「よし。皆集まったな?」
「全員揃っているぞ」
玄関ホールでアッシュ達は集まっていた。今日は異世界メンバーだけじゃなく、
この世界の、一誠の家族達も勢揃いだった。
「でも、こんな大勢でどこに行くんだ?」
アッシュの疑問は一誠が解消する。
「夏だし、そろそろ海にでも行こうかなって。人王が所有している島で一泊するんだ」
「まさか・・・・・野宿?」
「電気、水道が完備された別荘付きの島だ。食糧は自給自足。島にある食材を集めて料理だ。
ちょっとしたサバイバル気分にもなれる。そこでクー・フリン達も自由に飛び回れるだろうさ」
「そうか、良かったな。クー・フリン」
肩に乗っかっている幼竜のクー・フリンを撫でるレベッカだったが。
「だが、エーコは特訓してもらもうらな?」
「はぁっ!?」
愕然と自分で指をさすエーコ。当たり前だと首を縦に振る一誠は真っ直ぐエーコに言った。
「人並みのトレーニングをしてもらうだけだ。それが終われば好きなだけ遊んでいろ」
「冗談じゃないわよ!?というか、なんで私がトレーニングなんかを―――!」
拒否し、一誠に食って掛かるが、一誠の一言でエーコは口答えができなくなる。
「おや、アヴァロン聖竜皇家の末裔という者が未熟のままでいたいのか?
さらにアッシュ・ブレイクの力となるのにか?」
「うぐっ・・・・・!?」
「よりお前のオリジナルの
関わっているんだ。お前が何時までも未熟のままじゃアッシュ・ブレイクに
負担を掛けるだけだが・・・・・それでもいいんだな?」
そう指摘されてぐうの音も出なくなる。
「アヴァロンの末裔を守る騎士が軟弱のままでアヴァロンの皇女を守れるとはとても思えないな。
レベッカ達に頼るのもいいが、レベッカ達無しでお前らが戦える時間はそれほど
長くないしかなり短い。ただの荷物となるだけだ。これは決定事項だから反論も意義も許さない。
いいな?」
そこで、アッシュにも視線を向けた。
「無論、アッシュ・ブレイクもだからな」
「な、なんだってっ!?」
「
―――本当なら、レベッカ達にも鍛えようと思うが、先にお前らだ。
俺は甘くしないつもりだからよろしく」
―――○♢○―――
とある無人島に魔方陣が出現。魔方陣から続々と光と共に一誠達の姿で現れ、砂浜に足を踏み込んだ。
「「うううぅぅぅぅみいいいぃぃぃぃっ!」」
『・・・・・』
神王ユーストマと魔王フォーベシイが海の彼方に向かって叫んだ。
アッシュ達はあれはなんだろう?と首を傾げる。
「気にするな、ただお義父さん達がはしゃいでいるだけだから」
「そう、なのか?」
「うん、そうなの」
ユーストマの娘、リシアンサスが苦笑をする。
「水着は別荘の中にある。あそこの中だ」
アッシュ達の背後に指す。アッシュ達が背後に振り返れば、
豪邸とも言える別荘が鎮座していた。
「リーラ、グレイフィア。アッシュ・ブレイク達を案内してくれ」
「「かしこまりました」」
「さて・・・・・ランスロット、アグラヴェイン、ガレス、ガウェイン、
クー・フリン、ガラハッド、フェルグス」
クイッと一誠の指が動かせば、七匹の幼竜が宙に浮くと、
光に包まれて
「それじゃ、エーコが水着に着替え終えたら特訓するぞ」
「あ、あの・・・・・その鍛えるって一体どんな方法でだ?」
アッシュが恐る恐ると訊ねた。どんな方法で鍛えるつもりか、
気になってしょうがないのだろう。
「取り敢えず、走り込み」
「・・・・・それだけ?」
思っていたような厳しい特訓ではないことに安堵で胸を撫で下ろすも。
「この無人島を一周な。十キロはあるから遅くても二時間ぐらいで完走するだろう」
「じゅ、十キロ・・・・・」
長い長距離走をさせられることに、どっと疲れた表情を浮かべるアッシュだった。
「逃げたらこの島に置いていくからな。着替え終わったら直ぐにここへ来い」
「では、別荘の中を案内しましょう。私についてきてください」
リーラの強さの一部を目の当たりにしたアッシュ達は、無言でリーラの背中を追った。
「おい、コゼット・・・・・また私にこんな面積の少ない水着を着させるのか」
うんざりとシルヴィアがコゼットが持つ水着を見た。選抜合宿に着た水着と似たものである。
「姫様にはこれが一番ですわ」
「・・・・・他にも水着があるからそれでいいではないか」
シルヴィアがいる場所は女子更衣室と試着室が合体した部屋である。
中にはサイズが豊富な大量の水着が用意されており、
シルヴィア以外の女性達が雑談しながら選び、水着に着替えている。
「あら、ダメですか?では―――この水に濡れたら布が透ける―――」
「断固拒否する!というか、どうしてそんな卑猥な水着があるのだ!?」
「さあ、ここに用意されていましたので私にも分かり兼ねますわ」
「ええい、自分で選ぶ!」
そう言って結局選んだのは青と白のスプライトの水着だった。
腰には同じ模様のパレルが付いている。
その水着を手にして空いている試着室へと入りこんで着替え始めたのであった。
一方、男子更衣室では。
「一誠さん、何時見てもあなたの背中の紋様は異様で変ですね」
「ああ、自分でもそう思うさ」
龍牙の指摘に一誠は自分の背中にある鏡を見た。
背中の半分だけびっしりと埋め尽くされている紋様が映っている。
「どうして半分だけなのでしょうか?」
「それは―――」
口を開いた一誠の横からジュリアスが話しかけてきた。
「魂が二つに別れたせいなのだろう。だから星刻も中途半端な形で彼の背中に刻まれた」
「まあ、それしか考えないな。だとすると、
もう一方の方も誰かの体に宿り、俺と同じ紋様なんだろう?」
「そうだろうね。だけど、探すのは容易じゃない。
もしかしたら、同じ力同士が引き寄せられ同じモルドレッドの魂を宿した者が
現れるかもしれない。その時こそが再び魂を一つにするチャンスだ」
「で、どうやって魂を一つにするんだ?その方法は知らないんだが」
ジュリアスは無言で顎に手をやって悩み始める。
「それは、分からないな・・・・・すまないね」
「ま、気長に考えるとして」
一誠はパーカーを羽織って背中の星刻を隠す。
「砂浜に行こうか」
一誠達が砂浜に赴くと、それからしばらくして女性陣が集まった。
「さーて、アッシュ・ブレイクとエーコ。ちょっと隣に立ってもらおうか」
「・・・・・なにをする気なのよ」
「二人同時に走ってもらう」
アッシュとエーコの足首に布を巻いて縛った。
「なに、これ」
「二人三脚。アッシュ・ブレイクの左足とエーコの右足を同時に前へ出してから走ってもらう」
「何でこんなことをするんだ?」
「走っていればその内否が応でも分かるさ。
ほら、走れ。しばらく走ってもらったら監視役として背後にいさせるからな」
そう言って水の入ったペットボトルも二つをアッシュの腰に結んだ。
「それじゃ、エーコ。右足を出してくれ」
「・・・・・分かったわよ」
渋々とエーコは右足を前に出したと同時にアッシュは左足を前に出した。
すると、二人の歩調がピッタリと合い、スムーズに歩を進め出した。
「息が合っている・・・・・」
「なるほど、そういうことか」
「理解したようだな。さてと・・・・・監視役を呼ぶとしようか」
―――一誠が不敵に意地の悪い笑みを浮かべだしたのだった。
砂浜に魔方陣を展開した一誠が声を掛けてきた。
「手筈通り、頼んだぞ」
その声に呼応して魔方陣の光が強さを増して弾けた。次の瞬間。魔方陣から―――。
「うっふん♡任せて頂戴なご主人様♡」
隆起した筋肉。スキンヘッドに三つ編みの揉み上げにピンクのリボンで結んで、
ピンクのブーメランパンツを身に纏う中年男性が現れた刹那。
「いやああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
「うっ・・・・・目、目が・・・・・」
「な、なんだ・・・・・この男は・・・・・?」
「キーラ・・・・・こ、怖いよぉ・・・・・」
「だ、大丈夫だ!あたしが、あたしがルッカを守る・・・・・っ!」
「ちょっと待て、どうしてそのキャラがこの世界にいるんだよ!?えっ?なんでだ?」
異世界メンバー達にとって目に毒、存在自体が毒であろう。
とても耐えがたいとシルヴィア達が悲鳴を上げたり、
体を震わしたり、驚愕していたりもしていた。
「ぐふふ!それじゃ、行ってくるわねん♪可愛い男の子と砂浜で追いかけっこなんて、
蝶蝉ちゃん。大感激♡―――ぶるるるるるわあああああああああああああっ!」
蝶蝉と自分で名乗った中年男性は雄叫びを上げながらアッシュ達のもとへ駆けた。
しばらくして、
「ぎゃあああああああああああああああああああっ!?」
「いやああああああああああああああああああっ!」
アッシュとエーコの悲鳴が聞こえてきた。
「お前ら、最初は食料を手に入れよう。海と山、二手に分かれて食材を探してくれ」
『ちょっと待て!』
シルヴィア達に待ったを掛けられた。首を傾げ「なんだ?」と返事をすると、
「あの男は一体誰なのだ!お前の知り合いか!?」
「知り合いじゃなきゃ召喚しないって」
「あの男は・・・・・人間なの?」
「正真正銘人間だ」
「アッシュ・ブレイクと幼竜エーコを追わせたのは?」
「危機感があると全力で必死になるだろう?それを応用したんだ」
「お前・・・・・悪魔だな」
「ランサー、お前もしてやろうか?」
「いえ!結構でございます!サー!」
自衛隊みたいな言動をしたランサーであった。シルヴィア達は蝶蝉の存在に戦慄し、
畏怖の念を抱くも既に姿が見当たらないのでとりあえず落ち着きを取り戻した。
それから山と海に向かうグループを決めた。
山組
ルッカ、キーラ、ヴィットーリア、コゼット、グレン、ジュリアス、アンジェラ、ランサー、
海組
レベッカ、シルヴィア、ラーズ、ミラベル、ヴェロニカ、ウルスラ、ユニス、マキャベリ、
「働かざる者は食うべからず、という言葉がある。一生懸命働いた者だけが食事を食べれる」
「我が家の家訓みたいだな」
「家訓?ロートレアモン王家に家訓なんてあったんだ?」
「ああ、あるぞ。千を飛んで八十はある」
「・・・・・どんだけ多いんだよ。諺でもそこまではないぞ」
ロートレアモン王家の家訓の数に呆れを通り越して圧倒される。
「イッセー、山にはどんなものがあるんだ?」
「食べられる物や食べられない物もある。
食べられない物の中で毒性の食べ物があるから気を付けてくれよ。これを渡しておく」
八人分の小型の機械をルッカ達に手渡す。
「食べられそうなものを見つけたら、ここのボタンを押しながら向けてみてくれ。
この四角い部分が青く光ったのが食べれる。赤く光ったら食べられないと判断をしてくれる」
「へぇ、便利な機械なのね」
「だろう?それとこの本も渡そう。読めるように製作してやったぞ。結構苦労した」
一誠が分厚い本をランサーに渡した。気になり本を開くと、
レベッカ達にとって馴染みのある文字が羅列している。
「本当だ、読めれるぞ」
「読めれるなら安心だ。それじゃ、この籠を背負って山に向かってくれ」
言いながら魔方陣を複数展開して、背中で背負う籠を発現した。
チリンと鈴が三つも備えられ、水の入ったペットボトルも鈴の傍で付けられていた。
「と、忘れるところだった。ジュリアス、ちょいっと」
「なんだね?」
ジュリアスが近づく。一誠はカプセル型の何かを手にしていてそれをジュリアスの身体に
まんべんなく振りかけた。
「山には虫が生息しているからな。虫に寄せ付けないようにスプレーを
吹きかけないと・・・・よし、終わりだ」
「虫除けのスプレーなのかい?随分と面白い物だね」
「そうか?次、グレン」
一誠は次々と山に行くメンバーに虫除けスプレーを吹きかけた。
それをし終えれば、鈴を鳴らしながらルッカ達は山へ向かって行った。
残された海に行くメンバーには魔方陣から出した道具を見せた。
「聞くけど、海もしくは水の中に入って泳いだことある奴は手を挙げてくれ」
一誠の促しにレベッカ達は―――手を挙げなかった。
そのことであからさまに頭ごと肩を落として嘆息した。
「・・・・・ダメじゃん。全滅じゃん」
「な、なんだ。悪いのか?」
「いや、悪くはないけどさ?でも、まさか全員が泳げれないとは思いもしなかった」
「しょうがないと思うわよ?だって、王族や貴族が海には行くけれど、泳ごうとしないもの」
「・・・・・別の意味でお前らも鍛えようかな。家に戻ったら」
そんな一誠の発言にシルヴィア達は動揺したのは必然だった。
「しょうがない。シルヴィア達は釣りをしてもらう他ないな。
てか、釣りもしたことなさそうだし、それすらも教えないといけないのか?
お前ら、いろんな方面から欠点が浮かんでくるな」
「し、仕方がないだろう!私達は学生で、姉上達は王族で聖竜騎士団やその侍従。
国から出て海に行こうなどしないのだ!」
「ま、そうだろうな。だから異世界に来て色んなものに興味を持ち、
初めて見るものには好奇心が湧くんだからな。
それじゃ、それぞれ一本ずつ道具を持って移動しよう」
―――○♢○―――
―――山―――
「異世界の森は細いのばかりだな」
「うん、こんなに細い木は初めて見た」
無人島に生える木々にキーラとルッカは呟く。エクブラッド自治区に住むエクブラッド人は
巨木に家を建てて生活しているので、異世界の木の大きさに不思議だと思っていた。
「あ、キノコ発見」
歩いて数分で早速食材を見つけた。一誠から受け渡された機械で試しに使ってみると、
青く発光した。
「これ、食べられるみたいだね」
「うん、みたいだね」
「うおっ!こんなところに松茸が!?しかも大量!いやっほーう!」
ランサーがはしゃいで籠にキノコを入れ始めた。
「あいつ、なんだか楽しそうだな」
「私達も楽しもう?」
「ああ、そうだな」
ルッカの言葉に頷く。他の山メンバーもそれぞれ食材を探しては見つけて籠に入れたりと、
し始める。鈴のおかげでどこにいるのかも把握できる。
キーラはこの鈴を付けただろうイッセーに感嘆する。
探索を続けると水が流れている川を見つけた。その川の中で泳ぐ魚を見つけると、
「どうする?」
「ああ、魚を入れる籠がないとダメだな。それに魚は王女殿下達が何とかしてくれるだろうし
別に魚はいらないだろう」
「それもそうだね。それじゃ、先に進もう」
―――海―――
「なあ・・・・・イッセー。これを本当に釣り針に付けないとダメなのか?」
「何事も挑戦だぞ?」
「こ、この・・・・・うねうねとした虫をか?」
一誠に手渡されている箱の中身を見て、
青ざめるシルヴィアの眼下に細い桃色の体の虫がうじゃうじゃと蠢いている。
「そうだ。マキャベリを見てみろよ。すげぇ逞しいぞ」
マキャベリに視線を向ける。そこにはもう一人の一誠と一緒に釣り針に餌を付けていた。
さらに辺りを見渡せば、全部で八人の一誠がそれぞれラーズ達に釣りの仕方を教えている。
「あ、あの人は大人の女性だからだ」
「王女が言い訳なんて見苦しいぞ?」
「うぐ・・・・・」
「ほら、一緒に餌を付けてやるからさ。これぐらいのことで度胸がないんじゃ、
この先やってらんないぞ?」
餌の虫をシルヴィアの手の平に乗せて、
一誠は背後に回って包むようにシルヴィアと釣り針に餌を括りつける。
「ほらできた」
「っ・・・・・」
「それから海に放り投げて後は待つだけだ。やってみろ」
「あ、ああ・・・・・」
その通りに餌のついた釣り針に海へ放り投げた。
「引っ張られる感触が魚が餌に食いついた証拠だ。精神を集中させてその時まで待つんだ」
「その時って何時何だ?」
「早くて五分以内、遅くて一時間以上だ」
「な、長いな・・・・・」
「釣りってそういうもんだ。辛抱強く待つこそが釣りの醍醐味なのさ」
横で座る一誠も釣りをし始める。しばらくして、
「掛かった!」
「なに!?」
海に沈んでいる一誠の糸がピンと張って勝手に動き回る。巧みに釣竿を動かし、
糸を巻き上げる。そうしていると徐々に海面にぼんやりと何かが浮かんできた。そして―――。
「獲ったどー!」
海面から魚が出てきた。
「おお・・・・・」
思わず感嘆の声を漏らす。釣った魚は普通の大きさだが、確かに釣り針に食いついていた。
「こんな感じで魚は釣れる。シルヴィアも釣れるから頑張れよ」
「分かった。頑張ってみよう」
シルヴィアはジッと魚が掛かるのを待った。それからしばらくして、
「むっ?」
「どうした?」
「なんか、糸が勝手に伸びているんだが?」
視線を釣竿に向ければ、リールが勝手に回り、糸はどんどん海の中へ―――。
「―――って、魚が掛かっているんだよ!引けっ!」
「う、うむ!」
リールを巻いていくが、餌に掛かった魚は激しく抵抗するので、海面に中々出て来ない。
「お、おのれ!私に逆らおうというのか・・・・・!?」
「いや、逆らうから普通」
シルヴィアと魚の戦いを見守る最中、シルヴィアは立ち上がった。
「くっ、何て手強い・・・・・!」
「落っこちるなよ?」
「心配無用だ!」
糸は徐々に巻かれていき、シルヴィアは必死になり―――その頑張りはようやく報われる。
「イッセー、海面に何がいるぞ!」
「おっ、姿を見せてきたな。中々大きい」
魚の面影が段々と海面に近づいた。一誠は長い柄の網を持って待機する。
「よっと」
網を海面に、シルヴィアが釣った魚を網の中へ入れて引き上げれば、
その姿を一誠とシルヴィアに覗かせた。
「「おお・・・・・」」
一誠が釣った魚より断然大きい上に色鮮やかな魚であった。
「イッセー、綺麗な魚を釣れたぞ!」
「ああ、凄いな。俺のより大きいじゃないか。負けたよ」
「ふふん、イッセーに初めて勝ったぞ!」
胸を張って威張るシルヴィア。釣りで一誠に勝ててよっぽど嬉しいようで胸を張った後、
笑みを浮かべる。
「今度は負けれないな」
「いや、今度も私が勝ってみよう」
互いが笑みを浮かべ、再び釣竿を手にした。
―――○♢○―――
山と海に向かったメンバーが砂浜に集結した。それぞれ収穫した物を見せ合い報告会だ
「おー。よく松茸を見つけたな」
「ふっ、俺の大好物だからな!これしか取っていない!」
「・・・・・そこ、威張るところか?」
「姫様、凄い魚の量ですわ」
「その上、イッセーにも勝ったぞ!」
「色々あるな。これで今夜のおかずとなるのだな?」
異世界メンバー(アッシュとエーコを除く)の食材は盛り沢山。だが―――。
「いや、まだあるんだよな」
『・・・・・?』
一誠を覗く面々が首を傾げたその時だった。
「これぐらい集めたら大丈夫だよね」
「ふぅー、いっぱい魚を捕獲できたねー」
山から海から一誠の家族達が現した。―――大量に食材を抱えて。
『・・・・・』
唖然とする異世界メンバー。自分達が収穫した食材より豊富で量が多い。
「あれ、俺の家で備蓄する分の食材だから」
「あ、あんなに必要なの?」
「ああ、かなり食べる家族もいるからな。あれぐらいは必要だ」
ドドドドドドドドドドッ!
すると、向こうから砂埃を巻き上げながらこっちに近づいてくる何かが現れた。
「「た、助けてぇぇぇえええええええっ!」」
「あ、アッシュとエーコ・・・・・?」
アッシュとエーコであった。何かに追われて―――。
「ぶるるるるわあああああああああああああああ!
だぁれが、夢にまで出てくる醜いオカマですってぇ!?」
『ひっ!?』
追いかけられている二人の背後に眼光を煌めかせ、両腕を広げて捕まえようとする蝶蝉がいた。
シルヴィア達は再び恐怖に駆られる。
「・・・・・一時間五十分。予想していたよりも速く走ってきたな」
パチンと一誠が指を弾いた瞬間だった。蝶蝉の体が光に包まれ消失した。
「き、消えた・・・・・?」
「帰らしたんだ。アッシュ・ブレイクとエーコを一周走らせてくれたからな」
ズザーッ!と砂浜にダイビングしながらアッシュとエーコは走り終えた。
そんな二人の前に一誠が近寄り、
手の平を向けて光を放てば、アッシュとエーコの体が光り始めた。
「お疲れさん。息ピッタリな状態で走り切ったようだな。
すぐに飯の準備するからその間遊んでいいぞ」
「し、死ぬかと思った・・・・・」
「あんなの俺もよくしている」
アッシュの言葉を一蹴し、一誠は踵返して立ち去った。
「あ、あのドラゴン・・・・・絶対いつかぎゃふんって言わせたいわ・・・・・アッシュ」
「今は、休もうな・・・・・精神的に物凄く疲れた」
「・・・・・そうね。体力が何故か回復したけど、精神的にまだ回復していないわ・・・・・」
―――○♢○―――
その日の夜。別荘で風呂に入った後、アッシュ達はベッドに沈むように眠る最中。
一誠は砂浜に訪れて拳や足、体を激しく動かして自己鍛錬していた。
「・・・・・何時までそこにいるんだ?」
「やっぱ、ばれていたか?」
別荘の影からランサーが現れた。自己鍛錬を止め、ランサーに顔を向ける。
「そろそろ、お前の話を聞かせてほしいもんだな。転生者のこととか前世のお前のこととか」
「おいおい、人の過去を詮索するか?」
「お前の反応を見る時になるからな。原作キャラとか口からよく出る」
「あー・・・・・それもそっか」
片手で顔を覆い、やっちまったなっと感じで自嘲する。
「んまあ、別に話すなって言われているわけでもないし、
別にいいけど多分、混乱すると思うぞ?」
「聞かないよりは多少マシだろう」
目で話せと促す。ランサーは溜息を吐き口を開いた。
「大雑把で言えば、俺達転生者は過去と未来を知っている」
「過去と未来?」
「その人物の過去とこれから起きる事件の未来。
アッシュが幼竜エーコを誕生させることや聖ダーラム広場で
ウィリンガム霊廟での事件や大陸会議でエーコが竜化する事まで全部、
俺とギルフォードは知っていた」
「エーコを誘拐させたのはお前らだろうが」
「確かにそうだけど、本来はアーニャちゃんがするはずだったんだ。
でも、お前がアーニャちゃんを捕まえたおかげで俺達が知るストーリじゃなくなり
そうだったんだわ。だから俺達が代わりにエーコを誘拐して強制的に
竜化させることにしたんだ。結果、物語はその通りに進んだわけだ」
「これから起きる未来が別な方向に進んだとしてどうなる?」
一誠の問いかけにランサーは首を横に振るだけだった。
「予想不可能だ。現に、俺が知るストーリに敵となっている奴が騎竜学院にいたり、
本来存在しないはずの人物までもが存在している。
ああ、そいつはそいつのために教えないからな」
「別に、聞こうとは思わないさ」
「そうか、まあ、取り敢えず俺達転生者のことはそういうことだ。
過去と未来を知っている余所者だがな」
「もしかして、現時点でお前が知るようなストーリとはかけ離れているか?」
「ああ、完全にな。だが、これはこれで面白いぜ?
俺が知る原作キャラの一部が勢揃いしているんだからな」
「楽しんでもらえているようでなによりだ」
肩を竦め、有益な情報を得られたことに一誠は質問する。
「その原作って言うのは主人公がいるのか?」
「いるぞ。アッシュ達の住む世界では、アッシュが主人公だ」
ランサーの言葉に目をパチクリとした。信じられないとそんな面持ちで。
「あいつが主人公?実感しないな・・・・・・」
「因みに、お前もとある原作では主人公だぞ?兵藤一誠、またの名を赤龍帝だ」
「・・・・・教えていないのに赤龍帝なんて言葉が出てくるなんてな。
だが、俺は赤龍帝じゃないぞ」
「はっ?」
的外れだと風に言う一誠にランサーが唖然となった。
「お前、兵藤一誠なんだろう?転生悪魔で
ガゴンッ!
最後まで言いきれずランサーが砂浜に顔が埋まった。
一誠が瞬時でランサーの頭を殴ったからだ。
「俺をあいつと一緒にするんじゃねぇよ」
「―――っ!?」
顔を上げて砂を払って信じられないと一誠を凝視する。
「あいつ?あいつって誰だよ?」
「成神一成。赤龍帝で転生悪魔の『
「マジで!?えっ、兵藤一誠以外の奴が赤龍帝だと?じゃあ、お前は一体誰で何なんだよ!」
「おーい、お前が混乱しているじゃないか。にしても、俺が誰で何なのか・・・・・か」
考える仕草をした後、笑みを浮かべて一誠はドラゴンの翼を生やしだした。
「元人間の人型のドラゴン。
肉体と力を宿す兵藤一誠で、この世界の人類の頂点に立つ人王だ」
「・・・・・」
開いた口が塞がらないランサー。自分が知っている原作がここまで違っていることに驚愕して、
思考が停止してしまった。―――が、ランサーはいきなり笑い上げた。
「急にどうした?」
「やー・・・・・俺が知らないところで他の原作がここまで変わっていたなんて驚きでさ。
やっぱり、従来通りのストーリじゃつまらないかもしれねぇな・・・・・。
醍醐味のイレギュラーも含んだストーリも面白いかもしれねぇ」
「なんだ、敵になるか?」
「いやいや、俺が不老不死とはいえ、負けそうだから敵になるつもりはないって。
仮になったとして、お前と戦わないようにする。俺は傍観者一筋だからな」
「あっそ、敵にならないなら味方にもならないか?」
「うーん、ちょっとは手助けしてもいいかな。でも、基本的見守らせてもらうほうだ。
手出しはしない方針でよろしくさせてもらう」
それだけ言い残してランサーは別荘のもとへ消えていく。対象的に一誠は、
「過去と未来を知る転生者か・・・・・じゃあ、俺が学生時代の時に起きた数々の事件も
知っていたのかな」
夜空に浮かぶ満月を遠い目で見上げて呟く。