ヒカリちゃんはキングと遊びたい   作:SSKキング

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地球ってヤバいの?

 

「ヒカリちゃ~ん! こっちのタルトも食べてみる?? 出来立てほやほやで美味しいよー」

「えっ!? 食べる食べるっ!」

「嬢ちゃんはやっぱカワイイな! こっちのモンブランもおまけにやるよ!」

「良いのっ!? わーいっ!」

 

 

両手にしっかりと抱えられてるのは、持ち帰って(キングの)家で食べる様の甘い甘いスイーツたち。でも、更にサービスをしてくれると聞いて、きょろきょろと見渡し、店に備え付けてあるイートスペースのテーブルにひょい、と置いた。

 

御馳走してくれた品たちに目を輝かせながら、頬張る。

 

 

「おいしぃ~~~~♡ おじちゃん、おばちゃん、ありがとうっ! だいすきっっ!!」

「ほんっと、美味しそうに食べてくれて、こっちが嬉しくなっちゃうよ」

「だなだな。最近いろいろと物騒で、皆顔にこそ出さねぇが、やっぱ街が暗くなっててなぁ。……ヒーロー協会の本部があるとは言っても、ニュースとか見てたら……なぁ?」

 

 

店のテレビに視線を移すと――――あの、海人族襲来! の番組が行われていた。

キングと一緒に? やっつけたのなら兎も角、サイタマが一発でぶっ飛ばした怪人だったから、あんまり印象が薄く、ただただ新鮮な魚介類~食べたい~~って思ったくらいだろう。

ゲテモノ系料理もヒカリはイケル!! ……無論、だからと言って怪人を食べたりはしないが。

 

 

「はむっ、はむっっ! だいじょーぶだよ! きっと皆の事は、キングが守ってくれるよ! んぐ、んぐっ」

 

 

上唇についたシロップをなめとりつつ、キングの話をしつつ―――場が盛り上がった。

 

 

「人類最強……かぁ。長い事生きてるが、あの人みたいな人間はマジで初めてだったよ」

「あんた、S級ヒーローのキングを見た事あんのかい?」

「まぁな。仕入先で色々あって。雲にも届きそうな巨人が突然現れて、街が騒然となってた時、あっと言う間にやってきて、あっと言う間に巨人を消し去っちまったのさ。……あのまま、倒れこんできてりゃ、確実に俺はあの世に行ってたな……」

「むぐっ、むぐっ、ん~~……(そんな怪人いたっけ? 大きいヤツは何人がいたきがするけど――――)」

 

 

ヒカリは両手のスイーツを全部平らげると、改めて言った。

 

 

「私はキングの顔なじみだったりするからねっ! 皆のこと守ってね! って伝えておくよ」

「あらまぁ、それは心強い。頼んだよ、お嬢ちゃん」

「なら、今度買いに来てくれた時もまたサービスすっからよ。キングのサイン、1枚いただけたりしね~かい? 家宝にしたいからよ!」

「OKOK! 任せといて! おばちゃんっ! おじちゃんっ!」

 

 

見た目幼い少女の言う事だ。

話半分にしか聞いていない、ゴッコアソビの延長くらいにしか感じなかったが、それでも良い笑顔を見せてくれる彼女に心が洗われる2人。

 

毎日が不安。ヒーローがいて、守ってくれた事もあってもやっぱりあの凶悪な怪人たちが迫ってきた事件を目の当たりにしたら……大きな被害が出た町の事を思い返してみれば……。どうしても恐怖心が湧いて出てくる。

 

でも、こんな元気な姿を、可愛らしい姿を見ていたら自分達も頑張らなければ、と思わせてもくれるのだ。

 

 

「ん~~、ごちそうさまでし―――――んん??」

 

 

改めてありがとう、とゴチソウサマでした、と言おうとした時だった。

ヒカリが何かに気付いたのか、店の天井を見上げたのは……。

 

 

「おじちゃん、おばちゃん。また食べに来るからね~! 今日はありがとうっ!」

 

 

直ぐに軽く手を振って、外に出た。

夫婦の2人は特に気にする事なく、手をふって返して……またいつも通りの仕事へと戻る。

 

 

 

まさにA市にとっての分岐点。

 

 

滅びの道一択だった筈の運命が、この町の数件のスイーツ店によって運命が覆される。

 

 

 

「ん?? んん?? あれってひょっとして―――――――……!!」

 

 

 

目を大きく輝かせるヒカリの姿がそこには合った。

それは、スイーツに目を輝かせていたそれとはまた違う表情であり、視線。

それは、キングと共にヒーローを、隠れヒーローを楽しんでるときに向けていた輝かんばかりの笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丁度そのころ―――。

 

 

「今回は地球を守っていただきたい」

 

 

突拍子もない、と言えばそうだろう。

ヒーローとして人々を守る―――のならこれまで通りなのだが、まさかのこの地球、惑星を護れというのだから。

 

だが、構わず続けた。

 

 

「今回ばかりは超人揃いのS級メンバーでも命を落とすかもしれん。逃げるのも勇気だ。今なら辞退してもS級に籍だけは残してやる。―――が、今から言う話を聞いた者は逃がす訳にはいかなくなる。………その場合、事が終わるまでこちらの方で軟禁させてもらう。混乱は避けたいのだ」

 

 

想像を超える事態が起こっている。

それだけは納得出来た。

 

 

 

「皆、話を聞く覚悟は良いか?」

 

 

 

だが、この場に揃っているのは曲者ではあるが、無類の強さを誇るS級ヒーローたちだ。覚悟などと言う単語からは程遠い人種。そして、少々勝手が過ぎるメンバーも中にはいる。

 

 

「おい、その話……マジでオレ達を集めるだけの内容なんだろうな?  こちとらわざわざ妹の大事なピアノ演奏会を抜け出してきたんだ。大した事ねぇ話だったらこの本部をぶっ壊すぞコラ」

 

 

好戦的で、ガラの悪い者だっている。

人外の力を以ているからこそ、許される横暴だったりもする。

 

 

そして、シッチは無論だ、と言わんばかりに口を開いた。

 

 

 

 

「……大預言者、シババワ様が死んだ」

 

 

 

 

ヒーローたちにその事実を告げ、一気に激震が走る――――無論、一部を除いてだが。

 

 

「あのシババワが……!? 誰かに殺されたというのか?」

 

 

シババワを知ってるからこその疑問。

その予言を、その結果を知ってるからこその疑問。

予言者を亡き者にすれば、得をするのはこれから何か凶悪な事を起こそうとするモノ達だから。

 

だが、それは否定された。

 

 

「いや、半年先までの未来を占っていたところ、気が動転したのか、息が荒くなり、咳が出たため のど飴を口に入れたら詰まって死んだらしい」

 

 

随分とまぁ、笑えない死に方だ、と一般人だったら呆れても良いかもしれないが、その人物が人物だ。

失ってしまった事による今後の人類の被害を考えれば全くをもって笑えない。

 

 

「ふむ。なるほど。今後はシババワの未来予想ナシで、災害対策をしなければならない。……つまり、それが今回の話の核、と言う訳だな?」

 

 

怪人襲来も予知した。いくつもの大災害、危険生物の発生、洪水、大地震、そしてあの隕石。

予言があったからこそ、いくつかの対策を取れていたが、今後はそうはいかない。

超合金クロビカリがそう結論付けるのも的を得ている、と言えるがそれもまた違うとシッチは首を横に振った。

 

 

 

「いや、違うな。シババワ様はいつもごく一部の災害しか予知出来なかった。これまでも未来予想されなかった災害の方が圧倒的に多い」

 

 

 

ならば一体何か……? と言う疑問以前の話を聞く者がいた。

 

それはサイタマ。

 

 

「すいません、ちょっとそこの人。シババワ様って誰? ヒーロー??」

「なに? シババワを知らないのか? テレビとかにもたまに出てたぞ。予言者だよ大預言者。地震とか怪人の来るタイミングをピタリと当てる老婆だ」

 

 

比較的傍に居たプリズナーにサイタマは質問。

シババワの事自体知らないから、正直話についていけてない。

元々ついていくつもりは無かったのかもしれないが、それでも質問したのだ。いつものサイタマ以上に、聞く姿勢は持っているのだろう。

 

怪人が来たらぶっ飛ばせば良いし、地震が来ても止めれば良い。程度にしか考えてないサイタマだから、やっぱり何を慌てる必要があるのか解らず、取り合えずシババワについて分かったから、軽く手を振って礼を言った。

 

 

そしてその後、シッチは続ける。

 

 

「予言ナシでも乗り越えてきた窮地は沢山ある。それでも我々がシババワ様の身辺警護をし、特別扱いしていたのは、その予言が100%的中するからだ。……問題の核となるのは、シババワ様が最後に残した大予言文」

 

 

シッチは懐から四つ折りにたたまれた一枚の紙きれを取り出した。

 

 

「のど飴を詰まらせながらも、書き残してくださったこの小さなメモ……100%訪れる未来がここにある………」

 

 

そう言うと、ホログラムスキャナーに翳し、全員に見える様に立体化させた。

 

 

「これだ! 読めるか!!?」

 

 

 

 

そこに書かれていたのは小学生でも読めるし、書けるであろう文字。

 

 

 

 

『ち……地球がヤバい!??』

 

 

 

 

 

それは驚く。驚くと同時に拍子も抜ける。

あまりにも雑で稚拙な文章だから。

 

 

「えぇ……、なにそれ。くだらないなぁ。ボク塾があるから帰って良いかな?」

 

 

中でも一番呆れ果てたのは、ヒーローの中でもトップクラスの頭脳を持つS級ヒーロー童帝だ。

頭脳派で、これまでも幾度も貢献し、切り抜けてきたからこその反応だった。

 

 

「…………童帝くん。キミは10歳だったかな? 天才少年と聞いていたが、この危機を認識できないようでは、所詮はお子様だと言わざるを得ないぞ」

「なんだと………?」

「いいかい。よく聞きたまえ。キミも知っての通り、シババワ様の予言は全て当たる。例外なく100%だ。これまでも、これからもそれだけは真実だった。……そして、今回特筆すべきは、この《ヤバい》と言う表現だ。こうも直接的に表現した予言はこれまで嘗て無かった。地球そのものがヤバい、などと言う表現はな。これまで予言してきたのは竜レベルの災害。その時でさえ、ヤバいなどとは使っていない」

 

 

そして、シッチは机を強く叩いた。

 

 

「これまでのレベルを遥かに超える《ヤバい》事が起きようとしているのだ!! それもこの半年以内に!」

 

 

 

人非ざる力をもつヒーローたちだ。

これまでの事態も、どれもヤバいと感じた者は少ない。

 

寧ろ受けて立つ構え、ふてぶてしくも来るなら来い、と言う気概だ。

 

でも……。

 

 

「うん。わかったけど。半年以内じゃいつ来るかわからないね。対策もやりようがない」

「確かにその通りだ! だがしかし! 半年以内に戦う覚悟はしておいてくれ。非力な文人を代表して言うが、君たちだけが頼りだ」

 

 

シッチが最後に頭を深く下げた。

大量の汗、鬼気迫る表情。何より、このS級ヒーローたちの事を、そのバケモノ染みた力を知って尚、この姿勢。

 

 

何かが来る――――それは間違いないのだろう。

 

 

 

 

「――――――――(嫌だ……、嫌すぎる………、ヒカリ氏……、サイタマ氏が居るとはいえ、マジいきなり消えないで…………。マジ、傍にいて………)」

 

 

 

 

今更幼女に縋ってる大人な自分……なんて見た目なんか気にする訳もない。

キングはただただエンジンを鳴らし、ここに来ていないヒカリを想う。

 

間違いなく、彼女がいなければシッチじゃない、この非力な一般人代表クラスである自分は粉雪の様に消し飛んでしまうから。

 

 

 

そんな時だ。

 

 

―――――Prrrrrrr

 

 

端末が何かを受信したのは。

 

そして、キングはこの事態でも、エンジンが高鳴り、それこそヤバいくらいなエンジンを鳴らしているこの時でも、それにだけは絶対に気付く。

何故なら、それはヒカリへの唯一のホットライン、だったりするから。……ほぼ一方通行で、自分からの通信は無視される(気付かれない)事が多い。新作ゲーム系や美味しいごはん系でも中々難しいレベル。

因みに向こうから発信してきた場合は、それこそ100%通じるのだ。

 

 

「(ひ、ヒカリ氏!! ………ん? ナニコレ??)」

 

 

 

それに直ぐに目を通し、ヒカリとコンタクトを――――と思っていたキングの目は点になった。

 

そして、顔を赤くさせた? かと思えば次はまるで死んだ魚の様な目になり………軈て、キングエンジンが鳴りやんだ。

 

 

 

 

 

 

『(キングエンジンが……止まった?)』

 

 

 

 

 

「(臨戦態勢、と言う訳か。半年以内と言わずいつでも、と言う)」

「(キングきゅん……素敵……)」

「(なるほど。流石はキングさん。今この瞬間から己を高めよう、と言う事か。うむ、俺も直ぐに筋トレ開始しなければ)」

 

 

 

キングエンジンが止まった事への逆の異常性に皆がシッチよりも注目。

 

だが、キングエンジンを無視できる唯一の男だけは違う。

 

 

「なぁなぁ、おっさん。半年以内って事は明日かもしれないし、今日かもしれない、って事で良いよな?」

「え、あ、ああ。その通りだが。お前は誰だ? 何故S級の集会に?」

 

 

勿論サイタマ。

シッチは何故サイタマがこの場にいるか解らない。

でもそこを追及するつもりも無い。

今は、鳴りやんだキングエンジンに、他のヒーローの様に身体が反応してしまったから。

 

 

「なるほどな。……来てよかったぜ。今回は俺の方が早いかもな、ヒカリ」

「?? 先生。ひかり、とは?」

「あーーー、いや、なんでも無い。気にすんな」

 

 

 

 

その次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

ドンッッ!!!

ドドドドドドドッッッ!!!

ドンッッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

凄まじい轟音が、振動が協会に響き渡った。

 

 

「なっ!??」

「これは、この建物が攻撃されている!??」

「馬鹿な、ここはヒーロー協会本部だぞ!」

 

 

当然驚き、立ち上がる者達が大多数。

 

 

 

 

「《――――みな、落ち着け》」

 

 

 

 

だが、その衝撃を、その轟音等を全て掻き消してしまう様な圧倒的存在を前に、黙った。

 

 

 

 

 

 

 

―――――ドッドッドッドッドッ

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、あのエンジン音を鳴らせながら机に立つのはキング。

 

 

「ちょっと! 何いきなり立ち上がってんのよ。目立ちたがり屋のつもりっ!?」

 

 

自分を見下ろされるのを嫌うタツマキが、キングに抗議を入れるが、キングは右手でそれを制する様にして、左手で端末を持ち、それにちらちら視線を送りながら言った。

 

 

 

 

 

 

『…………星降ル光ノ空ニ

 

 

 

 

その次の瞬間、キングの身体が突然輝き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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