ヒカリちゃんはキングと遊びたい   作:SSKキング

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……あっ

 

 

「キ~ングは走る~~よ~~♪ ど~~こま~~でも~~~♪ さぁさぁゆけゆけ! 怪人たおせっ! 平和のた~め~に~っ♪」

「―――――………(……走ってないよ? どっちかと言えば運ばれてる……)」

 

 

 

 

「先生、キングは移動する時いつもあの様な感じ、なのでしょうか? 隕石事件の際は見られなかったのですが……」

「ん? あ~~……最近は、アレがマイブーム(・・・・・)らしい」

「?? なるほど……。キング独特の歩法、と言う事ですね」

「かもな。(てかヒカリが浮かせてるから、アイツが運んでるも同然なんだけどなぁ……)」

 

 

海人族討伐! 

傷ついた仲間を、ヒーローの1人を救うべく……否、命ある限り市民の為に戦っているヒーローに加勢すべく、S級、C級の3人が街を駆ける。

 

 

普通に駆け足、車の速度をも超えて周囲を驚かせる―――。中でも一番驚かされてるのは当然キングの姿だろう。

 

 

元々、そこまで露出が多いとは言えず、ヒーロー活動に常日頃勤しんでるA~C級と比べたら雲泥の差。

見かけたら怪人は消滅するから、色んな意味で幸運だと人々は思う筈だ。

 

そんなキングが、移動している姿を目にした瞬間、まず初めに起こるのは大歓声————ではなく。

 

 

 

「「「「………は?」」」」

 

 

 

 

驚愕し、言葉が詰まる。上手く声に出す事が出来ない事から始まる。

 

それは一般人だけではない。高速道路を運転し、現場へ急行しようとしてるC級ヒーローたちも例外ではない。

 

 

キングは両手を組み、直立不動で備え―――そして前方に移動している。

神々しい光を纏いながら。

 

 

 

ドッドッドッドッドッ―――――!

 

 

 

そして、勿論あのキングエンジンも健在。

車の中でさえ、余裕で聞こえてくる程に―――。

 

 

 

 

 

「オレ、初めて生でキングみた……」

「キングの前を、走ってたの誰だ?」

「あれ、どんな推進力で前に進んでるんだろう……?」

「非常識過ぎるよな……、同じ人間とは思えん」

「でも、スゲー憧れる……。キングエンジン最高!」

 

 

 

 

J市まで向かい、手柄を立てて一旗揚げよう! と野心に溢れていたC級ヒーローズの皆だったが、キングの姿を見て、目的を忘れて、ただただ感想会を続けるのだった。

 

 

 

「――――――――」

 

 

 

ドッドッドッドッ――――――

 

 

激しく鼓動する心臓(エンジン)

キングは今回もただただ、己の感情を、精神を殺しに殺し――――恐怖心さえも忘却させる事に勤しむ。

普通ならば、精神を極限まで殺せば、キングエンジンも心臓の鼓動故落ち着けば収まっていくもの。そしてそれは目安になる。と本人は考えていたのだが、キングエンジンは活動時は常に一定。今日も絶好調だった。

 

ヒカリと共に危険地帯に赴く時は、如何に精神を極限まで殺してもこのキング・エンジンだけは鳴り、大地を震わせ続ける。

ヒカリの遊び場は地獄への入り口である事を知っているからこそ、キング・エンジンは常時鳴動中である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして暫くして――――

 

 

 

「ん~~~……、幾ら新鮮とはいえ、こんなゲテモノ魚は好みじゃないな………」

「これがテレビでもやってたかいちん族? いや、カニじゃないし、エビでもイカでもないじゃん……、あ~ぁ サイタマがワンパン嫌だ、って変に手加減してたから時間かかってジェノス完全に見失っちゃったじゃん。その上結局ワンパンだったし」

「うっせ! お前だってノリノリでやってたじゃねーか!」

「ふふんっ! 私は! キングは! この町の平和も守ってたのだっ! 見捨てる事なんて、出来ないもんね~~っ!」

「……………………」

 

 

 

只今サイタマとヒカリ(キング)は、J市まで向かってる途中でジェノスと二手に分かれて行動中。

 

ぽっとでの怪人たちをワンパンしつつ、キングビームで掃討しつつ、雨降る中、大量の怪人退治に勤しむS級とC級ヒーロー。

 

因みに、ジェノスと分かれたのには理由がある。

 

 

 

【ここは任せて先にゆけ!!】

 

 

 

をヒカリがやりたかったらしい。ノリノリで。(+キングの声で)。

でも、ジェノスはまたヒーローとしての精神をキングから学べた、と感銘を受けたようで、師であるサイタマの了承を得て、単機掛けで向かったのである。

 

 

少々想定外だったのは大雨と怪人はセット? って思いたくなるくらい、結構な数の怪人と遭遇したという事だろう。

本命のかいちん族じゃなかった。でっかい牛みたいなのとか、でっかいミミズみたいなのは入るけど、どうみても海鮮モノじゃないから。

 

 

「あの~、ヒカリ氏?」

「うんうん、次は向こうの方……って、どうしたの? キング」

 

 

サイタマと一緒に行動、キングと離れて実体化して行動していたヒカリに、キングが話しかける。

時折抜け出す事もあって、云わば生身状態の今がキングにとっては一番危険なのだ。これで色々と痛い目を見てきた過去があるから。

それに今は怪人を倒したとはいえ、明らかに危険地帯。

だから、そんなに離れないで――――――と言いたい……のではなく。

 

 

「ニュースになってるくらいの規模だし、協会に問い合わせたら直ぐに場所解ると思うんだけど………」

「あ! それが有った!!」

 

 

ひっ切りなしに、キングに掛かってくる災害警報に日々キングは戦々恐々していた。

ヒカリと共にいる時は、自分の精神を殺すだけで終わっているんだけど、なんだか狙っているのか? と思うくらいキングが1人の時ばかり電話がかかってくる。

 

助けを求める声は、ヒカリと行動を共にしてる時は大体現場から聞こえてくるので、ヒカリが直ぐにその方法を思いつくのも難しい、と言えるだろう。

 

 

「んだよ! そんなのあんなら早く言えよな~! あ~あ、雨降られて大変だ。お前のそのヒカリバリアー、良いよなぁ……」

「ふふんっ! 良いでしょ? あ、でもサイタマが真似しようとしちゃ駄目だよ? 周りの被害も考えてね」

 

 

そもそもサイタマの場合、雨雲くらいパンチ一発で吹き飛ばせる。

必殺シリーズを使えば、雨粒1つ残さず全て吹き飛ばして仕舞だ。

でも、そんな事したらこの辺りが大変な事になる。元来、サイタマは力加減と言うモノが出来ないからいつも怪人をワンパンしては落ち込んでるのだ。

 

そもそも、手加減しててもトンデモナイからヒカリは駄目出しをしていたりするが。

 

 

「ヒーローが皆に迷惑かけちゃ駄目だもんね」

「解ってるよ! ほれほれ、キング。オレ達はどっち行けば良いんだ?」

「あ、ああ。今丁度電話がかかってきたから。直ぐに確認するよ」

 

 

 

Prrrr……ガチャっ

 

 

当然ワンコール。

 

 

【キング!! キングだなっ!? 良かった通じた!! 応援要請を頼みたい!!】

「……ぁぁ、ニュースの件で良いな? J市に海人族を名乗る連中が暴れている。……既に現場へと向かってる。現在の状況は?」

 

 

電話越しでもしっかりとキングエンジンが聞こえてくるのを確認すると、一気に歓声が湧き起こった。それはサイタマやヒカリ、勿論キングにも聞こえる程の大歓声。

 

 

 

【良かった!! A級だけでなく、S級までもが負けた! 17位のプリプリプリズナーだ。相手は海人族の長。想像以上の強敵だった、と言う事だろう。災害レベルは鬼では済まされない相手かもしれない!】

「………そうか」

 

 

 

キングは死んだ魚の様な目をしながら頷いた。

抑揚のない返事は、まるで相手の脅威度など、自分には関係ない、と言わんばかり―――の様に相手には伝わる。それが何よりも頼もしい、頼もしすぎる。

 

ただ、だからと言ってキング1人に丸投げする訳にもいかないから対応策は練って、それを伝える。

 

 

【我々の方で討伐隊を組む計画だが】

「いや、構わない。……我々(・・)だけで良い。早く詳細を教えてくれ」

 

 

キングのそれはまるで覇気がない……様に感じられるのは、本当の意味でキングを知る者だけ。

 

それ以外の者ならば、まるで大津波が来る前の海辺に佇んでいる様な不気味さを覚えた。

 

味方である筈の自分達でさえも、不気味に思えるのだ。

相対する怪人たちには思わず道場してしまう。

 

 

 

【そうか。了解した。……ん? キング以外にも出動してくれるヒーローが居るのか? そこには】

「……現在活躍中のC級2位の彼だ。……オレ達が居れば何の問題もない」

 

 

キングの言葉を聞いたオペレーターは、即座に協会のデータにアクセスをする。

C級2位。それだけの情報で十分だ。直ぐに出てきた。

 

 

新人ヒーロー サイタマ。現在C級2位。

体力試験で、新記録を連発。その後、S級2人『キング・ジェノス』と協力して隕石を破壊した功績を持つ。

キングが(それとなく)推薦する点も踏まえれば極めて異例な新人だと言えるだろう。

 

だが、過去に格闘技・スポーツと言った成果を修めた背景が無く、素性も全くの不明、故にキング・ジェノスの腰巾着とみられている節が多い。

 

 

だが、キングと一緒に行動をするのなら全く問題ないだろう。

誰かを育ててみたい――――そういう境地に立った、と言う可能性だってある。

身近で言えばS級3位、シルバーファング。流水岩砕拳の師として道場も行っている。

同級4位アトミック侍も剣術免許皆伝に加えてのA級上位3名を弟子に持つ。

 

 

「(とはいってもC級だ。大型新人であるジェノス、ましてやキングの頂きにまで来られるとは到底思えないが……それでも、怪人災害が年々増加の一途。協会の戦力が増える事は好ましい事でもある……と捕えるべきか)」

 

 

 

サイタマの実力を知らない者からすれば、S、Aと軒並みやられている死地にC級を送り込むなどバカげている、と言えるのだが、キングの存在があり、そのキングも大丈夫である、と言い切っている。

キングの元で成長を遂げた彼がどうなるか、それも気になる。

 

 

【怪人はJ市、避難シェルターに向かっている。位置情報は、今転送した。確認してくれ。――――頼んだぞ】

「………ああ。任せておけ」

 

 

 

――ドッドッドッドッ

 

 

鳴り響くキングエンジン。

人類最強に死角なし。

 

それを思わせる程の安心感を齎せてくれた。

 

 

 

「よっしゃ!! 速く行くよ! 無辜の民に危険が迫ってるともなると、勝負だ早い者勝ちだ、なんて言ってられないからねっ!」

「だな」

「く~~~! キングっ! かっこいいよ! 最高だよっ! わたしも燃えてきたよぉぉぉ!!」

「…………。ふっ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒーローなんて、ゴミばっかりねぇ……」

 

 

 

海人族の長は、侵攻を阻もうとする全てのヒーローを蹴散らし、今まさに一般人を殺戮しようと迫っていた。

 

 

 

「私は深海王。海人族の長。……海の王。万物の根源であり、母親の様なもの。……その私に盾突くとどうなるのか、この身を以てゴミたちは示してくれたようよぉ」

 

 

 

地に倒れ伏すのは、A級、C級……そしてS級ジェノス。

ジェノスの機械の身体は見るも無残な姿に成ってしまっている。まるで、何かに溶かされた様に、機械の身体の大部分が露出しており、頭部も凡そ半分程が欠損している。

サイボーグ故に、辛うじて生きている様だが、それでも動く事は出来ない。

 

 

ただ、自分の弱さを嘆いていた。

アレだけ大見えを切り、キングやサイタマに先鋒を任されたというのに、この体たらく。

この身体では、彼らがたどりつくまでの時間稼ぎさえ出来ない。

 

 

 

「―――勿論、これで満足なんかする訳無いでしょう? 精々、気持ちの良い悲鳴をあげる事ね。私の兵たちが受けた痛み、アナタたちにも1億倍にして返してあげるわよぉ」

 

 

 

全てのヒーローが倒れ、その凶悪な牙は、獰猛な刃は自分たちに向けられている。

抗えない絶対的な死が迫る中でも、誰一人として逃げ惑う事は無かった。

 

まるで己の死を受け入れたかの様に。自然の摂理、大災害を前に立ち尽くす様に、ただただ立ち尽くし、涙を流していた。

 

 

だが、1人だけ例外が存在した。

 

 

 

「ジャスティス…………すと、っぷ……っ」

「……はぁ?」

 

 

 

深海王の背に抱き着き、絶対に行かせまいとしている者が。

たった1人でも、絶望的な状況でも諦めてないヒーローが。

 

 

「ゴミもここまで来たら、なんて表現して良いか分からなくなってくるわぁ」

 

 

そのヒーローの名はC級1位 無免ライダー。

自身の身体くらいはある巨大な腕に振り払われ、まるでゴムボールの様に弾き跳んでいった。

 

―――だが。

 

 

 

「……C級、ヒーローが大して役に立たないなんてこと、俺が一番よくわかってるんだ!」

 

 

 

 

身体中傷だらけ、骨も何本も折れている事だろう。

だが、心だけは折れてない。まだ立ち続ける。

 

 

 

「俺じゃB級で通用しない……、自分が弱いって事は、ちゃんとわかってるんだ!」

 

 

 

弱さを受け入れ、抗えない事も理解し、それでも立ち上がる。

それを虫けらを見る目で見下ろすのは深海王。

 

 

「な~にボソボソほざいてるの? 命乞い?」

 

 

大きく割けた口が歪む。

ニタニタと下卑た笑みを向け続ける。

 

 

 

 

「俺がお前に勝てないなんて事は、俺が一番よくわかってるんだよォッ……!! それでも、それでも、やるしかないんだ!! ここには、もう俺しかいないんだ!!」

 

 

 

 

 

全てのヒーローは倒れた。

援軍が来る気配もない。

 

もう、ここにいるのは守るべき市民と、目の前の巨悪だけ。

 

 

 

 

 

 

「勝てる勝てないじゃなく、ここで俺はお前にたち向かわなくちゃいけないんだ!!」

 

 

 

 

 

 

頭から口から、血が流れて重症な身体を奮い立たせる。

 

 

「わけわかんない事言ってないで早くくたばりなさい」

 

 

そんな決死の覚悟も、人をゴミとしか認識していない深海王には無意味。

さっさと殺してしまおう、と歩み寄ろうとしたその時だ。

 

 

「頑張れぇぇぇぇ!!」

「無免ライダー!! 頑張れぇぇぇ!!!」

 

 

1人、また1人と死を受け入れたかの様に動けなかった市民たちが声を振り上げた。

 

 

「そいつをやっつけてくれぇぇ!!」

「がんばれ!! がんばれ!!」

「勝ってくれ―――――!!!」

 

 

 

まさに最後の希望。

それを彼に託した。

 

 

応援される事。

それがこんなにも力が出るモノなのだ、と改めて無免ライダーは実感する。

もう、本当は一歩も動けない筈なのに足取りも不思議と軽やかになる。

 

 

「ぬぅおおおおおおおお!!!!」

 

 

最後の力だ、と声を張り上げようとしたその時だ。

 

 

「残念、無駄で無意味でしたぁ♡」

 

 

茶番にはもう付き合わない、と言わんばかりの巨拳が彼の頬を貫いた。

頭蓋が歪み、鈍い音が響き渡る。常人であれば致命的な一撃。

ましてや、深海王はS級を2人も倒している。そんなバケモノの拳を受ければ、一般人と大差ない程度の身体でしかない無免ライダーには一たまりもないだろう。

 

 

だが、残虐が故に、希望を徐々に削ぎ、甚振る事に切り替えた深海王のその悪辣な性質が故に、彼の命の灯が消える事は無かった。

 

そして――――結果。

 

 

「よくやった。ナイスファイト」

 

 

間に合った。

 

 

「! ま~~た、ゴミがしゃしゃり出てきたわねぇ」

 

 

倒れ伏そうとしていた無免ライダーを支える様に割り込んできた男が1人。

そしてもう1人。

 

 

「ジェノス氏!!?」

「き……んグ。すまない……、おれ、ではあしどめ、すら……」

「! ぅお!? ジェノス!? 生きてんのかそれ!??」

「先……生………。もうしわけ、ありません……」

 

 

 

身体機能の殆どを故障させたジェノスに駆け寄る男もいた。

 

 

 

 

――――ドッドッドッドッドッ

 

 

 

 

そして、一際高鳴る鼓動が、場を支配する。

 

 

「! ………へぇ。噂に聞く、人類最強とはあなたのこと、かしらぁ?」

 

 

空間を地を揺らさん勢いで響く音を前に、深海王は少しだけ表情を歪ませる。

地上には、数多の怪人を屠り続けてきた男が居る。怪人たちにとってもバケモノと称する地上最強が居る。

 

それは、海人族の間でも名が轟いていたのだ。

 

 

 

「人類最強キング。アナタは他のゴミとは明らかに違う。無視して良いゴミじゃないようねぇ」

「…………ふっ」

 

 

そんな深海王の言葉も軽く笑って見せる。

 

 

 

「その男を無視しない方が身のためだぞ。海の怪人」

「?」

 

 

深海王の傍に居る男。

キングが出現した故に、完全に忘れかけていた。

 

 

「お前がかいちんぞくってヤツか」

「海人族よ!!」

 

 

だから、速攻で殺してキングに集中する――――と深海王は拳を振るった。

バキッ!! と殆ど無防備の頭部に向けて無免ライダーを屠った時とは比べ物にならない程の一撃を見舞う。

 

 

「!!」

 

 

それに目を見張るのは深海王だ。

キングばかりに気を取られていたが、目の前の男もただものではない、と今更ながらに実感する。

 

 

「なるほど。キングと共に居るんだからそれなりには出来る男のようね。私の殴打で倒れないのだから」

「テメーのパンチが貧弱過ぎるだけだろ? キングのキング・パンチ! に比べりゃ、蚊が止まった程度ってもんだ」

 

 

 

「え……キング、パンチ??」

「おっ、今度それしてみる? たまには光の攻撃以外のキングの必殺技も増やさないとだしね?」

「むむ、ムリムリ!」

 

 

 

これまではキングが放った(様に見える)光で怪人を圧倒してきたのだ。だから、キングはこれまで一度も攻撃らしい攻撃はしていない。そんな華奢な身体で攻撃したら、逆に拳の粉砕骨折だって有りえそうだ、と盛大に首を横に振っていた。

 

 

 

 

 

そして、ここで無免ライダーがやられた事で再び絶望に沈みかけていた市民たちが声を上げ出した。

 

 

「キングだ」

「キングが来てくれた!!」

「キングだ!!!」

 

 

 

【キング!! キング!! キング!! キング!!】

 

 

 

キングコール一色になる。

戦おうとしてるのはサイタマなんだけど……。

 

 

ここで、いつの間にかサイタマの傍に移動したヒカリと、サイタマは目が合った。

 

 

【代わろっか??】

【嫌なこった!!】

 

 

目だけでアイコンタクト。

それを受け取ると、ヒカリはしぶしぶキングの傍へと戻った。

 

 

「たかだかゴミの中での最強程度が、この大海の支配者、万物の王である私に逆らう等と、身の程を知るにはいい機会ね。……私の本気と言うモノを、見せてあげるわ。全生態系ピラミッドの頂点に立つ存在の本気をね」

「生態系最強(笑) とか言ってて、だーれも倒せてないってのも笑えるよね~~」

 

 

キングの声色で、そんな陽気な言葉を使うのだから、思わず場が静まり変える。

 

 

 

「………なんですって?」

「だってそうじゃん? ワタシツエー ワタシスゲー ワタシチョウテン! って言ってるケド。結局ぜーんぜん倒せてないし。一番危なかったのはジェノスだけど、大丈夫っぽいし。こういうのって口だけ、って言うんじゃないの?」

 

 

深海王の身体がこれまで以上に膨張し、元々筋肉質な身体が更に盛り上がって行く。

怒りを力に変えて、と言うのが正しいだろう。

 

 

 

「でも、それが当然だから安心して? 真のヒーローって言うのは悪いヤツには倒せないってものだから」

「…………今その辺で転がってるゴミの掃除なら、あんたを殺した後にゆっくりと料理したげるから、あんたこそ安心しなさい」

「へぇ……誰が倒れてるって?(ほら、キングっ!)」

 

 

 

最終的には、サイタマVS深海王の流れだったのに、いつの間にか喋り出したヒカリに呆然と放心とさせていたキングだったが、ヒカリの合図で両手を広げた。

 

 

 

 

【伏シテ死ナズ、英雄ノ輝キ】

 

 

 

 

キングに集った光が一瞬で広がり、軈て深海王にやられたヒーローたちを包み込んでこの場へと連れてきた。

完全に気を失っている様だが、それでも傍目からは、彼らが一瞬で駆けつけてきたかの様にしか見えない。

 

 

「ヒーローは倒れない。悪を前に倒れたりしない。そう言うモノなの。理解できたかな? え~~っと、かいちんおう?」

「海人王!! っっ、深海王よ!!」

 

 

激昂して飛び掛かろうとする深海王……だったが。

 

 

「コラコラ。お前に代わってやらねぇっつったろ? オレがやんだよ!」

「うるさい!! 今はそれどころじゃないのよ!! ゴミはとっとと死になさ「耳元でうるせえな!」ッッ!!???」

 

 

ヒカリに抗議しようと声を上げたサイタマ。

その更に後ろから激昂した深海王がサイタマに殴ろうとした。

 

 

結果——————。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あっ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

うるせえな、の一言とワンパンで深海王の上半身は消し飛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 


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