夏休み三日目。レベッカは起床した。
「ん・・・・・良く寝れたな」
時刻は5:30と時計の針が止まっていた。少し早く起きたなと脳裏で思い、ベッドから降りた。
窓を覆うカーテンを横にずらすと、
まだ日が昇っていない空。窓を開ければ快適な気温を肌で感じ、風も冷たくて気持ちい。
レベッカがいる部屋からは広大な緑の広場が見えていて、
その隅っこには花壇に植えつけられている花々が咲いているのがよく見える。
何故か、緑を囲むように円を描くように赤いコースが見える。
あれは一体何のためなのだろうかと疑問が浮かぶ。
「本当に、異世界に来たのだな」
まだ実感が湧いてこないが、これから嫌でも感じるだろう。
早く異世界の街に行きたいと心待ちしているレベッカの目に広場へ赴く人物の背後が留まった。
「おや・・・・・イッセーじゃないか」
ポニーテールに結んだ真紅の髪を揺らしながら運動しやすい服装で登場した。
様子を見ていると体の筋肉を解し始めて数分後、赤いコースに沿って走り始めた。
「なるほど・・・・・走るための専用の道だったのか」
納得したところでレベッカは思い付いた。部屋の模様替えをする際に衣服の欄もあった。
一誠のような服もあるかも知れないと。
壁に掛けられた四角い機械を手にして操作を始めると思った通り、あった。
未だに走り続けている一誠は懐かしげにランニングをしている。
すでに日課となっているトレーニングの一部をこなし、体が鈍らないための運動である。
「さて、久々に外でも行くとしようかな」
コースから外れて玄関に赴いた時だった。ガチャリと玄関の扉が開いて、一誠と出くわした。
「ん?レベッカ?」
「おはよう、イッセー」
真紅の髪をポニーテールに結んで赤いジャージ姿のレベッカ・ランドールが出てきた。
「どうした?それにその服装は・・・・・」
「うん、君が走っているところを見掛けてね。
私も一緒に走らせてもらおうと思ってこれを着てみたんだ」
「そうなんだ。それとジャージは俺とお揃いだな。
他に違う色のジャージや違う種類のジャージもあったんだと思うがな」
「この世界の服装の勝手が分からなくて、イッセーと同じので着てみたんだ」
「なるほどな。だが、似合っているぞ。着心地はどうだ?」
「問題ない。この服は悪くないな。寝間着にも使えそうだ」
微笑んで自分が来ているジャージに視線を落とす。
レベッカの肌は完全に隠されているが、女性特有の豊かな胸だけは自己主張している。
どこかのマダムが健康のためとこれから初めて走る感じだな、と一誠は思った。
「ああ、そのジャージで寝る奴もいるし、それは寝るための服でもあるからな。
人によって使い方は様々だし」
「そうか、この世界はそういった習慣もあるんだな。と、そろそろ走ろう」
「じゃあ、ついてこい。レベッカが最初に街中を歩く異世界の人間となるな」
先に一誠がゆっくりと走りだす。続いてレベッカも走り一誠の背中を追う。
「・・・・・」
走りながら周りを見渡す。白い外壁に囲まれた家が多い。自分の家も外壁に囲まれているが、
平民の家ではそんな外壁は建てられていない。
だが、この世界はどこを見ても外壁で覆われている。
中には植物で壁代わりにしている家も見つけた。
「外壁が多いな。皆、貴族の人たちなのか?」
レベッカの率直な疑問に一誠は笑い出した。
「いや、この世界じゃ当たり前なことなんだ。でも、壁がない家だってあるんだ。
中には木で出来た家もある。そっちの世界と大して変わらないって言っただろう?」
「それはそうだが、いざ改めて見れば不思議が一杯だ。
貴族でもないのに外壁がある家に住むなんて不思議だ」
「まあ、確かにそっちの世界に平民が住んでいる家には外壁はないよな。
不思議に思うのもしょうがないか」
二人は木漏れ通りに突き進むと商店街に辿り着いた。そこで足を止め、レベッカに振り向いた。
「そう言えば、この町の名前を言っていなかったな」
「名前か?」
「ああ、光陽町だ」
「光陽町・・・・・」
「そうだ。そして、ようこそ―――異世界へ」
―――○♢○―――
ランニングを終えたら、部屋のシャワー室で汗を流し終え、
着替えるとリビングキッチンに赴く。
「おはよう」
「「おはようございます」」
リーラやグレイフィア、眼鏡を掛けた銀髪の女性が返事をした。
「朝のランニングはいかがでしたか?」
「レベッカと走ったが、楽しかった」
「そうですか。それはなによりです」
「んで、今日の日程は?」
そう訊ねると、リーラは黒革の手帳を開いた。
「午前は特にございませんが、午後ですと冥界、天界のトップとの会議がございます。
場所は冥界です」
「その王ならこの家にいるんだけどな・・・・・」
苦笑いする。席に座れば目の前に朝食のメニューが置かれた。
「一誠様。源始龍のところには?」
「今日中に行く予定だ」
「これで旅は終わりになるでしょうか?」
その言葉に一誠は首を横に降る。
「まだだと思う。半分しか達成していないし、俺もこれで終わりにするつもりはない」
「そうですか」
「悪いな。もうしばらく付き合ってもらうよ」
「一誠様のお側は常に私や他の皆がいることをお忘れずに」
暗に、どこまでもついていくとリーラは述べた。一誠その事に理解し、
リーラとグレイフィアに近づいてはの頭を撫でる。
「リーラもグレイフィア、そしてシンシアもよろしくな」
「「「はい」」」
それからしばらくして、アッシュ・ブレイク達がリビングキッチンに現れた。
一誠の姿はない。一誠抜きの朝食が始まった。
「ほう、見たこともない食材だ。これはなんと言う?」
ヴェロニカが朝食の食材の詳細を求めていると、
粘りがある豆に苦戦しているシルヴィアや味噌汁の味に和むランサー、
異世界の食事に感嘆するアッシュ・ブレイク達。
一部「お肉はでないの?」と不満げに漏らす者がいた。レベッカ達のパルは、
リーラ特製の餌に無我夢中で頬張っていた。その離れた場所には、一匹の狼がいた。
「あの、あの狼は?」
「危害を加えませんのでご安心ください」
「は、はぁ・・・・・」
はぐらかされた感じと覚えるも、そう言われては追求するのは失礼だろうと料理を食べる。
「ところで、イッセーはどうしているのだ?朝食に
顔を出さないとは・・・・・。まさか、まだ眠っているのか?」
シルヴィアの問いかけにリーラは首を横に振った。
「この時間帯では、トレーニングをする日課なのです」
「トレーニング?こんな朝早く?」
「はい、そうです。時間になればお姿をお見せするのでそれまでお待ちください」
「それはいつ頃ですか?」
「三十分後です。それまで自室で着替える準備を整えてください、」
と、リーラは答えた。シルヴィア達は日課ならしょうがないと納得しつつ、
その通りに行動をするのだった。
―――三十分後―――
「だーかーらー、鎧を着るなって言っただろうが」
「・・・・・寝間着以外、これしか着る物はないんだが」
「リーラ、グレイフィア。問答無用でヴェロニカに合う服を着させてくれ」
「「かしこまりました」」
「なっ!?」
有無を言わさず、ヴェロニカは連行された。シルヴィアは唖然と漏らした。
「ほ、本当に問答無用で・・・・・」
「平民だからなー。なにされても外交問題にはならないし?」
そう言う一誠に、ラーズが笑みを浮かべた。
「・・・・・なるほど、ここではやりたい放題なのね?」
「ラーズ・・・・・余計なことを考えてくれるなよ」
しばらくして、清楚な青いワンピースを見に包んだヴェロニカが現れた。
「お前・・・・・元の世界に戻ったら覚えていろよ・・・・・」
「なんだ、お前はあの鎧で町中を歩いて『鎧を着込んだ変な女がいる』と
周囲にそう思われたいのか?ここはアンサリヴァン市じゃないんだぞ?」
「うぐ・・・・・」
言い返す言葉もないとヴェロニカはただ睨むだけしかできなかった。
そんな睨みに一誠は平然と受け止め、ヴェロニカに服装を見て称賛した。
「それに、今のお前は綺麗じゃないか。青いワンピース、似合っているぞ」
「・・・・・お世辞を言っても嬉しくない。それに、この服を着ていると落ち着かん。
そ、その上・・・・・色んなところがスースーして・・・・・」
「文句いわない。お前にあった服をこれから買いに行くつもりなんだ」
「そ、そうか・・・・・なら、早く頼む。このままいたら私が私で無くなりそうだ・・・・・」
「と、あんな事を言っているヴェロニカのお兄さん。あなたはどう思う?」
一誠は意地の悪い笑みを浮かべジュリアスに話を振ると、
ジュリアスも笑みを浮かべ口を開いた。
「そうだね。今日一日その服でいてもらいたいものだ。
小さい時以来見ていないヴェロニカの私服姿だからね。
兄として、たまには女らしく過ごしてほしいと思う」
「なっ、貴様は何を言っておるのだ!私はロートレアモン騎士国第一王女―――」
「この世界じゃお前は王女じゃなく平民だけど?ねえ、ヴェロニカさん?」
「ぐっ・・・・・!」
平民という言葉の槍が突き刺さり、ヴェロニカは口を噤んだ。
「理解してくれたところで、早速外に行こうか」
一誠は玄関の扉を開け放ちながら促した。
―――○♢○―――
光陽町―――。一足早くレベッカが見た光景が朝とは違い、賑やかになっていた。
「・・・・・異世界の町。悪くないわ・・・・・」
「綺麗な場所だな。これが異世界の町か・・・・・」
ラーズとシルヴィアが感嘆したと思えば、
「「異世界に来たぁああああああああああああ!」」
と、意味不明なことをしだした。
「・・・・・なにしてんの?」
一誠が怪訝に突っ込んだ。
「はっ!?」
「何て言うか、こうしないといけないような気がして・・・・・」
シルヴィアは自分がした言動に気付き、一気に顔を真っ赤に染めた。
ラーズは小首を傾げながら「どうしてなのかしら?」と疑問を浮かべていた。
「まあ、ずっと楽しみにしていた異世界だ。ちょっとぐらいはしゃぎたくなるものだろう」
「んー、それもそうか」
レベッカの言葉に納得した。一誠は通り過ぎる店一つ一つアッシュ達に説明し、
店の中に入って、さらに説明したりと案内をしていく。
それから現在、一誠達はゲームセンターにいた。
「ここ、煩いわね・・・・・」
「皆、なにをしているのかしら?機械と向き合って・・・・・」
「遊んでいるんだ。所謂、ゲームだよ」
「ゲーム?」
「そっ、対戦したり一人で遊んだり、そんなことできるゲームだ。
金を払ってゲームをする施設なんだよ」
どんどん進んでいく一誠にアッシュ達は追う。すると、大きなボックスの前に立ち止まった。
「これをしてみようか」
「なによ、これ」
「プリクラといって。写真を撮るための機械だ。試しにアッシュとエーコ、お前らが最初にやれ」
そう言って強引に二人をボックスの中に押し入れた。
一誠も入って、コインを入れて次々と操作をすると、
「この黒い部分に目を向けていろ」
「こうか・・・・・?」
「これが何だって言うのよ・・・・・?」
ジーと、凝視する二人を余所に一誠はボックスから抜け出た瞬間。
メロディーが鳴り出した。その音に二人はビックリしたが、
外から出て来いと一誠の声が聞こえ、ボックスから出ると、満面の笑みの一誠がいた。
「ほら、こんな感じだ」
「「ん?」」
アッシュとエーコは突き付けられた紙を見つめる。その紙には二人が顔を近づけ、
何かを見ているような様子が映っていた。―――なにやら、その周囲に落書きがされている。
「これがプリクラってやつなのか?」
「ああ、そんでこれは色んな場所に張れる粘着性の紙でもある。
ドアだったり窓だったり、本の表紙だったりな」
「へぇ・・・・・ところで、この見慣れない文字はなんて書いたんだ?」
その質問を待ったかのように一誠は笑みを深めた。
「『アッシュ♡エーコ 愛の絆で結ばれている騎士と姫』―――だ」
次の瞬間。アッシュとエーコが顔を真っ赤に染めたと思えば、
エーコが一誠が持っているプリクラを奪おうとする。
「よこしなさい!それ、よこしなさい!」
「フハハハハ!だが、断わる!というか、騎士と姫って本当の事なんだからいいじゃないか」
「うるさいわよ!」
どうにか奪おうとするも、一誠が空間を歪ませ、
開けた穴の中に仕舞ってしまい、奪うことができなくなった。
「さーて、次は・・・・・ロートレアモン兄妹。行ってみようか」
金色の双眸をヴェロニカ達に向けたが、反応は様々だった。
「いや、遠慮する」
「わ、私もだ!」
「様子を見たいですわ」
「えー、何だか面白そうじゃないの」
「兄妹の思い出づくりがこんな形できるとはね。ついてきて正解だった」
否定と肯定が真っ二つに別れた。ミラベルはもう少し様子を見たいと願い出た。
だがしかし、相手は一誠だ。
「問答無用だ」
否定派のヴェロニカとシルヴィア、ミラベルを強引にボックスの中に入れれば
ラーズとジュリアスも続いて入り、
金色の翼で逃げ出さないようにヴェロニカとシルヴィアを拘束し、ラーズとジュリアス、
好奇心が湧いたミラベルと一緒にあれこれと設定をしていく。
「よし、これでOK。この黒い部分を見てくれよ。―――ああ、目を瞑ったら、
変な顔になるからな?そっぽ向いても顔を逸らしても変な顔になるから気を付けてな」
女王として変な顔をする事はできない。一誠は釘を刺してボックスから出た。
「仮面は外しておくか。ここでは平民だしね」
「体の大きさだとお兄様とヴェロニカお姉様が後ろで、ミラベルお姉様が真ん中、
私とシルヴィアお姉様が下って感じに並びましょう」
「「どうして・・・・・こうなった・・・・・」」
「二人とも・・・・・いつまでそうしているの?変な顔の写真が残ってしまうわよ?」
ミラベルの指摘に、一度深い溜息を吐いて、威厳に満ちた態度で前を見据えた。
そして、メロディーが鳴り出した。
「出ていいぞー」
と、一誠の声が聞こえた。五人はボックスから出ると、一誠が紙を見せてくれた。
『ロートレアモン兄妹 異世界に参上!』と落書きされた五人が写っている紙を。
「ふむ・・・・・中々綺麗な絵画だ。少々小さいのが少し残念だけど」
「よかった。変な顔ではないぞ」
「しかし、奇異なものだな。一人いないが五人揃って写るなど滅多にないことだろう」
「本当、カサンドラ姉様もいれば
正真正銘『ロートレアモン兄妹 異世界に参上!』となるのにね」
「ですが、良い思い出となりました」
反応は良好であった。一誠はつぎは・・・・・と、視線を配った時だった。
「イッセー」
「ん?」
「今度は私とあなたと一緒に写りましょう」
ウルスラが一誠の袖を摘まみながら提案した。すると、何人かが「はっ!」と気付いた。
共に写真が撮れるならば一誠と二人っきりの写真ができるんじゃないかと。
一誠とウルスラを見れば、
「ああ、いいぞ」
あっさりと要求に応じた一誠がボックスの中へウルスラと共にいなくなった。―――数十秒後。
ボックスの溝から何かがでてきた。
ランサーが誰よりも早く溝から出てきた物を取って確認した。
「おー、綺麗に写ってんじゃん」
紙には『最強の竜騎士コンビ』と落書きされ、
プリクラの機能によって龍を模した甲冑を着込んでいた二人が佇んでいた。
ウルスラの肩に腕を回して抱き寄せる一誠に、
一誠に抱き寄せられ頬に朱を散らしているウルスラ。回りがランサーが手にしている
プリクラを見ようと顔を近づけた途端にボックスから一誠とウルスラが出てきた。
「おっ、出てきたな。ほら」
ランサーがプリクラを一誠に手渡した。一誠とウルスラが自分達のプリクラを見て、
満足そうに笑んだり頷いた。
「ん、良い出来だ。さて、次は―――ルッカとキーラだな。おいで」
ウルスラにプリクラを渡せして二人を手招くが、キーラとルッカはなにやら
アイコンタクトをしていた。数秒後、頷き合い、ボックスに入ろうとした瞬間。
「ん?」
元々中に入ろうとしていた一誠の両腕がルッカとキーラの手に捕まって引きずり込まれた。
数十秒が経っても一誠は出て来なかった。代わりにプリクラが出てきた。
ランサーはプリクラを手にすると、
微笑ましく笑った。一誠の両腕に抱きつくルッカとキーラに若干困惑の面持ちの
一誠が写っていた。『仲良しエクブラッド人』と落書きされたプリクラができていた。
「俺まで一緒に写って良いのか?」
「いいよ」
「うん、いいんだ」
手渡されたプリクラを一誠はルッカとキーラに受け渡した。
「さてと、残りはレベッカとランサー、マキャベリとベアトリーチェ、アンジェラだけだな」
「では、このレベッカ姐さんが先にしよう」
自分から名乗り出たレベッカが一誠の腕を掴んでボックスの中へ。
「もう、あいつとの写真撮影になっているじゃん」
ランサーは思った事を漏らした。数十秒後。レベッカと一誠が出て来た。
「よし、マキャ―――」
ガシッ!
「言われなくても分かっておるわ」
「・・・・・・」
ズルズルと、問答無用でマキャベリにボックスの中へ引きずり込まれた一誠であった。
―――○♢○―――
小一時間掛けてようやくゲームセンターから出てきた一誠達。
「ねえ、お腹が空いたんだけど」
「一日五食の竜族はすぐ腹が減るな。まあ、休憩の兼ねて店の中に行くか」
「イッセーのお気に入りの店とかあるのか?」
「あるさ、当然だろう?」
そう言って一誠が足を運んだ。運営している店の名前は『フローラ』。
「ここは喫茶店だ。デザートもあるしエーコの好物の甘いものがある」
「クレープを所望するわ!」
「はいはい、分かってるよ。他の皆も何か食べたかったら俺に言ってくれ」
フローラの扉を開け放つと、賑やかな店だった。男性客よりも女性客が多く、
わいわいと賑わっていた。
「いらっしゃいませー。あら、イッセーさんじゃないですか」
「久し振り、カレハ」
メイド服のような服装を身に包んで、
ウェーブが掛かった金色の髪に緑の瞳の女性が出迎えてくれた。
「家にいないと思ったけど、実家に帰っていたんだな?」
「ええ、ツボミちゃんの様子を見に行ってましたので。
ところで、イッセーさんの後ろにいる方々は?」
「ああ、俺の友達だ。取り敢えず、席に案内してくれるか?」
「はい、かしこまりましたわ。別れてお座りになってもらいますけど、いいですか?」
カレハという女性の問いかけに一誠は頷いた。
「では、こちらへ」
一誠たちを店内へ案内する。Uの形した大勢で座る座席に案内されると、
三つの席にロートレアモン兄妹、グレン、ウルスラ、コゼット、ユニス、アッシュ、
エーコ、レベッカ、ルッカ、キーラ、ランサー、
マキャベリ、ベアトリーチェ、アンジェラを座らせた。一誠はランサーに話しかけた。
「ランサー、日本語読めるだろう?」
「ああ、そうだが?」
「なら、そっちの方を頼む。アッシュ達はこの世界の文字を読むことができないからな」
一誠の意図にランサーは気付いた。そうだ。転生者であるランサーは日本語を書け、
日本語を発する事は当然できる。対してアッシュ達は異世界人だ。
どうやら言葉を交わせれるようだが、文字の読み書きはできないのが分かった。
アッシュ達と座るランサーだけが通訳できる存在なのだ。一誠は金色の軍杖を歪ませた空間から
取り出して呪文を唱えだすと、分身の一誠が現れた。分身の一誠がアンジェラ達の方に向かい、
「俺はヴェロニカ達と座る」
「待て、こっちは既に満員だぞ?お前が座れるスペースは・・・・・」
「あるんだよなーこれが」
ニヤリと笑みを浮かべた一誠、
それに分身の一誠が―――光に包まれ見る見るうちに小さくなって子供となった。
「シルヴィア、位置的にそっちがいいからお前の膝に座って良いか?」
「私の膝だと・・・・・?」
「ん、そうだ」
宙に浮いてシルヴィアの真上に移動したら、シルヴィアの膝に降りて座った。
一方、もう一人の一誠はアンジェラの膝に座っている。
「それじゃ、これを見て選んでくれ。内容を知りたかったら教えるから」
フローラのメニューを開きながら一誠はヴェロニカ達に問いかけた。
「・・・・・」
自分の膝に座る一誠を見下ろすシルヴィア。
本来ならば王女である自分の膝に断わりなく座る者に罰を与えるところなのだが、
今の子供の一誠に叱咤する事も、窘めることもできないでいた。
その上、周りに人がいるしこの世界は異世界だ。
自分の言動に周りは訝しむだろう。それに一誠の言うことも一理ある。
この世界の文字は分からない。料理の絵を見れば、なんとなく分かるが名前が分からないのだ。
現に、シルヴィア以外のラーズ達が一誠にあれこれと聞いている。他の席にも向ければ、
レベッカ達も一誠や何故かランサーまでもがすらすらと述べていた。
「シルヴィア。お前は何を食べたい?」
と、考え事していたシルヴィアに一誠が話しかけてきた。
首を後ろに捻って、シルヴィアを見る一誠にシルヴィアは慌てて言った。
何時の間にか皆がメニューを決まっていたようで、
周りはシルヴィアに視線を向けていたからだ。
「お、お前だ!」
『・・・・・』
シルヴィアが注文したのは幼き一誠。ヴェロニカ達はなんとも言えない面持ちでシルヴィアに
視線を送った。
「・・・・・お姉様がまさかそんな趣味があったなんてね」
「はっ!?ち、違うぞ!今のは慌てて言い間違えただけだ!」
「大丈夫、人の趣味はそれぞれで様々だから。
私はどんなお姉様でも温かい眼差しで見つめるわ」
ラーズは生温かい眼差しを本当にシルヴィアへ向けた。
「・・・・・シルヴィアは幼い子供が好きなのか。いや、それは一種の愛情表現で、
変な意味ではないのだろう・・・・・」
「見ない間に、随分と変な風に育ったようね」
「兄として・・・・・複雑な気分だよ」
ヴェロニカ、ミラベル、ジュリアスがシルヴィアを見ながら発した。対してシルヴィアは勢いよく
腰を上げて叫んだ。
「私の趣味はそんなものではなあああああああああああああああああああああああああい!」
―――○♢○―――
「すまん・・・・・迷惑を掛けた」
「シルヴィアの悪い点だな。すぐに怒ることを直しておけ」
「善処する・・・・・」
フローラから出た一誠達。終始落ち込むシルヴィアは、申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べた。
「それじゃ、デパートでも行くかな」
「デパート?」
「色な種類の品が一ヵ所にある施設の事だ。その中に服もあるし、ヴェロニカの服を買わないと」
「動きやすい服で頼むぞ」
釘を刺すヴェロニカ。一誠は頷いて一行をデパートへと案内をするため行動を開始した。
―――光陽デパート―――
大規模な施設で広大な広さを有する。全部で五階建てで一階は食品コーナー、フードショップ、
ペットショップ、家電品、木材、道具。二階は服、本屋、私生活用品、雑貨、遊具、
三階は宝石店、装飾品、魔法石、錬金術に関する品々。
四階は喫茶店、フードショップ、ゲームセンター、
五階は本屋、武器、防具、魔法石と設けられている。
「と、このデパートの中の事は説明したが、俺達が行くのは二階だ」
「はい、先生!」
「なんだね、ランサー君」
「俺、五階に行ってみたいと思います!」
ランサーがきびきびと言い放った。五階の施設は主に戦闘用の品が売買されている場所だ。
低価な物があれば高価な物もある。
「私もこの世界の武器を見てみたいな」
「魔法石って石に興味が惹かれるわ」
「防具とは、鎧の事でもあるのだろう?なら、服を選び終えたら五階に向かおう」
「二つも本屋があるみたいだけれど、種類が違うのかしら?」
ロートレアモン四姉妹が五階に興味が惹かれている様子だった。だが、一誠は首を横に振った。
「18歳未満の方は禁止だ」
「えー!?そんな規定があんのかよ!?」
「商品を購入する年齢だ。見るだけなら問題ないぞ」
「なんだ、そう言う事かよ」
ランサーは安堵で胸を撫で下ろす。
「じゃあ、僕とグレン、ヴェロニカ、ミラベル、ウルスラは購入して問題ないね」
「え?ミラベルって18歳?」
「そうですが?」
ミラベルの年齢を知らない一誠にとって意外な年齢だった。
てっきり、もう少し上の方だと思っていたが、予想していた年齢より若かった。
ミラベルの歳を知った一誠は二階へ一行を引き連れた。足場が上へ移動する階段にアッシュ達は
戸惑ったが、好奇心旺盛なミラベルが先に乗ったことで次々と乗っていく。
「面白い機械だわ。動く足場で移動するなんて考えもしなかった」
「あの世界じゃない技術だしな」
「これなら、重い荷物でも運べそうね」
「おっ、着眼点が良いな。そういう機械も存在しているぞ」
「そうなの?じゃあ―――」
一誠と若干興奮気味のミラベルが話し合う最中、二階のルームに辿りつき、一行を引き連れて服の
コーナーへと案内した。男性用と女性用の服と下着が分かれて販売している場所へと。
「男の俺達が入っていけない花園の場所なんだが、
下着コーナまで行かなければギリギリグレーゾーンだろう」
「じゃあ、こなければいいんじゃないのよ」
「ここは広いんだ。勝手に動かれて迷子になったら面倒なんだよ」
一誠は人差し指、中指、薬指の三本の指を立てた。
「三人一組で行動してくれ。俺とヴェロニカ、あと一人だ」
「私が一緒になります」
ウルスラが、誰よりも早く挙手した。一誠は断る理由もないと頷き、同行を了承した。
一誠とヴェロニカ、ウルスラは行動を始め、
早速一誠はヴェロニカの動きやすい服を選び始めた。
「ヴェロニカの性格上、これがいいだろうな」
「私の性格で選ぶな」
「だって、女性らしい言動一つもしないじゃないか」
グサッ!
心に鋭い槍が突き刺さった。一誠の言葉に口を噤んで沈黙していると、
「イッセー、私も実は着る服が無いので一緒に良いでしょうか?」
「ん?そうか、分かった。もうちょい待ってくれ」
ウルスラも服を選んでくれと暗に述べた。
一誠は時間も掛けずにヴェロニカの服を籠一杯になるまで選び終えた。
「ん、終わったぞ」
「・・・・・適当に選んだわけではあるまいな?」
十分も経っていない内に選び終えた一誠に訝しむヴェロニカ。
「失礼な。ヴェロニカの美貌を損なわせるような服を選んでいないぞ。
次は下着だけど、当然二人で選んでくれ。あそこに下着がある場所が記されているから」
踵返して二人から離れようとした時だった。
「・・・・・イッセーが選んでくれないのですか?」
「おい、ウルスラさん。俺を変態にさせたいのか?俺は断固拒否する」
ウルスラの言葉に即答で拒否した。だが、そうは問屋がおろさなかった。
背中を向ける一誠の襟をヴェロニカが素早く掴んだ。
「・・・・・おい」
「私の服を選んでくれるのだろう?下着も服の一種だ。―――最後まで選んでもらおうか」
「ちょっ!ふざけんな!?そんなこと誰がするか!」
「イッセーが選んだ下着なら・・・・・身に付けてもいい」
ポッと頬に朱を染めたウルスラ。一誠はヴェロニカの命によって
ウルスラまでもが下着コーナーへと連れて行かれた。
「なっ、イッセー!?」
「・・・・・シルヴィア、お前からも何か言ってくれ」
強制連行された一誠。下着コーナーにはすでにシルヴィア、ラーズ、ミラベルがいた。
疲れた表情を浮かべる一誠にラーズは「ああ、なるほど」と納得した面持ちで頷く。
「ヴェロニカお姉様。ナイスです」
「ふっ、であろう?」
満足気に不敵に言うヴェロニカに一誠は突っ込まずにはいられなかった。
「であろうじゃない!くそ、服を脱いででも―――!」
「させません」
と、ウルスラが真正面から一誠に抱きついた。背中に腕を回してガッチリと拘束した。
袖が短い夏服用のシャツを着ている一誠の胸に、ウルスラの豊かな双丘が形を崩して潰れる。
その弾力と温もりがダイレクトに伝わり、一誠は思い通りに動く事は出来なかった。
「・・・・・離れてくれないか?」
「すいません、ヴェロニカ殿下のご命令ですので」
「俺に抱きつく命令はしていないけど?」
「拘束しているのです」
「・・・・・柔らかい拘束だな」
結局、一誠は渋々と全身の力を抜いた。
「さて、イッセーよ。私の下着を選んでもらおうじゃないか?」
どこか楽しげにヴェロニカは笑った。一誠は溜息を吐いて要望通り、
ヴェロニカの下着を選んだのであった。
「ついでに、私の下着も選んでくれるかしら?」
ラーズの下着選びをする羽目となってだ。
―――○♢○―――
「―――で、ここが五階のルームだ」
『おおお・・・・・』
ヴェロニカの服を購入し終えて直ぐ、一誠は五階へとアッシュ達を案内した。
五階は重々しく物々しい雰囲気に包まれている。大小の武器が立てられていたり、
ケースの中に保管されていたり、壁に装飾が凝った盾や展示されている鎧があった。
「これは凄い・・・・・」
「まるで、芸術館にいるような感じだわ」
「うむ・・・・・」
唖然と驚嘆する。そこへ、小さな子供が駆け寄ってきた。
「「イッセー!」」
「おっ、エイリンとユーミル」
「なぬっ!?」
ランサーが驚く最中、小さな金髪の子供の二人が一誠に抱きついた。
「・・・・・イッセー、まさかと思うがその子供はお前の子供なのか?」
目を細めてシルヴィアは言った。外見からして五歳にも見える幼女だ。
「いや、彼女達は子供じゃないぞ。小さいけど立派な大人なんだ」
「なん・・・・・だと・・・・・!?」
その体で既に大人・・・・・とても信じられなかった。一誠は説明と口を開いた。
「二人はドワーフという種族でエルフみたいに長命種の存在だ。
小さい体なのはドワーフの特徴だ。が、力が強いぞ」
「私達と同じ?」
「ああ、それとこの階を仕切っているのはこの二人だ。この中に販売しているものは全部、
この二人が作った商品でもあるぞ」
「な、なんだと!?」
シルヴィアの驚愕はアッシュ達の気持でもあった。
これらすべて、この小さな二人が作った物だと知れば、誰だって驚くに決まっている。
「のう、イッセー。この者達は誰なのじゃ?」
「ああ、俺が今いる異世界から連れてきた人間たちだ」
「ほぉー、異世界の人間たちなのかー。外見は人間と変わらないのぉー」
「であろう?」
まじまじとアッシュ達を見つめるドワーフのエイリンとユーミル。
「マキャベリ、ラブロックの商品もこのデパートで販売しているんだ。結構評価が良いぞ」
「ほう、そうであったか。それはなによりだ」
一誠とマキャベリがそんなやりとりをしていると、
ヴェロニカは何かに釣られるように展示されている鎧に近づいた。蒼と白銀が基調とした鎧だ。
互いに向き合う竜の顔を象っている胸当、その竜の翼を模した肩当、
蒼一色のマントを垂らしている背当、小さな翼が生えている鉄靴、
それ以外は至るところに紋章のような蒼いラインが刻まれている。
「・・・・・」
なんと、美しい鎧なのか。と、ヴェロニカは心から惹かれた。今にでも空へ飛びだしそうな鎧だ。
触れると鎧特有の冷たさが手に伝わる。この鎧もあのドワーフという種族の者達が創った―――。
「へぇ、その鎧が気に入ったのか?それ、俺が創った鎧なんだよ」
「・・・・・これはお前が?」
不意に背後から話しかけてきた一誠にヴェロニカは問うた。
「ん、エイリンとユーミルと交じって創ったんだ。所謂魔法の鎧だ。名は―――蒼龍の鎧。纏えば、
空を自由に飛び、身に纏う者を闇から守護してくれる。俺が心を籠めた初めて作った鎧だ」
ヴェロニカと蒼龍の鎧と交互に見て、一誠は頷いた。
「未だに売れていないようだし、このままじゃ宝の持ち腐れとなるかもしれないな。
お前、狙われている身で、何時も鎧を纏うんだろう?
この鎧を着込めば、銃弾だろうがドラゴンの
―――ヴェロニカにプレゼントしよう」
朗らかに一誠は言った。だが、値段を見れば・・・・・0が六つもある。
数字の意味は何とか理解できた。
元の世界の通貨で言い表せば、数十万エルクと高額の値段であった。
「いいのか?お前が創ったとはいえ、勝手にそんなことをして」
「後で金を払うさ。この世界にいる間にこれをヴェロニカにプレゼントする」
「・・・・・」
この鎧が手に入る。ヴェロニカは一誠に感謝の言葉を述べた。
「大事に使わせてもらう」
「おう、有意義に使ってくれ」
と、そこへ一誠が呼ばれた。一誠はヴェロニカから離れ、
「どうした?」
と、訊ねた―――。
―――○♢○―――
光陽町を案内して数時間が経過した。時刻は夜となり、
一誠は正装に包んでリーラと玄関に佇んでいた。
しばらくして左右から中年男性の二人が女性やメイドを引き連れて現れた。
それぞれ光と闇と思わせる装飾が凝った鎧や服を身に包んで。
「やあ、お待たせ」
「それほど待っていないよ。何時も通りの時間だ」
「一誠殿が王となって初めての会合だ。そう緊張すんなよ?」
「いつもの二人がいるからそれほど緊張しないと思うよ。
それに、これから顔を合わせる人達は顔見知りばかりだ」
「はははっ!ちげぇね!―――さて、そろそろ行こうか?」
一誠にそう問う。一誠は頷き、魔方陣を展開した時だった。
「イッセー?」
玄関ホールにシルヴィアとラーズが現れた。
「なにをしようとしているのだ?」
「ちょっと、出かけていく。王同士の会談ってやつだ」
そこで、一誠は何かを思いついた。指をクイッと動かすと、
自分の意思と無関係で光に包まれている一誠に近づいた。
「―――お前達も連れて行こうか。異世界の王の会談、見せてやるよ」
一誠がそう言った直後、シルヴィアとラーズの視界は真っ白に染まり、目の前が急に見えなくなった。
「目を開けて良いぞ」
そう言われ、二人は目を開けた。―――真っ先に目にしたのは紫色の空だった。
足元に視線を落とせば灰色の地面、コンクリートでできた足場だった。
眼前には壮大に聳え立つ巨大な建物。
「こ、ここは・・・・・!?」
「俺達がいた異世界とはまた違う異世界、地獄の底こと冥界だ」
「じ、地獄・・・・・?冥界・・・・・?」
さすがのラーズも動揺の色を隠せなかった。一誠が「俺の後についてこい」と促され、
シルヴィアとラーズはどこかへ行こうとする一誠の背後を追う。建物の中に入ってすぐ、
壁際に大勢の人が立ち並んでいた。途轍もない威圧感を放ち、
シルヴィアとラーズでも分かるほど警戒心を抱いている。
「うっ・・・・・」
この手の警備には見慣れているが、明らかにレベルが違い過ぎている。
竜で警備されるより明らかに。
シルヴィアは気を引き締めて一誠の後に続く。そうしないと心が負けてしまいそうだからだ。
「神王さま、魔王さま、人王さま、お待ちしておりました」
執事服を身に包んだ厳格そうな人が出迎えられた。その背後には威圧感を放っている扉。
この扉は一介の者には触れてはならないと思わせるほどだった。
シルヴィアは思わずごくりと唾を飲んで緊張の面持ちとなった。
ラーズも無言で貫いているも、シルヴィアの袖を摘まんでいた。
「・・・・・そちらのお嬢さん方は?」
「ああ、俺の客だ。今回の会議に必要な重要な客だ」
一誠がそういう。今回の会議とは一体何だろうかと、思うが執事はそれ以上追及をせず、
扉を静かに開け放った。一誠たちが扉の向こうに入るとシルヴィアたちも後を追う。
「―――失礼のないようにお願いしますぞ」
ゾッ!
入る際に執事にどこまでも冷たい声音で窘められ、思わず体を震わせた。
その時は既に扉を閉められていた。
シルヴィアはどうして一誠は私たちまでも連れてきたのか疑問で一杯だった。
だが、当の一誠は―――。
「お久しぶり!イッセーくん!」
黒髪のツインテールの少女に抱きつかれていた。一誠もその少女を抱き締め、
苦笑いを浮かべている。
「久し振り、セラフォルー」
どうやら知り合いのようだった。それなら少しだけ安心できた。改めて室内を見渡せば、
天井に豪華絢爛なシャンデリア。机は丸く装飾が凝っている。
壁際には見知らぬ男女が数人ほど静かに佇んでいた。さらに机には数人の男女が座っていた。
「おや、そちらのお嬢さん方は?」
シルヴィアとラーズに真紅の長髪の青年が気付いた。どこかで見覚えのある顔だ。
一誠はセラフォルーの頭を撫でながら言った。
「俺が今いる異世界の人間で王族だ」
その瞬間、好奇な視線を一身に浴びた。
「ほう、異世界の王族か。ならば、異世界の事を詳しく聞けれるというわけか」
「その通り。そう思って二人を連れて来たんだ。全部言い切れないだろうけど、
質問に応えてくれるだろう」
「へぇ、異世界の人間ねぇー。可愛い子たちだわ」
「だろう?まっ、席に着こう。会議が終わってからいくらでも質問してくれ」
一誠の促しに一誠も含め、面々は座りだした。
シルヴィアとラーズは後に用意された椅子に腰を下ろした。
それから静かにただただ一誠たち王族の会談を耳に傾けるだけだった。
「あれから一年経つが、まだまだ安心はできないですね」
「あの事件以来に刺激されたのか、様々な神話体系の奴らが不穏な動きを見せるからなぁ」
「神と神の戦争はとても危険だ。世界の覇権を狙う神話体系も表に出てくるはずだ。用心しよう」
「そのことについて、同盟や協力関係の神話体系と連絡し合ってさらに―――」
飛び交うが、とても重大な会議であると改めて認知すること一時間が経っただろうか、
「今回の会議はここまでにしよう。イッセーくん、お疲れ様」
「お互い様だよ。王となって二年目の皆からしては新米の王だし」
「でもでも、ソーナちゃんとの触れ合いが極端に減っちゃったんだよぉー」
「面倒臭いなぁ・・・・・前魔王さまに問答無用で魔王になれって言われたんだもん。
働いたら負けなのに・・・・・」
「だが、魔王になってさらにやり甲斐があることができるようになったのもまた事実だ。
―――さて、今度はそちらのお嬢さん方から聞こうじゃないか。異世界の王族として、
異世界は一体どんな場所なのか、是非ともお聞かせ願おう」
「「―――――っ!」」
怪しげな雰囲気を漂わせる男性の言葉にシルヴィアとラーズは緊張の面持ちとなった。
「その前に、自己紹介をして欲しいかな。お互い分からないままじゃ、
緊張しっぱなしになるだろう」
「じゃあ、私からするね!」
そう言って黒髪のツインテールの少女が立ち上がった。
「初めまして☆私は五大魔王の一人、セラフォルー・レヴィアタン。
レヴィアたん☆って可愛く言ってね?」
続いて真紅の髪の男性が名乗った。
「同じく五大魔王の一人、サーゼクス・ルシファーだ」
サーゼクス・ルシファーと名乗った男性の後に怪しげな男性が名乗り出た。
「俺は五大魔王の一人、アジュカ・ベルゼブブ。よろしくね」
最後は面倒くさそうに机に突っ伏している男性だった。
「僕はファルビウム・アスモデウスだよー。まあ、よろしく」
以下、四人の男女が自己紹介をした。一誠は残りの二人に一瞥して言った。
「神王ユーストマと魔王フォーベシイは家で自己紹介をしたから、言わずとも分かるよな?」
「あ、ああ・・・・・悪魔を束ねる王と、神に仕え、天使を束ねる王・・・・・」
「その通りだ。気兼ねなく質問されたら答えてくれ。皆、二人に興味深々のようだしな」
一誠の言う通り、周りから視線を感じる。
―――それからシルヴィアとラーズが一誠と共に家へ戻った時は一時間が経過した。
その際、いなくなった一誠達にヴェロニカ達が追求するのは必然的だった。
―――○♢○―――
その日の夜。空間が縦に裂けた。避け目から一誠が潜って来て口を開いた。
「遅くなった」
その言葉に椅子に座っていた女性が答えた。
「そろそろくる頃だと思いましたよ。兵藤一誠」
「お見通しってことか」
一誠は肩を竦め、女性に近づく。女性も椅子から立ち上がって一誠に近づくと、
一誠の首に腕を回しだした。
「・・・・・」
そのまま女性は抱きついた状態で瞑目した。女性の温もりを感じつつ女性の反応を待っていれば、
「魂の半分が、異世界に残っているのですね」
「まだ原始龍の願いは半分しか達成していない。
だから、この夏季休暇が終わったら異世界に戻ろうと思っている。
完全に原始龍の願いを叶えるためにも」
原始龍に一誠はそう言った。原始龍は一誠から離れ顔を覗く。
「分かりました。引き続きお願いします」
「ん、任せてくれ」
頷き、一誠は帰ろうとした。
「・・・・・」
一誠の腕を原始龍が掴んだ。そのまま引き寄せて一誠をまた抱きしめた。
「―――――」
口を一誠の耳元を寄せて何かを呟いた。
その呟きに一誠は心の中で苦笑しながらも肯定と頷いたら、
原始龍は一誠の手を引いてどこかへと連れて行ったのであった。