ヒカリちゃんはキングと遊びたい   作:SSKキング

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めておすとらいく!?

 

 

ある日、キングはヒーロー協会に呼び出されていた。

その場所へとやって来てみると、顔見知りが1人、たった1人だけだった。

 

 

 

 

「バング氏!」

「なるほどのぉ……、やはりキミも呼び出されたか。じゃが、呼び出した連中はみ~~んな避難しちまって、この通り、この支部(ココ)はカラッポじゃよ」

「え? それはなんでまた……。俺もなんの詳細も連絡されず、ただ集まれって言われたから来ただけで」

 

 

 

 

 

―――ドッドッドッドッ………。

 

 

 

 

 

確かに人通りも少なく、交通の便も問題なし。いつも沢山集まってくるファンもいなくて楽だったと言えばそうだが、ここまでくれば不自然。だから、今日初めて出会ったバンク氏……シルバーファングの姿を見つけて少々安心した自分もいたのだが、キングは、それは誤りだった、と言う事に気付くのに時間は掛からなかった。

 

 

「おう。もう1人やってきたようじゃぞ」

「え?」

 

 

支部の入り口が開き、新たな来訪者がいる。

それは見覚えのある姿だ。実は交流も少なからずある。共通の友人がいるから。

 

……友人と言うか恩人と言うか、巻き込まれ型と言うか、兎も角いつもいつも遊ばれ、命を助けていただけ、本当に強いのだが、時折ヤバい場面に遭遇する事も多々あるので、全く安堵は出来ない妖精少女ヒカリと彼女のトモダチでもあり、彼女曰くこの世の最強ヒーロー、ワンパンチ事、ハゲマント・サイタマ。

 

彼は、ハゲマント・サイタマの弟子を名乗るサイボーグ。

 

 

「ジェノス氏!?」

「! キングか。それに……」

「ほぅ、君がジェノス君か。わしはバングと言う者じゃ。よろしこ」

「……………」

 

 

サイボーグジェノス。ヒーロー名 鬼サイボーグ

彼は絶対的な強者であるサイタマを前にして、大抵の相手は有象無象だ、と思う節はあるが、それでも自分自身が強い訳じゃない。

サイタマの弟子を名乗っているが、それでもその師の強さを借りるだけでヨシとする訳もない。

 

だからこそ、強者に関してはちゃんとデータにいれている。

特に所属する事になったヒーロー協会については、データの更新は常々心がけている。

 

 

「(バング。S級3位のヒーロー。実力差、その云々はさておき、序列で言えばキングよりも遥か上。S級5位圏内。………本物の実力者か)」

 

 

バングの強さは、ヒシヒシと伝わってくる。

身体の殆どをサイボーグに改造を施しているが、それでもしっかりと感じる事は出来た。

 

 

「キングにバング。協会から呼び出されたと思えば、ここには誰もいないこの状況。一体どうなっている?」

「そ、それは俺も聞きたい。どういう事なんだ? バング氏」

「…………」

 

 

2人の問いに対し、バングのその老齢を感じさせない圧倒的な強者感漂う顔が陰る。

だがダンマリ、と言う訳にはいかない。少しだけ間をおいて、答えた。

 

 

「……来てない奴らは、場所が遠かったり、他の事で忙しいんじゃろ。面倒くさがって、来ない薄情者もおるがのう。なんにせよ、呼び出されるときは大体無理難題。厄介事の処理が常じゃからな。――――が、今回は輪にかけて悪い」

 

 

バングはそういうと、キングの方を見た。

 

 

「数多の怪人を屠り、血祭に上げ、人界、怪物界にその名を知らぬ程のキングがいたとしても、今回に限っては相手が悪すぎる」

「は、はぁ……(えぇ……、ちょっと待ってちょっと待って、今いない! 彼女いないっ!!)」

「災害レベルで言えば竜。そのレベルの怪人も屠った事があるじゃろうが、相手は怪人じゃない。―――35分後、ここZ市に巨大隕石が落下する。近場のS級ヒーローたちでどうにかしてくれ、といっとった。落ちれば間違いなくZ市は滅ぶ。……或いはそれ以上か。それをヒーローが食い止める事が出来たなら、ヒーロー協会の地位がハネ上がる事間違いなしじゃろう。寄付金も当然増える」

 

 

あまりにも現実離れし過ぎた話に目を丸くするキング。

そう、彼の伝説はヤバい。人間は寄ってくるが、怪人は離れて行く。たまに、命知らず(笑)な怪人が挑んでくる事も無い事は無かったが、運が良かったり、たまたま居合わせたヒカリによって即座に打ち滅ぼされた為、負けなし無敗、人類最強とまで呼ばれている。

悪い気はしないし、胡坐をかきたい気分になる事もあるが、それ以上にヒカリがいない状態が怖すぎるので、欲走る様な事は絶対にしないと誓っている。

 

ヒカリが遊びたい! と言って怪人(災害)に巻き込まれる、飛び込んでいく事は多々ある時は寿命が縮む思いだが、自分一人、身1人の状態の恐怖を、絶対的恐怖を知っているから。

だから、調子には乗れないし、乗るつもりもない。

 

 

 

でも、今回ばかりはヤバい。隕石、無機物だ。キングの威光が通じる様な相手じゃない。

ただただ、地球の引力に導かれて落ちてくるだけなのだから。

 

 

 

「キングがこの場におって、連中は喜んでおったが、いち早く避難する事はやめなんだ。安全圏内で悠々自適に、この災害を防ぐ場面を待ち望んでいるようじゃが……正直不可能以外に言葉が思い浮かばん。人間が太刀打ちできる相手とも思えんしな」

 

 

バングの顔には死相は見えない。

彼自身は生き残る事は余裕で出来る、と言った感じだが、ヒーローを名乗っているのだ。ヒーローとはだれかを助ける。弱き民を助けるのが仕事だ。正義の権化。

なのにも関わらず、街やその住人を守れず、ヒーローとは呼べないだろう。だからこそ、その顔は暗い。

 

 

「今回ばかりはどうにもならん。キングにも言う所じゃったが、1人でも多くを救う事を目指す方が現実的じゃ。大切な人と、遠くに避難、とかのぉ」

「ちょっと待て。隕石だが、市民は知っているのか?」

「30分前までに落下予測ポイントを絞って避難警報を出すと言っておった。まぁ、つまり、たった今報道開始、と言う事じゃよ。……これが何を意味するか解るか?」

 

 

解る。

と言うか、解らない方がおかしい。

 

人通りは確かにいつも以上に少なかった。それとなく外出制限の様なモノを、警報していたのだろう。詳細は語らずに。

 

だが、ここへきて突然隕石襲来メテオストライク!! なんて報道をしたらどうなるか?

 

火を見るよりも明らか。

 

 

「ほほっ、パニックが起こるぞ」

「~~~~~ッッ!(なんで笑ってるんだよバング氏!!)」

 

 

ここで取り乱しては、キングの名もヤバくなる。

まぁ、今はそれどころじゃない状況ではあるが、情けない姿を晒して、余計な事態を生むのは避けなければならない。

最強だ、と言われているからこそ、そのネームバリューが障壁となって、誰も寄せ付けない様になっているのだ。強さにムラあり、なんて事が広まったら……と考えたら、考えただけでも背筋が凍る。

 

今の隕石騒動も大変な事態だが……、それ以上にそっちの方がヤバい。

 

 

 

 

 

 

――――ドッドッドッドッ!!

 

「(ヒカリ氏~~~~~~!! サイタマ氏~~~~~~!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

あの気まぐれで娯楽主義で、愛らしくもあり可愛くもある妖精少女と、その少女が最強と認め、且つこれまでの怪人騒動でも幾度も自分の代わりに倒してくれちゃってた(特にヒカリと出会う前)自分の中でも絶対のヒーロー、サイタマの名を心の中でキングは叫んだ!

 

それが伝わる~~~なんて機能は搭載していないが……、彼女たちなら何とかしてくれるとは思う。

と言うか、何とかしてくれなかったら、自分が死ぬだけだ。

 

 

「(ほお……、この状況、ここへきて更にキングエンジンが増しおった。それに時折見せるこの痙攣にも似た震え。……殺気の塊か。それでいて外へは一切出しとらん。無駄な気配を断ち、その気を身の内に集中させておる、か………爆発させるその時の為に)」

「(キング。……サイタマ先生は別格として、この場においては間違いなく最強戦力。この男がいれば隕石をも粉砕しそうな気はするが、何もせず、それでは弟子の名が廃る)」

 

 

 

キングの様子を見て、ま~~~~ったく的外れな感想を抱く2名。

これもまた、相手が違うだけで日常茶飯事なのである。

 

 

 

 

 

 

 

――ウゥゥゥゥゥゥゥゥ――

 

 

暫くすると、街から警報が鳴り響いた。

どうやら、バングが言った通り絶妙なタイミングで協会から避難警報が出された様だ。

 

 

静まり返っていた街が突然飛び起きた様に大パニック。

 

 

 

「キング。本当に行くつもりか?」

「………(ヒカリ氏~~~! サイタマ氏~~~!! どう頑張ったって、俺じゃそっちに行くのに1時間は掛かっちゃうよぉぉぉ!!)」

「……言う間でもない、と言う事か」

 

 

 

大パニックなキングは、キング・エンジンだけは今日も元気に健在。

バングの問いに対してエンジンで返してきた所を見て、納得した様子。

 

 

「キングは解った。では、お前はどうするんだ?」

「お前じゃない。バングさんと呼ばんか」

 

 

ジェノスにもそのエンジンは当然聞こえており、臨戦態勢を取っている、その力を極限まで身に圧縮しているのを察知して、キングは大丈夫だ、とバングの方を見た。

 

バングは腰を一度、二度叩きながら背を向ける。

 

 

「今回ばかりはキングでも難しい、と言うのがわしの判断。じゃが、代々引き継いできた道場を離れる訳にはいかんのも事実。……ここに残るしかないのお」

「そうか。(……サイタマ先生の一の弟子として、キングに後れを取る訳にはいかない。……キングよりも先に、そして防いで見せる)」

 

 

そう言うと、ジェノスの方を振り向いて、構えて見せた。

バングの代名詞であり、格闘技界においてもトップレベルに位置する武術の型を披露。

 

 

 

 

 

「流水岩砕拳。――――知ってる?」

 

 

 

 

 

決まった! とポーズを取ったのだが、そこにはジェノスはおらず。

 

 

 

「……………行ったか。これが若さ、かのぉ。……のぉ、キングよ」

「ファッ!?」

「そういきり立つな。まだ衝突まで時間はある。………力を溜めておくには十分過ぎる時間が、の」

 

 

キングの肩をぽんっ、と叩いて見せるバング。

臨戦態勢のキングに触れる事にリスクがある事は当然だが、バングは自分自身の武術に自信があり、キングの一撃を受けてみたい……と言う気持ちもあり。

 

だが、根幹はキングの力は怪人、即ち悪にのみ発生し、消滅させる力だから、問題ないと判断していた。

 

 

ただただ、キングはこの場に取り残され、未だ来る様子が見えないヒカリの姿を瞼に焼き付きつつ――――天井を見上げた。

バングからすれば、見えないが隕石を見据えている……ようにも見えるかもしれないが、ただただこの命が後数十分後にどうなっているのか……、それだけをキングは考え続ける。

 

 

何せ、今から逃げた所で自分の足じゃ100%逃げれないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緊急避難警報。

それが街に鳴り響いている。

災害レベルも竜である、と。

かつてないレベルの警報に、逃げ惑う市民。

 

 

ここへきて、何一つ隠す事なくヒーロー協会は警報、警告する。

この巨大隕石によって、Z市は間違いなく丸ごと壊滅すると。消滅し、蒸発し、地図を書き換えなければならない、と。

 

 

だが、あまりに突然過ぎた………。

猶予が無さすぎた。

 

 

我先に、と人を押し退け、女だろうが子供だろうが年寄りだろうが、自分を優先して前へ前へと進み続けたが、ある時示し合わせたかの様に歩を止めた。

 

 

 

「――――でけぇ………」

 

 

 

その隕石を視認したからだ。

あの大きさなら、何処へ逃げても同じだと。

そして、自然に涙が流れた。

 

 

 

 

―――死ぬ前に、彼女欲しかったなぁ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

諦めの境地に至った市民たちを上から見ているのはジェノスだ。

 

兎に角街を駆け巡る。

落下ポイントを正確に測り、最適な位置、マーキングしたビルの屋上へと急ぐ。

 

 

「(流石に今回は生存をあきらめてる者も多いな。……だが解せない。何故協会はキングがいる事実を伝えない? ………つまり、そういう事か(・・・・・・))」

 

 

キングがこの街に居る。

それを知れば、安心する者も当然出てくるだろう。

パニックの際に起こる二次被害を防ぐ事だって出来る筈なのに、それをしないヒーロー協会に疑問を覚えた……が、最後の最後に発表し、寄付金をより多く募る事が目的だろう、と。ギリギリまで発表を遅らせたのもそこに在るのだ。ならばキングの名もここ一番で使おうと言うのだろう。

 

正直、守銭奴、ゲスな臭いがするのも事実だが、ジェノスがする事も変わりない。

 

 

 

「キングよりも先に、止めて見せる―――この街には先生も住んでいるんだ。逃げる訳にはいかない」

 

 

 

ジェノスはとっておきの強化パーツ、その試作品を取り出し、装着させた。火力特化の兵器、出力がこれまでの倍近く上がっている兵器。

その反動が未知数で最悪自爆する可能性も見えてるので、慎重に使う事を考えていたが、四の五の言っている暇はない。

 

 

 

「(俺の焼却砲フルパワーでなんとか迎撃して見せる! ………出来なければ、後は託すしかないが、それでも先生の顔に泥を塗る真似はできん)」

 

 

腕にエネルギーを集中させて、砲撃準備を整えようとしたその時だ。

空気を切り裂く轟音と共に、巨大な何かが超スピードで横切って行った。

 

 

「! あれは―――!!」

 

 

 

自分より早く、そして大きく、強い。

それを、先ほどのバングやキングとはまた違った意味で感じさせる相手がそこにいた。

 

 

一足早くに、落下地点へとおり、砲撃を構えるサイボーグの姿。

 

 

 

「お前は……、ボフォイだな!?」

 

 

ジェノスも見知った姿だ。

それは当然、市政も知っている。

何せ、このボフォイと呼ばれたサイボーグもS級ヒーロー7位。高火力の兵器で敵を周囲の建物ごと粉砕するヒーローなのだ。

駆けつけたヒーローの内の1人か。

 

 

「オ前ハ、新人ノジェノスカ。隕石ヲ止メニ来タノカ?」

「ああ。そうだ。……キングも来ている。ゆっくりはしてられん状況だ。……まぁ、好都合。隕石(向こう)もゆっくりしていない様だがな」

「何。キングモ、カ。コレハ俺モ急ガネバナルマイ」

 

 

キングの名は当然知っている。

その計り知れない実力、数値で表す事が出来ない強大さを知っている。だからこそ早々に済ませなければならない、と判断。

無論、それはジェノスも同じだ。

 

 

「俺が先に止めるぞ」

「結果ガドウナロウト構ワナイ。俺ハ新兵器ノ性能ヲ、試ス。ソノ実験ニ来タダケダ。隕石(アレ)ハ都合ガ良イカラナ」

「実験だと? 動機があまりにも不純な気がするな。まぁ、俺も他人の事をどうこう言えた性質ではないが。だが、実験にかこつけて、止めれなかった時はどうするつもりだったんだ? 隕石が落ちればお前も死ぬだろ?」

「俺ハ死ナン」

「何?」

 

 

実験の果てに、死ぬ気か? とジェノスが聞き返す。無論、ジェノスとて死ぬつもりは無いが、それくらいの気概と覚悟を持って臨むつもりだ。

キングがいるから、と言う後ろ向きで他人任せ、凡そヒーローとは呼べない精神性で、サイタマの弟子を名乗る事なんて出来ない。

だが、この目の前の男はそういった類の気概ではないと思えた。

 

その理由は直ぐに判明する。

 

 

「今オ前ガ話シカケテイルノハ、遠隔操作サレテイルロボットダ」

 

 

 

 

 

 

そう―――、ここに厳密には彼は居ないのだ。

 

 

 

『残念だが、俺は命をかけてる訳じゃない。隕石で死ぬのはごめんだ。……それはキングがいようがいまいが、変わらん事』

 

 

 

素性は明かさない、下手な隙は見せない。それが彼、ボフォイ。

 

 

「アア、ソレト俺ヲ呼ブ時ハ、ボフォイデハナク、【メタルナイト】ト呼ベ。ヒーローハ 本名ジャナク、ヒーロー名デ呼ベ。ソレガ常識ダ―――ット、ソロソロ話シテル場合ジャナクナッテキタナ」

 

 

大気が震える。

地面が唸っている。稲光も見え始めた。

絶対的な破壊の力が今目の前に迫っているのが感じられる。

 

 

それを迎え撃つは地上のロボット。

 

 

 

「ミサイル、発射」

 

 

 

メタルナイトに装備された対空ミサイルの一斉掃射が始まった。数発のミサイルが一斉に、ロケットの様に空高くに飛翔び、向かっていく。

 

凡そ一個人、単機で備わっているとは思えない程の物量。

そして――――威力。

 

 

着弾したのだろう、空で大爆発が起こった。

あまりの振動、そして爆発時の発光と発熱が街を、大地を揺らす。

 

 

「(実験、その価値がある、と言うだけの事はある様だ。これだけの破壊兵器を使うとは………。だが)」

 

 

あまりの破壊力、そして明らかに人を殺傷し、建物を破壊するだけに特化した無感情の兵器。ジェノスは同じサイボーグではあるが、人間性は捨てていないからか、相容れないナニカをそこに感じた。

 

 

「―――警戒しておく必要があるな。……メタルナイト(アイツ)は危険だ」

 

 

隕石の事より、大量破壊兵器を一斉掃射したメタルナイトに危機感を覚え始めていたジェノスだったが、直ぐに横っ面を殴られる感覚に見舞われる。

目標だった隕石だが、その弾幕、空を黒く染め上げた黒煙を貫いて迫ってきたのだから。

 

 

「「!??」」

 

 

確かな手ごたえ、そして隕石の破片を見たが、全く威力が衰えていない。それどころか、傍に近づきすぎた分、威力が増している様にも見える。

 

 

「ダメカ、コノ程度ノ威力デハ。……フム。傍観ニ回ルトシヨウ」

 

 

メタルナイトはそういうと、活動を止めた。全く動かず……いや、目の部分が開き、その中から目玉の様な代物が、ぎょろりと周囲を見渡す様に動き始める。

 

 

「ッ、今はそれどころではない! あれほどの兵器が通用せん以上、厳しいが――――衝突まで、推定後33秒!」

 

 

止める気満々だった。

だが、うぬぼれていた自分がいるのに気付く。

キングや、自身の師匠サイタマの存在が、それに拍車をかけてしまっていた。

まだまだ、自分は未熟そのもの。災害レベル竜に太刀打ちできるわけがない。

 

初めてサイタマとあったあの時―――後々調べて解った事だが、あの蚊の怪人。完膚なきまでに叩き壊された相手の推定災害レベルは【鬼】。竜には遠く及ばない相手に完敗してしまったのだから。

 

 

「……だが、だからと言って背を向ける訳にはいかん」

 

 

フルパワーで焼却砲を放つ。

そのエネルギーのチャージに掛かる時間は5秒。

 

 

だが、それで良いのか? 最善の手なのか? とここでジェノスの中に迷いが生まれた。

 

 

メタルナイトのあの破壊兵器でさえ効果が薄かったにも関わらず、この程度の兵器で一矢報いる事が出来るのか? と。

標的との距離はもう後ほんの僅か。迷っている時間がないのも解る。だが、街を、ヒトを護ってこそのヒーロー。その精神は師匠サイタマから学んだ筈だ。

強さで師に追いつきたい。ならば、その精神性をも学び、追いつかねばならない。

 

 

何が正解か――――それを導き出そうとしたその時だ。

 

 

「まぁ落ち着け。心に乱れが視えるぞい」

 

 

いつの間にか、背後にバングがやってきていた。

全力ブースターで、この場へと駆けつけた。生身では到底追いつけるものではない、と思っていたのだが、この老人は息1つ乱す事なくやってきていた。

 

 

「失敗を考えるには、おぬしはまだまだ若い。……適当でええんじゃよ。土壇場だからこそ、な。結果は変わらんかもしれん。じゃが、それがベスト。自然体。土壇場の今、突然何かに目覚めたかの様に自分の出来る以上の力なぞ出せやせん。自然に、適当に、そして全力を出し―――――後は任せたらええんじゃ」

 

 

 

 

 

――――ドッドッドッドッドッドッ

 

 

 

 

そして、響いてくる圧倒的な強者の音。

ジェノスは―――決めた。

 

 

出来うる全てを出し尽くす、と。それこそがベストであり、自然体であり、適当なのだと。

 

 

 

 

 

 

 

「(ヒカリ氏~~~~!! ほ、ほんとーにだいじょーぶなの~~~~!??)」

「(だいびょびだいじょび! ほらほら、堂々としてて! さっき、ケータイで連絡来たけど、サイタマも来るみたいだし?)」

 

 

 

 

 

 

災害レベル竜。

竜退治の始まりだ。

 

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