一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode28

「さて、今日は違う地方に案内しようと思う」

 

とある日、夏休みが最終日に近づいた日に一誠はアッシュ達にそう告げた。

 

「それは一体どこの場所だ?」

 

「昔から存在する建物が多い場所だ。とても有名で世界遺産って世界中の人間が認めるほどの

建造物があるんだ。そこの場所の郷土料理も美味いぞ」

 

「美味しいお肉はあるんでしょうね?」

 

「あんまりないぞ。そこは雅という言葉がピッタリなところだから―――」

 

王族であるシルヴィア達と聖竜皇家のエーコを見渡す。

 

「お前らみたいな王族や皇家の立ち振る舞いが試される場所かもしれないな」

 

 

 

それから、一誠が案内するとアッシュ達に最寄り駅まで案内した。

ミラベルやユニス以外、駅の中の入り方を知らないアッシュ達はドギマギし、

ホームに入ると、レールの上に鎮座している横長の鉄の塊、電車を見つけて好奇心が湧く。

ホームの中を歩き階段を上がり、廊下を少し歩いてまた階段に降りる。

 

「こいつに乗るぞ」

 

一誠が手に触れるそれは二階建ての乗り物だった。全体が白く、滑らかな形をしている電車。

 

「あら、あの時の電車にならないの?」

 

「これから行く場所は何時間も掛かる場所だ。

そこに行くためにはこの電車に乗った方が一番早い。

というか、この電車に乗らないといけないんだ」

 

「なるほど・・・・・電車という乗り物は種類があるのね」

 

納得した面持ちのミラベルに一誠は告げた。

 

「この電車の名前は新幹線という。ミラベル、この新幹線なら紅茶を飲んでも大丈夫だ」

 

「それは良い事を聞けたわ」

 

嬉しそうにミラベルは笑った。結局、前回乗った電車では紅茶が飲めなかったので、

この新幹線なら飲めるということに移動する乗り物に乗りながら

ティータイムを楽しもうと思い巡らせた。

 

「さて、新幹線に乗ろうか」

 

そう言って一誠は新幹線に乗り込んだ。アッシュ達も続いて乗りこんで一誠の後を追う。

一誠と共に二階の空間に入ると、豪華絢爛なテーブルや椅子が設けられていて

天井に小さいながらもシャンデリアが吊るされている。

 

「好きな場所に座ってくれ。ここは俺専用の空間だからな」

 

「イッセー専用って・・・・・もしかして人王の?」

 

「その通りだ。一般人が入ることはない特別な空間だぞ?家族は別としてだが」

 

一誠以外各々と椅子に座り出すと、テーブルにメニュー表があった。

 

「腹が減ったら頼んでいいぞ。そこにある料理しかないけど」

 

空いている席に座って一誠はそれから瞑目した。そこへ、一誠達がいる空間にある扉が開いて、

リーラが現れた。リーラの手には毛布が持っていて、静かに一誠に近寄っては体に掛けてやった。

 

「この新幹線は真っ直ぐ目的地にまで向かいますので、

皆様はご静かに目的地までのんびり過ごしてください」

 

「イッセーは寝ているのか?」

 

「ええ、目的地にまで絶対に起きませんので、皆様はその間のんびりとお過ごしください」

 

一誠の横に座って、それから静かに居座ったその直後、新幹線がゆっくりと動き始める。

アッシュ達は反射的に窓の方へ顔を向けると、景色そのものが移動し始める。

ゆったりとした速度が徐々に上がって、何時しか物凄い速さで移動をするようになった。

 

「・・・・・凄いわ」

 

「物静かに走るのだな。この乗り物は」

 

「これなら確かに違う国同士の人間が行き来できるというものだ」

 

「それだけではない。物資の輸入もこれならば、安全かつ早く届けれるというものだ」

 

「「・・・・・」」

 

不意にマキャベリ、ヴェロニカが目を合わせた。その意図は―――。

 

「「(イッセーにこの乗り物を作らせよう)」」

 

刹那。

 

「―――マキャベリ様、ヴェロニカ様。私と一緒に来てもらえませんか?」

 

音もなくリーラが二人の間に佇んでいたが―――その纏う絶対零度は良い感情ではないことが誰から

見ても明らかだった。鋭い眼光がマキャベリとヴェロニカに向けられる。

 

「うっ・・・・・!?」

 

「は、母上のような恐ろしさを感じるだと・・・・・!?」

 

「いいですね?」

 

「「わ、分かった・・・・・」」

 

大人しくリーラについていく二人。その光景を見ていたシルヴィアは、

 

「あんな姉上は初めて見た」

 

と、思わず呟いた。

 

―――○♢○―――

 

一誠達を乗せた新幹線は無事に目的地にたどり着いた。大勢の人混みの中を歩き、

 

「で・・・・・そーしてマキャベリとヴェロニカが泣きそうな顔をしているんだ?

ちょっとあの二人だから気になるぞ?」

 

「お気になさらず。少しばかり感動をするお話をしただけですので」

 

「ふーん、感動する話か。俺も後で聞かせてくれ」

 

「かしこまりました」

 

深く考え込まずリーラに頷く。

 

「・・・・・母上が目の前にいたかと思ったぞ・・・・・」

 

「吾輩があんなことするなぞ、幼少の頃以来であるぞ・・・・・」

 

未だに泣きそうな顔で若干を体を震わすヴェロニカとマキャベリであった。

一誠とリーラの先導のもと、改札口まで移動して潜っていく。

 

「おおっ!懐かしいな!」

 

ランサーが声を上げる。アッシュ達も好奇心に辺りをキョロキョロと顔を動かす。

 

「異世界の文字だらけで、なんのことなのか分からないわね」

 

「だが、雰囲気的に何らかの店だということは理解できる」

 

「そうだな。ところで、イッセー」

 

レベッカが声を掛けた。

 

「なんだ?」

 

「イッセーは人王だというのに周りの反応は薄いな。どうしてだい?」

 

「ああ、姿を消しているからだ」

 

あっけらかんに一誠は述べた。

 

「姿って・・・・・見えているわよ?」

 

ラーズの指摘に一誠は頷いた。

 

「正確に言うと幻術、幻を周りに見せているのさ。

お前達以外の全ての人間にずっと俺がいない幻をな」

 

「なるほど・・・・・でも、どうしてそんなことを?」

 

「寄って掛かって俺に集まってくるんだ。学校のテニスをしていた女子学生がその良い例だ」

 

そう言われアッシュ達は「ああ・・・・・」と納得した。

確かに、一誠が人王と言う立場だから有名人なのは間違いない。

そんな人物に話しかけ、触れ合いたい気持ちが湧きあがるだろう。

王族としてヴェロニカ達も良く経験している。

 

「今この幻を解いたら、お前達を案内することが難しくなるけど・・・・・解いてみようか?」

 

「いや、そのままでいてくれ」

 

「くくく、ああ、分かったよ」

 

笑みを浮かべ、一誠は足を運ぶ。一誠とリーラの先導のもと、

アッシュ達は駅を出て、目的地へと歩み出した。駅を出て直ぐ前方に塔を発見した。

 

「イッセー、あの塔はなんだ?」

 

「この地方で有名な一つ―――京都タワーだ」

 

―――○♢○―――

 

「うわー!」

 

キーラが感嘆の声を漏らす。一誠達が山を登るように坂を上っている最中でも

趣のある日本家屋の店が両脇に立ち並んでいる。

 

「凄い・・・・・見たこともない物がいっぱいある」

 

「美味しそうな匂いもするわ!」

 

そこで一誠が一言。

 

「いま俺達が上っている坂は、三年坂って言って、転ぶと三年以内に死ぬらしいぞ?」

 

『・・・・・』

 

途端にアッシュ達が強張ったり緊張した面持ちとなりだした。

 

「う、嘘だよな・・・・・?」

 

「まあ、ただの言い伝えだから気にする事もないが・・・・・」

 

―――ガシッ!

 

一誠にシルヴィア、ラーズ、ルッカ、キーラが転ばないようにするためか、

しがみついてきた。エーコはアッシュ。

 

「まあ、足元を気をつけて歩けば早々転ぶことはないわよね」

 

「ミラベル王女殿下の言う通りだな」

 

「ふん、死など恐れはしない」

 

ミラベル、レベッカ、ヴェロニカは悠然と足を運ぶ。

 

「・・・・・歩きづらい」

 

四人に抱きつかれ、歩く速度が減少する一誠であった。

すると、ミラベルが―――。

 

ドン、

 

「すいま――」

 

観光客の人とぶつかった。が、その反動で体が後ろに転んでしまった。

 

「・・・・・」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

ミラベルとぶつかった観光客も声を掛けた瞬間。

 

「・・・・・転んでしまったわ」

 

と、自嘲染みた言葉を言い放ったのだった。ミラベルは立ち上がり無言で坂を上る。

それから坂を登り切ると大きな門が現れる。その奥には古びた寺院。全て木で建造され、

とても威厳が満ちている。

 

「ここは清水寺といって大昔の人が建造した有名な場所の一つ、寺なんだ」

 

「壮大、の一言だな」

 

「歴史的な雰囲気がヒシヒシと伝わってくる・・・・・」

 

「素晴らしいわ・・・・・」

 

門を潜って大きな古い寺院へ足を運ぶ。その寺院から眺める風景は、

異世界から来たアッシュ達にとって感動させるには十分だった。

 

「うわー・・・・・」

 

「町が見渡せるのね」

 

「そうだね。・・・・・おや」

 

ジュリアスが眼下にとあるものを発見した。三つの水が滝つぼに落ちている場所を。

そこに大勢の人々がこぞってその水を長い柄に付いた容器に入れて飲んでいる光景も目にした。

 

「イッセーくん、あそこに水を飲んでいる人達がいるんだけど、なぜなんだい?」

 

「あの場所か。あそこは音羽の滝といって、あの水にはちょっとした言い伝えがあるんだ」

 

「言い伝えとは?」

 

「左から延命長寿の水、恋愛成就の水、学問上達の水と周りから呼称されているんだ。

それぞれ、どれかの水を飲めばそのご利益が得るって話―――」

 

クイクイ。

 

一誠の袖が引っ張られる感覚。目を下に落とせば、ルッカがいた。

 

「そこ、行きたい」

 

「音羽の滝にか?」

 

「うん」

 

小さく頷くルッカ。一誠は要望に応え、アッシュ達を引き連れて寺院から降りていく途中で、

ポツンと鎮座する石を見つけた。

 

「イッセー、あの石は邪魔ではないのか?」

 

「ああ、あれは恋占いの意志といって、向こうにも石があるだろう?

あの石まで目を瞑って歩いて無事に辿りついたら恋が叶うって伝承が―――」

 

「やる!」

 

「あたしもだ!」

 

「面白そうね、私もやってみようかしら?」

 

ルッカ、キーラ、ラーズが名乗り出た。

 

「あ、あたしも、やってみなくはないわ・・・・・」

 

エーコも素直に言わずながらも参加すると名乗り出た。

 

「んじゃ、この黒い布で目を巻いてやってもらおうか。四人同時にな」

 

どこからともなく取り出した黒い布をルッカ達の目を覆うように巻いて石の前に

移動させれば、四人を歩かせた。

 

「ま、真っ暗・・・・・」

 

「石・・・・・石・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「これじゃ、どこに石があるのか分からないじゃないのよ・・・・・」

 

覚束ない足取りで見当違いな場所へと歩んでしまうも、

ラーズは一歩一歩と着実に石へと進んでいく。

 

「確か、この辺り・・・・・」

 

と、ラーズが手探りで石に近づこうとした時だった。

 

「あーもう!こんなんで恋が叶うんなら誰も苦労はしないわ!

直接触れても変わらないんじゃないの!?」

 

バッ!とエーコが布を取り外して真っ直ぐ石の方へ歩いていく。

 

「おいこら、聖竜皇家と名乗る奴がなにルールブレイカーをしているんだよ」

 

一瞬でエーコの背後に寄っては頭を叩いて、強制退場させた直後に。

 

「あうっ!」

 

ルッカがこけながらラーズより一歩早く石に触れた。

 

「ルッカが一番で二番がラーズか」

 

「・・・・・これで、恋が叶う」

 

密かに握り拳を作って一誠に視線を送った。

 

「いや、伝承であって必ずしもなるわけじゃないからな?本人次第でなるわけだから」

 

苦笑する一誠。ルッカは心の中でガッカリしたのは当然というべきであろう。

恋占い石を終えて音羽の滝に向かう。一誠達が辿りつく頃には長蛇の列ができている。

しばらく待てば一誠達の番が来た。

 

「さて、三つのうち一つだけ選んで飲んでくれよ?」

 

「私は『強欲の女王』なのよ?全部飲むわ」

 

「おい」

 

言っている傍からラーズは三つの水を器に入れて飲みほした。

 

「む・・・・・」

 

シルヴィアは悩んだ末・・・・延命長寿の水を選んだ。

 

「あら?お姉様は恋愛成就の水を飲まなくて良いの?」

 

「わ、私がどれを選ぼうが勝手だ!」

 

「キーラ、どれを選ぶ?」

 

「あたしはルッカと同じ水を飲むつもりだぞ?」

 

「・・・・・恋愛成就」

 

「ヴェロニカ、君は恋愛成就の水を飲んだ方が良いと思うよ」

 

「ジュリアス、そこに跪け。この私が直々にその首を斬ってやる」

 

「・・・・・延命長寿の水が妥当ね」

 

「ふむ、吾輩は恋愛成就であろう。イッセーを欲しているからな」

 

「うーん、俺は飲まないや」

 

「ア、アッシュ・・・・・あんたはどの水を飲むつもりよ?」

 

「えっ?う、うーん・・・・・どれも捨てがたいんだよな。

流石にラーズ王女殿下のようには無理だけど」

 

と、そんなこんなでアッシュ達は最終的に音羽の滝の水を飲んで別の場所へと

移動をするのだった。

 

 

 

動く乗り物を利用して一誠達は、とある寺院の前に辿りつ着いた。

 

「外見は違うけど、あの寺は銀閣寺って言うんだ」

 

「銀・・・・・銀が見当たらないが?」

 

「まあ、当時この寺を創った昔の人の事情で銀にしなかったんだよな」

 

「なんだか、殺風景ね」

 

「次に行く金閣寺っていう寺はもっと凄いから安心してくれ」

 

 

 

『す、凄い・・・・・!?』

 

アッシュ達の眼前にある金色の寺。キラキラと輝く寺は湖にあり、水面にも映し出している。

 

「だろう?」

 

一誠は微笑む。アッシュ達の反応を楽しんでいるようであった。

 

「―――と、言うわけで。ここで記念撮影をしよう」

 

「記念撮影・・・・・?」

 

「思い出に残すために写真を撮ることだ。ほら、プリクラみたいにこれで撮るんだよ」

 

手の平サイズの黒い機械を手にしていた一誠。

 

「それ、複製できるのか?」

 

「勿論だ。何百枚もできるぞ?ほら、身長の高い奴は後ろで身長の低い奴は前に。

ああ、その時、膝を少しだけおって前屈みになってくれ」

 

一誠の指示通りに動くアッシュ達。そこで、アッシュがとあることに気付いた。

 

「お前はこっちに来ないのか?」

 

「俺は撮る側なんだぞ。そっちに行けれるか」

 

「もう一人増やせれるじゃないの」

 

「それしたら、幻を解かないといけないし大騒ぎになる。

というか、俺が一緒に撮られても写真には映らないぞ」

 

諦めろと感じで一誠はカメラを構えた。―――すると、

 

「おお、やはりそこにいるのはイッセーじゃな!」

 

一誠の名を呼ぶ声が聞こえる。全員がその声がした方へ視線を送ると、

金髪に巫女服を身に包んだ少女がいた。

 

「どうやら、幻で姿を隠しているようじゃが、私の目は誤魔化せんのじゃ」

 

年不相応に育っている胸を張って、

金の瞳を一誠に真っ直ぐ向ける少女に一誠が不意に苦笑を浮かべる。

 

「・・・・・やっぱり、人間じゃない奴には感知されるか」

 

「当たり前じゃ。その上、お主が宿すドラゴンの波動が凄まじいからの。

どこにいても直ぐに感じるぞ」

 

「まあ、そうだろうなとは思っていたよ。―――久し振りだな。九重」

 

「うむ、久し振りじゃ!」

 

少女は一誠に会えて嬉しいのか、―――頭に獣耳と九本の獣の尾を出した。

 

「あっ、あれは・・・・・」

 

「シルヴィア、知っているのか?」

 

「ええ・・・・・」

 

一誠の尻尾のケアを手伝ったシルヴィアしか知らない事だ。少女が生やす

九本の獣の尾と酷似している。様子を見ていると、

九重が一誠に駆け寄り、腰辺りに抱きついた。

 

「イッセー、その少女とは知り合いか?」

 

「ああ、この町を統べる者の娘だ。彼女とも面識あるし、

この町の事なら誰よりも熟知している。九重、自己紹介してくれるか?」

 

一誠の促しに九重は頷いてアッシュ達と対峙する。

 

「皆者、私は九尾の狐の九重と申す。以後、お見知りおきを」

 

「九尾の狐・・・・・?」

 

「人間じゃない種族、妖怪という種族の一種だ」

 

「人間ではない・・・・・なるほど、確かに外見を判断すれば人間ではないな」

 

ヴェロニカが納得していると、

 

「これ九重。イッセーの邪魔をするではない」

 

新たな存在が出現した。そして、誰もが目を見張った。

 

『(デ、デカイ・・・・・!?)』

 

アッシュ達は巫女服を見に包む金色の女性の溢れんばかりに巫女服を押し上げている

豊満な胸に驚愕させられた。

 

「「「ま、負けた・・・・・」」」

 

「・・・・・キーラ、私って貧相だね」

 

「だ、大丈夫だよルッカ!イッセーは身体だけで判断するような最低な奴じゃないよ!」

 

「むう・・・・・吾輩といい勝負か?ヴィットーリアよ」

 

「五分五分といったところでしょうか」

 

「な、生だ!生で見られたぞ!ギルフォード、俺はぁぁぁぁああああああああああああああ!」

 

「なんだか、イッセーと出会う女性は皆、胸が大きい人達ばかりだな。

小さい女性もいるがそれでも多い。・・・・・私もその一人だろうな」

 

アッシュ達は各々と口を開き言葉を放つ。

その間にも一誠は新たに現れた女性と話しをしていた。

 

「久し振り、八坂。元気そうで良かった」

 

「イッセーも久し振りじゃの。にしても、この者達は一体誰なのじゃ?

新しく向かい入れた妻か?」

 

「いや、俺の友人達だ。ちょいと訳ありだけどな」

 

「そうか。それはそうと八月の下旬に祭りを行うつもりじゃが、お前も来るであろう?」

 

「ああ、勿論さ。八坂の踊る姿を堪能させてもらうよ」

 

「ふふっ、あまり凝視してくれるなよ?熱い視線がヒシヒシと感じてしまうと、

こちらも体が熱くなってしまうからの」

 

「だったら冷やしてあげるよ」

 

「・・・・・意地の悪いのぅ。

お前でさらに熱くさせてほしいと思う私の気持ちを蔑にするつもりか?」

 

「だったら―――」

 

一誠が八坂の耳元で何やら呟く。八坂の頬が朱に染まり、コクリと首を縦に振りだした。

 

「絶対じゃぞ・・・・・?」

 

「分かっている」

 

意味深な会話だが、何の話しをしていたのかさっぱり分からないでいるアッシュ達。

九重が一誠に声を掛ける。

 

「のう、この京都の地に来た理由は観光なのか?」

 

「そうだ」

 

「ならば、私と母上が案内しよう!美味な料理店も紹介する!」

 

「いいのか?」

 

「うん!」

 

満面の笑みを浮かべ、九重が徐に一誠の肩に乗り出した。

肩から感じる重みに一誠は九重に言った。

 

「大きくなったな」

 

「私も日々成長しているということじゃ。それとも・・・・・重いのか?」

 

「いや、重くはないぞ。そのまま成長したら、八坂と同じぐらい美人な女性になるだろうな」

 

カシャッ!とアッシュ達を撮影した一誠がそう言うと、九重の顔が赤く染まった。

 

「そ、そうかの?私は母上のような綺麗な人になれるか?」

 

「まず間違いないと思うぞ?八坂の背中を見て育てばな」

 

「そうか・・・・・なあ、イッセーよ」

 

「うん?」

 

もじもじと頭の上で恥ずかしげに九重が声を殺して呟いた。

 

「私が・・・・・綺麗な大人になったら・・・・・その・・・・・」

 

「・・・・・」

 

一誠は、金色の翼を生やして九重の頭を撫でた。

 

「その先は、九重が大人になったらもう一度聞かせてもらうよ。それまで待っている」

 

「イッセー・・・・・」

 

「京都の町、案内してもらえるか?」

 

九重の眼下に微笑む一誠の顔。九重は、一誠が待ってくれるという言葉を聞き、

大人になったらもう一度言おうと決心し、頷いた。

 

「うむ、分かった!それじゃ、れっつ、ごー!」

 

―――○♢○―――

 

一誠達は京都の嵐山方面へ向かった。電車で利用すれば目的地まで徒歩。

目的地に到着すれば大きな門を潜り今日ないを進んでいく。受け付けて観光料金を払って―――。

 

「じ、人王様ぁっ!?ど、どうぞ料金など払わずお入りくださいませ!」

 

「あっ、九尾の一族の人だったか」

 

幻で姿を消しているにも拘らず一誠を見えているのは、

人間じゃない種族だからだ(アッシュ達には見えるようにしている)。

受付のヒトに促され目的地である天龍寺を回る。九重や八坂が天龍寺の説明を

アッシュ達にしていくと、大方丈裏の庭園は攻略した。一誠達は八坂と九重に法堂に案内された。

堂内に入り、天井を見上げた瞬間―――アッシュ達の目に飛び込んできたのは大迫力の龍の絵。

 

「な、なんだ・・・・・?このドラゴンみたいな絵は・・・・・?」

 

水竜(ハイドラ)に似ているような気もしなくはないが・・・・・」

 

「というか、どこから見ても睨んでいるように見えるわ。生きているのかしら・・・・・?」

 

異世界メンバーのアッシュ達の言動に一誠は苦笑を浮かべる。

 

「ドラゴンみたいな絵じゃなくて。あれはドラゴンなんだよ。

あの体つきのドラゴンは東洋のドラゴンだ」

 

「とうよう?」

 

「砕いて言えば、東に棲んでいるドラゴンのこと。

東洋のドラゴンは細長い体つきのドラゴンが多いのさ」

 

「へぇ・・・・・地竜(アーシア)翼竜(ストラーダ)水竜(ハイドラ)と同じで

姿が違うドラゴンも存在しているんだ」

 

「お前ら、俺のドラゴンを見せたはずなんだけど?」

 

今さらな反応に一誠は呆れ顔になる。ちなみに天井に描かれている絵は雲龍図と言い、

どこから見ても睨んでみるように見える『八方睨み』である。

その後、天龍寺を一通り回った後、一誠達は外に出る。

 

「さて、次はどこだ?」

 

一誠が訊くと九重は色々な方向に指を差しながら楽しそうに言った。

 

「二尊院!竹林の道!常寂光寺!どこでも案内するぞ!」

 

その後のアッシュ達は京都を様々な場所も観光した。

アンサリヴァン市とはまるで違う街並みや雰囲気、昔に作られた古い建物の数々。

とても刺激的で何時しかアッシュ達は京都の町を気に入った。

 

「この服、気に入ったわ!」

 

「でも、少しきつい・・・・・」

 

「悪くないな。イッセー、吾輩の着物とやらの姿はどうだ?」

 

「とても綺麗だぞマキャベリ」

 

着物を着たシルヴィア達。エーコは鏡で確認した着物を気に入った様子だった。

 

「ところでイッセー。アッシュはどこに行ったのだ?」

 

「くくく、あいつか?」

 

一誠が意味深な笑みを浮かべる。視線をとある方へ向けた直後に着物を着た少女が現れた。

 

「・・・・・誰だ?」

 

「・・・・・俺だよ」

 

『な―――っ!?』

 

「・・・・・ううう、イッセーに無理矢理気させられたんだよぉ・・・・・」

 

女装したアッシュがその場で涙を流す。

 

「驚いたな。意外と似合っているじゃないか。一枚撮ろっと」

 

カシャッ!

 

「ちょっ!今の俺の姿を撮らないでくれよ!?」

 

「だーいじょうぶだって、誰もお前だとは思わないだろうさ。

ここにいるメンバー以外限定だけど」

 

そこで、ジュリアスとグレンに視線を向けた。

 

「ついでだ、お前達も着物を着させてみるか?」

 

「「なっ!?」」

 

着物を体験させた後、一誠はとある場所へ案内した。

 

「てやぁああああああああっ!」

 

「はあああああああああああああああっ!」

 

その場所は凄まじい気合が籠った叫びを上げ、刀を振るう半裃(はんかみしも)を身に包んだ男性達がいた。

 

「あれは何をしているのだ?」

 

「あれは殺陣といって演技をしているんだ」

 

「演技・・・・・?」

 

「大昔にあった出来事を再現しているんだ。それをして観光客に披露しているんだ」

 

シルヴィアの問いに一誠は答える。その間にも真剣な面持ちで演技を披露する男性達。

その周りには設置された作の外側で見守る観光客(一誠と異世界メンバー)達。

 

「では、どうして刀を持っているんだ?」

 

「演技をしている人達の役は侍、武士だからだ」

 

「さむらい・・・・・ぶし・・・・・?」

 

「言いかえれば・・・・・そうだな、騎士の役だといえば納得するか?」

 

そう言われ、シルヴィアは何となく理解できた。

あの二人を見ていると、竜騎士(ドラグナー)同士が対峙しているようにも思わせる。

 

「だが、なんのためにそんなことをするのだ?」

 

「楽しませるためさ。この京都にはこんなことをしているんだって、町や食べ物だけじゃ、

他の地方にも当然のようにあるしな。要はPR、多くの人に知らせて理解してもらうためだ。

またこの場所に来て欲しいという願いを籠めてな」

 

「・・・・・」

 

シルヴィアは心の中で感嘆する。アンサリヴァン市には無い珍しいものだと。

周りを見れば確かに目の前の演技に夢中で楽しんでいる観光客達がいる。すると―――。

 

「一緒に演技したい方はございませんでしょうかー!ぜひ、積極的に参加してくださーい!」

 

一人の男性が観光客達に話しかけてきた。

 

「よし、俺が出てみよう」

 

「なに?」

 

一誠がそう言いだした瞬間。どよめきが生じた。

 

「じ、人王様!?い、何時の間にいらしていたんですか!?」

 

一人の男性も驚愕していた。一誠の姿が見えるようで、一誠は微笑みながら小さく手を上げた。

 

「参加して良いか?」

 

「ど、どうぞ!こちらへ!」

 

「悪いな。いい演技でお礼をさせてもらうよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

何度も頭を下げる男性に。アッシュ達は唖然とする。一誠がいなくなり、数分後。

囲いの中に一誠が現れた。半裃を身に包み、腰に日本の刀を携えて真紅の髪をポニーテールに

結んだ一誠が。

 

『―――――っ』

 

一誠を慕い、気になっている女性陣が息を呑んだ。

とても凛々しい、と目がつい一誠の姿を追ってしまう。

そんな一誠と対峙するのは悪い殿様役と殿様に仕える十二人程度の武士達。

 

「やる前に一言。―――全力で掛かって来い。殺す気でじゃないと、

いい演技が披露できないからな」

 

そんな事を言う一誠が身に纏う雰囲気をガラリと変えた。

 

「城下にいる民達から金銭を奪うだけでなく、町娘達まで白昼堂々と攫うその所業に

もう私は耐えきれませぬ。今日をもって、私が殿を打倒し、この国に平和を取り戻す!」

 

「おのれ!わしに刃向かうなど許しはせんぞ!」

 

「私は日々、殿の父上の代から仕えておりました。

あなたもきっと父上殿のように立派な殿になるとお世話もさせてもらい、

父上殿が亡くなって以来、この私は心身共にあなたに捧げようと決意もしました。

ですが・・・・・あなたはすっかり変わってしまった。

すでに、あなたを唆した者達に粛清をした。残るはあなただけです」

 

「な、なんだと・・・・・っ」

 

「殿、最後にお聞かせてください。あなたはこの国にとってなんなのですか?」

 

「この国はなんだと?ふん、しれたことを。

―――わしの領土であると同時にわしが支配する国よ!

この国にいる民を思いのままにできる最高の娯楽よ!」

 

「・・・・・そうですか。それがあなたにとっての国だと。

―――これで決心しました。いまここで、あなたを斬り捨てます」

 

「ふ、ふざけるな!誰のおかげでこの国に住まわせているというのだ!?

ええい、構わん!斬り捨ていっ!反逆者を斬り捨てぃっ!」

 

『はっ!』

 

「―――お前達まで、愚かな」

 

それから一誠は日本の刀を抜き放って、十二人の武士達に跳びかかった。

それは見事の一言だった。

銀色の閃光が光、一誠の動きと共に真紅の髪が激しく動き、敵武士達を次々と鍔迫り合いも

含めて倒していく。

 

ドサッ!

 

最後の一人の武士が倒され、残すのは殿様だけとなった。

 

「ひっ、ひぃぃぃっ!」

 

「あの世に送らせてもらいます。そこできっと父上が待っていますでしょう」

 

「ま、待て!考え直す!わ、わしはこの国を平和にする!お、お前を最高の職に就かせ―――!」

 

「言い訳など通用しません。あなたの本心は先ほどお聞かせてもらいました。

―――あなたはこの世にいない方が世のためです」

 

カチャリと刀を動かした。その仕草に恐怖に駆られ、青ざめる殿様。

 

「い、いやだっ!いやだあああああああああああああああああああっ!」

 

「お命、頂戴します!」

 

ザンッ!

 

二本の刀が殿様の身体に交差したように見えた。

一拍して、殿様は地面に倒れて息を引き取って二本の刀を鞘に差し、そこで演技は終了した。

しばらくして、周りから歓声と拍手喝采。この場の責任者の男性も拍手をしていた。

 

「素晴らしい!素晴らしい演技でしたよ人王様!」

 

「ははっ、緊張したよ。えーと、他の皆も大丈夫か?」

 

敵役の人達に声を掛ける一誠。ムクリと起き上がって苦笑を浮かべながら各々と頷いた。

 

「・・・・・」

 

シルヴィアは無意識に胸に手をやった。高鳴る心臓の鼓動が手に伝わる。

悪い殿様を倒す演技をした一誠に目が離せないでいた。

 

「・・・・・」

 

「はっ!?」

 

視線を感じて隣に顔を向ければ、ラーズが見つめていた。

 

「・・・・・やっぱり、お姉様も・・・・・」

 

「ち、違う!お前は一体何を考えているのだ!?」

 

「もう、私だけじゃなくコゼットも気付いているのに・・・・・」

 

「な、なんだとっ!?」

 

「素直になったらどうなの?素直にならないまま、イッセーと別れたら苦しむのはお姉様よ?」

 

ラーズの指摘にシルヴィアの心が痛んだ。視線を一誠に向けると、

 

「イッセー、やはりお前を聖竜騎士団に向かい入れたくなったぞ」

 

「私の副官となってください」

 

「ヴェロニカさんとウルスラさん。なに言っているんでしょうかねぇ?」

 

ヴェロニカとウルスラ、他にもルッカ達と雑談していた。

 

「言っておくけど、イッセーを狙っている人って強敵よ?

お姉様もうかうかしていたら、後悔する羽目になるかも知れないわ」

 

「だ、だから私は・・・・・」

 

「お姉様、つまらない人ね」

 

何か言おうとするが、喉に引っ掛かって発することはできない。

そんなシルヴィアをあからさまに溜息を吐く。

 

 

 

その日の夜。一行は京都の夜を満喫していた。京都の夜は賑わい、祭りが行っていた。

街中で化粧を施し、綺麗な着物を着た八坂や女性たちが京都の町を歩きながら舞い踊り、

人々を魅了させる。京都の上空では夜の空に花火が轟音と共に咲き続け、

人々に感嘆を漏らさせる。アッシュ達は祭りを満喫していた。

見晴らしのいいところで、屋台で買った料理を食しながらその光景を目に焼き付けて

一時を楽しむ。花火が打ち終わると一誠はキーラとルッカに声を掛け、あることを頼んだ。

二人はその頼みにびっくりしたが、一誠の頼みに応じて聖竜(マエストロ)に戻ったガウェインと

ガレスに騎乗し、京都の夜空へと舞い上がった。飛行の最中、魔力光が夜空に描き始め、

地上にいる京都の住民達は興味津々に空を見上げる。

 

「ルッカ!」

 

「うん!」

 

最後の仕上げとばかり、二人は宙に描いた紋章のような魔方陣に向かって飛び降り、

竜騎演舞を発動させた。幻想的に、神秘的に、神々しく見たことない魔方陣が光り輝き、

京都に住む者たちに見せつけた。それはきっと全世界にも伝わるだろう、

異世界の舞に等しい行動。謎の二つの飛行物体が成した業であると―――。

 

―――○♢○―――

 

京都でアッシュ達は色々と大量に一誠の許しでお土産を大量に買った。夏休みの終了期間が迫り、

その期間までお土産を買う時間を使うことを決めた結果、京都の名産物、物を買い漁った。

それで満足すれば、家に戻ろうと再び京都駅の新幹線ホームに足を運んだら

九重と八坂が一誠達の見送りに来た。

 

「色々とありがとうな」

 

「なに、このぐらいなら何時でも頼ってくれ」

 

「こちらも楽しかった。またこの京都に来てくれ」

 

「ああ、必ず行くよ」

 

八坂と九重にそれぞれ抱きしめてやって別れの挨拶をする。新幹線に乗ると、

空気を抜くような音と共に新幹線の扉が閉まり、発車をした。

一誠はアッシュ達がいる二階に上がろうとすると、

階段のところでミラベルが壁に寄り掛かっていた。

 

「どうした?」

 

「・・・・・」

 

ミラベルは一誠の声に反応して顔を向けた。何か思いつめた表情で一誠に覗かせる。

 

「ねえ・・・・・あなた」

 

「なんだ?」

 

「あの三年坂って坂で転んだ人は三年以内に死ぬって言ったわね?」

 

「確かに言ったけど・・・・・なぜに?」

 

通った道のことを訊ねられて小首を傾げる。だが、すぐに理解した。

 

「私、転んじゃったの」

 

「・・・・・」

 

「だから、私は三年以内に死んじゃうのかもしれない。

こんな形で早く死ぬなんて何とも言えないわ」

 

一誠は意外そうにミラベルを見た。言い伝えだからと、

説明したはずなのに信じてしまっているのが冷静で聖遺物に目がない

学院長のミラベルだからだ。

 

「ねえ、私って本当に死んでしまうの?」

 

その問いかけに一誠はミラベルのところまで移動して―――デコピンした。

 

「アホ、俺は言い伝えだから気にするなって言ったじゃないか」

 

「でも、言い伝えは絶対死なないってわけじゃないのでしょう?」

 

「人の死に方は様々だけど、それは関係ない話しだ。

あの坂は別に呪いや魔法なんかで人を死なすような力なんて施していないんだ」

 

「・・・・・本当に?」

 

不安そうに訊ねるミラベル。一誠は頷いて口を開く。

 

「というか、俺がそんな危ない坂に連れていくような男だと思っているのか?

俺は人王なんだぞ?」

 

「・・・・・」

 

「異世界の事を知らないミラベル達に勘違いさせるようなことを吹き込むつもりはない。

この世界の凄いところを、素晴らしいところを知ってほしいと思っているんだ。

あの坂も知ってほしくて説明したんだ」

 

ミラベルを抱き締め、背中をポンポンと安心させるように優しく触れる。

 

「不安させて悪かった。これからは気を付けて説明する」

 

「・・・・・分かりました。あなたの言葉を信じます」

 

「おう、俺を信じろ。そうすれば、聖遺物みたいな場所にも連れて行ってやるよ」

 

一誠の発言にミラベルは元気になった。

 

「この世界には聖遺物みたいな場所が存在しているのですか?」

 

「というよりは、似たような遺跡や建物が世界中に存在している。

この夏休みの間。そこへ連れて行こう」

 

「ええ、お願いしますわ」

 

ミラベルは笑みを浮かべた。彼女の不安を取り除けたようだと一誠は安堵で胸を撫で下ろした。

 

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