

 

この船の源である動力球は相応の守りで固めている。

全宇宙の中でも最も固い鉱石と金属をハイブリットさせて作りこんだアダマンタイトで覆ってあるが、それがあっても何ら意味を成さないのは、今の一撃を受けて、光の狂気が去った後で、気づけた。

 

アレを受けて、形を保っていられるのは恐らく………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ば、ばかな………」

 

 

狂気に身を晒されたのは船側だけじゃない。

直接的な影響がないとはいえ、視覚的に飛び込んでくる情報は一気に脳内を【恐怖】の二文字で支配してしまう。

 

 

あの光が消えた後、残ったのは綺麗に抉れた船。

残骸も何も残っていない。

破壊された筈なのに、元々そこには何も無かった? と思わせる様な光景だ。

 

 

メルザルガルドは、我が目を疑う。

何百年も宇宙で暴れ続け、今日もなんの疑いも無くただただアソビながら滅ぼす星だと思っていたのに。

 

 

これまでは、数多の世界を、星を食んできた。

圧倒的な強者側の立場だった。

 

そして今————

 

 

自分達が喰われる側である事(・・・・・・・・・・・・・)を実感した。

 

 

 

 

「おーおー……流石キングだな。こりゃ圧倒的だわ。綺麗な空が見えて痛快だわ」

 

 

金属バットが空を、天を見上げる。

鬱陶しい鉄の塊が空にいて邪魔で不快感極まりなかったが、それが半分ほど晴れて、そこから太陽光が差し込む。これ以上ない程に痛快で、爽快だと言えるだろう。

 

 

「影も形も無く、怪人を屠るという話は耳にしてきたが、こういう理屈だったという訳か。……隕石が跡形もなく消失するのも頷けるな」

 

 

アトミック侍もにやり、と笑った。

 

ある程度の測れる力量の相手であれば、ライバルとして認定し、互いに高め合い、認め合う存在として己らを認識するが、キングと言う男に対してはその認識を変えざるを得ない、と思えた。

これまで幾度となく絡んできたが、これ程の力を誇示した事も無ければ、ひけらかした事も無い。周囲を、自分を黙らせるだけの力を有して尚、謙虚であり、その力は怪人にのみ使うとヒーローとしての器のデカさも同じく感じた。

 

だが、それでも今後もキングとは刃を交えたい……と言う気持ちを抑える訳もない。

力の頂きに、キングがいる以上、強ければ強い程目指したい。果てが見えない道であっても歩みたい。その気持ちを抑える事など、アトミック侍に出来る訳がないのだから。

 

勿論、アトミック侍のその決意は、キングにとって頭を悩ます決断になってしまったのである。

 

「ほっほっほ。この上なく、助かる存在じゃのぉ。彼に野心の欠片でもあれば、世界は大変だったかもしれんぞい」

 

人類最強。

その名に相応しい一撃を見てバングはただただ笑うだけだった。キングと何度か付き合いがある故に、その様な野心が欠片も無い事は知っている。野心を持たぬモノだからこそ、立てる高みと言うものがあるのだろう……と、バングは晴れた空を見上げる。

 

 

「キングきゅんに限ってそんな事は有りえないよファングさん! 彼は正義の塊! だからこそ、この俺プリズナーは全力で愛する、と誓ったのだ!!」

 

 

横で聞いていたプリズナーも同様だ。

キングは敬愛し親愛し情愛し……兎に角プリズナーが狙っているヒーローの1人。

正義の塊である事を疑ってる訳がない。

 

プリズナーもまたアトミック侍同様に頭が痛くなる種であり続けるのだ。

 

 

「こ、こいつら……!!」

 

 

悠長に笑い、空を見合い、ピクニックでもしているのか? と思いたくなる連中を見て、メルザルガルドは目を血走らせる。

 

アレを見て勝てるなどとは思ってない。

可能性があるとしたら自分達のボスだけだと思っている。

だから、この場はなんとしても離脱し、どうにか皆と合流する事だけを考えていたのだが……、あまりにも舐めた態度の連中を見て気が変わった。

 

 

「1人、1人だけで良い」

「うん。逃げるのはそれからで」

「多分、地上(こっち)向いては今の打てないと思う」

「そう思うよ。だってこの星が無くなるから」

 

 

 

強過ぎる力の弱点。

仲間内にも被害が被るかもしれない、と言う所。

空に飛んでいる宇宙船だったからこそ放てた。

 

 

 

「1人でも殺して」

「うん。船に戻って合流」

「船、地上に降ろした方が良いと思うよ」

「ボロス様がいる。これ以上は無いと思うけど、万全期す。これ大事」

 

 

 

複数ある頭の考えが、1つにまとまった。

呑気にお喋りをしている内の1人を――――。

 

 

 

「!! バングさんッ!! 危ない!!」

 

 

 

 

―——全力で、潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度その頃————ヒーロー協会にて。

 

 

「……………」

 

 

天へと手を伸ばしていたキングは、ゆっくりとその手を降ろした。

キングエンジンは……鳴りやんでいる。心臓止まってる?

あの力を見るのは2度目。……何度見ても慣れない。生気まで一緒にすっ飛ばされる様な感覚。死んだ魚の様な目は、あれから始まったのかもしれない。

 

 

「………ふん。やれば出来るんじゃない。なんで勿体ぶる必要があるのよ」

 

 

今の一撃を見たタツマキも素直に認めた。

自分を差し置いて、面識のある1位のブラストを差し置いて、S級6位のキングが人類最強などと呼ばれているその理由を。

 

 

「おい、キング。先生は――――」

 

 

そして、ジェノスはキングの力も色々と聞きたいし、参考にしたい気持ちもあるのだが、それらを押し退けて、最も気になる事、サイタマの事を聞こうとした。

 

 

「あ、ああ。大丈夫だよジェノス氏。サイタマ氏はあのエリアにはいなかった様だから」

「!!(触れるモノの餞別まで出来る……と言うのか? ただ破壊する、無に帰すだけでなく、精密さも兼ね備えている、と?)」

 

 

キングはそういうとゆっくりと降り、ドカッと座り込んだ。

そして、ドッドッドッドッ…… と再びキングエンジンが鳴り響く。

 

 

「凄い! キングさん! このまま、アレを打ち落としますか!?」

 

 

少年の様な目で……、いや、元々10歳の少年だが、歳相応な笑顔でキングに駆け寄った。

すると、キングは軽く首を振り。

 

 

「いや、これ以上俺から手を出す事はしない。……危なくならなければ、の話ではあるが」

「! ……因みに、その理由は?」

 

 

キングは童帝の方を見ずに、天を見据えて……自分が? 無にしたあの波動の軌跡を見上げながら続ける。

 

 

「少々疲れた、と言うのもあるがそれ以上に。―――俺には、この力がある。でも決して自分を万能だとは思っていない。俺が手の届かない範囲は、必ずある。だからこそ、ここからは皆を頼らせて貰いたい」

「……………」

 

 

キングの言葉を聞いて童帝は納得する。

キングのこの力であれば、本当に一瞬で全てを解決する事が可能だろう。

でも、彼が言う様に手の届く範囲では無敵で最強でも手の届かない範囲で何かが起きた時……必ず他のヒーローが必要になる。他の強さが必要になる。

キングと言う最強戦力に甘えるという結果にさせないためにも……、いや或いは問題児だらけでもあり、想像以上にプライドが高い他のS級ヒーローたちにも活躍の場を、経験の場を残しておいて、自分の高みへと昇って来られる様に、示しているのかもしれない。

 

 

「(やっぱり、キングさんは凄い……!)」

 

 

自分の中で自己完結した童帝。

キングは、そんな事は露知らず、ただただ身体全体から力を抜いていた。

 

 

 

『キングっ! ちょっと面白そうなのがいたから、出てくるね? こっちの方はよろしく! 格好良くキメといて!』

 

 

 

そう言葉を残して、全ての力の源であるヒカリは飛び去って行ってしまったから。

 

 

つまり、打ちたくてももう打てない。

敵がまだいるのなら早く安心したい。風呂入りたい。布団にもぐりたい。潜ってゲームしたい。

 

 

「他の雑魚が船から降りてるって情報もあるし。アレもどういう理屈か知らないけどまだ浮いてる。……暇だから出てくるわ」

「……俺も行こう。疼いてきた」

「まだ、残存しているあの機体に砲撃が通じるかどうか、新兵器を試したい。俺も行く」

「うおおおお! キングさんの圧倒的な力を前にして、筋肉たちが喜び、歓声を上げている! 俺も行くぞ!!」

 

 

キングの言葉に触発されたのか、皆は夫々戦地へと赴いて行った。

あの船から何かうようよと出てきているのも見える。暴れる場所はまだ残っている。

 

 

「ボクも行ってきます! 見ていてくださいね、キングさん!」

「え……? あ、ああ。うん。……ガンバッテ」

 

 

 

童帝を見送り……キングは、キングエンジンを鳴らしながら―――――死んだ魚の様な目で虚空を見つめ続けるのだった。。

 

 

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