一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode27

「今日はダークエルフと会わせたいと思う。出掛ける準備をしてくれ」

 

と、一誠がアッシュ達に告げて三十分後。アッシュ達は玄関に集結した。

 

「イッセー、本当にダークエルフは温厚なエルフなのか?」

 

「そうだぞ?というか、エクブラッド人のダークエルフを見たことがないからどれだけ

危険なのか見当がつかない」

 

「うーん、そう言われるとあたしも困る。見たこともないから」

 

「じゃあ、俺を信じてダークエルフと接してくれ」

 

キーラの頭を撫でているとエイリンとユーミル、真紅の帽子と

マントと緑の水着らしきものを身に付け、四つ葉のクローバーを模したベルトで縛っている

白いミニスカート。上腕まで包む緑の手袋のようなものと膝まで包むブーツを見に付けた

青い瞳にクリーム色の女性が現れた。

 

「エイリン、ユーミル、アレイン。準備は良いな?」

 

三人は頷き、一誠の傍に立つとアッシュ達の足元まで魔方陣が出現し、光と共に消失した。

 

 

 

ダークエルフが住む地に一誠達は辿りつき、アレインという女性の先導のもとで足を運ぶ。

 

「この森も来るのは久し振りだな」

 

「ああ、ここでイッセーと出会い、再会し、イッセーと共に歩んだ記憶がある場所だ」

 

「あれから色々と遭ったよなぁー」

 

懐かしむように一誠が口を開いた。神秘的な森の中を歩き続けるアッシュ達は緊張していた。

これから会うダークエルフは温厚というが、実際にダークエルフを初めて見るわけで、

緊張しているのだ。

 

「おっ、懐かしいのが現れた」

 

「懐かしい?」

 

一誠が手を差し伸べると、その手に羽が生えている小さな人間が乗り出した。

 

『お久しぶりです、兵藤一誠』

 

「久し振りだ、森の妖精。今日は友達も連れて来たんだ」

 

そう言ってアッシュ達にも見えるように手を出した。

 

「この森を管理している妖精だ」

 

『初めまして、兵藤一誠のご友人達。今日は何の用で?』

 

「グローリィさんに会いたくてな」

 

『そうでしたか。では、洞窟までの同行をさせてもらいます。アレインさんもおりますしね』

 

森の妖精は一誠の肩に乗かった。それから、再び歩き初めてしばらくして目的地に辿り着いた。

 

『では、私はこれで』

 

「ああ、またな」

 

森の妖精と別れた後、目的地である洞窟に悠然と一誠は洞窟の中へ入る。

 

「この中にダークエルフが・・・・・?」

 

「この先にいるんだよ」

 

暗い洞窟の中を歩き続ける。洞窟内で足音だけが響く。

後ろに振り返れば潜った入口の向こうから光が見えるも、段々と小さくなっていく。

その光が完全に無くなると、辺りは真っ暗な常闇。思わずルッカとキーラは一誠の服を掴んだ。

 

「怖いか?」

 

「うん・・・・・」

 

「んじゃ、光を照らす」

 

そう言った瞬間、一誠の背中に十二枚の金色の翼が生え出して、洞窟の中が明るくなった。

恐怖と不安があっという間に無くなった。光があると安心する。

心の拠り所とばかりに光を縋って。一誠が光を照らしながら歩き続けてしばらく。

一誠が放つ光とは別の光が見えてきた。―――出口だ。

その出口まで歩を進め―――光に呑みこまれながら洞窟から潜り抜けた。

アッシュ達の眼前にはどこまでも広がっている森林、豊かな緑が続いている。

その中に巨大な木が一番目立っていた。まるで森の長のように壮大な木である。

 

「ここがダークエルフが住んでいる森だ」

 

「ここが・・・・・エクブラッド人自治区みたいな場所だ」

 

「ダークエルフは木の上じゃなくて木の下で家を建てて住んでいる」

 

一誠が巨大な魔方陣を展開した。その魔方陣に踏み込んで

手を招いて乗るようにアッシュ達を促す。魔方陣に全員が乗ると、

ゆっくりと地上へ降りる。地上に辿り着くと、魔方陣は消失し、足が地面に着く。

 

「こんなこともできるんだな、キミは」

 

「まーな」

 

一行は再び歩きだす。

 

「と、やることがあったんだ」

 

「やること?」

 

「ちょいと待っててくれ」

 

一誠がいきなり姿を暗ました。アッシュ達は「何だ?」と呆然に立ち尽くすことしかできない。

 

「ねえ、イッセーが言うやることって何なの?」

 

「ああ、プレゼントだ」

 

「プレゼント?」

 

「来訪した際に何かを送るんだ」

 

「いや、知っているがどうして今になってそんな事を?」

 

「現地で調達した贈り物は直ぐに食料となるからな」

 

―――数分後。一誠が背中に二つの籠を背負って戻ってきた。

 

「お待たせ」

 

「随分と・・・・・たくさん採ってきたわね」

 

「まあ、このぐらいないとな。それじゃ、行こう」

 

一誠が戻ってきたことでダークエルフが住む場所へと向かう。

 

「キュイ」

 

その最中、一匹の小動物が顔を出してきた。その小動物の尻尾は二尾で、

一誠がそのまま歩いていると、一誠に駆け寄って肩に乗り出した。

 

「イッセー、その動物はなんだ?」

 

「コロだ。可愛いだろう?」

 

「まあ、確かに可愛いが・・・・・どうして肩に乗るんだ?」

 

「分からない。懐かれているのは確かだな」

 

―――しばらくして、

 

「いくらなんでも、懐かれ過ぎだろう!」

 

一誠が白い毛むくじゃら状態となった。一誠の全身にコロがしがみ付いていて、

離れようとしないからだ。

 

「うわー、イッセーの体が見えないわ」

 

「全部、小動物で埋め尽くされている」

 

「一匹ぐらい、こっちに来てもいいと思うんだが・・・・・」

 

「動物をも魅了するというのか。イッセーの魅力は」

 

一誠が歩くたびにコロが続々と現れ、一誠にしがみ付く。

まるで客を呼び込む看板娘のようであった。

 

「ところで、ダークエルフがいる場所ってどこ?」

 

「あの巨木のところだ。もうそろそろ着くはずだ」

 

巨木を目指して歩き続ける一誠達。次第に巨木に近づくとコロ達が一誠から離れていく。

そして、完全にコロが一誠からいなくなった頃にはダークエルフの住処と思しき建物が

アッシュ達の視界に入ってきた。

 

「あれが、ダークエルフの家・・・・・」

 

「その通りだ。さて、誰と最初に出会うかなー」

 

籠からキノコを取り出した。その木のこの傘は編み状で全体が白い。

 

「「っ!」」

 

ルッカとキーラの耳がピクンと反応したと思えば、

ふらりと白いキノコに吸い寄せられるように近づく。

 

「ん?どうした」

 

「・・・・・良い匂い」

 

「うん・・・・・それも美味しそうな」

 

スンスンと鼻先を白いキノコに近づけ匂いを嗅ぐルッカとキーラだった。

 

「うーん、このキノコ・・・・・エクブラッド人を魅了するのか?」

 

ダークエルフの住処の中を歩きながら首を捻る。

 

「「むっ?」」

 

「あっ」

 

その途中、バッタリと二人のダークエルフと出くわした。一誠とダークエルフ達は目を張った。

 

「「あ、あなたはっ!?」」

 

「おー、あの時の。はい、キノコを献呈するからグローリィさんのところへ案内してくれ」

 

「「おおおおおっ!わかりましたぁっ!」」

 

『・・・・・』

 

ダークエルフがどんなエルフなのか見たことがないアッシュ達にとって覆された瞬間だった。

キノコで大喜びするダークエルフ。それが第一印象となった。

 

「ルッカ、もしも一族にダークエルフが現れたら、あのキノコを与えたらどうなるんだろうね」

 

「食べさせたら大人しくなるかもしれない」

 

手を取り合って喜ぶダークエルフの二人を見つめながら、エクブラッド人のルッカとキーラは

試してみようと考えていた。

 

―――○♢○―――

 

ダークエルフに案内され、グローリィというダークエルフが住む家に辿り着いた。

いざ、扉にノックをすると、扉は開け放たれた。

 

「誰だ?」

 

「久し振り、グローリィさん」

 

「おお、イッセーくんではないか!それにゲルダンの娘達もいるではないか!

はは、数年振りだな!」

 

中から現れた短い銀髪に口と顎に銀の髭が生えている中年の男性。

笑みを浮かべ、一誠を抱擁する。

 

「今日はどうしたのだ?来るなら連絡してもらいたかったぞ。歓迎の準備もできんからな」

 

「悪い、今日は会わせたい友達がいるからさ」

 

「友達?」

 

「この子達だ」

 

ルッカとキーラをグローリィの前に移動させた。

初めて見るダークエルフを間近に二人は緊張をして、顔を強張らせる。

 

「ふむ・・・・・エルフか?だが・・・・・どこかエルフとは違うな」

 

「なんとなく分かるか?」

 

「そうだな。エルフのようだが、私が知っているエルフとはどこか違うな」

 

腕を組んでルッカとキーラを見据える。一誠は満足そうに頷いて事情を説明する。

 

「グローリィさん。いま俺は異世界に住んでいるんだ。

その異世界でこの二人、エクブラッド人と交流をしているんだ」

 

「異世界?エクブラッド人?イッセーくん、どういうことだね?・・・・・と、

立ち話も何だから中に入りなさい。そこで色々と聞かせてもらおう」

 

グローリィは一誠達を家の中へ招き入れた。その申し出に一誠は家の中へと入り、

アッシュ達も緊張の面持ちで中に入った。

 

 

 

「ほぉ・・・・・そういうことか。エクブラッド人は異世界に住んでいたエルフの末裔」

 

「俺の推測ではそうだと思っている」

 

「なるほどな。確かにエルフの末裔なら納得ができる。

しかし、異世界でイッセーくんが移り住んでいるとは驚いた。

異世界という違う世界も存在しているのだな」

 

グローリィと一誠が話し合っている間、アッシュ達は床で腰を下ろしていた。

座るスペースもないため、必然的に床で座る形となったのだ。

 

「して、ルッカとキーラとやら」

 

「「は、はい」」

 

「そうかしこまるな。そなたらの世界にはダークエルフがいるかな?」

 

好奇心から来る質問。ルッカとキーラは顔を見合わせてから首を横に振る。

 

「ダークエルフはエクブラッド人が〈七つの大罪〉のうち、三つ以上に取り憑かれた結果、

その罪を暴くように肌が黒くなってダークエルフ化となります。

ですから、ダークエルフは存在しません」

 

「なんと、そんな曰くつきがあるのか。

私達ダークエルフは太古から存在している黒きエルフなのだが、

そのような形でダークエルフになるなど初めて聞いた。

異世界のエルフ、エクブラッド人の文明は実に興味深い物だ」

 

銀の顎髭を触りながら感嘆の声を漏らす。

 

「あ、あの・・・・・」

 

「なんだ?」

 

「イッセーから聞いたんですが、ダークエルフは温厚な種族だと」

 

キーラの質問にグローリィは笑みを浮かべ頷く。

 

「うむ、皆優しいぞ。昔は争いはあったが今は争いなどせず、平和に暮らしている。

そちらの世界のダークエルフは悪しきエルフだと理解したが、私達ダークエルフは人王である

イッセーくんと仲がいいのだ。色々と助けてもらったり物資を援助してもらっている」

 

「この先にいるエイリンとユーミルと同じ種族のドワーフ達にもしているがな」

 

付け加える一誠。

 

「エクブラッド人のルッカとキーラよ。異世界に来てどうだ?」

 

「はい・・・・・とても刺激的で楽しいことが一杯です」

 

「見たことも聞いたこともない物を触れて、

体験したり、色んな場所へ連れて行ってくれてとても楽しいです」

 

「ふふっ、そうかそうか。それはなによりだ。時間が許す限り、

この世界を楽しんでくれたまえよ」

 

ルッカとキーラの頭を撫でるグローリィ。不思議と嫌な感じはしなかった。

まるで父親に撫でられるような感覚で自然に受け入れた。

 

「この先にいるドワーフ族にも顔を出すといい。

ゲルダンの奴がまたイッセーくんが来たら再挑戦すると、自己鍛錬をしているからな」

 

「マジで?んじゃ、もう一回やってやろうじゃん」

 

「ははっ!元気が良いな。人王となってからも変わらないなイッセーくんは」

 

「皆は今の俺を好いてくれるからな」

 

「ふふっ、そうか。ユーミルとエイリン、アレインも良かったな。

イッセーくんと出会えてさぞかし楽しいだろう」

 

三人に話しかけながら立ち上がった。

 

「時間はあるか?今から歓迎のパーティの準備をしようと思っているのだが」

 

「問題ない。ルッカとキーラをダークエルフと会わせたかったからここに来たもんだし、

他の皆にも接してやりたかった」

 

「ならば、すぐに準備をせなば。その間、ドワーフ達の所に行くといい」

 

そう言い残してグローリィは居間からいなくなった。

 

「・・・・・なんだか、お義父さんみたいな人だった」

 

「そうだね、あたしもそう感じた」

 

「好印象を抱いたところで、今度はドワーフ達のところに行くぞ」

 

―――○♢○―――

 

一誠達は聳え立つ巨木の麓にいた。ダークエルフの住処から離れ、

ドワーフ達の住処へと訪れていた。鉄と鉄がぶつかり合う音が既に届いている。

エイリンとユーミルが先導し巨木の根っこを人工的に掘って造った出入口に潜ると、

少し背丈が小さくヒゲを伸ばした存在たちが手にハンマーを持って

超高温で焼かれた鉄の塊を叩いて形にしていたり、

材料に必要なのだろう様々な素材をリアカーのような物で運んでいたりしていた。

武具や工芸品を作っているようで手を休めずに次々と加工をしていく光景が

アッシュ達の目に入る。

 

「うわ・・・・・ちっちゃい」

 

「これがドワーフ族・・・・・」

 

「髭が毛むくじゃらな人が多いわね」

 

各々と感想を述べていると、一人のドワーフが一誠達に気付いた。

腕に抱えていた資材を落として叫んだ。

 

「ユーミルお嬢とエイリンお嬢!それに人王!」

 

『なんだとっ!?』

 

他のドワーフ達もが手を休め、一斉に一誠達へ視線を向けた。

 

「皆、久し振りじゃ!」

 

「遊びに来たのじゃ!」

 

ユーミルとエイリンが挨拶をした瞬間、ドワーフ達が歓迎の声と拍手をし始めた。

 

「さて、ここはドワーフ達が魔法の武器や防具、装飾品を造るための工房だ。

この木は階層があって一番最上階はドワーフの王がいる」

 

「ドワーフの王・・・・・」

 

「因みに、グローリィはダークエルフの長老だ」

 

アッシュ達に説明していると、外からドンッ!と鈍い音が聞こえた。

 

「まーさかね?」

 

一誠は脳裏で予想を浮かべて外に出た。一誠の視界に飛び込んだ外の風景。

 

「待っておったぞ、兵藤一誠!」

 

頭に小さな冠を乗せ、長いヒゲを伸ばし、

装飾の凝った服を身に包んでいる一人のドワーフが、石の台の上に立って腕を組んで佇んでいた。

 

「早いな。聞こえていたのか?」

 

「下の階層の奴らが騒ぐもんでな。その中から人王という声も聞こえたから、

あの時のチャレンジをしようとこの特注の台ごと降りてきたわけだ」

 

「ははは・・・・・やる気満々だな」

 

一誠は苦笑を浮かべる。特注の台は一誠の身長と合わした感じの大きな台だった。

 

「前回はお前が俺に合わして勝負したからな。今度はお前に合わして勝負だ。

異論はないよな?」

 

「避けて通れない道・・・・・か」

 

ザッ、と足を運び出す。

 

「俺も前の俺じゃないぞ。それでもいいんだな、ゲルダン」

 

「構わない。お前のことは堕天使の総督殿から聞いている。やることは変わらないだけだ」

 

「分かった。じゃあ、今度は全力でやろう」

 

左の肘を石の台に突き立てれば、ゲルダンと呼ばれたドワーフも左の肘を台の上に突き立て、

一誠の手を強く握った。一誠と対峙するゲルダンの足は、一誠と合わせるように

石の足場があって、それに乗っていた。そこへ、レベッカが訊ねた。

 

「イッセー、なにをするつもりなんだ?」

 

「単純な力比べだ。ドワーフ族はこうして力比べをすることが一種の交流であり、

王を決めるための真剣勝負なんだ」

 

「そういうことだ、悪いがしばらくイッセーを借りるぜ。おい、誰か合図をしてくれ」

 

「へい!」

 

二人の間に一人のドワーフが現れれば、

 

「おっ!また腕相撲をするそうだぞ!」

 

「今度は王と王同士の腕相撲か!こりゃ見ないわけにはいかないな!」

 

ぞろぞろと大勢のドワーフ達が一誠とゲルダンの周りを囲んで湧き始める。

 

「それでは、準備は良いか?」

 

「「おう!」」

 

「―――始めッ!」

 

刹那。一誠とゲルダンから腕に力を籠めたと同時に衝撃波が発生した。

 

「ぬぅっ!」

 

「ただの力比べでここまで凄まじいのか・・・・・!」

 

「男と男の熱い戦い・・・・・!」

 

その余波はアッシュ達も届き、信じられない面持ちで一誠とゲルダンの腕相撲を見守った。

どちらも譲れらない。拮抗した腕相撲。互いの腕、拳に全力で力を籠めて握り締め、

相手の手の甲を石の台に叩きつけようと、次第に全身にまで力が入る。

 

「いきなり負けそうにはならないか!」

 

「当たり前だ。今回は最初からゲルダンとして、ゲルダンと戦ったんだからな」

 

「ははははっ!倒し甲斐がある!今度は俺が勝つぞ、イッセー!」

 

「ドラゴンになった俺が、負けるわけにはいかないんだよ!」

 

全身に闘気を纏いだす二人。その余波は観戦しているドワーフ達やアッシュ達にまで広がる。

 

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぅっ!」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

気合の雄叫びをあげる。だが、その時だった。

 

「が、頑張って!」

 

「イッセー頑張れ!」

 

ルッカとキーラの声援が一誠の耳に届く。一誠は口の端を吊り上げた。

 

「悪いな、ゲルダン。また声援されたから―――今度も勝たせてもらう!」

 

「ぐぅっ!お、おのれ・・・・・・!負けられんぞ・・・・・!」

 

徐々に、ゆっくりとゲルダンの腕が傾く。顔中に汗を流して必死に抵抗する。

 

「―――イッセー、トドメだ!」

 

シルヴィアが一誠に応援した瞬間。

 

「はああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

ゲルダンの手の甲が、特注の石の台に押し付けられた。前回のように壊れなかったものの。

 

「勝者!人王!」

 

一誠が勝利したのであった。周りから歓声が上がり、一誠やゲルダンに称賛の声が投げられる。

 

「ははは、また勝ったぞ」

 

「クソ!また負けちまった!結構鍛え直したのによ!」

 

「俺が人間のままだったら負けていたかもな。危ない危ない」

 

「はぁ・・・・・イッセーの勝利の理由は声援か。俺も娘に応援してもらえれば勝てるか?」

 

「それは実際にしてみないと分からないけど想いは力となる。それが俺の力だ。楽しかったよ」

 

ゲルダンに手を差し伸べる。その手を見てゲルダンも手を出して一誠と握手を交わした。

 

「「イッセー!」」

 

ルッカとキーラが一誠に駆け寄る。

 

「二人とも応援ありがとうな」

 

「うん、イッセー凄かった」

 

「見ているこっちまで興奮したよ。腕相撲って凄いんだな」

 

二人は一誠を見上げて笑みを浮かべる。一誠も笑みを浮かべて頭を撫でると、

 

「シルヴィア、応援ありがとうな。しっかりここに届いたよ」

 

胸=心に親指で差してシルヴィアに話しかけた。

一誠の言動にシルヴィアは頬を赤くさせてそっぽ向いた。

 

「れ、礼など言われる覚えはない!頑張っている者に応援することは当然だろう!」

 

「それはそうだ。けど、応援をしてくれたから勝てたもんだからな」

 

シルヴィアに近づき、頭を撫で始める。

 

「ありがとうな」

 

「だ、だからだな・・・・・」

 

『・・・・・』

 

「ハッ!?」

 

視線を感じ、シルヴィアは慌てて周囲に視線を向けた。

 

「シルヴィア、お前・・・・・まさか・・・・・」

 

「あ、姉上が思っているようなことではございません!」

 

「あら、それにしてもまんざらでもなさそうに・・・・・ねぇ?」

 

「ラーズ!お前はぁっ!」

 

「シルヴィアに春が訪れるなんてね。

でも、相手はドラゴン・・・・・交際相手としていいのかしら?」

 

「姉上も何をお考えになられているのですか!」

 

「青春だねぇー」

 

「あ、兄上まで!?」

 

兄や姉、妹に意味深なことを言われ、シルヴィアはうろたえる上に狼狽する。

 

「もう!兄上も姉上もラーズもいい加減にしてくださぁあああああああああああああいっ!」

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