ヒカリちゃんはキングと遊びたい 作:SSKキング
―—侵入者に警告する――
―—即刻破壊行動をやめ、退去せよ――
―—警告する!! 退去せよ!! さもなくば全戦力を挙げ、お前を殺す!!——
「頭ん中に直接声が入ってくんのか? これ」
そんな警告がサイタマに向けられるが完全に暖簾に腕押し。
当の本人は耳を穿りながら歩いて先を進んでいる。それもある意味では仕方がない。何故なら、この声は
耳が悪くなったか? と耳を穿り出したサイタマの行動もある意味では自然なのだ。
「つってもよぉ~。もう既に大分壊れてんじゃん。ヒカリのヤツが特大ビームかましやがったんだし。つか、オレまで巻き込むつもりだったんじゃねーだろーな? 後で文句言ってやる」
―—それとこれとは話が別だ!! これ以上壊すな踏み込むな! 殺すぞお前!!——
先へと進むのは止めない。
取り合えず攻撃するのは止めている。粗方倒したし、ヒカリの攻撃で半分以上が消し飛んでるし、それでも浮いている~と言う事はひょっとしたら、元々宙に浮く面白物質な感じもしてきた、と言うのがサイタマの弁。
「そもそも、帰れって言われても道に迷っちゃってさぁ? 何処向かってんの? って感じ」
―—嘘つけ!! 帰りたいのなら攻撃された部分から降りれば良いじゃないか!! どんだけの損害被ったと思ってんだ!!——
「自分らから攻めてきといて何? その言い分」
地球を滅ぼそうとしにきたのではないか?
サイタマはよく解ってないが、兎に角凄い占いばあちゃんが《ヤバい》と表現する存在なのではないか?
と、色々とツッコミたかったサイタマだが、しなかった。何故なら、声が続いたからだ。
―—ああ、もう! 解った! ならばこうしよう! これからお前の事を誘導してやる! その言葉が真であるのなら聞くよな? 取り合えずあの攻撃の断面部分は全部オープンフリーになってる。その通路の右に曲がって階段をあがれ。最短で外に出れる。後は外の光が漏れてる部分を進めば苦も無くいけるだろう――
「なるほどなるほど―――じゃあ、左に進もうっと。へへへ……」
―—あ!! やっぱりか貴様!! この卑怯者!!——
「いきなり現れて攻撃してくんのって卑怯じゃねーの?」
―—う、うるさい! いや、ま、待て! わかった! わかったから。オレが悪かった! 謝る! 謝りますから先に進まないで~~~!!——
高圧的な声だったのに、最後は懇願へと変わってしまった。
それも仕方ない。
サイタマはずんずんと船の奥へ奥へと進んでいってしまってるから。
固く閉ざされた鋼鉄の扉、宇宙でも最硬度の鉱石を加工して作った扉など意にも返さない。
大きな大きな扉に向かって思いっきり振りかぶって~~~
―——あああああああああ! やめてえええぇぇぇぇぇ!!!―――
どかんっ! と扉は吹き飛んだ。
そこにあった筈のソレはもう既に瓦礫の山となってしまっていて、元が何だったのかが解らないありさまだ。
そしてサイタマが入った部屋は非常に広い部屋だった。
その中心には祭壇の様なモノが備わっており、そこには1人の男が佇んでいた。
「……ゲリュガンシュプ。オレは
「!!! も、申し訳ありません、ボロス様っっ」
そして、まるでタコの様に軟体で無数の足? を持つ異星人もそこにいた。
どうやら声から察するに、サイタマの頭の中で語りかけていたのは、あのタコの様だ。
「……………」
ボロスはじっ……とサイタマを見た。
データ数値では計り知れない巨大なナニカをその身に感じられる。
身体自体はデータである通り、この星の住人の平均値程度。でも、内包するそれはこれまで見てきたどの存在よりもデカい……が。
「先ほどの光の正体は貴様ではないな?」
「あ? 光?」
エネルギー数値を計測する測定器の数値をまさかの《虚数》へと変えた存在ではない、と本能的に察知をした。
目の前の男は計り知れないエネルギーを持ち、それの底が見えないかもしれないが、それならばあくまでカンスト。計器では測り切れないから表示がカンストされるのが普通。
でも、あの一瞬は違ったのだ。
「オレが乗ってるっつーのに、ものの見事にすっ飛ばそうとしたのは、オレの連れでダチで暇つぶし相手だ。んで、てめぇがこのインベーダーの親玉か? 地球をヤバくしようとしてる、って聞いたぞ」
「ふふ、ふふふふ……そうか、そうか。成る程。オレはトンデモナイおもちゃ箱を開いた様だ。嬉しいよ」
生まれて初めて、勝敗の先の見えない勝負に赴くこの高揚感。
己が抑えきれなくなる。今直ぐにでも解放したい所ではある、が。
「ようこそ、我が船へ」
まずは客人を丁重にもてなす所からボロスは入った。
心行くまで堪能する為に。
「……ぼ、ボロス様。先制をうっても?」
「いらん。と言いたいが好きにしろ。……何をやってもお前では通じぬ」
「!!」
ゲリュガンシュプは、ボロスの命令に背き、侵入者が帰る様に促した。
心底恐怖をしたからだ。あの光で全てを消失された瞬間、測定器がカンストではなく虚数を示した瞬間、攻めている側の筈が、喰らおうとしている側が逆に捕食される側に、喰われる側に回ってしまったのではないか? と。
だが、それでもボロスは絶対。ボロスを超える者などこの世に存在しない。
そんなボロスに自分は認められ、最上位3戦士と言う地位に昇りつめたのだ。
ボロスは自分では無理だと言った。そこに悔しさがある訳ではない。この度の失態を愚行を返上する為にも、再びボロスに強き最上の戦士である事を認めてもらう為にも、ゲリュガンシュプは逃げの選択はとれない。
「……やらせてください」
「好きにしろ」
今一度、ボロスに了承を得て、その巨体はうねりながら前に出てきた。
周囲には先ほどサイタマが砕きいた扉の残骸、瓦礫の山がまるで竜巻で巻き上げられたかの様に、ゲリュガンシュプの周囲を舞っている。
「ん? なんだあれ? 瓦礫が飛んでる??」
サイタマは、変化が起きた事に対して興味津々に目を向けた。
明らかに舐められているのは解ったが、最初から初手から最大最高出力で応戦しなければならない、とゲリュガンシュプは思っている。
ボロスに認められている以上、先ほどの船での戦闘を見ている以上、明かな格上だから。
「貴様は宇宙一の念動力使い、このゲリュガンシュプが挽き肉n「あ~~、サイタマいた~~! みてくれた!? みてくれた!? 今のキングの必殺技の1つにしてるんだよ! 聞いてみたけど、なんだか見事にシンクロ出来てたみたいでさー!」―――――……」
決意をした筈だった。
もう後には引けぬ、命を賭けて主に対し忠を尽くし、そして認められる為に持てる全ての力を使うつもりだった。
なのに、何かが光った? かと思えば次はまるで電源を落としたかの様に目の前が真っ暗だった。
一体何が起きたのか解らぬまま、そもそも自分がどうなったのか解らぬまま、ゲリュガンシュプは消失した。
「見てくれた? じゃねーし。そもそも見れるかよ! 船ん中にいんだぞオレ。オレ事吹っ飛ばす気だったのかよ?」
「だって、しょーがないじゃん! 絶対カッコ良いって思ったし! あの場ではさ、ついでにタツマキちゃんにもキングを認めさせれる良い機会だ~って思ったんだ! まさにグッドタイミング! あ、そもそも当たっちゃってもサイタマだったら全然問題なかったでしょ?」
「問題あるわ。前は服が消し飛んだだろ! それに吹っ飛ばされて戻ってくるのも一苦労だったし。大体、見た目少女のヒカリが、野郎の裸見てなんとも思わんのか?」
「え~~、サイタマの裸? …………………ふっ」
「むっかーーー!! なんだその含み笑い!!」
ゲリュガンシュプが消失した原因。
それは勿論ながら突然割り込んできたヒカリのせいである。
サイタマの位置をさっきの攻撃で大体把握。光の粒子状になって文字通り光速移動で迫ってその威力を以てゲリュガンシュプの全てを、構成する素粒子の1つ1つを吹き飛ばしてしまったのだ。
ヒカリ自身も怪人(宇宙人?)を倒した、と言う認識はない。
よく移動すると同時に怪人を蹴散らす手段として用いていた移動法なので、ぶつかったら死ぬ、程度なのだ。つまりそこらへんの有象無象程度にしか考えてなかったので、ある意味一大決心をしたゲリュガンシュプは憐れだ。
「……先ほどのエネルギー放出は、そっちの娘か?」
「ん?」
完全に無視されてた形にはなるが、ボロスは別に気にする様子も怒る様子も一切見せず、ただ淡々とヒカリに聞いた。
ヒカリ自身も、何かいるな~~~程度にサイタマ目掛けて突っ込んできただけだったから、ここが所謂ボスステージ、ボスエリアだとは思ってなかった様子。
振り返ってみれば、おあつらえ向きな祭壇があってその上には明らかに雰囲気が違う一つ目の男が経ってて、祭壇のずっと上には輝く球体状の何かがあって――――。
「うっわぁぁぁぁぁ!! 私、めっちゃ良いタイミングだった!? ここ、ラスボスって感じがするしねっ!? 宇宙大戦争もエンディングが近いね!!」
「精々数十分程度なのに
ヒカリ1人で盛り上がっただけじゃん、と言わんばかりのサイタマの無粋なツッコミにヒカリは頬を膨らませて抗議した。
敵地のど真ん中にやってきてあの振る舞い。遊んでいる様にしか見えない振る舞いを見て、ボロスはぶるりと身体を震わせる。
つまり、あの2人にとっては―――――――
「カァッ!!!」
「「!」」
ボロスは全身光らせたかと思えば、身に纏っていたモノ全てを吹き飛ばしていた。
見事な全裸、素っ裸。―――と言う訳ではなさそうだ。下半身はしっかり見えない様になっている。
「この鎧はもう要らんだろう。オレも自分のパワーを封じている場合では無くなった」
「―――そうか」
「ちょっと! もっとこう……台詞考えてよサイタマ!」
身の入ってないサイタマとは違い、ヒカリは目を輝かせている。
圧倒的な力で、全宇宙を蹂躙して回ったボロスの覇気を前に、解放した力を前にしても全くブレない。
「……本当に素晴らしいな! お前達」
そして、ボロスの口端も吊り上がる。
勝敗が見えない。寧ろ得体のしれない存在×2だ。負けだって十二分に有りえる。
それでも、この気持ちは抑えられない。
「戦う前に、お前達の名を聞いておこうか。……俺は暗黒盗賊団【ダークマター】の頭目であり、全宇宙の覇者、ボロスと言う者だ」
「わっ♪」
ダークマターきたーー! 全宇宙の覇者きたー!! と声を挙げそうだったが、ここはしっかりと我慢。真面目な場面なのだから燥いで白けてしまうのは無し。
「私は憧れて追い求めてヒーローになった! それで今は最強のヒーローのお供をするヒカリだっ!」
「やれやれ。こっちは趣味で……じゃなくて、プロのヒーローをやってるサイタマという者だ。んで、今からは
ちらり、とヒカリに確認を取るとヒカリは ニコリと笑って親指と人差し指で〇を作る。
オッケー♪ の証だ。
恐らくだが、船をすっ飛ばした一撃と、キングで演じた最高にカッコイイ最強ヒーロー! が出来たので、粗方満足をしているのかもしれない。
「全宇宙の歯医者が地球になんの様だか知らないが、ヒーローとして任された以上、地球がヤバい元凶のお前らを逃がす訳にはいかねぇな」
「そうだな。何の用……か」
ボロスは懐かしむ様にゆっくりと呟く。
「予言があったのだ」
そして、その予言と言うワードに少しだけサイタマは反応した。シババワの予言でこの襲撃を察知する事が出来た。相手も予言頼りに地球へとやってきている。何か因果関係が――――?
「宇宙中を荒らしまわり、オレに刃向かう者も誰一人いなくなり、正直退屈していたんだ。そんな時に、ある占い師が言ったんだ。遠く離れたこの星に俺たち……いや、俺自身にとっての
宇宙中を荒らしまわり、全てを平伏させたボルスにとって脅威とは一体なんだろうか。
銀河系と言う宇宙の端にある田舎と言っても差し支えない小さな所に一体何が脅威なのだろうか。
久方ぶりに湧き上がってくる興味、好奇心、それらをボロスは抑えきれなかった。
「それが約20年前だな。ここまでくるのに随分時間がかかったが……、間違いはない様だ。手下どもはあの予言はオレ達を一時的に遠ざける為のデマだったと思っていたが」
「つまり、ボロは綺麗な悪者で良いって事かな? 自分の星がピンチで移り住まなきゃ全滅なんだ~~うえぇぇん、みたいな訳アリボスじゃなくて?」
ヒカリはワクワク、と思わず聞いてしまった。
ここは黙して語らず、それでいて雰囲気に身を委ねるのが一番だと思っていたのに、やっぱり抑えきれなかった。
「悪者、か。どうだろうな。……俺は俺自身がしたいと思った事をしただけに過ぎぬ。成る程、奪い取ってきた者達にとっては俺は紛れもなく悪だと言えるだろう。まあ、そんな事はこの際どうでも良い」
途端に、一気にオーラを解放させた。
立ち上る全てを圧倒する強者……覇王のオーラを。
「さぁ、貴様らは間違いなくこの俺にとって脅威だ! 存分に楽しませてく――「もっと広いトコいこっ!」ゴベッ―――!?」
「あっ、ずりーな!? オレのターンだっつったろ!?」
サイタマが一気に接近して、《普通のパンチ》を繰り出すよりもほんの少しだけ早く、ヒカリの光による特大パンチをお見舞いしていた。
自分が知覚するよりも早く、何を受けたのか解らないが、圧倒的にデカいその拳をモロに受けて、吹き飛び、船の天井部を貫いて飛び出ていった。
「今の、猛ル光ノ咆哮! って感じかな。それより外の方が広くて良いじゃん。こんな陰気な場所より、決戦はやっぱり満天の星空の下じゃないと!」
「……今昼下がりだろ」