一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode15

フォンティーン城に一体の巨大な真紅のドラゴンが舞い降りた。

フォンティーン城を警護している聖竜(マエストロ)で駆る聖竜騎士団たちは慌てて突如現れた巨大な

真紅のドラゴンに対応しようとしたが、聖竜(マエストロ)たちは巨大な深紅のドラゴンに鋭く

睨まれ及び腰となって震える始末。だが、そこへ威圧を放つ一匹の聖竜(マエストロ)が舞い降りた。

その聖竜(マエストロ)に騎乗している者に聖竜騎士団は、

安堵で胸を撫でおろす。

その者は聖竜騎士団団長ウルスラ・L・セルウィンとそのパルガラハッド。

巨大な深紅のドラゴンは何かを掴んでいるように握り拳だった。

よく見れば、一人の褐色肌に近い黒い肌の少女が握られている。その少女は選抜合宿の時に

捕縛したタンタロス族の少女であった。そして、真紅のドラゴンの正体は龍に

変化したイッセー・D・スカーレットである。

 

「ご苦労様です。では、こちらに」

 

ウルスラが促すとタンタロス族を差し出す。

 

「聖竜騎士団が騒がしいと思えば・・・・・貴様か」

 

第三者が声を掛けてきた。一誠は片手を上げて口を開く。

 

『久し振りだな、ヴェロニカにアヴドーチャ』

 

「ドラゴンが喋っておる!?というか、なぜ妾の名を知っておるのじゃ!?」

 

『そう言えば、アヴドーチャは知らなかったっけ?』

 

一誠の全身が光ると、見る見るうちに小さくなって最後は人の形の姿となり、

ヴェロニカとアヴドーチャの現れた。その姿の一誠を見てアヴドーチャは愕然となった。

 

「お、お主は・・・・・」

 

「改めて久し振りだ」

 

朗らかに挨拶をするとがしゃりと音を立たせてヴェロニカは問いだす。

 

「で・・・・・お前は何をしに来たのだ?捕縛されている少女をここに連れて来て」

 

「ああ、アロンヌ湖で騒動があってな。その騒動の元凶の共犯を捕まえたんだ。

同時にアヴドーチャと関わりがあるかもしれないし」

 

アヴドーチャが途端に怪訝な反応をする。ガラハッドがヴェロニカとアヴドーチャと

少し離れたところで降り立ち、ウルスラがタンタロス族の少女を横抱きにした状態で地に降りる。

視界に入る捕縛されたタンタロス族の少女を、とある一点に目を留めたアヴドーチャ。

まるで信じられないと目に留めた一ヵ所、

連れて来られたタンタロスの少女が首に巻くマフラーを剥ぎ取った。

 

「そ、それは返して!」

 

「・・・・・」

 

懇願の声が投げられるがアヴドーチャは聞き流して、マフラーの生地を丹念に調べていく。

やがて、タンタロス文字を象った刺繍が視界に飛び込んできた。

 

―――シャマラ・キルツカヤ。

 

「まさか、この娘が妾の・・・・・!?」

 

アヴドーチャは愕然として、少女の顔を見つめた。

目の前の少女は―――生き別れとなった妹の面影を、確かに宿していた。

 

―――○♢○―――

 

「おお、イッセーではないか!久しい!」

 

「・・・・・オズワルド・・・・・なのか?」

 

「どうした?まるで信じられないと言った表情ではないか」

 

いざ、アンサリヴァンに戻ろうとした一誠だが、ヴェロニカに捕まり王室に連行された。

そこで再会したのは

騎士王(パラディン)のオズワルドだった。だがしかし、一誠は目を疑った。

 

「随分と痩せたな。それと髪型も変わっている」

 

以前、最初に出会った時と変わっていたからだ。丸々と太った肥満体、

愛嬌のある丸顔が無くなってかなり痩せていた。マッシュルームのような髪型も

一誠の視界には背中辺りまで伸びているのだ。

 

「おお、この体のことか?うむ、実はなお前が創ってくれた遊園地に毎日足を運んでいたら、

何時の間にか痩せたのだよ」

 

「・・・・・そこまでの効果が生んだのか。あの遊園地は」

 

だが、ヴェロニカは溜息を吐いた。

 

「そのおかげで一国の王が良く遊園地に現れるので『娯楽王』と民たちに呼ばれている。

良い意味でな。やることが無く暇な時間を潰す時は殆ど遊園地に赴く。

そして、民たちと触れ合う時間も増えたというわけだ」

 

「ふはははっ!イッセーが創ってくれた遊園地のおかげで、わしの生活習慣も激変したぞ。

王自ら街に出向いて民と接するなどと、考えもしなかった。だが、その行動をした結果、

前よりも増してこの国は活気が盛んとなった」

 

柔和な笑みを浮かべ、一誠の両肩に手を置く。

 

「お前のおかげでわしは楽しい時間が得られた。感謝するぞ我が友よ」

 

感謝の言葉を発するオズワルド。と、何か思いついたのか一誠に提案をした。

 

「そうだ、イッセー。大陸会議(エリュシオン)に参加しないか?」

 

「エリュ・・・・・シオン・・・・・?」

 

聞いたことがないと首を傾げ疑問を浮かべていれば、ヴェロニカが説明してくれた、

 

「異世界から来たお前には知らない単語だったか。ようは、各国の首脳を集め、

会議を行う習わしだ。このアルク=ストラーダ大陸中のな」

 

「じゃあ、ラブロック商工都市連合の首脳も来るわけか。

・・・・・だけど、この世界からすれば、俺は余所者だぞ。いいのか?」

 

その言葉にオズワルドは笑った。

 

「わしが良いと言うのだ、良いに決まっておる」

 

「・・・・・そう言うんだったら、俺も参加させてもらうよ」

 

「うむ、楽しみにしておるぞ。おお、それとだ。大陸会議(エリュシオン)時に我が娘たちと

アッシュ・ブレイク、幼竜エーコも一緒に来てもらえぬか?」

 

「アッシュ・ブレイクとエーコもか?どうしてだ?」

 

王族の王女であるシルヴィアとラーズはともかく・・・・・。一誠は心の中で疑問を浮かべる。

 

「あの者たちの顔を一目見たいのだ。人の姿で生まれたドラゴン。

そして、そのパルとする少年をな」

 

「騎士国の王として当然のことか」

 

納得の面持ちで首を縦に振る。

 

「分かった。伝えよう」

 

「感謝するぞ。では文を」

 

オズワルドは背後に控えているメイドに視線を向けた。

そのメイドが両手で持っていた手紙をオズワルドに渡すと、そのまま一誠の手に渡った。

 

「おお、それとじゃ」

 

「ん?」

 

今度は何だと、オズワルドに視線を送った。

 

「聞いておるぞ。何でもドラゴンと融合し、聖騎甲(アーク)と同等の鎧を纏えるとか。

一度、この場でその鎧を見せてもらえぬか?」

 

「ああ、それ?いいぞ。禁手(バランス・ブレイカー)

 

容易く光に包まれながら、龍を模した赤と白の全身鎧を纏う一誠。

 

「ドラゴンと融合する時はドラゴンと共に呪文を唱えないといけないから無理だけど、

俺が保有している力=鎧ならできる。今回はこれで勘弁してくれ」

 

「・・・・・いや、これはこれで十分だ。なんと凄まじい迫力がある鎧であろうか」

 

「間近で見るのは初めてだな。ふむ・・・・・これが異世界の力か・・・・・」

 

一誠の鎧を触り出すオズワルドとヴェロニカ。

 

「くくくっ・・・・・これを各国の首脳たちに自慢すれば、さぞかし面白くなりそうだ」

 

「おい、戦争の火種になりならないか?」

 

「問題ない。イッセーは我が国の唯一無二の存在。

あの遊園地もイッセーが創ったと証明できるしな。最近ゼファロス帝国が

『自国の領土にある機械の施設の創設者を紹介しろ』だのと、手紙やら使者を寄こしてくるのだ」

 

「あー、やっぱりそうなるか」

 

遊園地を創造した時から感じていたことだ。

機械工学が盛んなゼファロス帝国が注目しない訳がないと一誠は悟っていた。

 

「その理由は無論、お前のことだろうな。名前が『ラブロック遊園地二号』と刻まれ、

あの遊園地はこの国の領土内にある。

ラブロックの出身者が創設したと誰の目から見ても明らかだ」

 

「正確に言えば、異世界から来た人間、だけどな」

 

訂正とオズワルドに苦笑を浮かべる。

 

「我が国いる技術者でも、驚嘆するばかりだ。『こんな作り方があったのか』とな」

 

「理解している時点で、この世界の技術もバカにできないわけだな」

 

「理解しているが、それを作る技術にはまだない。

いや、作れるがそれを作る施設や道具が存在していないというのが現実的なのだよ」

 

「そうなるとゼファロス帝国がその施設と道具を持っているわけか?」

 

「どうだろうな?仮にあったとしても無用の物だろう。造ったら最後、

その施設は不要となるからな。その点、イッセーはあっさりとあれほどの規模の施設を創造する」

 

「だから、ゼファロス帝国からイッセーを紹介してほしいというわけだ。

うむむ、そう易々とイッセーを手放す訳にはいかんな」

 

会話の花が咲く、というよりもまるで会議のような雰囲気と成り、

三者三様それぞれ思ったことを口にする。

 

―――○♢○―――

 

ラブロック商店の店内にはいつものの風景。すでに常連客となっているラーズをはじめ、

シルヴィア、レベッカがいれば、アッシュとエーコ、最近ルッカとキーラ、

さらにはアンジェラまでもが通うようになった。

 

「以上、オズワルドからの伝言は伝えた」

 

首都に赴いた一誠の言動を手を取るように知り、分身体の一誠がシルヴィア、ラーズ、アッシュ、

エーコに告げた。

 

「私たちが会議に参加しろって・・・・・」

 

「一体どういうつもりなのかしらね?」

 

「お、俺も大陸会議(エリュシオン)に・・・・・」

 

「なにそれ、美味しい物?」

 

「そこのバカ竜は人の話を聞いていないのか」

 

「バカとは何よ!馬鹿とは!」

 

シルヴィアとラーズは怪訝、アッシュは当惑、エーコは食べ物にしか頭にない発言をする。

 

「理由はオズワルドに訊いてくれ」

 

「・・・・・それにしても、よく首都に行ったイッセーの話を聞けるのだな」

 

「これぐらいできて当たり前だ。まあ、そう言うわけだ。シルヴィアとラーズ、

アッシュにエーコ。俺たちは近日、フォンティーン城に向かう」

 

「・・・・・分かった」

 

憂いに満ちた表情で重々しく頷くシルヴィア。なにか悩みごとでもあるのだろうか、

と一誠は小首を傾げる。

 

「今回の大陸会議(エリュシオン)はフォンティーン城になったのね。

首都に戻ったらきっと厳重な警備態勢になっているわ。はぁ・・・・・面倒くさい。

その上、パーティを開くかもしれないし烏合の貴族たちが群がってくるのが目に見えるわ」

 

「ラーズ、お前は何時もパーティの時では欠席しているだろう。

相手にするのが面倒だからと理由でだ。今回こそは―――」

 

「今回は渋々参加するつもりよ」

 

「なん・・・・・だと・・・・・?」

 

てっきり参加しないのだと、窘めようと口を開いたシルヴィアの耳に信じがたい

言葉がラーズの口から出てきた。

 

「・・・・・どういう風の吹きまわしだ?」

 

シルヴィアは警戒して声のトーンを落とす。

自分から参加するなど何か企んでいるのではないのかと、疑う。

 

「あら、お姉様。たまには顔を出すぐらい良いかしらと思っただけですわよ?」

 

「『パーティなんて所詮は子供の遊び、茶番でしか無いわ』と言ったのはどこの誰だ?」

 

「さあ、一体そんな失礼千万なことを言ったのはどこの誰でしょうかしらね?イッセー」

 

「なぜ俺に話を振る・・・・・と時間か」

 

一誠は腰を上げてどこかに行こうとする。

 

「どこに行く?」

 

「第七竜舎。ガレスに頼まれたからな」

 

「・・・・・ガレスに?」

 

ルッカの疑問に答えず、店の奥へと消えた。一誠が姿を消すと顔を見合わせる。

 

「一体、ガレスと何の約束を?」

 

「選抜合宿の一件以来、イッセーは本当に第七竜舎を改造したし・・・・・」

 

「うむ、そうだな」

 

「気になる、第七竜舎に行こう」

 

キーラの言葉にキーラを除く面々は頷く。

 

―――○♢○―――

 

昼食をほどほどにして第七竜舎に赴いた。一誠は言った通り第七竜舎を改造したが、

竜舎の外見は変わっていなかった。だが、どこが変わっているのかといえば竜舎の中と言えよう。

先に入っただろう一誠の後を追い、レベッカたちも第七竜舎の中へ入った。

一歩足を踏み込めば―――第七竜舎は広大な青空、広大な野原、広大な海原、広大な森林が

広がっていたのだった。まるで別の場所に移動したのではないのかと思ってしまうほどだ。

因みに、聖竜(マエストロ)専用の第七竜舎以外にも翼竜(ストラーダ)

地竜(アーシア)水竜(ハイドラ)専用の竜舎もこの空間と繋がっており、

全てのドラゴンたちがこの空間に集結している。

こんなことできるのはこの世界で一誠ただ一人だけであろう。

 

「何度ここに訪れても、未だに驚かされる。慣れないな」

 

「あっ、あそこで元気に地竜(アーシア)が走っているわ」

 

『わーい!待て待てぇー!』

 

「・・・・・いや、追い掛けられているぞ」

 

「・・・・・ご愁傷様」

 

一誠の異世界のドラゴンが地竜(アーシア)の大群の背後から迫っていた光景を目の当たりにして、

各々と合掌する。逞しく生きてくれと。その光景を見た後、広大な野原に生えている森林へと

足を運ぶ。遠くから見れば小さいが、いざ近づいて見れば巨大な木々がレベッカたちを

出迎えてくれた。木の枝も聖竜(マエストロ)翼竜(ストラーダ)が乗っても丈夫で大きい。

現に、一匹の翼竜(ストラーダ)が枝に乗って身体を丸くして寝ていた。

 

「なんだか、良い匂いもするわ。森の香りっていうのかしら」

 

「空気もおいしいわ。何だかお昼寝したいかも」

 

森林の中に入り、木と木の間から差す太陽の光を浴びながら進んでいく。

歩く最中、何度か翼竜(ストラーダ)地竜(アーシア)と出くわし、

シルヴィアたちのドラゴンはどこかにいるか知らないか?とアッシュが聞けば、

首を捻って知らないと仕草をするばかりだった。

 

「あの、星刻で居場所を調べればいいんじゃないですか?」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

レベッカ、シルヴィア、ラーズ、キーラ、ルッカが途端に固まった。

アッシュの一言ですっかり忘れていたことが思い出したのだ。

 

「・・・・・忘れた」

 

ルッカが瞑目してガレスの居場所を念じた。しばらくして、瞑目していた目を開いた。

 

「あっち」

 

スタスタと何かに導かれるように歩を進める。ルッカを先頭にして後と追うレベッカたちは

巨大な木々に囲まれている湖へと辿りついた。そして、ついに探し人と探し竜がいた。

 

「いたいた、なにをしているんだろう?」

 

「何かをあげているような・・・・・?」

 

「む、ランスロットたちまでいるぞ。何かを食べているようだ」

 

堂々と一誠に近づいた。当然、対象の気を探知することができる一誠は、

振り返って不思議そうに首を傾げた。

 

「なんだ、どうしてここにいるんだ?」

 

「ガレスとどんな約束をしたのか、気になったの」

 

「なんだ、そんなことか。ただの果実を与えに来ただけだ。

何故かクー・フリンたちも食べたがっていたからあげていたところだけど」

 

確かに、リンゴみたいな果実を美味しそうにシャリシャリと食べていた。

 

「それ、何て言う果物?」

 

「ドラゴンアップル。異世界のドラゴンが食べるリンゴだ。

名前はそのままだなと思っても自覚しているからな?」

 

「異世界のドラゴンが食べるリンゴか・・・・・人間でも食べれることはできるか?」

 

シルヴィアの問いに一誠は頷いた。

 

「普通に食べれるぞ。味は対して変わらないがな。ただ、アンジェラに調べてもらったけど、

このドラゴンアップルは星精(アストラル)が含まれている植物や餌の

何百倍にも含まれているって話だった」

 

「何百倍!?」

 

「それは凄いな・・・・・ランスロット、美味しいか?」

 

自分のパルに訊ねると、「ぐるるる」とコクリと白い首を縦に振ったランスロットだった。

 

「そう言えば、お前のドラゴンがいたんだが」

 

「ああ、サマエルか?運動不足にならないよう地竜(アーシア)を走らせているんだ。

檻の中に一日中いたら体が鈍るだろう。翼竜(ストラーダ)水竜(ハイドラ)もそうしているぞ」

 

「・・・・・イジメ、って風には何故か聞こえないわね」

 

「俺もここを利用させてもらっているしな。何時までも俺の中にいさせるのもなんだったしさ。

無論、他のドラゴンに近づかせないように注意している」

 

天国と地獄の空間だここは、と一誠以外の面々はそう思わずにはいられなかった。

あんな巨大な怖ろしいドラゴンがここに野放しされているのだと誰が思うか?

いや、思わないだろう。

 

「そういえば、竜丁が餌を与えに来る時、どうやってドラゴンたちは餌を食べているんだ?」

 

「餌の時間となれば集結するように言ってある。入口のところでな。

水竜(ハイドラ)の場合も同じだ」

 

「ふむ、そう言うことなら安心した」

 

徐に一誠は手を上に向けた。次の瞬間、極太の気のエネルギーが空に向かって伸びていった。

いきなりの行動に唖然とシルヴィアは問うた。

 

「な、なにをしているんだ・・・・・?」

 

「サマエルを呼び戻している。帰るからさ」

 

『呼んだぁ~?』

 

―――――っ!?

 

ぬぅっとレベッカたちの背後から、木の影から上半身が人間、下半身が蛇のような尾、

背中に黒い翼を生やすサマエルが現れた。そんなサマエルにレベッカたちは驚愕した。

 

「お、早かったな」

 

『うん、みんなヘトヘトになっちゃったから戻ってきたの』

 

「そうか。それじゃ、帰るぞ」

 

『りょうかーい』

 

サマエルの足元に巨大な黒い魔方陣が出現して、一瞬の閃光と共に姿を消した。

 

「それじゃ、帰ろうか」

 

―――○♢○―――

 

「ふぅ・・・・・」

 

ポスッとシルヴィアは女子寮エポナ寮の最上階、王室ルーム。

寝間着に着換えたシルヴィアはベッドに寝転がる。一抱えもある枕を抱き締めると、

ごろごろと転がり始めた。そうせずにはいられなかった。

 

「お行儀が悪いですわよ、姫様」

 

就寝前のハーブティーを運んできたコゼットが、やんわりと窘めてきたが、

シルヴィアは右へ、左へと、交互に転がり続ける。

 

ゲシッ!

 

「虫みたいに転がらないでくれるかしらお姉様」

 

そこへラーズがシルヴィアをベッドから蹴り落とした。

ドスンと音を立てて一拍、シルヴィアがすぐさま怒り心頭で起き上がった。

 

「姉に蹴りを入れるな!」

 

「お姉様が虫みたいに転がるから、せっかくのベッドのシーツが皺くちゃになるから嫌なの」

 

「むぅ・・・・・」

 

言われてみれば、綺麗に敷かれたシーツが若干皺ができていた。ラーズは腕を組んで溜息を吐く。

 

「一体、何を悩んでいるのよ?大陸会議(エリュシオン)のこと?」

 

―――大陸会議(エリュシオン)。このアルク=ストラーダ大陸には、五年に一度、

各国の首脳を集め、階段を行う習わしがある。主催は、ロサ・マリア教の総本山である

エスパーダ聖庁。開催地については、その都度、エスパーダの教皇が占いによって定める。

通算七回目となる今回の会議は、ロートレアモン騎士国の首都、フォンティーン市が選定された。

今頃、故郷のフォンティーン市は大わらわとなっていることだろう。

 

「・・・・・この大陸の未来を左右する、大事な首脳会議なのだぞ?私には荷が重すぎる」

 

「それを言ったら私も同じことよ?考えても悩んでも既に決まったこと。決定されたことを

今さら覆れると思って?それに結局、首脳会議って各国に存在する王と教皇、

皇帝が話し合うものよ」

 

「・・・・・」

 

それは・・・・・とシルヴィアは口にしようとしたが口を噤む。

シルヴィアも分かっているようにラーズも分かっているのだ。

 

「それにイッセーも会議に参加するじゃない」

 

そう言って、ラーズは微笑した。

 

「なぜ、イッセーの名が挙がる」

 

「ふふっ、だって異世界から来た人間でありドラゴンよ?そんな存在をあの親バカは自慢したいが

為にイッセーを披露するつもりよ。『我が国が誇る異世界のドラゴンだ!』とか言い出しそう」

 

「・・・・・あの人は子供か」

 

呆れるシルヴィア。だが、なぜかそうするのではないか?と絶対に否定できない部分がある。

そう思っているところにラーズは言い続けていた。

 

「それだけじゃないわよ?イッセーを『私たち』のものだと主張できるチャンスだわ。

そうすれば他の国の王女たちは手を―――」

 

「ちょっと待て!?」

 

聞き捨てにならない単語が強調され、シルヴィアはラーズに詰め寄った。

 

「『私たち』とは一体どういうことだ?」

 

「言葉通りよ。私とお姉様、そういうことよ?」

 

「な、なぜ私がイッセーと・・・・・!?」

 

「数が多ければ相手は手を出さないわ。戦略の一つの手よ?ああ、この際ついでだから

ヴェロニカお姉さまも協力してもらおうかしら?自分のパルにしようとしているぐらいだし」

 

私、ちょっと策士じゃないかしら?と自分の考えに楽しげに笑むラーズだったが、

シルヴィアは頭を抱える。この妹は、自分の目的ならば姉を簡単に手駒として扱う。

一体、どんな育て方をしたらこんな性格になって、こんな思考をするようになるのか、

父上の教育のせいなのか?そうなのか?と自分の父親に少なからず怒りと恨み、

哀しみを向けるシルヴィアであった。

 

「それに」

 

「まだ、あるのか」

 

「なに疲れきった顔をしているの?まあ、聞いて。私、疑問が浮かんでいるのだけれど」

 

ジッと赤い双眸を蒼い瞳のシルヴィアを見据える。そして、爆弾発言をした。

 

「お姉様、イッセーに恋心抱いていない?」

 

「んなっ!?」

 

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