ヒカリちゃんはキングと遊びたい 作:SSKキング
「うーん、サイタマのせいでこの船、浮かんでられなくなったみたいだよ? 落ちてってる」
「いやいや、絶対半分以上はお前のせいだろ?? 船の半分消し飛ばした張本人なんだからよ。オレは表面すっ飛ばしただけだし」
「ブーっ、ダメでーす! だって私の時はちゃんと浮いてたもん。絶対サイタマのマジ殴りの衝撃波が、きっとエネルギーコア!! みたいなの壊しちゃったんだよ。私のマジレーザー関係ないですっ。トドメはサイタマなのっ」
「ぐぬぬぬ」
ボロスをやっつけたまでは良い。
でも、ボロスが死んだからなのか、或いはサイタマのマジ殴りの余波のせいか、明らかに浮遊力を失っているのが分かる。と言うより絶賛落下中。このままじゃ、折角守った街に被害が出てしまうだろう。
「んじゃ、全部消し飛ばしちゃえば良いじゃん? オレ、キレイに消し飛ばすなんてできねーし。残骸残って壊しちまうし」
「ほっほ~~、隕石やでっかい巨人の時の事覚えてたんだね~? 学習した??」
「うっせっ!」
迫りくる隕石を殴り飛ばした。
雲を突き抜け、天にまで迫る巨大な怪人を殴り飛ばした。
結果どうなったか?
巨人に関しては殴り倒すまでは良かったが、倒れる先にある街まで考慮せずB市を押しつぶしてしまう……筈だった。
そこへやってきたのが、我らがヒカリちゃんなのだ。
キングとヒカリは、サイタマがやらかす破壊を食い止め、平和を築き上げたのであるっ!
「おいコラ。何処向いて誰に説明してんだよ。コッチ向け」
ナレーション的な解説パターンに入ろうとしてるヒカリに対して、サイタマはその視界の中に強引に入ってきた。
「あー……、まぁ、そうだよ。お前のおかげだよ。オレだって学習出来てるし、それなりにつまらなくない日常を過ごせてんのもお前のおかげだ」
「およ? どしたのサイタマ。変なモノでも食べた?」
「……情緒ってもんがねーな、お前はよ。まぁ、それもいつも通りと言えばそうか」
全力で、思いっきり拳骨をぶつけ合える敵。
思う存分拳を振るい、己の命を賭して、全てを賭して戦えるそんな相手。
叶わないが為に、それを夢と言う。
でも、サイタマはある種満足は出来ている。
ヒカリと言う同等とも思える相手が出来た。
別の意味で、圧倒されるキングと言う知り合いも出来た。
何なら、ジェノスと言う弟子だって出来た。
ヒーローを目指すと決めたタイミングで出会った、この奇妙な少女が居なければ、辿り着かなかったかもしれない。
或いは、もっともっとつまらない日常だったかもしれない。
だからこそ、サイタマは感謝をそれとなく伝えたのだが………。
「あっ、解った! さっき月の石粉砕しちゃったからでしょ?? 私に取ってきて~~って? へへーん、ダメだもんね~~! ヒーローは餓えてるくらいが丁度良い、でしょ~~」
「―――――――」
早速前言撤回どころか、思考撤回もしたくなるサイタマだった。
「はぁ、はぁ、はぁ————」
ドッドッドッドッドッ!!!
腕を上げ続けるのも結構な労力。かなりしんどい。
一般人に毛が生えた程度の身体能力であるキングにとってすれば尚更だ。
でも、どのタイミングで降ろせば良いのかわからず、終わりの見えない状況もかなりしんどい。
更に言えば、あの宇宙船が落ちてきているのが分かる。
でも、周りは自分が止めてくれる、と期待に満ちた目を向けている(主に童帝のみ)
腕は痛いし、まさかまさか……サイタマやヒカリに何かあったのでは!? と気が気じゃないし、色々ともう無理! となりそうだったその時、救いの手―――スマホが振動したのだ。
それは正しく光! 救いの女神!
ヒカリ氏~~と、その名を何度キングの脳内で呼び続けたか解らなかった。手を挙げて———
「ゑ?」
文面を見て、感動の涙も一瞬で引っ込んだ。
『ヒーロー協会本部周辺の高級住宅街って、ぜ~~んぶエラソーな大人の家だったデショ? 確か。そこに宇宙船堕とすから、それっぽいセリフ宜しく!!』
「!!!!????」
人類の守護者、不滅にして最強のヒーローの一角ともあろうお方のメッセージとは到底思えず。
「……あ、あれ? キングさん。あの宇宙船はそのまま消し飛ばすのでは……?」
童帝も落下軌道が気になったのか、キングに聞いていた。
彼も、あの特大砲撃(煉獄キング砲撃(童帝:命名))を再び空に打ち上げて、塵芥、粉微塵にして被害を最小限度に留めるものだと思っていたのだが………。
「―――――――――」
キングは、死んだ魚の様な目をした。
それがいつもの標準装備だったな……と何処か現実逃避をしつつ、童帝の方をくるりと向き直して、ニヤッ、と笑った。
「――――手が、滑った」
「はい? ……はぃぃぃぃ!!??」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ————―
ドッドッドッドッドッ—————
地上に災害が堕ちてくる。
まるで、狙い定めたかの様に………、主に汚職関係で目立ってそうな、それでいて偉そうで色んな所から金巻き上げて私腹を肥やしてそうな。
因みに、これらは別に裏を取った訳ではない。殆ど感覚、直感に似た様なモノ。
でも、ヒカリのその感覚は実に鋭く、実に正確。
ここら一帯を買い占めている重鎮たちのその懐は全部そう言う類のモノ。日々命がけで戦ってるヒーローたちに胡坐をかき、甘い蜜だけを吸い続けている様な人種。
『モニターの故障(原因不明)、直りました!! 周辺の映像を映し出します』
偶然なのか、或いはここまで計算づくなのか……、メタルナイト製の耐衝撃監視カメラがつい先ほどまで視聴不能になっていたが、復旧出来た。
キングが居れば大丈夫。あの巨大で強大な戦力を囲っている以上、何も問題ない……とこれまた胡坐をかき、優雅に葉巻を吹かしている様な連中がニヤニヤと笑っていた。
宇宙からやってきた大災害を、その侵攻を阻止したともなれば、更に盤石となり、更なる巨万の富を—――――と思ってみたらの衝撃映像。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァァァァァァァ!!?』
それなりに……いやいや、家くらい沢山持ってそうだろ? って感じの重鎮たちは、目玉が飛び出るのでは? と思えるくらいに目を見開き、あんぐりと口を開けて叫んだ。
ここはヒーロー協会本部。
揃えているのは最新にして最高額のモノばかりで、自分達だけでなく愛人の愛人の妾の……と、数え出したらキリがないくらいの美女たちの住処も容易している。その他、娯楽施設も全て自分ら負担で立てた。
それらが全部真っ黒に塗りつぶされて—―――――潰れた。
「おや? A市の一部が何故こんな事に? 今日はS級集会があったんじゃないのか」
そして、遅れて現れるのはA級1位ヒーロー イケメン仮面アマイマスク。
「いきなり宇宙船堕ちてくるから何がどーしたんだ? って思ったら見事に潰れたな。この辺」
「一般人たちに被害がゼロなのがせめてもの救いですよ。……キングさん? 手が滑ったってホントですか?」
「…………ほんと、だ」
「だらしないわね! あ~あ。私が全部やってたら良かったわ! ……まぁ、何故だかスッキリした気分ではあるけど」
「師匠、この辺りの調査は済ませてあります。童帝が言う様に人的被害はゼロです」
「だな。……後はたんまり溜め込んでそうな上の連中が何とかするだろ。アレほどの規模の災害だ。安いモノだと納得してもらう他ない」
「男子たちに被害無く感無量だ! 流石はキングきゅん! これぞ完全勝利!」
「ふぃ~~、腰が痛いわい。……それにしても、ものの見事にピンポイントで押しつぶしたのぉ~。……のぉ? キング」
「…………何の事か、解らないな」
「ほほほほ。そう言う事にしとくわい」
アマイマスクが見下ろした先には、数人のS級ヒーローたちがいた。
「ほう……、この状況の説明はキング。キミがしてくれる、と解釈をして良いと言う事だな?」
ここで、S級ヒーローたちもアマイマスクが居る事に気付いた様だ。
見上げてその姿を確認し……少々怪訝な顔をする。
「イケメン仮面アマイマスクか。てめー、どっから沸いて出やがったんだ?」
「別にキミに話しかけた訳じゃない。少し黙っていたまえ、金属バッドくん」
「あ?」
高圧的で、高い所から見下ろしてる様な……、いや、実際見下ろされてるがそう言う類を極度に嫌う金属バッドは青筋を立てながら肩にバンッ! とバッドを当てて眼光を飛ばした。
「あ……(この人、ニガテなんだよなぁ……、まだ全然固まってないのにぃ……)」
キングエンジンこそどうにか鳴りやます事が出来たが………上手い設定は固まってないのが現状。その上、メディア等にも精通し小言やら注文やらも多いアマイマスクの登場。
このアマイマスク、アトミック侍とはまた違った種類でニガテなのだ。
「説明も何も見りゃ解んだろうが。でけぇ乗り物に乗ったバケモンが砲撃かましながら攻めてきた。キングがぶっ飛ばして突き落として決着だ」
「市の一角とはいえ、ここら周辺は壊滅的な被害だ。これで勝利だと手放しで喜べるのかい? キミの残念な頭の中では」
「オイオイ。ケンカうってんのか? テメーはよ。この場に間に合わなかった分際で偉そうに」
「ああ。僕は近くでドラマ撮影があって、轟音と衝撃があったので駆けつけてきた。確かに間に合わなかったさ。……だが、本来A市で集会があり、この場に集まっていたのはキミ達S級ヒーローだろ? 現場にいた挙句にこのザマ。手放しで喜べる精神が理解できないと言ってるんだよ」
キングはどう言おうか~~と表情こそ変えずに考え込んでいると、アトミック侍が一歩前に出た。
「オレ達は全員本部建物内で会議中だった。キングの超感覚で敵の接近、殺気に気付いてA市の大部分は守護出来た—――が、流石にあの規模のデカさだ。寧ろこの程度で済んで御の字だろ」
「ほう? だからどうした? メディアからお咎めなしにしてくれと? ここ周辺はヒーロー協会関係者たちだけじゃなく、多数の政界の重鎮らも居住区としている。それらが根こそぎ潰れている。御の字で済ませるには中々難しいんじゃないかい?」
ここで、プリズナーも前に出る。
「世間に何か言いふらすつもりか? 宇宙船の襲撃は大々的にニュースで報道されている。人的災害は童帝きゅんやイアイちゃんの言う通りゼロ。これ以上ない最善を尽くした。あなた……どっちの味方なんだ!」
「ああ、それは決まってるだろう? 僕は正義の味方だ。一応、曲がりなりにも協会の正義の象徴の一翼であるのがキミらS級ヒーローの筈だろ。それがこの程度で満足、この体たらく……正直困るんだよ。そもそも話を聞けば大体がキングが守ったと言うじゃないか。役に立たないなら自主的に引退したまえ」
ずげずげ、と遅れてきたヒーロー。何もしてないヒーローにここまで言われて黙ってられる程気は長くないのが金属バッド。
相手は素手だ。バッドと言う凶器は取り合えず捨てて、迫る。
「オイ……黙って聞いてりゃ調子こきやがって」
「君がいつ黙ってたと言うんだい? 金属バッドくん」
「うっせー。調子こいてんじゃねーぞコラ。アイドルだか何だか知らねーが関係ねぇ。ぶっ飛ばすぞコラ」
「ふ……、残念なキミの頭では解ってない様だね。僕がなぜS級に上がってないかが。キミの様な弱くて何の取り柄もない《雑魚》をS級にさせない為に、A級1位を護っているのさ」
「(……このまま、空気で行けるかなぁ……………)」
まさに一触即発。
殺気が交錯し、今にも手が出そうなその時だった。
ドギャァッッ!!
空から何かが堕ちてきた。
新たな宇宙船の残骸か? と思いきやそうではないらしい。
「君は……メタルナイト!? 集会があったと言うのに、今更きたのか。全く呆れ果てるな」
「(! ……形状から察するに5割強は吹き飛んでいる様だが、恐らく主要部分はほぼ残っている)スバラシイ」
アマイマスク等眼中に無く、ただただ宇宙船に釘付けになってるメタルナイト。
そんなメタルナイトに声をかけるのはジェノス。
「メタルナイト! 何の用があってここへ来た? 招集命令を拒否し、戦いが終わった後にやってくる理由はなんだ?」
ジェノスの疑問。
それは、つい今し方……戦いの終結直後に駆動騎士に言われた言葉に起因する。
彼はもうこの場には居ないが確かに言った。
【メタルナイトはお前の敵だ】
そう言っていた。
そしてジェノスが追いかけている仇もロボット。メタルナイトともしかしたら関係性が……? と疑っている。確たる証拠がない為、安易に手は出せないが。
「……成る程。宇宙船の残骸を回収に来たのか? 未知の科学を取り入れ、より強力な兵器を作り出す為に?」
「ワカリキッタコトジャナイカ。コノUFOハ カイシュウサセテモラウ。ヘイワノタメニ、キョウリョクナ、ヘイキガヒツヨウ、ダカラナ」
アマイマスクを無視する形となったが、別に気にしてない様だ。
金属バッドの様に過剰に絡む事はしない……が、逐一癪に障る物言いをする。
「強力な兵器があってもこのありさまでは持ち腐れだがな」
「オイコラてめー。後で相手してやる。覚悟しろよ」
そんな時だった。
周辺を見渡していた内の1人であるクロビカリが声を上げたのは。
「おおおい! 宇宙人の生き残りがいるぞ!」
そして、アマイマスクは目の色を変えた————。
一方その頃のサイタマとヒカリはと言うと……。
「ほんと、お前のおかげで道迷わなくて済みそうだわ。明るいし」
「もっと明るくしてあげよっか? ほらほら、間接照明~~」
「お~~、落ち着ける暖色の光が~~~って、てめぇ!! ぶっ飛ばすぞ!!」
「にひひっ。サイタマの
思わず手をぶんっ! と振ったサイタマのパンチ。ヒカリは笑顔で躱したが、周囲の壁はその衝撃を躱す~なんて出来る訳も無く。
壁が吹き飛んで結果的に外に出れた。
「別に私の光が無くたって問題ないって当てつけのつもり? ひっどいなぁ~~ここまで便利に使うなんて~~」
「そーいう意味じゃねーし! ダンジョン探索で壁壊すとか、面白みの欠片も無い事したくねーし!」
「迷いまくって、セーブポイントに中々たどり着けなくて、停電来て消えちゃった~って人のセリフには重みがあるね!」
「うるっせーな! もう道順覚えたっつーの!」
ひょっこり、サイタマとヒカリが宇宙船から出てきたのを目撃したクロビカリは目を丸くさせる。
「んあ!!? さっきのB級の————それに一般人の女の子!? なんで中から出てくる!??」
宇宙船に囚われた女の子を救ったヒーロー! な絵に見えなくもないが、当然驚く方が先だ。
一般人の女の子? のクロビカリの言葉に気になってタツマキもやってきて—――――。
「なんでアンタが……って」
そして、少し間をおいて、タツマキにしては珍しく驚いた顔をして叫んだ。
「ヒカリ!? なんでアンタがここに居るの!?」