翌朝、選抜合宿に選ばれた騎竜学院の生徒たちは、
分類された状態で騎乗し、選抜合宿用のトレーニング・メニューの内容を
主任教官から聞いている。過去に騎竜学院で優秀な成績を収め、
経験豊富な教官と模擬戦をすることが主だ。
王族であるシルヴィアとラーズは勿論も例から零れない。―――が、
「さーて、レベッカ。個人的に鍛えてくれって話を忘れたわけではないな?」
「・・・・・お手柔らかに頼む」
「断わる」
クー・フリンに騎乗しているレベッカは、窮地に立たされている気分で一誠と対峙していた。
異世界のドラゴンを目の当たりにし、ちょっと、あんなこと言った自分を殴り飛ばしてやりたいと
いう気持ちが湧きあがってどうしようもないレベッカ。
「言っておくけど。俺の鍛え方って優しくないからな」
「お、おい・・・・・どうして私とラーズまでお前に鍛えられないといけない?」
そう、レベッカだけじゃなかった。レベッカを挟むようにシルヴィアとラーズもそれぞれのパルに
乗って一誠と対峙していた。
「旅は道連れ世は情けだ。それとも、俺の家族全員と模擬戦したいか?」
「それだけは勘弁してくれ!」
シルヴィアは思わず涙目になった。理由は勿論、あんなドラゴンたちと複数対一で模擬戦なんて
命が何個あっても足りない!と幼少の頃、理不尽な目に遭わしたヴェロニカ以上のトラウマが
植えつけられるだろう。
「できれば・・・・・弱いドラゴンと模擬戦をしたいわ」
「ははは、面白いことを言うなラーズ。―――手加減なんて知らないドラゴンが多いけど?」
その言葉を聞き、レベッカたちは悟った。―――今日が命日かもしれないと。
特訓をする場所へと移動を開始する。
「さーて、俺も出すとしようかな」
一誠の真上に巨大な魔方陣が三つ現れた。レベッカたちはどんなドラゴンを召喚するのか、
緊張の面持ちで見守った。魔方陣の光が強さを増して、一瞬の閃光が弾いた。
『ようやく私を出してくれたな』
『お相手をしましょう』
『グハハハハッ!遊んでやろうじゃねぇかよぉっ!』
魔方陣から出てきたのは三体のドラゴンたち。ティアマット、メリア、グレンデル。
「・・・・・クー・フリン。頑張って生き残ろう」
「ランスロット、頑張るぞ」
「アグラヴェイン、頑張りましょう」
まるで家族と最期の別れのように自分のパルに話しかけた。
そんな主たちに情けない声で発するクー・フリンたちだった。
「レベッカはグレンデル、シルヴィアはメリア、ラーズはティアと模擬戦してもらう。
最初はレベッカ、お前からだ」
一誠はグレンデルの肩に乗ると、翼を羽ばたかせるグレンデルは宙に浮く。
『おい、どうせ殺すなって言うんだろう。だったら、半殺しでいいよな?』
「当然だ。そして、当然のように手加減しなくていいからな」
『グハハハハッ!手加減しろって言われてもする気はねぇよ!』
とんでもない話をする一誠とグレンデル。目の前に浮くレベッカとクー・フリン。
「レベッカ、本気でやるぞ」
「そこまでするのか?」
「当たり前だろう。何を言っているんだ?―――じゃないと、クー・フリンが死ぬぞ―――!?」
その時、一誠が突如顔を真上に向けた。グレンデルも何かに察知し、青い空に向けた。
『なんだ?誰がこっちにくんな』
「・・・・・これは」
怪訝に呟く一誠の眼は、次の瞬間に見開いた。
まるで信じられないものを見る目で空を凝視した。
「おい、なんであいつがこっちに来るんだ?」
「あいつ・・・・・?」
レベッカが空を見上げれば、シルヴィアとラーズも釣られるように顔を空に向けた時、
空の彼方から一つの影が見えた。
ぐんぐんと一誠たちがいるアロンヌ湖に近づき―――影の正体が露わとなった。
「ウルスラ団長・・・・・!?」
「パルのガラハッドまで・・・・・・」
唖然と一誠たちの前に現れた影の正体。ロートレアモン騎士国が誇る聖竜騎士団団長、
ウルスラ・L・セルウィンとそのパル、ガラハッドだった。ウルスラの登場に―――。
「・・・・・どうしてあなたがここにおられるのですか?」
戸惑いながらレベッカは問うた。ウルスラはその問いに一誠に視線を向けた。
「イッセーに鍛えられにきました」
「・・・・・は?」
「・・・・・・なんですと?」
鍛えられに来たと、ウルスラの口から出た。今さらどうしてと一誠たちの中で疑問が浮かぶ。
「あの、ウルスラ団長。あなたは騎士国内で最強の
なのにどうして一誠に鍛えられにきたのです?」
「ここで選抜合宿を行っていることは知っております。
ならば、イッセーとの本気の戦いができると思い有休休暇してここに参ったのです。
―――事実、私が見たドラゴンではないドラゴンがいます」
クー・フリンの隣に寄ってまるで二対一をしようと、一誠と対峙する。
「そのドラゴンとお相手願いましょう」
『グハハハハッ!俺と本気で戦おうってか!?おもしれぇ事を言いやがる人間だなぁっ!』
哄笑を上げながら体勢を低くし、戦闘態勢の構えになる。
『何匹でもかまわねぇぜ!おう、こいやっ!雑魚竜どもよっ!』
―――カチンッ。
「よほどの自信があるのだな。ならば、従来通り、私とクー・フリンも参加だ」
「・・・・・この二人とならば、あのドラゴンを倒せそうだな」
「何匹でも良いというなら、アグラヴェインも参加させるわ」
グレンデルの言葉に腹が立ったようで、予定通りレベッカが参加し、
シルヴィアとラーズまでもが参戦する。
「まったく、お前、負けたらしばらく相手にしないぞ?」
『俺が負けると思っているのか?』
「仮の話しだ。―――ほら、相手が待っている。やろう。―――模擬戦の開始だ」
一誠がそう言った―――次の瞬間。
『いっくぜぇっ!雑魚ドラゴンちゃん共よぉっ!』
グレンデルが咆哮を上げて、飛び出す。
「クー・フリン!」
「このグレンデルはそんな薄っぺらい障壁に障害となるわけがない」
呆気なく前回、一誠に破られた時と酷似した。防御壁は破られ、グレンデルの拳が
クー・フリンの腹部を直撃しそうだったところだが、ギリギリの差でクー・フリンは避けた。
バンッ!
そこへ横から衝撃。レベッカはその衝撃の正体を見た。
グレンデルの尾が、クー・フリンの横っ腹に当たっていた。
「ぐるるるるる!」
激痛を耐え、その尾を掴んだクー・フリン。
「ランスロットを舐めるな!」
「アグラヴェイン!」
クー・フリンの背後からシルヴィアとラーズを乗せたランスロットとアグラヴェインが現れ、
魔法攻撃を放った。
『効かねぇなっ!』
その魔法攻撃を拳で打ち消し、グレンデルは腹を何度も膨張させて巨大な火炎球連続で吐きだす。
「なに・・・・・っ!?」
今まで見たことがない巨大な火炎球。クー・フリン、ランスロット、アグラヴェインが
その火炎球から避けると、火炎球が真っ二つに裂けた。
その原因はウルスラの固有魔装の神剣フラガラッハ。
「やっぱりな。―――こちらも、もう一匹ドラゴンを出させてもらう。四対二だ」
一誠はティアマットに視線を向けた。ティアマットは翼を羽ばたかせ、一誠の隣に立つ。
「ウルスラ・L・セルウィンが命じる。汝が創成し
「レベッカ・ランドールが命じる。汝が創成し
模擬戦なのに
恐怖、絶望を―――。一誠の世界とこの世界のレベルを肌で嫌というほど感じ始める。
『鎧を纏ったところで、結局戦うのはドラゴンだ!』
ティアマットの口先に展開した魔方陣から―――青い帯状の魔力弾が飛び出し、
その上、誘導性があるのか、上下左右、四方八方から空を埋め尽くさんとガラハッド、
クー・フリン、ランスロット、アグラヴェインに襲った。ティアマットから放たれた
誘導性の魔力弾から逃れるために速度を上げて飛翔するガラハッドたち。
「あーあー、あいつら必死だな」
数多の青い弾丸に追いかけられるガラハッドたち。
しかし、互いに襲う青い魔力弾をレベッカたちは攻撃し、相殺して防いだ。
「どうだ見たか!」
「だってよ?」
轟ッ!
ティアマットからの巨大な火炎球が吐きだされ、
シルヴィアを襲った青い弾丸は直撃する寸前に横からの介入で大爆発を起こした。
「貸し、一つですわよ?」
「・・・・・なんだろう。そう言われたら、とてもありがたく感じないぞ」
ラーズのアグラヴェインが放った火炎球でシルヴィアとランスロットを守ったようだ。
『チッ、威力を抑えているせいか。防がれてしまうな』
「今回は相手を倒すんじゃなくて、稽古だからな?
お前が全力でやったらここが消滅してしまうって」
飛び回るクー・フリンとガラハッドを追い掛けているグレンデルの肩にいながら
ティアマットに話しかける一誠だった。
『蠅みたいに逃げ回っているんじゃねぇよっ!ああ!?この貧弱で軟弱なドラゴン!』
「ぐるるるるっ!」
「落ち着けクー・フリン。あのドラゴンの言っていることに耳を貸すな」
痺れを切らし罵倒するグレンデルの言葉にクー・フリンは唸る。
レベッカがいなければ即座にグレンデルへ向かっていただろう。
「ですが、そろそろ攻撃に回らないとダメですね。
―――レベッカ、闘技場で攻撃したあれをもう一度しましょう」
「ウルスラ団長?ですが、またイッセーに防がられるのでは?」
「やらないで倒されるよりもやって倒されることがマシです」
ウルスラはそう言いながら神剣フラガラッハを構える。ガラハッドも全身に魔力を纏い、
何時でも突貫できる態勢に整った。レベッカは悩むが悩んでも仕方がないと考えを切り替え、
力強く言葉を発した。
「レベッカ・ランドールの名において命じる!
クー・フリンよ―――汝が献呈せし
レベッカの
頭部をすっぽり覆う兜が新たに構築されたかと思うと、肩から胸元、腰に足るまで、
新型装甲次々と展開されていく。さらには、深紅のマントがばさりと翻った。
「行くぞ、魔槍ゲイ・ボルグ―――
巨大な魔槍が深紅の光を残してグレンデルに向かう。その魔槍に続いてガラハッドが飛翔する。
『おほっ!なんだかおもしれぇことをしてくれる!』
「気をつけろよ。あの槍は突貫が長けた槍だ」
『んだったら受け止めてやらぁっ!』
その刹那、グレンデルの両手とレベッカの魔槍が直撃した。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!!!
グレンデルの鱗は滅んだドラゴンの中でも最硬を誇る。そう簡単には魔槍の槍は貫けずにいる。
しかし、相手はレベッカだけではない。
今度こそ、あの時しようとしていたことをウルスラはガラハッドに指示を下した。
一誠の背後に回ってグレンデルの翼を神剣フラガラッハで切り裂いた。
『うおっ!?』
「おいおい・・・・・こいつだからってやるかよ?」
翼をなくし、地に墜ちる。
それでもレベッカのゲイ・ボルグはグレンデルを「撃破」の運命に貫こうと激しく回り続ける。
『チッ!鬱陶しいっ!』
魔槍の先端を掴んだと思えば、横に放り投げた。
鬱陶しい槍は無くなり、クー・フリンに火炎球を放とうと腹を膨張したところで、
「あ、バカ!」
一誠の焦りの声が直ぐ現実となって返ってきた。レベッカの魔槍は再度グレンデルに
突貫して―――浅黒い身体を貫いた瞬間。グレンデルを中心に大爆発が起きた。
「・・・・・っ」
今さらだが、レベッカは固有魔装の魔槍を誰か一人や一体のドラゴンでも貫いたことは一切ない。
人を貫けばそこで殺人となり、ドラゴンを貫けばそこで騎士国で最も禁忌している竜殺し、
ドラゴンスレイヤーとなる。それを知っているからこそ、
自分より格下の者とドラゴンには本気も出せないでいたが、
魔槍は完璧にグレンデルの身体を貫いた。そして大爆発までもが生じた。
「・・・・・会長がドラゴンスレイヤーに・・・・・」
「いえ、相手は異世界のドラゴンよ。まさかとは思うけど・・・・・」
「・・・・・」
厳しい目で立ち籠る煙を見据えるシルヴィアとラーズ、ウルスラ。
『グハハハハ・・・・・』
―――――っ!?
煙の中から声が聞こえた。
『グハハハハハハハッ!』
次の刹那、立ち籠る大量の煙からグレンデルが姿を現した。
『いってぇじゃねぇかよぉぉぉぉぉぉ!』
「―――――バカな!」
レベッカは信じられないものを見る目で、グレンデルを視界に入れる。身体に大きく空いた穴。
そこからダラダラと血を流しながらも力強く二本脚で大地を踏みしめ立って生きている。
『だがよぉっ!久々に味わうこの痛みこそが最高なんだよなぁっ!グハハハハハハッ!』
かなりのダメージを食らったと思わせるのに、グレンデルはそれすら喜んでいる。
ラーズはポツリと言った。「狂っている」と。
「ああ。元々こいつは狂っているぞ」
一誠が突然そう言いだす。全員の視線を自身に集めた一誠はグレンデルの鱗に触れながら言った。
「こいつを含め、邪龍はとにかくしつこい。戦闘になるととんでもなく面倒だ。
どれだけダメージを負わせてもその痛みが喜びに変わって嬉々として攻撃を仕掛けてくる。
―――首だけとなってもな」
その事実に誰もがグレンデルを、邪龍という異世界のドラゴンを心から畏怖した。
『グハハハハ、案外この世界も悪くはぁねぇな。好き勝手にできるんなら、
今すぐにでもどっかの街で暴虐の限り、街を壊したり、人間を踏み潰したり、
襲いかかってくる人間とドラゴンと殺し合いをやりてぇぜ!』
「そんなこと、俺が許すとでも思うか?」
ドスの入った声が一誠の口から洩れる。グレンデルは不満そうに舌打ちをし、
一誠に銀の瞳を向ける。
『思ってねぇよ。ここでテメェに離反してもすぐに捕まるからな』
「ん、分かっているなら良いさ。さて、続きをしようか」
「「「「・・・・・」」」」
その日、レベッカ、ウルスラ、シルヴィア、ラーズは思い知った。
異世界のドラゴンはこの世界のドラゴンより恐ろしいドラゴンだということを―――。
―――○♢○―――
「・・・・・ん?」
気がつくと、そこは見知らぬ空間だった。白と黒が交差するように、
正方形のタイルが敷き詰められた床。
壁際には、製作途中と思しきオブジェが散らばっている。
人体や鳥獣、甲冑、建築物・・・・・などなと。天井には王宮のシャンデリアさながら、
豪華絢爛たる竜綺華晶で明かりを照らす竜華灯が吊り下げられている。
部屋の中央にはアンティーク調のベッドが置かれており、一誠はそこに寝かされていた。
「俺・・・・・ウルスラに懇願されて翼を出して一緒に寝ていたよな・・・・・?」
首を捻って自問自答。隣を見てもそのウルスラはいなかった。
「お目覚めかしら?」
「は?」
耳たぶに息を吹きかけられ、イッセーは驚くことよりも唖然とした。
何時の間に忍び寄ってきたのか、ベッドの縁に少女が腰掛けている。
「こうして対面するのは、初めてね」
妖艶な少女だった。肌にピッタリと付いたドレスのせいで、
豊満な肉体の輪郭が浮き彫りになっている。頭部には鋭利な角が二本生えているが、
不思議と違和感は覚えなかった。髪の毛は一誠が知る限り一人の少女と同じピンク・シルバー。
「お前は・・・・・」
「うふふ・・・・・」
少女は艶っぽい笑みを浮かべると、身を乗り出してきた。甘い香りがふんわりと漂ってくる。
「あなたが寝ている間に色々と調べさせてもらったわ。あなた、本当にドラゴンなのね」
その問いに一誠は否定も肯定もせず、久し振りに会った感想を述べた。
「
「ええ、そうね。あの時はゴタゴタしていたし、ちゃんとした挨拶もできなかったわ」
そう言って少女は微笑んで言った。
「私の名前はナヴィー。そして私たちがここにいる空間は遣竜工房」
「・・・・・俺、よく入れたな。名前はイッセー・D・スカーレットだ」
「よろしくね、イッセー。それと、あなたがここに入れたのは私があなたを呼んだの。
そろそろ話をしようと思ってね」
「話・・・・・?」一誠は首を傾げた。すると、ナヴィーの肩先から、
小さな動物がぴょこんと顔を出した。ネズミ程度のサイズだが、よく見るとドラゴンである。
「ドラゴン・・・・・なのか?」
「そうよ。そして、この子はガレスよ。
こっちではこんな姿なのね」
「まだ子供というわけか・・・・・。いや、この世界の幼竜ってこの姿なのか?」
好奇心と興味津々が瞳に宿り、ガレスを素早く捕まえてマジマジと顔や身体、
小さな翼を見たり触ったりしていく。
「きゅう!きゅう!」
「ほら、嫌がっているわよ?」
ガレスが鳴き始め、苦笑を浮かべるナヴィーがガレスの気持ちを代弁するような台詞を言う。
「この世界の幼竜を見たのは初めてだから観察したかったけどな・・・・・・」
残念そうに、渋々とガレスを離すと、
一誠から逃げるようにナヴィーの肩に乗って避難したガレス。
「というか、お前。ドラゴンアップルはどうだったよ?」
ガレスは何かを囁くように鳴いた。
どうやら、ナヴィーに通訳してもらうらしい。ガレスが語り終えると、
ナヴィーは改めて一誠を見つめた。
「美味しかったって。それに
豊富だったからまた食べたいって言っているわ」
「へぇ、あのリンゴに
「ドラゴンアップルという果実の名前を聞く限り、ドラゴン専用の果物なのでしょ?」
「そうだ。そのリンゴしか食べないと生けていけないドラゴンの種族がいて、
そのリンゴを人工的に作って増やそうとしているドラゴンがいるんだ。
俺もそれには協力している」
「ドラゴンがリンゴを・・・・・?とても珍しいドラゴンがいるのね。まるで人間みたい」
興味深そうに顎に手をやって小さく笑むナヴィー。
「食べるか?」
一誠が魔方陣を展開して三つのリンゴを出した。ナヴィーとガレスに手渡せば、
「きゅん!」
小さい口で一生懸命リンゴを食べ始めたガレス。よほどドラゴンアップルが気に入ったらしい。
「あら・・・・・美味しいわね。ドラゴンアップルというわけあって、美味しいわ」
「だろ?俺も好きなんだよ」
しゃくりとリンゴを食べたナヴィーの感想は良好だった。
それからドラゴンアップルを食べ終えた二人と一匹。
「で、どうしてガレスまでいるんだ?ナヴィーが俺と話しをしたいって言う割には」
「あなたがルッカさんとガレスの関係をどうにかしようしていることを知っているわ。
だけど、あなたの言う通り、あなたがどうしようとしても結局はルッカさんとガレスの問題。
本人たちが解決しないとどうにもならないわ」
「なにを言いたい?」
「ガレスはね?真実を知って謝りに来たルッカさんに最初から嫌ってなんていなかったの。
でも・・・・・」
「きゅうん・・・・・」
情けない鳴き声をするガレス。
一体どうしたんだ?と首を捻っていると、ナヴィーは言い続けた。
「この三ヵ月間ずっと拒絶していたから、ルッカさんにどう謝ろうか悩んでいるみたいなの」
「・・・・・はい?」
まさか・・・・・ルッカを未だに拒絶していたのは・・・・・。
一誠は有り得ないと、呆れた顔になって溜息を零した。
「なんというか・・・・・未だにガレスに拒絶されて、その理由が分からずにいるルッカと、
どう謝ろうか悩んでルッカを未だに拒絶しているガレス・・・・・お前、なーにやってんの?」
「きゅうん!」
まるで「うるさい!」と言われたような気がした。
一誠はここに呼ばれた理由をなんとなく悟った。
「まさかだが、ルッカとガレスの仲介役をしてくれと?」
「その通り。異世界から来たドラゴンのあなたなら、
もしかしたら何とかしてくれるんじゃないかって思ったの」
「・・・・・」
ナヴィーにそう言われ、沈黙した。しばらくして、
「分かった、俺の指示に従うんなら何とかしよう」
「よろしくお願いするわ」
「きゅん!」
ナヴィーとガレスにお願いされ、一肌脱ぐことになった一誠は、
「(さて、どうしたものか・・・・・)」
と、ルッカとガレスの仲良し大作戦を脳裏で練っていた。
―――○♢○―――
「すぅ・・・・すぅ・・・・」
現実世界に起きれば、金色の翼を展開した状態でアロンヌ湖のすぐ近くで寝転がっている一誠の
傍で、ウルスラとレベッカ、シルヴィアとラーズが金色の翼の上で寝ていた。
「あれ、何故に三人まで寝ておられるのかな?」
ウルスラとしか寝ていなかったはずだが・・・・・と疑問を口にした途端、
「ラーズ様がイッセー様の翼を御称賛したので、レベッカ様が興味を持ち、
姫様は私がお勧めしたのですよ」
どこからともなく現れたコゼットが一誠に説明した。
「俺が寝ている間、なにもなかったか?」
「大丈夫ですわ。それはそうとイッセー様。少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「魔導艦シルヴァヌスにいる侍従、プリムローズって女性をご存じですよね?」
そう問われ、脳裏にプリムの顔を思い浮かべる。
「ああ、そう言えば。コゼットと容姿が似ているな。姉妹か?」
「ええ、そうなんですよ。プリムお姉ちゃん、どうでした?」
「ははっ、おっちょこちょい女性だよ」
一誠の話を聞き「ふふっ、そうですか」とコゼットは笑みを零す。
「でも、務めを一生懸命こなそうそしている。
笑顔が絶やさない楽しくて面白い女性だと俺は思う」
「まあ、そこまでお姉ちゃんを称賛してくれるなんて妹として鼻が高いですわ」
「しかし・・・・・」
コゼットをジィーと見詰める一誠。
「コゼットって見かけによらず強いな」
「イッセー様には劣りますよ」
「例える相手が間違えている。だけど、間違いなくコゼットは強い。一度、手合わせ願いたい」
真っ直ぐな発言にコゼットはお辞儀をしながら「御所望とあらば」と答えた。
「それにしても、イッセー様は凄い存在なのですね。
ドラゴンだったり、金色の翼を生やしたり、色んな異世界のドラゴンを
パルにしているのですから」
「生きるためには力が必要だった。ただそれだけだ。―――コゼット」
紫の瞳のコゼットに真っ直ぐ捉え発した。
「ギルフォード・ギルガメッシュには気をつけろよ」
「ええ、心得ておりますわ」
思うところあるのか、コゼットが真顔で頷いた。
「―――で、コゼットさん?」
「はい、なんでしょう」
「どうしてあなたまで翼に乗るのですか?」
「うふふ♪」
楽しげに翼に乗るコゼットだった。
それからウルスラたちが目覚めるまで一誠とコゼットは雑談した。