ヒカリちゃんはキングと遊びたい 作:SSKキング
『俺の願いっつーか、俺の夢っつーか、念願っつーか……』
ヒカリは、頭上で繰り広げられる大スペクタクルな戦いを見上げながら、間違いなく過去一な怪人(宇宙人)と戦っている姿を見上げながら……以前サイタマが言っていた事も思い返していた。
『楽しい事最優先っつーんなら、
そう言って、グッと拳を握りしめるサイタマ。
《手品でもするの?》 とヒカリがボケて見たら《違うわ!!》とツッコミ……等と茶々を入れながらも、サイタマはハッキリと言った。
『漢なら拳骨勝負だ。丈夫なヤツと全力で殴り合う。ピンチを、緊張感を、戦いの昂揚感を。それを求めてるんだ』
『じゃ、
『バカ言え。敵相手にヤれるから良いんだろうが。……男女関係ない。お前の事をどうしても敵には思えねぇよ。もう良い加減長い付き合いでもあるしな。……ったく、最初っから最後まで変なヤツだぜ、全く』
単純な戦いであれば、紛れもなく、比べるまでもなく、サイタマに匹敵するのはこの
でも、それはただのじゃれ合いに過ぎない。仮に本気でやり合ったとしても、それはただの練習相手に過ぎない。
そもそも練習するまでもなく、身体を鍛えるまでもなく、相手は等しく塵芥なのだから。
「……ほんっと不器用なんだからサイタマは。でも、そこが良いんだけどね」
いつも気だるそうにしていて、感情が希薄になった、何も感じない! とか何とか言ってる癖に、実は子供の様に燥ぐ、拗ねる事だってあるのをヒカリは知っている。
でも、そのある意味苦しい部分がある事も知ってる。
その夢は遥か彼方。確かに念願はまだまだ叶わない、夢の果てにも無い可能性だってあるのかもしれない。
何故なら強くなり過ぎた為にだ。
それはヒカリ自身にも言える事。故に葛藤はヒカリにも解らなくもないのだ。
『うおおおおおおお!!!』
『よっ、ほっ、ほいっ、そいっと』
それでも、ほんの少しでも楽しめる様に。
ヒーローとして生きていく為に。
「ほらほら、やっちゃえ~~、そこだいけーー! ヒーローサイタマぁぁっ!」
ヒカリは惜しみない声援を送るのだった。
「ッ~~~!!」
ヒカリの声援。それは決して大きいモノではないが、それでもハッキリと聞こえてくる。
全ての能力がバケモノ染みているボロスにとっては、それくらいは造作もなく聞き分ける聴力を持っているからだ。
だが――――だが―――――。
「ここで応援かよ。……まぁ、横やりに比べたら大分マシ、ってか?」
何だかんだで何処か嬉しそうなサイタマも目に入る。
ボロスは自分が最強であると言う自覚があった。自他ともに最強である、と言われ恐れ続けてきた。
宇宙中を駆け巡っては破壊を尽くし、軈ては手古摺ると言う事自体に手古摺る毎日だった。
でも、今はどうだ?
相手の力の底が全く見えない。
自分を遥かに上回るバケモノ。それが2人も居る。
いや、そもそもバケモノと一言で片づけて良いモノではない。力だけでなく叡智も備えている筈のボロスが、全くと言って良い程、ピタリと当てはまる言葉が見つからなかった。
そして考えるのをもう止める。
「メテオリックバースト!!」
今自分に出来るのは己の限界以上の力で、これまで以上の力で、己が命を消費する最終奥義でぶつかるだけだ。
「!?」
突然早くなったボロスに少々面食らうのはサイタマ。
そして直線状、真っ直ぐ、ただただ真っ直ぐに飛び込んでくるそのボロスの拳をその身で受ける。
ゴバッッ!!
『ぎゃあああああああ!!』
『ぼ、ボロス様ぁぁぁぁぁ!!!』
最早動力コアだけで浮遊している船。
3割程しか残っていない船の上、上空とはいえボロスのMAXパワーで放つ拳の衝撃波は想像を絶する。
外に出る事を躊躇い、唯一中に残っていた船員たちが、あっという間に塵になって行く。悲鳴だけを残して、跡形もなく消え去って行く。
「おおっ! 今日1のでっかい花火だっ!」
ヒカリは、た~~まや~~~♪ と盛大な歓声を上げていた。
自分の身体が砕け散るその一瞬の間、走馬灯の様に凝縮された思考、視界の中でハッキリとそのヒカリの姿を見た宇宙人たちは、悲鳴を上げるのも忘れて呆然としていた。
まるで、子供の様に、燥ぐ子供の様に手を叩いて笑顔なヒカリの姿を見て何処か現実感が無かったのか……、ヒカリの姿を目撃した者達だけは、悲鳴も何もなく、ただただ消え去ったのだった。
「でも、下が気になるなぁ……。おばちゃんやおじちゃん達、皆が気になる……」
※主にスイーツ店の皆さん
キングに言われて、ヒカリのバリアを解除していたのだが……、この花火は余波だけで周囲を瓦礫の山にしてしまう程のモノ。そこにサイタマのパンチが合わさったら、もう質の悪い災害そのものになってしまうので。
「キングへ……っと」
ヒカリはスマホを取り出し、これからする事をキングに送信。
勿論、台詞もつけて送信。
宇宙船の真下の避難はもう済んでいる。
でも、半径1㎞程はやっぱり危険だし、広範囲で避難はまだ完了してないとの事なので、この船を中心に、筒状に、天井部は完全に開けて、ヒカリのバリアを。
「う~ん、技名何にしよう? 《星降ル光ノ空ニ》はちょっとなぁ……だって、空開けてるし」
サイタマとボロスが戦ってるので空にはバリアは張らない。何なら宇宙にまでいって戦ってほしいくらいに想ってるから、完全に開けている状態なのだ。
「趣向を変えて、フォースシールドっ! とか? いやいや、突然技名変えちゃうキングってのも微妙だよね……」
もうヒカリのバリアはとっくの昔に完成している。
でも、それは見えない様にしているバリア。キングの台詞が入って初めて光輝く様に……と設定している演出仕様だから、まだちょっぴり考える余裕があるのだ。
でも、タツマキ辺りにはバレちゃう可能性も否定できないので。
「《神々ノ黄昏!》で、ラグナロクだね!! でも、普通に日本語で呼んで……うん、これでいこうっ!」
シンギングタイムは終了。名前も決定し、キングへと改めて送信するのだった。
丁度、全ての内容を決定させて、キングがその指令? を目にした瞬間に、ボロスは最大威力の攻撃を放った。
単純な腕力だけでなくボロスの体内エネルギーの放出を推進力として更に威力を向上。凡そ、一般的な生物の限界を超えた速度から生み出されるパワー。
「砕け散れぇぇぇ!!」
それがサイタマの腹部を穿った。
衝撃波が貫通し、サイタマの背後を全て吹き飛ばしはじめる。
そして、その影響は眼下で戦い続けているヒーローたち・宇宙人たちにも当然伝わっていた。
ヒーローたちは驚愕し、宇宙人らは泣き叫んでいる。
「おおおおお!!??」
「なんだ!? 何事だ!!?」
「落ちる前兆……なのか!?」
「ぼ、ボロス様ぁァァ!!」
「やり過ぎ!! やり過ぎですぅぅぅぅ!!」
「船落ちる!! いや、そもそも逃げてきた俺たちまで消し飛んじゃうぅぅ!!」
最上位戦闘員であるメルザルガルドを葬った以上、ヒーローたちを脅かすレベルの宇宙人はおらず、ただのゴミ掃除レベルで戦っていたのだが……、まだまだ数だけは無数にいた宇宙人たちの絶叫を聞いて思わず頭上を見上げた。
「ボロス?」
「それが敵大将、親玉の名か」
「これほどの気を持つ敵がいる、って言うのか……?」
深くは考えていないプリズナーは敵を屠りながらも、その叫び声の内容を聞いて手を止める。金属バッドも同じく、この頭上の敵を夢想しながら空を見上げていた。
そんな中で、少々焦りを感じていたのはアトミック侍。
目を凝らし、その気の強さを肌で感じていたからだ。
最早見るまでもなく、感じるまでもなく、巨大な、強大な何かが船上で争っているのはヒシヒシと感じられていた。上空に居る以上、踏み込む事が出来ないので、地上でゴミ処理を行っていたのだが、ここまでの相手とは思いもしなかった様だ。
当初は今誰かが言っていた様にこの宇宙船の爆発の兆候、落ちる前兆、そこからくる未知のエネルギーの類が気の様に感じられるだけ、と思っていたのだが……。
「いや、マズイぞ! この勢いで未確認の敵に暴れられたら、折角キングさんが折角守ってくれた街が――――」
童帝が慌てて声を上げる―――が、それは無用な心配だったことに直ぐ気付く。
「……ふんっ。何よその程度、全部私に任せても良かったんだからね!」
勿論、タツマキもそれにいち早く気が付いた。
いつの間にか、空に向かって伸びる光の壁が周囲に出来上がっていたからだ。
そして、それをしたのは間違いなく………彼だ。
『民は、皆の背は護る。……前を向け、ヒーローたちよ』
そう言っている……様に思えた。
「(はぁ、はぁ、はぁ……し、しんどい。腕、上げ続けるの、しんどいぃぃ………)」
勿論当の本人は、そんな高尚な事を考えてる筈もなく、両手を上に広げ上げると言う動作をキープしてたら腕が痛くなってきて泣き言を心の中で漏らしていた。
外に出さなかった自分を思い切り褒めてあげたい! と多少の自画自賛あり。
技名から技動作までヒカリが指定していたから、それを実行したのである。直ぐに腕を降ろせば良かったんだけど、皆の視線、あまりにも熱い視線が嫌でも感じられるので、降ろすに降ろせなかったのである。
ふっ、ふっ、ふっ、……――――
荒く、短い息遣いが静かに木霊する。
全身全霊の一打だった。
サイタマは勿論、その背後の世界をも消し去る勢いで、この星をも打ち砕く勢いで入れた一撃だった。
なのに、これはどういう事だろうか?
「あーー、クソッ!! 服が破けたじゃねーか!!」
煙の向こう側から出てきた男、サイタマはまるでノーダメージ。
「ぬおおおおおおおおお!!」
それを見たボロスは再び体内のエネルギーを集める。
一瞬千撃をサイタマに見舞い続け―――。
「殺せぬと言うのなら、この星から―――――」
深く深く沈み込むと、再びサイタマの腹部目掛けて垂直に蹴り上げた。
凡そ、《蹴り》と言う足技が出せる衝撃音ではなく、これはまるでロケット発射だ!
「この星から追い出してやろう!!!」
ボロスの蹴りで、轟音と衝撃を纏ったサイタマは空高く高く上がり、軈て大気圏を突き抜けて地球外へと弾き飛ばされてしまった。
殺せないのであれば、星から追い出す。これはある種の最適解。
宇宙は果てがなく広大。宇宙から見れば、この地球など豆粒ほどの大きさも無い小さな小さな惑星なのだから。
そんな広大な宇宙に吹き飛ばしたともなれば、早々帰ってこられないのは間違いない。
普通に人間は酸素、空気が無ければ生きれない筈なのだが、ボロスの中ではサイタマが死ぬと言う結果はどうしても浮かばないが。
「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……」
メテオリックバースト。
ボロス奥の手、最終形態は人間で言う無呼吸運動をし続けるに等しい行為。
つまり、相応の負担が身体に掛かると言う事。長くこの形態を保つ事即ち死を意味すると言っても過言ではない。
だが、今解く訳にはいかない。まだ、いるから。
「さぁ、次はキサマだ」
この状況に置いて尚、笑顔が絶えず、瓦礫の1つに腰を掛けて足をフラフラさせてる見た目幼い少女が居るから。
知覚するよりも早く、気付けば攻撃されていた。気付けば吹き飛ばされていた。
比べる事なんて、正直出来はしない。殆ど直感に等しいがボロスは事、スピードにおいてはあのサイタマを凌駕する程の力量を内包している、と判断している。
即ち、知覚する間もなく、気付けばこの命を奪われている、何て事だってありうると言う事だ。
「ん~~~~」
そんなヒカリはと言うと、少しだけ考える仕草をすると。にやり……と笑みを浮かべた。
その姿を見てボロスは身構える。
そして、耳を疑う言葉が届いてきた。
「ククク……、いい気になるのにはまだ早いんじゃないか? 何故ならヤツは四天王の中でも最弱……」
「!!!!」
ヒカリの口調が変わった。
更に言うなら、四天王と言う言葉も聞かされた。
こんなバケモノが4人……つまり、後3人も居ると言う事に驚きを隠せられない。更に、あのサイタマが4人の中で最弱と言う立位置だと。驚きを通り越して身体が凍り付きそうな感覚に見舞われたその時だ。
「だーーーーーーれーーーーーーーーがーーーーーーーーーーーー」
今し方、宇宙の彼方へと飛ばした筈の男が……。
「最弱だコラぁぁぁぁぁぁ!!!」
この地球へと帰ってきたのだ。