ヒカリちゃんはキングと遊びたい   作:SSKキング

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決着

 

—――バカな……。

 

 

今のボロスの心情はその言葉に尽きる。

サイタマの強さは最早異常だったのだが、吹き飛ばし、戦線離脱させる事は十分出来ると踏んでいた。だからこそ、全身全霊を籠めた蹴りで地球外へと叩き出したと言うのに、あまりにも帰ってくるのが早過ぎる。

 

 

「あ、おかえり~~。思ったより帰ってくるのが早かったね?」

「おかえり~~! じゃねーわ! 誰が最弱だコラぁ!!」

「え? サイタマ知らないの? この有名なセリフ。一度言ってみたかったんだよね! まさにココッ! って場面が来ちゃったから使わない手は無いでしょ?」

「同意求められてもわかんねーし! そんなセリフ知らんわ!」

 

 

サイタマは確かに吹き飛ばされた。

当然、吹き飛ばず留まる事も出来たが、そのボロスの一撃がどれ程のモノか体感してみたかった、と言う好奇心がサイタマから一瞬だけ力を抜けさせ、受けたのだ。

 

結果、確かに大気圏を突き抜けて宇宙空間へと飛び出し、辿り着いた先はなんと《月》

 

 

 

 

—―地球は青かった……。

 

 

 

 

な~んてベタなセリフをサイタマが出す訳も無く、ただただ宇宙に驚き、そしてちょっぴり慌てて息を止めて、更に更にちょっとだけ戦いっぽくなった事に感動しつつ、月の重力から地球へと戻るだけの力をその足に力を込めたその時————確かに聞こえたのだ。

 

 

 

『ヤツは四天王の中でも最弱………ククク』

 

 

 

この声、サイタマが聴き間違える筈もない。

何故聞こえてきたのか? ……それは取り合えず横に置いとく。それよりもサイタマのハゲな頭に沢山の四つ角(ムカツキマーク)が出来て、血液が沸騰しそうになって、それが爆発力ともなっていた。

 

思い切り月を蹴っ飛ばして地球に戻ってきたのである。

 

人類が月まで行って還ってきた驚愕の事実!!! ……となる訳もなく、ヒカリ自身は『やっぱりね~~』と、サイタマが戻ってくる事を予想していた様で、ただただ笑っていた。

 

 

後に天文学者たちが観測した月に出来た新たな巨大なクレータ。

原因不明と言われていたが、それは《キング》の仕業である、と何故か周知されたらしい。当人は、ただ元●玉? の様に空に手を掲げていただけだと言うのに、また新たに伝説の1ページとして語り継がれる事となる。

 

その一節に掛かれたのは月の事件。何でも、月をサンドバッグにしたとか何とか……。

 

 

閑話休題。

 

 

 

「それでサイタマ。私と交代する?? 疲れちゃった??」

「しねーわ! 疲れてねーわ! ちょっぴりでも楽しくなってきたってのに、誰が譲るか!」

「え~~、残念! ……あ、ちょっと待って! 待って待って! サイタマそれって月の石じゃん」

「へ?」

 

 

ポロッ、とサイタマの破れた服の中からポロッと落ちてきたのは小石程度の大きさの石。

 

 

「んんん? ああ成る程。さっきのヤツか。一緒にくっついて来てたみたいだな。……あれ? 月の石って確かスゲー高いんじゃなかったっけ!?」

「うん! 高額だよ~! 何なら私のお小遣いになってるし」

「なにーーー!! 初耳だぞそれ!!?」

「にひひっ」

 

 

サイタマは驚きつつも合点が言った。

何せヒカリと言えば最新型のゲームやら各所美味いモノ巡りやら、そのお土産やらで、何気に小金持ちだと思っていた。別にお土産くれるから追及みたいなのはしてなかったが………、どうやらそれなりに所ではなく、相当金持ちなのでは? とサイタマが目を爛々と輝かせたその時だ。

 

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

全力。まだまだ絶対に自分の中にある筈の力の全て。100%中の100%を意識してボロスは駆けた。空気の摩擦によりボロスの身体は発火する勢いで輝きだし、雨霰の連撃がサイタマの身体を捕らえる。

当然サイタマはそれに反応し軽く防御体勢。

ヒカリも自分に攻撃が来ないのを解っていた様で回避行動等はせず、ただただ間近で観戦。『お~~~』と歓声を上げた。

 

 

「あああああああああ!!」

 

 

折角手に入れた月の石。折角の大金が粉微塵になってしまってサイタマは激昂。

 

よくも俺の金を!! と、右ストレートをカウンター気味にボロスの腹部に打ち込んだ。

 

ドンッ!!

 

それはとてつもない衝撃と轟音。

この世のモノとは思えない威力をボロスは体感。

そこにあるべき筈の自分の肉が、腹部が拳大に陥没し、貫いていた。ほんの少し、防御をして身体を固めていたら爆散していた事だろう。

 

それでも自分の身体は強靭な筈。

その堅牢な肉体がまるで紙切れの様に飛ばされる。……だからこそ遣り甲斐があると言うモノなのだ。

 

 

「ぐっ、がッッ!! そうだ!! それだサイタマ!! 小賢しい真似をするのではなく、正面から真っ向勝負!! それで良かったの———「連続普通のパンチ」!!!!」

 

 

正直サイタマは驚いた。自分のパンチを受けてワンパンにならなかった事実に。

その事実だけで、先ほどの月の石の件はチャラ………にはならないかもしれないが、忘れる事が出来そうだ。

 

だから、悪役が言いそうなセリフはもう良いから戦いの続きをしよう、とサイタマは更に接近。

ヤル気を少しだけ出して、連続して普通のパンチをボロスに浴びせる。音を殆ど置き去りにし、ボロスの身体を粉々にしていくと言う結果だけが残っていく。

軈て、音も追いつく事が出来たのか。

 

 

ドパンッ!!

 

 

と、まるで花火の様に連続攻撃な筈なのに1回だけ鳴り響いた。

一撃一撃が山を粉砕し、地球を割るくらいの威力はありそうなサイタマのパンチの連撃。

これまで出会ってきた怪人は例外なく全てワンパンで弾け飛ぶ威力のパンチの連撃。

先ほどでもある通り、そんなものを受けたボロスの身体は、原型をとどめる事が出来る訳もなく、身体は粉々になった———のだが。

 

 

「……ッッ!! オ゛オ゛ッッ!!」

 

 

ボロスは気合一閃。

粉々になったボロスの何処に考える機能、脳の前頭前野が残っていたと言うのだろうか……或いは細胞の1つ1つ全てが生きているとでもいうのだろうか、瞬時に爆発的に快復力を高めて復元。

 

まさに再生できるタイプの怪人。あそこまで完膚なきまでに破壊され散らばった肉片たちが集まって再びボロスの身体を創り上げてしまった。

 

 

 

「―――ならば、このボロス、生存を度外視した最後の一撃を見舞ってやろう!!」

 

 

 

ボロスは宙に浮くと、その一つ目の瞳を見開き、身体中からエネルギーを集中させた。

 

 

 

「オレの生命エネルギーの全てを、何もかもをエネルギーへと変え、貴様らもろともこの星を消し飛ばしてくれる!!」

「!」

「えーーっ! それは駄目だって。地上(こっち)向けてないで、サイタマの方目掛けて撃ってよ。掠っちゃっただけでも地球が大変だよ」

 

 

この戦いで初めて、ヒカリの声色が変化した事にボロスはニヤリと笑う。

 

 

 

「貴様らはヒーローだったな!? なら、護ってみせろ!! この星をぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

ボロスのエネルギーの迸り。

それは自らの船からも吸収しているかの様に各部位が連動して光輝き、船が再び大きく傾いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬱陶しいわね。落ちるならとっとと落ちなさい!」

 

 

 

その眼下では、もう殆ど討伐して死屍累々となった宇宙人らの残骸の上で、タツマキが岩盤を抉り上げて投擲攻撃を開始していた。

 

 

「た、タツマキちゃん。街壊しちゃ駄目だって」

「ちょっとくらい壊れても、また直せば良いでしょ。それくらい直してあげるわ」

 

 

地面を掘り上げ、岩盤やら建物の残骸やら、宇宙船そのものの残骸やらを思い切り下から砲撃する様に叩き上げる。

 

上ではボロスのエネルギーの奔流が、下ではタツマキの容赦ない物理攻撃が、最早何で船が空に浮いていられるか、下では解らない程だ。

 

 

「キングさんが居てくれて、本当に助かりました……。あの規模を護るなんて芸当、一体誰が出来るのでしょうか」

「………だな(そりゃそうだ。キングが居なけりゃ、このA市は……、いや、街そのものが瓦礫の山だった。……俺は剣閃が届く範囲内でしか守れん。その名に偽りなし、か)」

 

 

イアイアンの言葉を聞きき、軽く笑うアトミック侍。

高度がある為効果は薄いと解っていても、もう宇宙人らは一掃してやる事が無くなっていたので、遠距離攻撃の飛空剣で攻撃をしつつ……感じていた。

エネルギーの規模がどんどん膨れ上がっていくのを感じる。

 

それでも、キングが展開している光の壁は突破出来ていない。アレが無ければ間違いなく衝撃波は、そこに居る全てを薙ぎ倒していくだろう。

 

剣士とはまた違う力。

人類最強の名に全く恥じない男の姿を目に焼き付け、そしてそれをも超える剣を身に着けてみせる、と気を新たにするのだった。

 

 

「エスパーのガキとキングが揃えりゃ、落とす事は出来そうだが……、宇宙船(あれ)、何処に落としたら良いんだ?」

「確かにのぉ……、半分以上が消失したとはいえ、あの巨体じゃ。A市の被害もバカにならんな。ただでさえ小規模の破片が隕石の様に落下しとると言うのに」

 

 

金属バッド、そしてシルバーファングは頭上を見上げながらそう呟く。後始末はどうするんだ? と。キングのあの消失ビームをもう何発か打てば大丈夫な気もするが……、それを全て頼ると言うのは同じヒーローとして立つ瀬がない。

 

因みにここまで明言していなかったが、如何にキングの守りでも、如何にタツマキの超能力をもってしても、破片1つ残さずに地上を守るのは正直難しい。雑魚とはいえ敵も無数におり、メルザルガルドの様な強敵が混ざってないとも限らない。守りだけに集中するのは寧ろ危険なのだ。

 

まぁ、タツマキはそんな事を言ったら鬼の様に起こって『出来るわよ!!』と言ってきそうだが、実際建物は壊れてるので仕方ない。

 

キングの守りに関しては、主にスイーツ店の付近を重点的に護っているから、正直どうでも良いヒーロー協会のお偉方ら(ムカつくタイプ)が住んでる付近、変なおっさん(汚職政治屋など)らの無駄にデカく、場所を占めている場所らへんは、ヤル気のない護り方をしてるので、その辺の被害が大きかったりするのは別な話。

 

この規模の災害がA市に来るのは初の事であり、巨大で強大な宇宙船は皆が目視しており、権力を持つ者から一斉に避難をし始めているので、人的被害は0だ。文句は言わせないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、さぁさぁ!! 貴様らの肉体は耐えられるか!? このボロスの生存を計算から排除した、死を覚悟した最後の一撃を!!」

 

「「………………」」

 

 

向き合う両雄。

ごくりっ、と唾を飲みこむ音が聞こえてきそうな気がする。

船が揺れ、大地が揺れ、空気も揺れ始める。

 

これまでで最高の最強のエネルギーがボロスに集中していく。

そして、恒星の輝きと見紛う程の光が迸ったその時。

 

 

 

「崩星咆哮砲!!!」

 

 

 

星を崩す咆哮。

特大ビームとなってサイタマとヒカリの元へと打ち放たれた。

 

普通であれば(・・・・・・)、それは絶対なる死を連想させられるだろうその攻撃を前にした2人はと言うと。

 

「じゃあ、こっちも切り札だすか。オレの番だぞ?」

「良いよ~。よく我慢(・・)したね?」

「……まぁ、危うかったけど」

 

 

悠長に会話をしていた。

全てを吹き飛ばすつもりで放ったボロス。全神経を攻撃の1点に集中させていた為、2人の会話や様子は完全に意識の外だった。

 

ただ、この一撃で、命の一撃で全てを終わらせる。それだけを考えていて————。

 

 

 

「んじゃ、こっちも切り札見せるぜ。必殺《元祖》マジシリーズ」

 

 

 

《必殺マジシリーズ マジ●●》。

それは、ヒカリよりも先にサイタマが命名したモノ。

最初にキングから放たれた《|轟キ渡ル破壊ノ輝キ(マジ・レーザー)》があったから、二番煎じに思われてしまう……と思ったのはサイタマ。《元祖》の部分を強調しつつ、固く握り込まれた拳を突き出す。

 

 

 

 

「マジ殴り」

 

 

 

 

 

ボロスの最後の命の輝きの様なビームは、サイタマのマジな拳によって左右に割れた。

それだけじゃなく、空が割れた。雲を吹き飛ばし、たまたま空を飛んでいた飛行型の怪人(災害レベル竜クラス)も一瞬で消し飛ばし、……全世界規模でサイタマが放ったパンチの軌道上には何も残らなかった。

 

パンチの軌道上に人間の乗る飛行機や戦闘機の類が無くて良かったね、と言いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボロスの船は今こそ完全に破壊された。

あまりの衝撃により、動力源であるコアが粉砕される。幾重に守られていたコア、最高硬度の守りに囲まれていた船のコアだったが……流石にサイタマの一撃を防げる訳もなく、直接狙った訳でもないのに、その余波だけで破壊されてしまったのだ。

 

 

 

 

「――――俺は、敗れた、のか……」

 

 

 

 

普段なら跡形もなく消滅していた筈のサイタマのパンチを喰らっても尚、意識があるボロスに驚きを隠せれない。

 

 

「悪の親玉の意地、だね。こんなの初めてだ。……うん、素直にビックリ。凄く強かったよ、ボロ」

 

 

楽しそうに、傍から見れば茶化している様にしか見えなかったヒカリの言動や行動だったが、今回に関しては心の底からの賛辞である、とボロスは何処か理解していた様でわずかに動く口を少し動かして、口角を吊り上げる。

 

 

「そうだな。アレ受けてまだ意識あるとか。やっぱ強ぇーよお前。過去一だ」

 

 

サイタマからも賛辞の言葉を残す———が、ボロスは一笑に伏した。

 

 

 

「多少、楽しませた程度……か。まさに、大道芸のような、もの、だった……か。………俺とは、戦いにすら、……なって、なかった……。最弱の、きさまでも、まったく歯が立たなかった……ふふふっ」

「オイコラ! 誰が最弱だ!!」

 

 

抗議するサイタマ。解ってなかったのか、と怒気を込めるが……ボロスには最早届いていない。もう耳が聞こえてない様子だった。

ただ、一方的にボロスは続けた。

 

 

「どうやら……、予言、など。アテにはならん、ようだ。………おまえは、おまえたちは、強過ぎた………」

 

 

 

 

その言葉を最後に、ボロスの意識は完全消失した。

 

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