ヒカリちゃんはキングと遊びたい 作:SSKキング
その非常招集は当然キングだけではなかった。
S級と呼ばれる全ヒーローに声が掛かっている。
ヒーロー協会の持てる力の全てが今、本部に結集しようとしていた。
「…………」
――――ドッドッドッドッ
今日も今日とて、絶好調なキングエンジンを奏でながら、本部へと足を運ぶキング。
ここは云わば、世界二の安全な場所。故にキングエンジンを鳴らせる必要は無い場所だし、その性質上鳴る事自体がおかしいのだが、止まる事はない。
当然だ。
「あっ、キングきゅん♡」
まず最初に遭遇したのがプリプリプリズナー。
あのかいちん……じゃなく、海人族の長、深海王の襲撃事件から妙に距離感が近い。
応対してたのが、キングでありヒカリだったから、結構なフレンドリー口調で話されてしまったのが仇となってしまった、のである。
「キングさん! 貴方が来てくれたのなら、もう大丈夫ですね。僕はこれから塾があって色々と大変で―――」
続いて童帝くん。
S級5位にランクしているトップ5ヒーローの1人!
彼は、驚くべき事に10歳と言う若さ……と言うか子供。身体的にはまだまだ成長途中の子供だが、特筆すべきはその類稀なる頭脳。ありとあらゆる発明品で怪人たちを駆逐していった姿には背筋がゾっとする思いだった。
「……成る程。キングまで呼ばれていたのか。他にも揃ってる。つまり相応な事態、と言う訳だな……」
続いて閃光のフラッシュ。
鋭い眼光と中世的な顔立ち、黒いタイツのような生地で身体のラインがしっかりと強調されていて、ありとあらゆる無駄を省いた最善の身体、との事。閃光の異名を持つ様にとてつもないスピードで敵を切り伏せる姿は、キングも見た事がある。
スピードの領域では勿論ヒカリがヤバくて指標にもならない事が続いたが、フラッシュを見てもしかしたら、と思ったり思わなかったり。……最終的には気のせいだと思った。
「無駄足だったか。キング1人いれば問題ないだろう……」
続いてゾンビマン。
まるで生気の感じられない肌色の肌に、黒い短髪、全てを見抜いてるかの様な赤い瞳は、見られただけで正直ビビってしまう。名前の通りの不死身のヒーローで如何なる傷を負っても、部位折損しても、頭部が弾け飛んでも復活してくる彼はまさにゾンビ。
その身体的な部分に目を瞑れば、S級の中でも常識人の枠内だとキングは評している。
などなど―――――etc
これらもあって解る通り、協会には何度も何度も足を運んできてるケド、ここまでS級ヒーローたちが集ってるのは見た事がない。
それぞれが一騎当千の猛者たちであり、協会最強戦力が一同に集う事態に呼ばれた事に対して、キングはその鼓動を、ハートを只管大きく鳴らせているのだ。
「ふっ……、まだ何か起きた訳でもなく、説明もない現状で、そう臨戦態勢に入る事もないだろ? キング。抑えきれんと言うのなら、俺が相手になっても良いぞ」
「………いや、良い。無益な争いは好まん」
「………そうか。(キングの力を体感してみたかったのだが……。ここまで殺気の塊を内包させていて、それを外に出さずに留めておく、か。向けるべき相手が現れるその時まで……)」
そしてそして、S級の中でもトップクラスに好戦的な男が最も厄介。
S級4位 アトミック侍。
隙あらば手合わせ願いたい、みたいな事いってくる。その都度エンジンが高鳴って、キングも嬉しそうだ、と変に誤解されて大変なのだ。
いつも怪人の横やりが入ったりして、結局は有耶無耶になるのだが……困った事に、こう面向かって話をするときはヒカリが居ない。
今も居ない。狙ってるとでもいうのだろうか?
キングエンジンは鳴り響き、その胸中はへるぷみー!! である。
そんな時———奇跡が起きた!! ……かもしれない。
「おお! シルバーファング」
「久しぶりじゃな、アトミック侍」
シルバーファングとその後ろにジェノス、そして……。
「!!!」
サイタマが来ていたのだから。
光明を得た気分だった。サイタマが来ているのであれば、彼女も――――。
「さ、サイタマ氏! その、ヒカリ氏は………」
「…………アイツ、甘いモノツアーとか何とか、目ぇ輝かせながらA市ん中に飛んでったわ! くっそぅ……オレだって行きたかったのに、18歳以下女の子限定!! あの文字が、あの一文がオレを阻んだんだ………」
「ぇ……………」
来てると思った。
ヒカリならば、緊急招集なんて面白そうな出来事、見逃すわけがないと思っていた。
だが、忘れかけていた。
彼女は物凄く甘党だという事。
キングがヒーロー活動? で得た報酬でケーキバイキングに連れて行った時なんか、目を輝かせて顔を真っ赤にさせながら頬張っていたのを覚えている。
1にも2にもヒーロー好きな彼女だが……最近よく考えたらご無沙汰だったのかもしれない。少なくとも、キングと行動を共にしている時、ヒーロー活動以外はゲームしかしてない気がするから。
つまり、奇跡など無かったのである……。
「ほお。キングも知ってるヤツなのか」
「彼はB級のサイタマ君じゃ。ワシとキングのお墨付き。間違いなく今後S級のトップクラスに君臨する事じゃろう」
「……なるほど」
キングとシルバーファング。
アトミック侍が一目置いてるヒーローが2人も認めているB級ヒーロー。
名くらいは覚えておこう、とその顔を見据えた。
「けっ、お土産もってこねーと承知しねぇぞ……絶対」
「……ムリだよサイタマ氏。ヒカリ氏が
「うぐぐぐぐ………。ジェノス……今度、男のコでも参加できる甘いモノツアー……検索しといて……」
「はっ。了解しました先生」
色んな意味で意気消沈してるサイタマとキング。
ジェノスはそんなサイタマの要望に全力で応える! と周辺のスイーツ店の検索を始めた。
そんな時だ。
「ちょっと誰よ! B級の雑魚なんて連れてきたの!!」
一際大きく、そして声高な声が響いてくる。
何処か幼さを残す少女のモノ。
「……げっ」
それが誰なのか、キングは当然直ぐに理解した。
アトミック侍に続いて、少々————どころじゃないかなり面倒な相手。
◇戦慄のタツマキ◇
「ちょっとキング! 今、げっ! って言ったかしら!?」
「うわっ!!? (聞こえてた!??)」
「ちょっと私の超能力に対抗出来たから、って良い気になってるのも今のうちよ! 直ぐにアンタなんか勝負にもならないくらいになってやるんだから!!」
「た、タツマキ氏。おちついて、おちついて………。ほ、ほら、ここで暴れたら協会の人にも迷惑が掛かるでしょ?」
アトミック侍の時とは違った口調での応対。
タツマキを前に、鼻につく様なカッコつけの様な対応はご法度なのだ。直ぐにムキになって凶悪な事をしてくるから。
少なくとも、今はヒカリが居ない大ピンチ。こんな状態で、戦慄なタツマキを受けた日には、一瞬で細切れ肉になる自信しかない。
「な、なんなんだ、このナマイキな……迷子? キング知り合い?? ふげっ!?」
「~~~~ッッ!!」
慌ててキングはサイタマの口をふさいだ。
あのサイタマの顔面に掌底? を決める事が出来た、それも生身な状態で決める事が出来たなんて快挙以外の何でもないが、今のキングにはそんな達成感を味わう暇なんかない。
命がけだから。
サイタマとタツマキがぶつかるなんて、考えたくもない。この世の終わりだ。………そんな場面に出くわしたら、嬉々と連れて行かれると思うのも何だか嫌だ。
「サイタマ氏も!! タツマキ氏も!! ほら、皆揃ってるから直ぐに席につこう! 怪人が気になってしかたない!!」
「お、おお」
「ちょっと待ちなさいよ! まだ話は終わってないわ!」
「これこれ。タツマキよ。お主もヒーローなら、この非常招集の中身の方を気にせんかい……」
「ぅ………ふんっっ。とっとと片付けてからにするわよ」
取り合えず、荒ぶる若者たちを諫めた最年長者シルバーファング事バングのファインプレイである。
アトミック侍もタツマキについては特に気にする様子も無く、ただただシルバーファングが連れてきて、且つキングも知っているという若手2人の方に注目し続ける。
S級に上がってくるという事は、自身の弟子であるA級トップクラスのヒーローたちを超えるという事。……間違いなく良い刺激になるだろう、と。
「(………サイタマ氏の傍に居るしかない………それしかない………、でも、席順きまってる………………)」
キングはただただ、その鼓動を大きく強く鳴らし続けながら、どう切り抜けるのかを模索し続けるのだった。
S級ヒーロー勢揃い。
とは言っても、7位と1位が空席なので全員と言う訳ではない。
17位 ぷりぷりプリズナー
「(キングきゅん、素敵……。あぁでもこれを機にジェノスちゃんとも仲良くなりたい…… うぅ~~ん、悩ましい)」
16位 ジェノス
「(よほどの一大事なのか……、殆どが出席している。……まぁ、先生とキングが居れば事足りるとは思うが。………ついていかなければ)」
15位 金属バット
「鬼でも竜でも俺はいけるぜぇ!」
14位 タンクトップマスター
「(B級サイタマ………、確か舎弟の1人がとんでもない速さで上に昇ってきてるヒーローが居る、と言っていたが……。まさかな。ジェノスの連れだろう)」
13位 閃光のフラッシュ
「―――――――」
12位 番犬マン
「(誰か屁こいたな)」
11位 超合金クロビカリ
「(皆がオレの肉体を見ている!? 俺がこの中で一番輝いている!??)」
10位 豚神
【ばくばく、むしゃむしゃ、くっちゃくっちゃ、ぺろっ】
9位 駆動騎士
「――――――」ジ―——————
8位 ゾンビマン
「(協調性なんて有る訳ないか。こいつらに。………キングが前に出りゃ変わるかもだが、あのエンジンじゃ、その期待も薄いな。……あと、あのブタはいつまで食ってんだよ)」
7位 メタルナイト
欠席
6位 キング
「―――――――――」 ドッドッドッドッドッ!!!
5位 童帝
「(あれ? また1位の人来てないんだ……。あった事無いの、もう彼だけなのに)」
4位 アトミック侍
「(キングとシルバーファングがそれぞれを鍛える、と言う事か? キングの流派は知らんが、シルバーファングならば十分ありうる。あの武術だ。…俺の弟子たちもうかうかしてられんな)」
3位 シルバーファング
「んで、突然呼び出されてわけわからんが、一体今回はなんの集まりなんじゃ?」
2位 戦慄のタツマキ
「知らないわよ!! こっちは2時間も待たされてるのに、まだ何の説明もなしよ!」
1位 ブラスト
欠席
B級 サイタマ
「お茶貰える?」
とてつもなく嫌な予感がする。
それしかしない。ヤバい気配がビンビンに感じる。
【ヒカリ氏戻ってきてぇぇぇぇぇ……………】
丁度そのころ、ヒカリはと言うと。
「ん~~~~っ、おいしぃぃぃぃ、このクロワッサン! いやいや、こっちのクレープもっ! さいっこうっっ!! 今なら、サイタマだってやっつけれるかもね~~~!! 甘いモノ、最強っ♪」
両手に沢山の袋を持ち、パクパク食べ歩き中。
空飛べば良いんだけど、今日は歩きたい気分らしい。
一応キングの力! と言う設定も引き継いでるので、あまり目立つのも好ましくない。
この設定が今一番気に入っているから。
「ややっ! あっちはどら焼き! こっちは凹版焼き!? A市てんごくっっ!!」
「ほらほら、お嬢ちゃん! こっちも美味しいぜ~~!」
「いやいや、こっちだって負けちゃいねーよ! お嬢ちゃん、カワイイから1つ多めにサービスしちゃうぞ!」
まだまだ入る。
美味しい、美味しい―――――天国!
「わーーいっ! ぜんぶいただきますっっ!!」
暫くの間、A市のグルメツアーに没頭していた。
そして、この時は誰も知る由もなかった……。
町中の甘いモノ店の皆さんのおかげで。
今日この日、大サービスデイをしていたおかげで。
彼女がヒーロー活動を忘れる程沢山の美味しいモノたちで溢れていたおかげで。
町は助かったのだという事が―――――。