一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode18

「この愚か者ども!」

 

「「っ!」」

 

ランサーとギルフォードがエーコを誘拐して十分が経過した。負傷した一誠を医療班に手当を

してもらっている部屋で、シルヴィアとプリムはヴェロニカの怒りをぶつけられていた。

 

「シルヴィア、一国の王女が戦場に無防備で介入するとは言語道断であるぞ!

何のために竜騎士(ドラグナー)となっている!お前はランスロット無しで戦えるというのか!」

 

「そ、それは・・・・・」

 

「プリム、貴様はエーコを連れて行けとイッセーの言葉に何故その通りにできなかった?」

 

「そ、それはイッセーくんを探していたシルヴィア様とお会いして、事情を説明しましたら、

シルヴィア様はイッセーくんを助けに行こうとしていきました。

その様子に見ていたエーコちゃんが急にシルヴィア様の後に追ってしまわれ・・・・・」

 

プリムの返答にヴェロニカは鋭い視線でシルヴィアに向ける。

 

「貴様の介入がなければ、イッセーは負傷せずにすんでいただろう。

あいつの実力を間近で見ていた貴様は、イッセーの強さを信用していなかったということだな」

 

「ち、違います!私はイッセーの事を信用して―――!」

 

「だったら、なぜあの場に行ったのだ。私や兵に告げることだってその余裕があったはずだぞ」

 

ぐうの音も出ない。一誠は複数の白衣を纏っている男性や女性に囲まれている。

その傍にはラーズもいた。だが―――。

 

「ヴェロニカ王女殿下」

 

一人の医師が寄ってきた。初老の男性である。

 

「イッセーの傷はどうだ」

 

「・・・・・」

 

何とも言い辛そうに医師は一度ヴェロニカから視線を逸らした。

その仕草にヴェロニカの綺麗な柳眉が不機嫌そうに上がる。

 

「言え」

 

「・・・・・分かりました」

 

鋭い眼光と共に命令されて止むを得ないと初老の男性は口を開いた。

 

「完治は不可能です」

 

「なんだと?」

 

「それどころか・・・・・傷口が徐々にですが、広がっていき、出血が増えるばかりです。

このままでは後、数時間で・・・・・」

 

―――っ!

 

医師から告げられた言葉に、ヴェロニカたちは目を丸くする。

医師が告げたのは数時間しか無い命だということだ。

 

「なんともならんのか」

 

「・・・・・」

 

「そうか・・・・・」

 

ヴェロニカはそれだけ言い、一誠のもとへ寄る。

 

「どけ」

 

医師たちに圧力を掛けた。医師たちが一誠から離れると、ヴェロニカは一誠に問いかけた。

 

「一誠・・・・・」

 

麻酔薬で眠らされている一誠の頬を触れた。手に伝わる温もりはまだ温かい。

こうして眠っている様子を見れば、とてもこれから死んでいく人とは思えない。

 

「お前と出会ってからというものの、色々と不思議な出来事が起きた。

ウルスラと戦わせたら、お前が勝ち、機械の娯楽施設を創ってみせた。

アンサリヴァン市やウィリンガム霊廟での事件もお前が解決する。

さらには異世界から来たドラゴンときたものだ」

 

今までのことを思い出しながら、語り続けた。

 

「ウルスラの奴も珍しいことをするばかりで、それがお前に関する事だけだと思うと、

お前はどれだけ人を魅了しているのだろうな?」

 

頬を添えていた手を今度は真紅の前髪に触れた。

 

「だが、これからすることをすれば、あいつは私を憎むかもしれないな」

 

―――ガチャ。

 

クレイモアを高く振り上げた。

 

「・・・・・まさか」

 

シルヴィアは信じられないと呟いた。ヴェロニカは真っ直ぐ視線を一誠に向けてクレイモアを

上げている。振り下ろせば、無防備に寝ている一誠の肉体を

真っ二つにすることだってきるであろう。

 

「死ぬのならば、この私の手であの世に送ってやる。それが苦しみから助けるせめての情けだ」

 

「―――――っ!?」

 

「さらば、我が友よ」

 

待った無しにクレイモアは勢いよく振り下ろされた。

誰もが驚愕で目を丸くして一誠の身体にクレイモアの切っ先が沈んでいく瞬間を垣間見る―――。

 

「イッセーを殺させない」

 

感情が籠っていない声がどこからともなく聞こえた。同時に、クレイモアが宙で止まった。

 

「・・・・・貴様らは」

 

ヴェロニカの視界に飛び込んできたのは―――。

 

「まったく、私たちに何も言わずに勝手に殺さないでくれる?」

 

「彼を殺したら、その後どうなるのか知らないのにしないでください」

 

長剣と方天画戟がヴェロニカの横から突き出されている。

その武器を持っている人物が、ここにいるはずもない龍牙とルクシャナであった。

 

「イッセーを殺させない」

 

再度言うのは、一誠が寝転がっているベッドにいるオーフィス。クレイモアを両手で掴んでいた。

 

「どうやってここに入った?」

 

「一誠さんの内にいるドラゴンが教えてくれたんです。一誠さんが重傷を負ったっと」

 

「だから、私たちだけここに来てみると、イッセーが殺されそうになったじゃない」

 

目を細め、「どうしてこんなことする?」と視線で問う二人。

 

「そいつは出血多量でもうじき死ぬのだ。

ならば、楽にさせるのが幸せというものではないのか?」

 

「勝手にそう決めつけないでください。それで、一誠さんの容体は?」

 

一人の医師に龍牙が問いかけた。

 

「傷口が広がって出血を抑えることができないのです」

 

「傷口が広がって?」

 

不思議そうに聞いたルクシャナは一誠に視線を向ける。

槍で貫かれたような傷口が紫に変色していて、ゆっくりと穴を大きくしながら広がっている。

 

「・・・・・酷いわ」

 

「一誠さんが眠っているのは?」

 

「治療に専念するために睡眠薬で眠らせてもらっています」

 

「・・・・・困ったな」

 

ポリポリと龍牙が頬を掻いた。本当に困った顔で何か悩んでいる表情となった。

 

「一誠さん。一度寝たら朝まで起きないんですよね。

内にいるドラゴンも召喚することもできない」

 

「ドラゴンがどうかしたのか?」

 

シルヴィアが疑問をぶつけた。龍牙は「ええ」と事情を説明する。

 

「この傷を見ればただの傷ではないと分かりました。

きっと呪いか魔法の類によって傷つけられたのでしょう。

ですので、一誠さんの内にいるゾラードっていうドラゴンやメリアならば、

何とかなったのかもしれません」

 

「では、起こせばいいのだな?起こせばイッセーはドラゴンを召喚できる―――」

 

「怪我人を叩き起こす野蛮人だった、と一誠さんはそんな印象で覚えてしまいますけど?」

 

ヴェロニカの失言に回りから冷たい視線を送られた。

 

「取り敢えず・・・・・出血を抑えないといけませんね」

 

刹那、龍牙が長剣を振るったと思えば、一誠の両手と両足を切断した。

その行為に誰もが驚愕した。

 

「傷口が広がるなら、切断して防げばいいだけです。流石に他のところは斬れませんが」

 

「お、お前・・・・・!イッセーの手足を斬ってどうして平気でいる!?罪悪感がないのか!」

 

「一誠さんを死なせないためです。彼を死なせないために助かる方法があるならば、

僕たちは躊躇いなくそれを実行します」

 

龍牙は腕を伸ばす。一誠の切断面に小型の魔方陣が四つ出現して、出血を止めた。他の傷口もだ。

 

「これで、出血は止めました。残る問題は・・・・・両手と両足の再生ですね」

 

「義手、義足のことなら我が国でもあるが」

 

「いえ、そんなものより、ちゃんと元に戻したいので・・・・・異世界に戻るしか無いですね。

ルクシャナさん、お願いできますか?」

 

ルクシャナに顔を向けながら問いかける。当然だと首を縦に振って肯定するルクシャナは、

どこからともなく取り出した小さな杖を持っていた。

 

「勿論。ちゃんと呪文だって言える。伊達にイッセーの主兼使い魔をしていないわよ?」

 

「おい、そこのエクブラッド人」

 

「私はエルフよ!エクブラッド人なんかじゃないわ!・・・・・で、なによ」

 

「イッセーの主とか、使い魔とはどういうことだ?」

 

ヴェロニカは浮かんだ疑問をルクシャナにぶつけた。ルクシャナは当然とばかり言い放った。

 

「言葉通りよ。私と一誠が互いに主でありながら使い魔なの。この文字がその証拠」

 

左手の甲を見せつける。その甲には見慣れない文字が刻まれていた。

 

「イッセーの額や胸を見れば同じ似たような文字があるわ」

 

「・・・・・」

 

その言葉にラーズが確かめた。眠る一誠の前髪を上げれば、

確かに見慣れない文字が刻まれていた。

 

「これが、なんなの?」

 

「その文字は使い魔である証拠。イッセーや私を含め、

もう一人その文字を持つ人が異世界にいるわ」

 

徐に杖を宙に翳し、ブツブツと何か呪文のようなものを呟き始めた。

ヴェロニカたちが聞いたことのない言葉であった。異世界の言葉だろうか?と見守っていると、

ルクシャナの前にキラキラと輝きが増して、人が通れそうな光のトンネルが出現した。

そのトンネルの向こう側には風景が見えた。

 

「龍牙、ドラゴンの世界に通じたけれどいいわよね?」

 

「そうですね。皆のところに戻ったら、大騒ぎしますからそっちの世界の方が良いでしょう。

それに、あの世界にはあのドラゴンがいます。失った一部の身体を復元できるでしょう」

 

一誠を担ぎあげてルクシャナに寄る龍牙。

 

「ま、待ってくれ」

 

「はい?」

 

「わ、私も一緒に良いか?」

 

シルヴィアがおずおずと同行を願った。と、そこへラーズも龍牙に近づいた。

 

「イッセーの治療はどのぐらいの時間が掛かる?」

 

「多分、あっという間じゃないでしょうかね?」

 

「その程度の時間なら大陸会議(エリュシオン)まで間に合うわね?

舞踏会は別に出なくてもいい行事だし、私もついて行くわ」

 

ラーズも同行の意思を告げた。龍牙はヴェロニカに視線を配った。

 

「あなたもついてくるのですか?」

 

「その問いに応える前に質問だ。異世界とこの世界の時間差はどのぐらい違う?」

 

「大差ありませんよ。ただ、この世界が夜なので、向こうの世界は朝という真逆の時間ですが」

 

「そうか、その程度のことならば私も同行させてもらうぞ。グレンよ。お前もついて来い」

 

「御意」

 

ヴェロニカも同行すると告げた。ルクシャナは溜息を吐く。

 

「何人でもいいから早く行きましょうよ。

この魔法、そう長く維持できないわよ。魔力の消費半端じゃないんだから」

 

「すいません。では、参りましょう」

 

―――○♢○―――

 

「僕とオーフィスから離れないでください」

 

光のトンネルを潜り抜けた。龍牙を先頭に続くヴェロニカたちは信じられないものを見る目で

回りを見つめる。鈍い地鳴りを鳴らしながら闊歩するドラゴンたち。

人間も歩いていると思えば、頭に角を生やしているドラゴンであった。

 

「あんなにドラゴンがいる・・・・・」

 

「エーコみたいな竜族もいるわね・・・・・」

 

「ここが、ドラゴンの世界か・・・・・」

 

龍牙についていきながらヴェロニカたちは驚嘆と感嘆を漏らす。グレンも興味深く見ていた。

 

「ランスロットが子供だと思わせる大きさばかりのドラゴンたちだ・・・・・」

 

「まあ、ハッキリ言って実力も違いますしね」

 

「ところで、どこに向かっている?」

 

「医療施設です」

 

巨大な道の隅っこ。人型のドラゴンが通る道に足を進める。

歩行中、人型のドラゴンが奇異な視線をヴェロニカたちに向けられる中、

しばらく歩を進める龍牙たちの目には人間らしく、様々な物を売り物として商売していたり、

小さな子供を連れて歩く人型ドラゴンもいれば、

手を繋いで恋人らしく歩く男女の人型ドラゴンをよく見かける。

 

「しかし、私たちが違う世界にいるという実感が物凄く感じるな」

 

「ええ、普通にドラゴンたちと歩いているんですもの。

こんな滅多に味わえない体験は生涯忘れそうにもないわ」

 

顔を横に向け、この光景を目に焼きつけながら雑談するシルヴィアとラーズの姉妹。

 

「・・・・・我が騎士国に移住してもらえないだろうか・・・・・」

 

竜が棲む特殊な国として、この光景を目の当たりにしたら移住しても問題ではないだろうと

思いでヴェロニカが思ったことを呟いたが、

 

「無理ですからね?」

 

「ちっ」

 

「舌打ちしないでくださいよ・・・・・」

 

ヴェロニカに呆れ顔で龍牙は溜息を吐く。

 

「―――あの!」

 

その時、龍牙たちは声を掛けられた。振り向けば、龍牙たちの視界に

メイド服とカチューシャを身につけ、水色の髪から青い二つの角を生やした少女が立っていた。

 

「やっぱり、一誠さまじゃないですか!?しかも、両腕と両足がない!?」

 

「あっ、ウリュウさん」

 

「あっ、ウリュウさんじゃないですよ!

もーどうしたらそんな状態になっちゃっているんですか!?」

 

せわしなく口を動かすメイド。龍牙に問い詰めて説明しろとばかり、睨んだ。

 

「僕たちも事情が知らないので何とも言えません。

ただ、一誠さんの両手足を復元できるこの世界に戻ってきたんですよ」

 

「・・・・・分かりました。取り敢えず、原始龍様のところへお連れ致します。いいですね?」

 

「分かりました」

 

納得していないが、流石に一誠をそのままにはできないと

強引に理解してウリュウというドラゴンはヴェロニカたちに視線を配った。

 

「あなたたちも一誠様と関係がありそうですね。ですが、人間まで連れて来ては困りますよ。

『人間がいる』という報告が届いたのでもしかしたらと思ってここに来たのですから」

 

「はい、どうもすいません」

 

「連れてくるなら事前に伝えてください。いいですね」

 

どうやら、人間が来てはならない場所だとシルヴィアたちは実感する。

確かに、今でも奇異な視線を向けられてくる。人間がドラゴンの世界に来るなんて、

有り得ないからだろう。龍牙たちの足元に魔方陣が出現して、光に包まれた。

視界を覆う白い光に一瞬だけ意識を失った―――。

 

 

次に目を開けた時は別の場所にいた。天井が高く、空間も広大で何十本も柱が左右に延々と

等間隔に並んでいる。まるで古代遺跡と思しき場所であった。

全部の柱には空を向かって飛ぶようなドラゴンの彫刻が施されている。

広漠とした大空洞の中を歩き始める。ウリュウを先頭にして。

 

「何て荘厳な場所だ・・・・・」

 

「ミラベルのやつが好奇心を抱くだろうな」

 

「因みにミラベルって言う人は、第三王女ミラベル・ロートレアモン。

私とシルヴィアお姉様の姉よ。今現在、エスパーダ聖庁に留学中」

 

ヴェロニカの発言に続いてラーズが説明してきた。

 

「へぇ、そうなんですか。第二王女は?」

 

そう問いかけた龍牙にラーズは肩を竦めた。

 

「さあ、会話なんてしたことないから分からないわ。

精々、二、三度程度しか顔を合したことがないわ」

 

「ふん。貴様が根暗だった時に部屋から一切出ようとしなかっただけだろう。

寧ろ、カサンドラの奴はラーズと会いたがっていたぞ」

 

「知らないわよそんなこと」

 

未だに眠り続ける一誠の露知らないところで、第一から第五王女の名前が出てきた。

 

「無駄話はそこまでです。これから原始龍さまとの謁見ですよ」

 

目的の場所に辿り着いた。向かい合う一対の竜を象った大きな扉。

ウリュウはその扉にノックをする。

 

「原始龍さま。ウリュウです」

 

それだけ言い、扉を開け放った。ウリュウの視界に入った扉の向こう側は、

円状な空間で壁一面にはキラキラと星屑が下に落ち続ける神秘的な現象が絶え間なく起きている。

床は四匹の龍が太陽を囲むような姿勢が描かれているのに対して、

天井は満月を囲む四匹の龍の彫刻が施されている。

そして、この空間の奥に天井にまで伸びた背もたれの椅子に座る女性がいた。

緑色の髪から突き出る翡翠の二つの角。身に包んでいる衣服は、緑と青を基調とした着物だった。

ウリュウに続いて、龍牙たちが入ると―――。

 

「お久しぶりです。兵藤一誠のご家族たちよ」

 

と、穏やかに歓迎してくれた。龍牙は首だけ短く縦に振ってお辞儀をする。

 

「お久しぶりです。原始龍さま」

 

「・・・・・兵藤一誠の四肢が損失しているのを見受けれますが、一体どうしたのですか?」

 

途端に真剣な表情と成り、龍牙に問うた。

 

「実は、傷が広がる呪いを受けたようです。

実際、僕たちは一誠さんのドラゴンに事情を説明されただけなので、

なにが起こったのかはさっぱり分かりません。一誠さんは眠ってしまい、

治癒できるドラゴンを召喚できないので、ここに参ったのです」

 

「・・・・・分かりました」

 

龍牙たちがここに来た理由を悟った原始龍は、座った状態で腕を伸ばした時だった。

龍牙に担がれている一誠の体が宙に浮き、真っ直ぐ原始龍のもとへ移動した。

 

「・・・・・」

 

寄ってきた一誠を横抱きにして、胸に手を当ててしらばくすれば、

納得した面持ちで首を縦に振った。

 

「なるほど、転生者という者たちとの戦闘で・・・・・そこにいる人間の娘の介入で

一瞬の隙を突かれ、呪いを受けたようですね」

 

「っ!?」

 

ただ胸に手を当てただけで一誠の身に何が起きたのか、簡単に言い当てた原始龍に

シルヴィアは目を大きく見開いて驚愕した。

 

「転生者とは・・・・・?」

 

「並行世界、パラレルワールドというべき異世界で一度は死んだ人間が、

神によって第二の人生を送らされている人間の事を言います。

さらに、第二の人生を送る際には強力な能力を得て再び誕生します」

 

「では・・・・・その転生者に一誠さんは・・・・・」

 

「ええ、その者たちに破れました」

 

異世界にいる強敵の存在。龍牙とルクシャナは真剣な面持ちで心の中で決意した。

一誠の敵がまた現れたら今度は自分たちが戦おうと。

 

「手足を元に戻しましょう」

 

そう言った原始龍は―――一誠の唇に自分の唇を押し付けた。

 

「なっ!?」

 

「っ・・・・・」

 

「・・・・・」

 

シルヴィア、ラーズ、ヴェロニカの反応は様々だった。

だが、キスされている一誠の全身が光り輝き始め、龍牙に切断された手足が光と共に復元して完治した。他の至るところに広がっていた傷口も塞がったのであった。

 

「・・・・・ん」

 

その時、一誠の目が開いたが、目を大きく見開いた。どうして自分がキスされているんだ?

とそんな気持ちが露わにしているも。

一誠の頭をガッチリと抱え始めた原始龍に成すがままにされる。

 

「み、見せつけてくれるじゃない・・・・・!」

 

「・・・・・ズルい」

 

「まったく・・・・・」

 

ルクシャナとオーフィスは嫉妬と羨望の眼差しを原始龍に向ける。ウリュウはただ溜息を吐く。

 

「―――ぷはっ!?」

 

「おはようございます。兵藤一誠」

 

ようやく解放された頃には、二人の口から引く銀色の糸がプツリと切れた時だった。

どことなく原始龍は、嬉しそうに微笑んで目を覚ました一誠に挨拶をした。

 

「げ、原始龍・・・・・?ここは・・・・・俺はどうしているんだ?」

 

「あなたの家族がここに連れてきました。あなたが負った傷はとても深刻だったようですので」

 

「・・・・・あー、そう言えばヴェロニカに問答無用で睡眠薬を飲まされたんだったな。

治せれるからと言っても聞いてくれなかったし」

 

聞こえたかどうか知らないが、一誠の視線にヴェロニカは顔を思わず逸らした。

 

「身体の調子はどうですか?」

 

「ん、大丈夫だ。ありがとうな、原始龍」

 

「あなたはまだ死なれては困ります。死ぬのであれば私の胸の中で死んでください」

 

「え、蘇生してくれないの?」

 

「その時は神龍として甦らすつもりですので」

 

そう言われ、一誠は苦笑を浮かべる。真龍、龍神の次は神龍かと思いながら。

 

「ここに来たついでです。異世界でどんなことをしていたのか、教えてください」

 

「んじゃ、異世界から来たあいつらも交えて説明しよう」

 

そう言ってシルヴィアたちを手招いた。

 

―――○♢○―――

 

小一時間ドラゴンの世界にいた一誠たちは、アルク=ストラーダ大陸に戻ってすぐ

舞踏会に参加するため、準備を整えた。エーコ誘拐はアッシュに告げた。アッシュは案の定、

驚愕したが落ち着いて一誠たちからの説明と情報、エーコの探索を派遣に耳を傾け納得した。

現在、城内の三階―――舞踏会専用の広間は、既に賑わいつつあった。紳士も淑女も例外なく、

顔には仮面を装着している。目元を覆い隠すだけのオードソックスな仮面もあれば、

竜や獅子など様々な動物の頭部を象った、奇抜な被りものも交ざっていた。

中には道化師の扮装をした者もいた。フォーマルな服装をしたアッシュもまた、

受付で渡された仮面を目元に張り付ける。

 

「お前、ダサいな」

 

「いきなりダメだし!?」

 

アッシュが入口の脇に佇んでいた一誠に突っ込まれる。

ここで待っていれば、いずれシルヴィアとラーズがくるはずだと、

コゼットにいわれたからである。扉の向こうからは、王室御用達の管弦楽団が、

軽やかな序曲を奏でている。底抜けに明るい宮廷音楽の旋律に、アッシュは

なかなか馴染めなかった。

 

「そう緊張するな。ただ仮面を被った少年少女、大人たちが集う場所なだけだ」

 

「でも・・・・・相手は貴族たちだぞ?」

 

「ここにいる時点でお前もどこぞの貴族だと思われているんだ。

お前の口から『僕は平民です』と言わない限り、バレる心配は皆無だ」

 

「お前・・・・・度胸あるな」

 

威風堂々と佇んでいる一誠に感嘆の声を漏らすアッシュ。そんなアッシュに鼻で笑った。

 

「俺は異世界じゃ人類の王様だからな。それ以前に、数々の試練を乗り越えた場数、経験もある。

それに俺を緊張せずにいられるのは、この世界と異世界にいる家族達のおかげだ」

 

「異世界にも家族がいるのか・・・・・」

 

「血の繋がっていない家族、だがな。殆ど居候、同居の形で一緒に住んでいる」

 

それは知らなかった。アッシュは一誠のことをまた一つ知った。

 

「―――待たせた」

 

唐突に話しかけられ、声がした方へ顔を向けると、

黒い揚羽蝶を目元に張り付けた女性二人が佇んでいた。黒揚羽と見えたのは、

もちろん仮面である。せいぜい顔の上の半分を覆っているだけなので、顔見知りであれば、

正体を見抜くのは簡単だった。

 

「二人のプリンセスが現れたか」

 

そう言いながら一誠はシルヴィアとラーズを眺めた。豪奢な金髪は大人っぽく結い上げて、

真紅のリボンが映えている。肘までをすっぽりと覆い隠す手袋が、淑女らしさを感じさせた。

右手には、いかにも王侯貴族の令嬢が好みそうな、羽のついた扇子を握っている。

青を基調としたイブニングドレスは、要所に宝石が縫い付けられて、真夏の湖面さながらだ。

コルセットに締めつけられた腰とは対照的に、スカートの部分はふんわりと広がって、

楚々とした百合の花弁を思わせた。一方ラーズはシルヴィアと殆ど変わらない衣装だが、

色が違っていた。紫を基調としたイブニングドレスである。ラーズの整った容姿に人を惑わす

魅力を有していて、その場に佇むだけで等身大の人形と間違ってしまいそうである。

 

「イッセー・・・・・」

 

「ん?」

 

「その、すまなかった。私の軽率な行動でお前を大変な目に遭わせた・・・・・」

 

シルヴィアが申し訳なさそうに一誠に謝った。一誠は首を横に振った。

 

「シルヴィアはともかく、エーコがまた戻ってきたことが特に驚いた。

ったく、あいつは本当にプライドだけが高いガキだな。

だが、あいつらの力の一端を知れたことはいい経験だったか」

 

「ギルフォードとあの銀髪の男性は一体・・・・・・」

 

「・・・・・今回の一件、なかったことにしてくれるか?」

 

「なに・・・・・?」

 

不思議そうに一誠を見上げる。一誠をシルヴィアを見下ろして口を開く。

 

「あいつら、どうやらこれから起きることがわかるみたいだ。

だが、それが無意識に俺が邪魔をしているようでな。

あいつらはあいつらなりの理由があるようだし」

 

「エーコの誘拐を許してでもか?」

 

「それが起きる運命だとすれば俺が防ぐんじゃなくて、エーコをパルとする

アッシュ・ブレイクがするべきだ。今回のことは俺が関わったからあいつらも関わったんだろう。

だとすれば、アッシュ・ブレイクとエーコが中心としてこれからが動き出すのかもしれない」

 

と―――話を変えようと思った一誠。目に止まる二人の美貌に口をした。

 

「二人の色を具現化したみたいで、綺麗だな。とても似合っているぞ」

 

「ふふっ、ありがとう」

 

「そっ、そんなに見つめられたら、恥ずかしいだろう・・・・・!」

 

嬉しそうに微笑むラーズとは対照的に、シルヴィアは一誠の視線に気付いた途端に、

サッと頬を朱に染めると、恥ずかしそうにうつむいた。扇子をサッと広げると、

口元を覆ってしまう。―――そのとき、

 

「失礼、お嬢さん方。通してはもらえないだろうか」

 

周囲の客人と同様、仮面で顔を隠した男が、にこやかに話しかけてきた。

帝国訛りの王国語だった。

 

「これは・・・・・失礼した」

 

シルヴィアは慌てて、扉の前から立ち退いた。

 

「ありがとう、シルヴィア王女殿下―――いや、今宵は仮面舞踏会だったな。

ふふっ・・・・・互いの身分など、月の雫に溶かしてしまえばいい」

 

貴公子という表現がぴったりの男は、詩人めいた口調で呟くと、颯

爽と扉を潜った。仮面越しにも拘わらず、シルヴィアの正体を一目で見抜いたようだ。

 

「お前っ!」

 

次の瞬間、血が湧き立つような感覚に襲われて、アッシュは衝動的に叫んでいた。

謎めいた貴公子には、一人の従者が付き添っていた。ごく自然な歩調で、

貴公子の後に続いたのだが、アッシュに腕を掴まれて、立ち止まった。

 

「貴公は・・・・・!」

 

「「・・・・・」」

 

シルヴィアやラーズもようやく、従者の姿を見て、ハッと息を呑んだ。

 

「敵陣に堂々と入ってくるとはな。肝が据わっているようだな。―――ミルガウス」

 

あろうことか、ミルガウスは自前の仮面を装着したまま、

なに食わぬ顔で入場しようとしていたのだ。

ミルガウスの腕を掴むアッシュの手を一誠が解いて放してやった。

 

「また、会おうな」

 

「・・・・・」

 

無言で一度だけ一誠を一瞥すれば貴公子の後を追った。

 

「イッセー、どうして・・・・・!」

 

「今問い詰めたところで、あいつが教えてくれるとは思えない。

その上、今は舞踏会だ。騒ぎを起こしたら、オズワルドに迷惑が掛かる」

 

正論な理由を言われて何も言い返す言葉が見つからない。

 

「俺たちが近づくよりも、シルヴィアやラーズの方が適任だ。ダンスもあるんだし、

誘ってみれば?」

 

「ああ、そうしよう」

 

意を決したように真剣な眼差しで頷いたシルヴィアであった。

 

―――○♢○―――

 

午後七時。各国の親善を目的とした仮面舞踏会は、予定通りに始まった。

舞踏会場は、フォンティーン城だが、このダンスホールだけはシェブロン様式を取り入れ、

華やかさを演出していた。ホールの中央のダンスフロアでは、男と女が手を取り合い、

音楽に合わせて優雅に踊っている。その周囲には、カウンターやテーブル、

椅子やソファが用意され、そちらでは多くの客が談笑にふけっていた。

みるからに高貴な紳士淑女が仮面で素顔を隠し、一堂に会した様子を見ていたら、

懐かしむように一誠は見ていた。人混みを器用に避けながら、一誠が先陣を切って、

シルヴィアとラーズ、アッシュを誘導する。

 

「ふふっ、面白いぐらいに人が避けて行くわね」

 

「イッセーはこういう舞踏会、慣れているようだな」

 

「忘れていると思うけど、俺は異世界じゃあ王様だぞ?こんな舞踏会や首脳会議や会談、

各国の訪問には慣れているんだ」

 

「・・・・・そうだった。あなた、人王とかいう王様だったわね。

色々と凄いから異世界のイッセーのこと、忘れてしまうわ」

 

一誠の背中を見つめながら思い出したかのように漏らす。

その刹那、一誠とアッシュはドン!と激しく突き飛ばされた。

その瞬間、シルヴィアとラーズは五人の男たちに囲まれていた。

 

「美しいお嬢さん。是非、私と一曲、踊ってはいただけませんか?」

 

「たとえ顔を隠していても、あなたが高貴なご令嬢であることは一目瞭然!」

 

「待たんか!吾輩のほうが先じゃ!」

 

「いいえ!私のほうです!」

 

「僕が先です!」

 

どの男も仮面で素顔を隠しているが、その服装や身のこなしから察するに、

相当に身分の高い人物であることが分かる。

彼らの嗅覚が、シルヴィアとラーズの高貴な雰囲気を察知したのだろう。

 

「ちょっ・・・・・そんな風に言われても、困ります・・・・・・」

 

「・・・・・」

 

普段の二人ならば、容赦なく一蹴していそうなものだが、

今は世間知らずな少女そのものだった。

あのラーズでさえ、多数の異性に囲まれてシルヴィアの背後に隠れてしまっている。

さらに男たちは数を増やしていく、いつしか、五人は七人となり、七人は十五人と増えた。

口々に誘いの言葉を飛ばしている。周囲も騒ぎに気づいたらしく、好奇の視線を向け始めた。

 

「・・・・・」

 

既にシルヴィアとラーズの姿は男たちの体で埋もれて見えなくなった。

そんな光景を見ていた一誠は溜息を吐く。―――刹那、

 

ドサッ!

 

一人の男が急に倒れた。それが呼び水となったかのように一誠の目の前にいる男たち、

シルヴィアとラーズを囲む男たちが全員、急に倒れだした。残ったのはシルヴィアとラーズ、

アッシュ、一誠、好奇な視線を向けていた周囲の紳士淑女たち。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ああ・・・・・まさか、これはお前が・・・・・?」

 

「さあな。勝手に倒れた紳士たちが酒を呑み過ぎた結果、ぶっ倒れたんじゃないか?」

 

どう見ても酒を呑み過ぎているようにも見えない。

だが、一誠は可笑しな真似はしていないことに周囲の紳士淑女たちは見ていた。

舞踏会にいるウェイターたちが異変に気付き、駆けつけて来ると一誠は言い放った。

 

「どうやら、過度な酒の摂取の上で熱くなったから倒れてしまったようです。

どこか休める場所へ連れて行ってください」

 

「わ、わかりました」

 

仮面を付けずにいる一誠から発する何かに逆らえないと、本能的に察知したウェイターたちは、

大勢で倒れた紳士たちを休める場所へ引き摺るように運んで行く。

その間、シルヴィアとラーズの手を取って、会場の片隅に向かった。

 

「ありがとう・・・・・」

 

「気にするな、寧ろ意外だったな。

ラーズがまるで怯えるようにシルヴィアの背後に隠れていたんだからな」

 

その言葉にラーズは頬を朱に染めた一誠から顔を逸らす。

 

「ラーズは幼少の頃、人見知りが激しくてな。特に知らない年上の男に激しいんだ。

どうやら、成長しても治っていないようだ」

 

「お、お姉様・・・・・!」

 

シルヴィアの発言に恨めしいと睨んだが、何故だか怖くなかった。

可愛らしい反抗と一誠は微笑みを浮かべ―――シルヴィアに指摘した。

 

「シルヴィアも怖がりだろ。雷を怖がっていたしな」

 

「んなっ・・・・・!」

 

ボン!と音が立ちそうなぐらいシルヴィアの顔が赤くなった余所に舞踏会場に視線を配る。

―――と、会場の片隅に獅子を象った仮面を付けた初老が現れた。

 

「おおっ、イッセーよ。ここにおったか。むっ、我が娘たちもおったのだな」

 

「父上・・・・・」

 

「オズワルド、どうしたんだ?」

 

騎士王(パラディン)オズワルドであった。

 

「うむ、お前を探しておったのだ」

 

「俺を?・・・・・ああ、そーいうことか」

 

オズワルドの意図に気付いた途端、オズワルドは嬉々として笑みを浮かべ出した。

 

「シルヴィアたちもいいよな?」

 

「無論だ。さあ、こちらだ」

 

どこかへ案内しようとするオズワルドにシルヴィアとラーズの手を掴んで引いて歩く一誠。

 

「じ、自分で歩ける!」

 

「人混みの中に歩くつもりらしいから却下」

 

顔を赤くして抗議するも一誠に一蹴された。そんな一誠に呆れた顔で呟いた。

 

「なんて強引な・・・・・」

 

「でも、それがちょっと良いかもって思ったりしているお姉様だった」

 

「ラーズッ!」

 

同じく一誠に手を引かれているラーズに指摘され、また顔を赤くしたシルヴィアであった。

オズワルドについていくと、複数のテーブルの傍に佇む一団の方へと辿りついた。

シルヴィアとラーズの手を離してオズワルドと肩を並べれば、

 

「この者があの大規模な機械の娯楽施設を創った者だ」

 

開口一番に一誠のことを紹介したオズワルド。満面の笑みで一誠に視線をくれば、

その意味は何なのか一誠は理解し、口を開いた。

 

「イッセー・D・スカーレットです。以後、お見知りおきを」

 

「・・・・・おお、では、そなたが東部都市群を変えたという紅の髪の少年か」

 

一人の初老が問いかけてきた。一誠はそちらに視線を向けると、

初老は歩み寄って来ては手を差し出してきた。

 

「私は現元首(ドージェ)エンツォ・サバティーニだ。

ラブロック商工都市連合の統べる者としてそなたと会って感謝の言葉を言いたかった。

―――ありがとう」

 

一誠は現元首(ドージェ)の手を取って握手を交わした。

 

「今現在の東部都市群は?」

 

「ああ、いまでも活気が溢れている。特にあの『ラブロック遊園地』の存在が大きい。

あの施設のおかげで外国からやってくる観光客たちの数も増えつつある」

 

「そうか、それはなにより」

 

「どうだい、またラブロックに戻ってはこないか?私たちは君を歓迎するぞ」

 

その言葉に一誠は微笑んだ。

 

「いずれ必ずラブロックに顔を出しましょう。俺の第二の故郷でもありますからね」

 

「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しい限りだ。楽しみしているぞ」

 

そい言い残し一誠から離れた。

 

「して、騎士王(パラディン)オズワルド殿よ。

その者が本当にあの機械の娯楽施設を創った少年というのかね?いささか、信じられんな」

 

「うむ。わしは確かに我が娘たちとこの目で見た。

一瞬の閃光の内であの『ラブロック遊園地二号』を創造してみせた」

 

「では、その証拠を我々に見せてはもらえないだろうか?

そこの者が本当に遊園地とやらを創ったのかを」

 

その言葉を待っていました!とばかりオズワルドは満面の笑みを浮かべた。

 

「イッセー、そなたの力を見せてくれ」

 

「ここで、あの遊園地を創造なんてできないぞ?」

 

「構わん。何でもいいから各国の首脳たちにそなたの力を見せてくれ」

 

「了解。禁手(バランス・ブレイカー)

 

カッ!と一誠の全身から発光した。光を纏う一誠の背中に六対十二枚の翼、頭上に金色の輪っか、

蒼と翡翠のオッドアイ、真紅の長髪が金色に変わった。

 

「な―――!?」

 

「その姿は・・・・・!」

 

各国の首脳たちが驚く最中、オズワルドの肩に手を置けば、オズワルドの全身が光に包まれる。

光が収まれば、オズワルドは―――二十代の男性へと若返った。

 

「ち、父上・・・・・!?」

 

「わ、若返ったの・・・・・!?」

 

一瞬の閃光が発したかと思えば、金色の錫杖が光と共に現れて一誠が掴むと、

とあるテーブルにコツンとぶつけた。

そしたら、テーブルが光に包まれ―――竜を模した機械の乗り物と変わった。

 

「で、これでいいか?」

 

「うむ!・・・・・で、わしが若返ったというのは?」

 

「ん」

 

自分では若返ったのか分からなかったらしく。

どこからともなく一誠が取り出したて鏡で現在のオズワルドの顔を見せると、

 

「おお!?若きわしの顔だ!本当に若返っておる!」

 

若返った自分に歓喜を露わにした。

 

「ついでだ」

 

ポンとラーズとシルヴィアの肩に触れると、オズワルドのように全身が光に包まれた。

身長が成長し、仮面越しだが二人は大人の女性へと変わっていく。

 

「お、お姉様が大人に・・・・・!」

 

「そう言うお前こそ、大人になっているではないか!?

いや、イッセー。これは一体どういうことだ?」

 

「俺が子供に戻った時があっただろう。その力を使ったまでだ」

 

「・・・・・そういえば、そんなことがあったわね」

 

ポンと手を叩き、思い出して納得したラーズ。

 

「さらには」

 

一誠の金色の髪から十本の真紅の角が出てきた。さらには一誠の皮膚に蛇のような鱗が

浮かびあがった。背中にドラゴンの翼、尻尾が生えた。

 

「っ・・・・・!もしや、ドラゴンだというのか・・・・・!?」

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

そう言った一誠が持つ金色の錫杖が輝きを放つ。光は魔力で、魔力は次第に鎧と具現化して

一誠の全身を覆う。龍を模した金色の全身鎧を身に包む姿で背後には、

金色の5匹の龍が口に『魔』『聖』『命』『万』『運』の文字がある珠を咥えていた。

手には変化していない金色の錫杖を持っている。

 

「おお・・・・・また違う鎧ではないか」

 

「まーな。で、これぐらいでいいか?」

 

「もう十分過ぎる。ありがとう」

 

「分かった。ああ、その若さでいられるのは一時間に設定してあるから」

 

五つの珠と鎧が高い音と共に消失した。シルヴィアとラーズの身体も見る見るうちに縮んで、

元の身長と若さに戻った。

各国の首脳たちは呆然と唖然となっている余所に一誠はシルヴィアとラーズの手を引いて

人混みの中へと引っ込んでいく。残るニコニコと若返ったオズワルドは。

 

「どうだ?あの者が我が国の誇る―――異世界から来た人型のドラゴンなのだ!」

 

一誠のことを自慢げに言い放ったのであった。

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