一誠とミルガウスが衝突したその直後。地面が真っ二つに裂ける。
地鳴りのような轟音がわんわんと反響し、巨大な墓標がぐらりと傾いた。
地の底から、ムクリと、巨大な異形が身を起こす
「ぐぉるるるる・・・・・」
冥府の底から湧き起こるような唸り声と共に、それはランスロット、アグラヴェイン、
ガウェインと対峙した。雄大な翼。がっしりとした顎門。鋭く尖った双角。
毛並みが漆黒であることを除けば、
まさしく
「くくっ・・・・・教えてやろう。そいつの名はヌァザ!」
一誠と戦うミルガウスの言葉に、シルヴィアは硬直した。
「騎士国の民ならば、お前ったいも知っているだろう?主を愛するあまり、
自ら死を選んだドラゴンの悲話を―――」
ミルガウスの言葉に、アッシュは叫んだものの、すぐさま冷静さを取り戻した。
そう、この際、敵が本当にヌァザなのかどうかは問題ではない。
重要なのは、この新たな
しかも、地の底から甦ったのは、ヌァザだけではない、その周囲に突き刺さっていた墓標も次々と
傾いて、続々と
「姫様!ここは撤退した方が―――」
背後の通路に目を走らせると、アッシュは冷静に進言した。まだ退路は塞がれていない。
こんな広場では、四方から攻められるのは確実だ。ランスロットだけではなく、
アグラヴェインやガウェインといえども、堪え切れるとは思えない。
だが、狭い通路に入ってしまえば、敵も一列にならざるを得ないだろう。
まだ戦う余地は残されている。
「いや・・・・・なんでだろうな」
「・・・・・はい?」
シルヴィアが自分が置かれている状況にも拘わらず、
何故だが悠然とした態度でランスロットに騎乗している。
「この状況が特に危険だと思えないのだ」
「はぁっ!?ど、どうしてなんですか!?」
「きっと、イッセーのドラゴンと相手をしていたおかげなのかしらね?
目の前の敵が対して脅威を感じないの」
「数は負けているけど、負けない自信が湧いて出てくる」
ラーズとキーラまでもが、自信に満ちた瞳で九体の
今日まで一誠と異世界のドラゴンと模擬戦をしてきたシルヴィアたちは自分が思っていた以上の
レベルが上がっている。強大な相手と戦い経験を積んで、
それを糧として更なる昇華をシルヴィアたちはしたのだ。
「それに・・・・・イッセーのドラゴンとの模擬戦の方がよっぽど堪えた・・・・・!」
「ええ・・・・・あっちの方がまだ怖かったわ・・・・・!」
「理不尽的な暴力・・・・・あの模擬戦であたしたちは心身ともに強くなったんだ・・・・・!」
何時しか、シルヴィア、ラーズ、キーラの目から涙が溢れ出てきた。
アッシュは「えーと・・・・・」と困惑するばかりだった。
事実、アッシュは模擬戦なんて参加していない。殆ど見学をしていただけだった。
「ヌァザも含め・・・・・私たちの鬱憤を目の前の敵にぶつけよう!いくぞ、ランスロット!」
「当然だわ・・・・・そうじゃないと、やってられない。アグラヴェイン、攻撃開始!」
「ガウェイン!この五日間の特訓の成果を目の前の敵に!」
主の指示に勇ましく咆哮を上げる。
ランスロットたちもまた一段階も二段階も成長しているのであった。
―――○♢○―――
「ガレス・・・・・」
「・・・・・」
ルッカはガレスの白銀の毛並みを触れることができた。
「私のせいで本当にごめんなさい。私が未熟だったから無意識にあなたを拒んでしまった。
だけど、もうあなたを恐れはしない」
顔をガレスの首筋に埋める。ルッカとガレスが未だに襲われていない理由。
それはルッカとガレスを包むように金色の結界が張られており、
「私を受け容れて、ガレス!」
その小さな体のどこに、それほどの声量が秘められていたのか。
ルッカの全身を、金色の輝きが包み始める。
「さぁ・・・・・吸って、ガレス!私の
だって、あなたは私の・・・・・パルなんだからっ!」
全身全霊を籠めた絶叫が尾を引いて―――霊廟の中心部にこだまする。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
勇壮な雄叫びと共に、ガレスの全身が光り輝く。それに呼応してルッカとガレスを包んでいた
結界に亀裂が生じ、ガラスが割れたような音共に砕けた。
―――
「ルッカ・・・・・!」
「キーラ、ごめん。お待たせ」
「いいんだ・・・・・!ようやく復活したんだな!あたしは、凄く嬉しい!」
嬉し涙を流すキーラ。今すぐにでも歓喜でルッカに抱き付きたいが、
ルッカとガレスが襲われる。
「―――邪魔だよ!ガウェイン!」
大事な人を守るため、キーラはガウェインに指示を下す。全身に魔力を帯び、後肢だけ立ち上がると―――ガウェインは握り拳を作った。
「ぐるるるるっ!」
刹那、シュンと高速移動でルッカとガレスを囲む
その姿はまるで、一誠の異世界のドラゴン、グレンデルの戦い方―――。
前肢を鋭く伸ばして一体の
もう一体には尾で足を薙ぎ払って体勢を崩して足を掴むと、
別の
さらに触手を伸ばしてくる
その触手を逆に掴んで強引に引っ張り、
ドゴンッ!
拳を下から振り上げて
狙ってやったのだろう、ガウェインに吹っ飛ばされた
そこへ―――
「・・・・・ガウェイン、凄い」
「異世界のドラゴンの戦い方を学ぶのも無駄ではないとあいつに言われたからな。
本当に無駄じゃなかった」
ルッカに振り向く。
「ルッカはあたしとガウェインが守る!」
「・・・・・」
堂々と宣言したキーラ。すると、ルッカは徐に頬を膨らました。
「やだ」
「へ?」
「私もキーラを守りたい。ううん、キーラだけじゃない。他の皆も私は守りたい。守ってみせる」
小さく笑むルッカ。それに釣られてキーラも笑みを浮かべたのだった。
―――○♢○―――
一誠とミルガウスは天井の穴の縁付近で巨剣と巨剣による剣戟を繰り広げていた。
「やるな」
ひとたび巨剣を振るえば突風が生じる。
その突風に難なく突き進んで一誠に巨剣を振り下ろして攻撃するミルガウスから一歩だけ
後方に跳んでまた前方に跳んで巨剣を横薙ぎに振るった。一誠の剣戟を巨剣で受け止めながら
巨剣を杖代わりにして身体を捻って蹴りを放つ。
片腕で鋭い蹴りを防ぐとミルガウスが口を開いた。
「それは互い様だろう。しかし、奇妙だな。異世界のドラゴンは武器を使うのかな?」
「俺だけだ」
次の瞬間、一誠を中心に衝撃波が生じてミルガウスと特に吹き飛ばすが、
宙で体勢を立て直して難なく地面に着地した。
「お前のこと、なんとなくだが分かってきた」
「ほう?どんなことがわかったのかな?」
巨剣と巨剣がぶつかりあい、鍔迫り合いをしながら火花を散らす。
「シルヴィアとラーズと親しい関係、それとモルドレッドは元々あの二人の兄のパル、
そのモルドレッドはなんらかの理由で死んでいるが、魂の状態でその身体の中に寄生している。
今はこんなところだ」
「点数を与えれば49点だな。まだ肝心なところ、具体的なところを理解していない」
「これから理解していく。お前を捕まえてからだけどさ。なぁ―――ジュリアス元王子」
「・・・・・っ!」
ミルガウスが一瞬だけ硬直した。
その隙を突く一誠は思いっきり拳をミルガウスの腹に突き刺した。
「ぐふっ・・・・・!」
「隙を作ったな?だが、その反応が肯定だろう?」
「・・・・・」
一誠の問いに無言で貫く。ミルガウスはよろよろと立ち上がって前方に見据える。
「自信に満ちた発言だったが、どうして私がジュリアス王子だと?」
「この目、俺の目は特殊でね。
対象を視界に入れて能力を発動すれば対象の情報が全てデータのように分かることができる」
「異世界の能力というやつか・・・・・厄介だな」
「その異世界にお前を連れて帰ることが俺たちの目的だ。
モルドレッド、お前はこの世界に受け入れてもらえないだろうが、
俺の世界はお前を受け入れる。俺と共に来い、モルドレッド」
手を差し出す一誠。ミルガウスは怪訝に目を細める。
「私を受け入れるだと?随分と買い被ってくれるじゃないか。
この私を受け入れるなど、とんだお人好しの世界だな」
「正確に言えば竜だけが住んでいる異世界だ。お前をそこに連れて帰るこそ俺の異世界にいる
原始龍、この世界で言えばマザー・ドラゴンから受け賜わった使命だ」
「原始龍・・・・・その竜が私を捕まえろとお前に言った者か」
「悪いようにはしないだろう。原始龍は全てのドラゴンを母のように愛してくれる。
人間からドラゴンに転生したこの俺もそうだ」
巨剣を地面に突き刺して無防備でミルガウスに歩み寄る。
「モルドレッド。俺たちと異世界に行こう。そこでお前は幸せを手に掴むんだ」
「・・・・・」
ミルガウスとの距離は数十センチ。片手で持っているミルガウスの巨剣が振られば、
一誠を両断することができる。その距離でミルガウスに一誠は手を差し伸べているのであった。
その手をミルガウスは何も言葉を発さず、ただただ見詰めているだけ。
「イッセー!」
二人が包む沈黙を破くように一誠の名が穴の縁の向こうから聞こえた。
振り返ると、シルヴィアとランスロット、ラーズとアグラヴェイン、キーラにガウェイン、
ルッカにガレスが姿を現した。ランスロットの背中にはアッシュとエーコもいた。
「・・・・・ふっ」
「・・・・・?」
「どうやら、第四王女の評価は改めねばなるまい。第五王女もそうか」
ミルガウスは巨剣を担ぐと、ジリジリと後退した。
「今日のところは、退散させてもらおう。イッセー・D・スカーレット」
最後に捨て台詞を吐くと、ミルガウスは闇夜に身を躍らせた。
あろうことか、絶壁の向こうに身を投げたのである。とはいえ、ミルガウスが常人でないことは、
今回の一件で知った。確実に生きているだろう。そして、また出会うだろう。
ミルガウスが姿を消すのを見張らかってシルヴィアたちがパルから降りて駆けてくる。
「イッセー、怪我はない?」
「大丈夫だ。それに、お前らは?」
「ああ、問題ない。イッセーとの特訓の成果が発揮したぞ。
キーラなんてあっという間に三匹以上の
その話を聞き、嬉しそうに笑みを浮かべた一誠。徐にキーラへ手を伸ばしては頭を撫で始めた。
「ななっ!?」
戸惑い、羞恥で顔を朱に染めたキーラ。
「あの特訓がお前の力となったことが純粋に嬉しい。強くなったんだな、キーラ」
「しょ、しょうがないだろう。お前・・・・・手加減してくれないんだから。
必然的にこっちも必死になったんだからな」
「はは、それは当然のことだ。俺なんてドラゴンの火炎球に追われながら走ったもんだぞ?
しかもその時はまだ俺は幼小の時だ。なんならキーラ。
お前も今度は単身でドラゴンの炎に追われながら走ってみるか?」
「ごめんなさい!」
その場で一瞬の間に土下座をするキーラ。シルヴィアとラーズも冷や汗を流していた。
「それで、ヌァザはどうした?」
「無論、この私とランスロットが鎮めた」
「私とアグラヴェインもだけどね?」
その話に今度はシルヴィアとラーズにも「良く頑張ったな」といいながら頭を撫で始めた。
「お、おい」
「・・・・・ふふっ」
片や気恥ずかしく顔を赤く、片や嬉しそうに微笑む。
「ガレス。ルッカと仲良くなったようだな」
「ぐるるる・・・・・」
ぷいと一誠から顔を逸らすガレスにルッカは不思議そうに首を傾げる。
「ガレスと、話せるの?」
「まあ俺自身もドラゴンだしな」
ほら、と一誠は頭に十本の角を生やしだした。
一誠のことを知らないルッカとキーラは空いた口が塞がらず、
「本当にドラゴンなんだ。その角、くれない?」
「十本も角がある・・・・・一本、貰って良い?」
興味深々と一誠に迫った。自分の角を欲するルッカとキーラに若干戦慄する一誠。
「え?なに?ドラゴンの角って何かの漢方薬にもなるの?」
ルッカとキーラは頷いた。
「古ではドラゴンの角で製作した薬の履歴がある。
その薬は作り方によって様々な効果がもたらしたと」
「
破格の値段にルッカとキーラ以外の面々が驚いた。
「それ、いまじゃ絶対に禁忌だろう。どうなんだ?王女様方」
「当然だ、自分のパルの角を商品にするなど言語道断!」
「ドラゴンスレイヤーの次に禁忌されているわよ。確かにドラゴンの身体は色々と利用価値が
あるけどこの国において竜殺しは最大の禁忌。昔はともかく今じゃ誰もするはずがないわ」
シルヴィアとラーズがそう言っている間に、ルッカとキーラが一誠の角に触れていた。
「おお・・・・・まさしく竜の角だ。異世界とはいえども、同じところがあるんだな」
「この角が一番大きい」
「話が脱線しているような・・・・・まあいいか」
すると、一誠が自分の角を掴み―――。
「ふん!」
ボキンッ!と一番大きな角を自分の手で折ったのだ。その行為にシルヴィアたちは驚いた。
「ほらよ」
「え・・・・・?」
「ルッカとガレスのコンビの復帰祝いにあげる。所謂プレゼントだ」
折れた角からあふれ出てくる血を片手で抑えながら、
一誠は真紅の一本の角をルッカに突き出した。
「でも・・・・・いいの?折った角は元に戻らない」
「というか、血が出ているけど!?今すぐ治療しないと―――!」
「問題ない」
折れた角を抑えていた片手に淡い光を纏い始めて、見る見るうちに折れた角が元の姿に、
状態に戻っていく。一誠が折る前の大きな一本の真紅の角に―――。
「自分で治すことができるからな」
角が元に戻ったことで唖然とシルヴィアたちは開いた口が塞がらずにいる。
角を折ったら最後、二度と元通りに生えることはないのだ。
「だから、やるよ。ルッカとガレスの復帰祝いにな」
「・・・・・」
一本の角を受け取るルッカ。しばらく沈黙したが意を決した表情で一誠に向かって言い放った。
「エクブラッド人に代々伝わる演舞―――私たちの演舞を見てほしい。
それがあなたと他の皆に対する感謝の行動・・・・・・」
―――○♢○―――
「ふぅー、いっぱい倒したわねー」
「久々に良い運動をしましたよ」
「処理活動もせずに済んでいい。勝手に灰と化となってくれるからな」
アロンヌ湖畔でルクシャナ、龍牙、ヴァーリが一息ついていた。
回りは戦場の爪痕が生々しく残っていたり、
山と化となっている灰が至るところに集められている。
『グハハハハァッ!ちったぁ楽しかったぜ!』
『まったく、こんなにも破壊して』
『そこはメリアの出番というわけだ。よろしく頼むぞ』
『さて、兵藤一誠の方はどうだろうか?』
『あいつを心配しても無駄だって。ひょっこりと顔を出してくるぞ』
ネメシスがそう言った次の瞬間。
「ひょっこり」
『ぬおおおおおおおおっ!?』
眼前の虚空に空いた穴から顔を出す一誠。それに驚きネメシスが身体を仰け反った。
『主、御無事で何よりです』
「お前らもな。・・・・・随分とまぁ、派手に暴れたもんだな。楽しめたか?」
『雑魚ばかりだが、それなりに楽しめた』
「ん、楽しんでくれたのならそれでいい。皆、お疲れ様」
異世界のドラゴンたちの足元に巨大な魔方陣が出現して、
一瞬の閃光と共にアロンヌ湖畔から姿を消した。
合宿所を包んでいた結界も解け、
「さてと、元の状態に戻すか」
指を弾いたらノーグの森が、アロンヌ湖が、合宿所の周囲が淡い光に包まれ戦場の
爪痕が無くなっていく。
しばらくすれば、
「イッセー!」
「ん?ああ、レベッカ」
合宿所から現れるレベッカ。
一誠に駆け寄れば、開口一番にシルヴィアたちの説明を求められた。
一誠は親指を立てて笑みを浮かべた。それだけでレベッカは全てが上手くいったんだと悟り、
安堵で胸を撫で下ろした。
「ところで・・・・・他の皆はどうしたのだ?」
「ああ、もうすぐ来るだろう。空を見ろ―――噂をすればなんとやらだ」
空を見上げれば夜空の一角を、何かが猛スピードで横切っている。
白銀の輝きと、余剰な魔力が描く航跡は、間違いなく
「あれは・・・・・」
夜空という漆黒のキャンバスに絵を描くように、
縦横無尽に飛んでいる二つの光の航跡・・・・・。
「何でも、ルッカとキーラが演舞を見せてくれるってさ」
「では・・・・・!」
「ああ、いまその準備をしている」
しばらくレベッカと共に夜空を見上げる。ルッカとキーラを乗せているガレスとガウェインは
縦横無尽、同じタイミング、細かな動き、鋭く切り込むようなターンをしていく。
その航跡が次第に魔方陣を描いていく。
阿吽の呼吸でルッカとキーラは夜空で演舞をする。互いの気持ちが分かるかのような動きで
魔方陣を描く。
やがて、最後だとばかり、ルッカとキーラは最後の軌道を全力で駆け抜ける。
そして、巨大な魔方陣がその全貌を露わにする。
「・・・・・おお」
「これは・・・・・」
夜空に描かれた紋章に感嘆の声を漏らす。二人が描いた紋章のような魔方陣は、
一対の翼とみなすことができるだろう。―――完全なる
羽毛のレベルまで描かれた精緻さ。世界中の人に見せたいと願ってしまうほどの美しさ。
「・・・・・はは」
「・・・・・?」
途端に一誠が笑いだす。
「俺、この世界に来て良かった。こんな凄くて素晴らしく、綺麗な演舞を見れたんだからな」
「ふふっ、そうか・・・・・・」
レベッカは笑みを浮かべた。一誠にまた一つ思い出深いものができたと思い、
ルッカとキーラが降りてくるまでずっと夜空を見上げ続けた―――。
―――○♢○―――
カランカラン―――。
「いらっしゃいませ!―――お、ルッカとキーラ」
ラブロック商店に新たな来訪者の合図ともいえるベルが鳴る。
そのベルに反応し、一誠が出迎えた。
「お邪魔します」
「ルッカ、ここはお店なんだからそんなこと言わなくて良いんだ。あたしたちは客なんだぞ?」
「珍しいな、二人がここに来るなんて。誰からこの場所に聞いたのか?」
「レベッカから聞いた。あなたが店を開いていると聞いたから」
肩に掛けていた鞄に手を突っ込んでゴソゴソと何かを取り出そうとするキーラ。
「はい」
「ん?」
何やら液体が入っているガラスの瓶を取り出して一誠に突き出した。
「これはなんだ?」
「私たちが調合した薬。これ飲むと、疲れが吹き飛ぶ」
「急にどうしたんだ?」
疑問をぶつけながら瓶を受け取る一誠に対し、ルッカとキーラは。
「私はあなたに感謝している。私とガレスのために気を使ってくれたあなたに」
「あたしはルッカとガレスの絆を取り戻してくれたお前に感謝している」
「「だから、ありがとう」」
ペコリとルッカとキーラはお辞儀をした。一誠は二人の感謝の念に苦笑を浮かべる。
「気にするな。元々余所者の俺が勝手にやったことだ」
「でも・・・・・」
「だけど、本当に感謝しているんだ。あたしができることがあれば何でも言ってくれ」
キーラの発言にルッカはコクコクと頷く。
本当にお礼をしたがっているのだと理解し、顎に手をやって少し悩む仕草をする。
「・・・・・じゃあ、お願いして良いか?」
「なに?」
「俺と友達になってくれ。それが今回のお礼として受け取る」
両手を差し出す一誠。その手を一瞥してルッカとキーラは互いの顔を見合わせ、
笑みを浮かべた。
「うん、よろしくね。イッセー」
「よろしく、イッセー」
一誠の手を掴んで握手を交わす。しっかりと握られた互いの手。
この瞬間、ルッカとキーラは一誠の友達と成った。