一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode24

「「それでは、筆記試験の合格を祝って乾杯だ」」

 

「「「乾杯」」」

 

一誠とレベッカの乾杯の音頭を取れば、アッシュ、シルヴィア、ラーズの三人は同時にグラスを

カチリと触れ合わせた。筆記試験のため、三人とミラベルは異世界に戻って三日後となる今日。

アッシュとシルヴィア、ラーズはミラベルに無事に合格したことを知らされた。

シルヴィアとラーズは全教科満点で、文句なしの学年トップ。アッシュは平均点をやや上回った

程度だったが、それでも合格は合格だ。まだ実技試験が残っているものの、苦手な筆記試験さえ

パスできれば、期末試験は乗り切ったようなものだった。

飲み物とちょっとした料理をテーブルに並べてプチパーティをしていていると、

 

「お前ら、実技試験はどこにするか決まっているか?」

 

一誠がそう訊ねてくる。

 

「むう、まだ決めていない。そういうイッセーはどこにしていたんだ?」

 

「アルビオンの森だ。レベッカと一緒に行かせてもらったよ。

その際、マザー・ドラゴンと会えたらいいなぁーと思いながら実技試験をしたんだけど、

結局会えなかった」

 

「お前のその時は公私混合だったのだな」

 

「その土地でしか手に入らない特産物を手に入れるだけなら一時間も掛からないだろう?

だったら、残りの大半はマザー・ドラゴンの発見を要していた」

 

それでも会えなかったと、一誠は肩を竦める。ある意味当然かもしれないが、

少し残念だったなとシルヴィアは一誠に同情する。

 

「まあ、そういうことだ。決まらなかったら俺が決めてもいいか?」

 

「もしや、この世界の特産物のことか?」

 

「そうだが?」

 

異世界の特産物。それは一体どういうものなのか、シルヴィアは好奇心と不安に駆られる。

 

「この世界の特産物って一体どういうの?」

 

「色々あるぞ。まあ、俺が提案する特産物はドラゴンアップルだ」

 

「それってアグラヴェインが食べていたリンゴのこと?」

 

「その通り。この世界にあのドラゴンアップルが存在するんだ。

お前らのパルもやる気を出すだろう?」

 

そうかもしれない。現にシルヴィア達のパルは―――。

 

「きゅんっ!」

 

シャリシャリとテーブルの上で仲良く一日五回の食事にドラゴンアップルを食べていた。

その光景に微笑ましく一誠の家族達が少し離れたところから見つめている。

 

「そのリンゴ、どこにあるの?」

 

「特別な場所だ。本来、人間が入れない場所にある」

 

「・・・・・それ、絶対危険な場所じゃないか?」

 

「まあ、俺にとってはなんとでもない場所だろう。お前らは・・・・・何とかなるか?」

 

曖昧に言われ、シルヴィアの胸に不安が一杯になった。

一誠にとってはと言うのは、かなりの実力者であればということなので、

月とスッポンなシルヴィア達にとってはそれなりの危険性がある場所らしい。

 

「そうだな、レベッカ達も誘ってあの場所に行ってみるか。

夏休みに案内させるつもりでもあったし」

 

決定事項だとばかり一誠は首を縦に振った。

 

 

 

翌日の早朝。異世界メンバーのアッシュ達は家の前に集められていた。

「今度はどんな場所に案内してくれるのだろうか?」とそんな思いを胸に秘めて。

アッシュ達の前に一誠が現れると、ミラベルが訊ねてきた。

 

「今度はどんな場所に案内してくれるのかしら?」

 

「ああ、地獄だ」

 

『・・・・・』

 

―――地獄?地獄って罪人が行くあの・・・・・?

 

「正確には冥界という世界だ。俺達がいる世界とはまた違う全く違う異世界にだ」

 

「この世界に別の世界が存在するの?そんな話は聞いたことも・・・・・」

 

「当然だろう?伝えていないし」

 

あっけらかんと一誠が告げた。

 

「この世界はな。俺たちがいるこの世界は人間界と呼び、また違う世界が多く存在する。

神や天使、様々な神々が住まう異世界、悪しき魔物が住んでいる異世界と色んな異世界や

異空間が存在するんだ」

 

「この世界にそんな世界が存在しているのか・・・・・!?」

 

「その内の一つ、悪しき魔物がいる異世界こと冥界に行くんだ。

まっ、悪しき魔物がいるっていってもそんな危険性はないさ。

ただ、その世界に住んでいる存在が人間じゃないのは確かだ」

 

「では、どんな存在なのだ?」

 

「リアスのような悪魔が住んでいる。他に天使が堕天した堕天使という種族も住んでいるぞ」

 

次の瞬間。一誠達の足元に魔方陣が出現した。

 

「冥界は隔離されている世界だ。通常の移動方法では入ることは不可能―――」

 

魔方陣の光は一誠達を包み、そして弾けた。

 

 

 

カッ!

 

とある場所に魔方陣が出現し、光と共に一誠達が姿を現した。その場所は異様ともいえる。

―――紫色の空の世界。

 

「空が・・・・・紫だと・・・・・!?」

 

「なんだか、嫌な感じだわ・・・・・」

 

「ちょっと怖い・・・・・」

 

アッシュ達の反応は様々だった。そんなアッシュ達に一誠は両腕を広げた。

 

「ようこそ、冥界へ」

 

ここが冥界・・・・・初めて異世界の異世界にアッシュ達は呆然と驚愕する。

さらには―――一誠達がいる崖の一角でとある峡谷、

切り立った崖の各所に大きい横穴が開いていて、

そこから体長十メートル級の生物達が顔を覗かせている。

 

「―――ドラゴンッ!?」

 

ドラゴン。冥界にドラゴンが生息しているのだ。

谷間を多くのクー・フリン並みの巨躯のドラゴン達が翼を広げて飛び回っている。

 

「まさか・・・・・この世界にドラゴンまでいるとは・・・・・」

 

「ははっ、ここに案内させた甲斐があったな」

 

アッシュ達の反応に一誠は笑みを浮かべた。ルッカが恐る恐ると一誠に訊ねる。

 

「・・・・・野生のドラゴンなの?」

 

「そうだな。ここにいるドラゴンは野生だ。そして、ここはドラゴンの領地だ」

 

「ドラゴンの領地・・・・・!?では、私達にとってここは・・・・・」

 

「そうだな。俺がいないとお前らは捕獲されていたかもしれないな」

 

その言葉を呼応するかのように、一誠達の周りに数多くのドラゴン達が集まりだした。

囲まれたアッシュ達は背を向け合って一ヵ所に集まりだして警戒する。

 

「イ、イッセー・・・・・!」

 

「大丈夫だって。―――なあ、ここにタンニーンはいるか?」

 

一誠がドラゴン達に訊ねた。すると、囲んでいるドラゴン達が、

 

「タンニーン様?」

 

「タンニーン様に用事らしい」

 

「確か、ドラゴンアップルのところにいるはずだ」

 

「ここにはいない」

 

―――人語を発し始めたのだ。

驚愕の色を隠せないアッシュ達を余所に一誠は「分かった」と頷いた。

背中にドラゴンの翼を生やしだして宙に浮くと、一誠の体は真紅の光に包まれ、

見る見るうちに巨大化して真紅のドラゴンとなった。

龍化した一誠はアッシュ達を手の平に乗せると、峡谷から立ち去った。

 

「イッセー、あのドラゴン達は・・・・・」

 

「意思疎通ができる種族のドラゴン達だ。これか会わせるドラゴンの領民でもある」

 

「私達に会わせたいドラゴンって・・・・・一体どんなドラゴンなの?」

 

『ドラゴンの中のドラゴン。ドラゴンの王さまと呼んでも過言ではない立派なドラゴンだ』

 

―――○♢○―――

 

一誠が飛んで行く先に巨大な木が多く生えている森と言うべき場所だった。

その付近にドラゴン達がいた。いざ、一誠がその森の前に降り立つと、

一匹のドラゴンが一誠に近づく。

 

「久し振りだな、兵藤一誠」

 

『よう、ドラゴンアップルのほうは順調そうだな』

 

「今年も豊作となる。また与えようか?」

 

『ああ、貰おうかな。その前に紹介したい奴らがいる』

 

手の平に乗せているアッシュ達を目の前のドラゴンに見せびらかした。

ドラゴンはアッシュ達を見渡し、エーコを見つめる。

 

「ほう、珍しいな。俺達と似ているがドラゴンか?不思議な力を感じるぞ。

変わったドラゴンだな」

 

アッシュは目の前のドラゴンの発言にドギマギする。初めてエーコを見たはずなのにある意味、

的を射っているのだ。

 

『こいつを含め、こいつらは異世界から連れてきた存在達だ』

 

「俺が知らないところでお前はまたとんでもないことをしているのだな。

お前からも異様な力を感じるぞ。また何か宿したか?」

 

『まーな。今のところ危険性はないから問題ないと思う』

 

朗らかに会話をする一誠とドラゴン。

 

『お前ら、目の前にいるドラゴンが会わせたかったドラゴンだ。

魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)」タンニーン。元ティアマットと同じ五大龍王だった龍の王様だ』

 

「龍王・・・・・?龍に王様がいるのか?」

 

「違うな。龍王とは他の龍より優れた龍が周りから畏怖の念で称されている意味だ」

 

『お前は龍の王様だろう?絶滅しそうな龍のために龍を辞めて

悪魔に転生して救ったんだからな』

 

話を聞く限り、どうやら目の前のドラゴンは龍ではないようだ。

 

『タンニーン。三つほどドラゴンアップルをくれないか?

こいつらの学校の課題で特産物を手に入れないといけないんだ』

 

「分かった。興味深いドラゴンを見せてくれた礼だ」

 

徐にタンニーンは腕を木に伸ばしたと思えば、巨大な果実が手に収まっていた。

 

「デカッ!?」

 

「えっ?小さくない・・・・・?」

 

『ああ、この世界のドラゴンアップルは元々この大きさなんだ。

俺がアグラヴェイン達にあげているドラゴンアップルは俺が育てた奴だからだ』

 

「アグラヴェイン?誰の事だ?」

 

『えーと、一緒にいるはずなんだけどな・・・・・出てこい』

 

一誠の金色の瞳が煌めいたら、シルヴィア達の肩が光り輝き、宙に浮いた。

 

「きゅんっ!?」

 

幼生のランスロット達がタンニーンの前に浮く。

そのランスロット達にタンニーンは感嘆する。

 

「ほう・・・・・ドラゴンの子供か?なんと珍妙な姿をしている。

異世界のドラゴンは皆、こんな感じか?」

 

『子供は皆そうらしい。だが、成長すれば―――』

 

また金色の瞳が輝く。

すると、ランスロット達の体がみるみる大きくなり聖竜(マエストロ)としてのランスロット達が

久々になった。

 

「これはまた・・・・・実に面白いドラゴン達だな」

 

くっくっくっ、とタンニーンが口の端を吊り上げた。

 

「兵藤一誠、このドラゴン達は強いか?」

 

『いや、弱い。寿命も短いそうだしな』

 

「むっ、そうなのか」

 

意外そうに発する。

 

「ちょっとっ!私が本気出せば―――!」

 

『何か言ったか?』

 

どこまでも冷たく低い声音で発し、何か言おうとしたエーコを鋭い眼光で睨んだ

一誠にエーコは口を噤んだ。

 

「どうした?」

 

『気にするな。未熟なガキのドラゴンが粋がろうとしただけだ』

 

小首を傾げるタンニーンに一誠は溜息混じりにそう言った。

 

「ふっ、あまりいじめてやるなよ?」

 

一誠の話を聞き、苦笑を浮かべるタンニーンだった。

その後。三つのドラゴンアップルを貰い、一誠はタンニーンと別れて人間界に戻った。

 

 

 

「どうすりゃあいいんだ・・・・・?」

 

ランサーは悩んでいた。それは自分が知るストーリとかけ離れているからだ。

 

「今のところ、アッシュがナヴィーに何か言われた

様子はないけど・・・・・そろそろのはずなんだが・・・・」

 

自分が思っているような流れにならない。別にどうでもいい展開だが、今後に必要なことだ。

どうやってアッシュとエーコをあの場所に行かすか・・・・・。ランサーは首を捻る。

 

―――○♢○―――

 

その日の深夜。一誠は夢の中でまたあの異空間にいた。

 

「お久しぶり、イッセー・D・スカーレット」

 

「ナヴィー・・・・・」

 

白と黒が交差するように、

正方形のタイルが敷き詰められた床。

壁際には、製作途中と思しきオブジェが散らばっている。

人体や鳥獣、甲冑、建築物・・・・・などなと。天井には王宮のシャンデリアさながら、

豪華絢爛たる竜綺華晶で明かりを照らす竜華灯が吊り下げられている空間に。

一誠は顔を上げて椅子に腰掛けて浮いて微笑むナヴィーを見た。

 

「ふふっ、あなたの世界は興味深い物ばかりだわ。見ていて飽きやしない」

 

「そう思うんなら、現世に出てくればいいじゃないか?」

 

「あら、現世に私が出てもいいのかしら?」

 

「一人増えようが変わらないさ」

 

ナヴィーは小さく笑む。

 

「そう、なら次はそうさせてもらうわ。さて、あなたをここに呼んだ理由は二つ。

一つは冥王竜モルドレッドの事だけど」

 

「ああ、まだ俺の中にいるが、片方はどっかにいったな」

 

「ええ、私も感じたわ。シェブロン王国に尻尾巻いて逃げてたわ。

そうなると、あなたと同様モルドレッドを宿す人間がもう一人存在することになるわ」

 

「やっぱりか」

 

うすうす思っていたことが確定した。

 

「モルドレッドの魂は二つに別れたことで本来の力も発揮できないでしょうけど、

それでも冥竜王としての力は健在。気を付けてね?」

 

「モルドレッドより性質の悪いドラゴンを宿しているんだ。生まれたら家族のように接するさ」

 

肩を竦め、一誠は視線で促した。その視線の意図にナヴィーは口を開く。

 

「もう一つはエーコの事でお願いしたいことがあるの」

 

「願いとは?」

 

「私とエーコは表裏一体。エーコと融合することで、真の力を得る。

でも、あの子はまだ未熟のままなのに早く竜として覚醒してしまった。

エーコがつまらないことで竜化してしまう恐れだってあるから―――」

 

「ちょいと待った」

 

ナヴィーの話を遮って待ったを掛けた。一誠は気になる言葉をオウム返しをする。

 

「エーコと融合だと?どういうことだ?」

 

「私は竜種の記憶(ドラグワース)そのものなのを知らなかったかしら?

エーコがアッシュに聖騎甲(アーク)を献呈できるのは私とエーコが表裏一体だからよ」

 

「それが本当の話だとすると、お前が融合したらどうなるんだ?」

 

「私?消えるだけよ」

 

あまりに冷静な口調だったので、一誠は眉根を寄せた。

 

「お前はそれでいいのか?」

 

「あらゆる生命が死という最終点に向かって直進しているのだとすれば、

私にとっての死は、エーコとの融合を意味するの。私は。そういう風に造られた存在だから。

エーコが幼年期を過ごしているうちは、導き手(ナヴィゲーター)として手を貸すわ。

でもね、エーコが成長したら、私は単なる『情報体』になるの。百

科事典にはたくさんの情報が記載されているけど、そこに自我はないのと同じよ。

もはや『ナヴィー』という自我なんて、必要なくなるってわけ」

 

「・・・・・」

 

ナヴィーの名前の由来が分かった。エーコを導くために自分の名前を使命をするために

そのままの名前を自分で決めたのだろうと。

 

「・・・・・お前は、それを俺に伝えたくて呼んだのか?」

 

「あら・・・・・怒っているの?」

 

意外そうにナヴィーは一誠を見下ろす。一誠の口から怒気が孕んだ言葉を発したからだ。

 

「まだ片手で数えるぐらいしかお前と接していないが、

俺にとってお前は一人の女性だと思っていた」

 

「・・・・・」

 

「エーコやアッシュ・ブレイクに別の場所から力を貸しているから事情があると感じていた。

その理由がようやく分かった。―――あまりにもつまらなさ過ぎる理由だな。お前の存在理由は」

 

「なんですって・・・・・?」

 

一誠からそんな事を言うとは思いもしなかった。ナヴィーはジッと一誠の話に耳を傾ける。

 

「いまお前がこの場所にいるのは、

確かにエーコとアッシュ・ブレイクに協力しているからだろう。

だが、使命だから、運命だからって感じで自分の生き方に抗おうなんてしない

お前に物凄く苛立ちを覚えたぞおい」

 

背中にドラゴンの翼を生やしてナヴィーの前に。

垂直のスリット状の金色の瞳がナヴィーの真紅の瞳を真っ直ぐ見据える。

 

「お前を創った竜族が決めたルールなんて俺が破壊してやる」

 

「え・・・・・?」

 

「表裏一体とはいえ、エーコはエーコ。お前はお前だナヴィー。お前は一人の存在だ」

 

ナヴィーの両肩を掴むと、一誠は発した。

 

「お前を創った竜族が認めても俺は認めない。お前はエーコじゃない。一人の人間だ」

 

「イ、イッセー?」

 

「―――桜花(オウカ)

 

「・・・・・え?」

 

桜花と言われ、ナヴィーは一瞬、一誠が何を言ったのか理解できなかった。

桜花という言葉は竜種の記憶(ドラグワース)にない単語である。

 

「この世界に咲く花のことだ。その花は桃色の花弁を開き、人の心を和ませる綺麗な花。

その花の名前が桜というんだ。桜の花と書いて桜花」

 

徐にナヴィーのピンク・シルバーの髪を手にとって、ナヴィーに見せびらかす。

 

「この髪みたいな桃色とナヴィーの新しい名前、オウカ・・・・・ピッタリじゃないか」

 

「私の・・・・・名前・・・・・オウカ・・・・・?」

 

「今日から俺はお前の事を『オウカ』と呼ぶ。もう『ナヴィー』なんて呼ばない。

お前はエーコとアッシュ・ブレイクの導き手(ナヴィゲータ)と同時に一人の女性、オウカだ」

 

「―――――っ」

 

「エーコが成長期になるまで、お前を一人の女性として生きていけられる手段を探す」

 

すると、一誠の体が光り輝きだした。

 

「約束だ、オウカ。俺はお前を―――」

 

言い切る前に一誠は姿を消してしまった。

そして、残ったナヴィー・・・・・オウカは捕まれた両肩を両手で触れ、

 

「・・・・・イッセー、あなたって人は本当に・・・・・」

 

―――絶対に失わせはしないぞ。一誠が最後に消える前に言った言葉が確かに届いた。

 

「変わったドラゴンね・・・・・こんな私のために必死になろうとしているのだから」

 

―――○♢○―――

 

アッシュ達が異世界にやってきてもう一週間は過ぎた。光陽町の案内も粗方し、説明もし終えた。

ミラベルの要望の機械をデパートで見聞させ、同時にデパートの中を改めて案内させた。

 

「イッセー、この世界にも他の国があるそうだが、その国は一体どんな国なんだ?」

 

「喋る言葉が違うのと文化と文明、人の容姿にその国の料理や通貨、まあ、色々だ」

 

「喋る言葉が違う?シェブロン語やゼファロス語みたいなのか?」

 

「まーそういうところだな。その違う言葉の数は軽く五十は超える」

 

「なっ、五十!?」

 

異世界の異国の言葉の違いがそれほど多く存在していることにシルヴィアは驚愕する。

 

「それと方言っていう言葉が存在するな」

 

「・・・・・方言?」

 

「一見、なに言っているか分からない

言葉がその人にとって普通に話しかけている―――って、これも違う言葉の部類に入るか」

 

「・・・・・」

 

首を傾げるシルヴィアの頭上に疑問符が一杯になる。

 

「まあ、大雑把に言えばシルヴィア達みたいな人間と国があるということだ」

 

「・・・・・取り敢えず、それだけは分かった」

 

「他は分からなかったか」

 

苦笑を浮かべる。シルヴィアは理解していないことに指摘され、羞恥で頬に朱を散らす。

 

「そーいえば」

 

「なんだ?」

 

「シルヴィア達竜騎士(ドラグナー)はマザー・ドラゴンからドラゴンを授かる話だったけど、

実際、どうやって授かったのか知らないな」

 

金色の瞳はシルヴィアの蒼い瞳とぶつかる。

 

「なあ、シルヴィアはどうやってマザー・ドラゴンと会ったのか俺に教えてくれないか?」

 

「なっ・・・・・!?」

 

好奇心から来る質問。〈オーファンの儀〉のあの時の記憶がシルヴィアの脳裏に甦った。

 

―――お姉様方を必ずマザー・ドラゴンのもとまでお連れ致します。

 

「・・・・・」

 

だが、あまり良い記憶ではなかったようだ。シルヴィアが途端に顔を暗くしたのだ。

 

「シルヴィア?」

 

「すまん・・・・・あまりその話をしたくない」

 

「・・・・・分かった」

 

一誠はそれ以上追及しなかった。

なにか、あまり良い思い出ではなかったのだろうと悟り・・・・・。

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