一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode3

一誠たち一行がロートレアモン騎士国に入るため、竜の胴体に位置する南方シェブロン王国の

港に船を寄せて入港を果たす。それから北へ目指すように―――メリアの背に乗って雲ひとつない

青い空、高度千メートル付近の空域から移動していた。

腰を下ろして座っているマキャベリが呟く。

 

「鞍もつけずなおかつ、ドラゴンの背に乗れる日が来ようとはな。あの時もそうであったが、

吾輩は驚いている」

 

「ドラゴンに鞍なんて今度は馬か?」

 

「それは仕方がないことです。数十年前、ゼノグラヴィア戦争、シェブロン王国と

ゼファロス帝国との間で起こった戦争、人類同士の戦争に竜が兵器として初めて使われたことで

有名となって以来、竜に騎乗する際に必要不可欠な道具なのですから」

 

ヴィットーリオが一誠の疑問を解消した。一誠はさらに首を傾げる。

 

「ふーん?異世界でも戦争があったんだな」

 

「そちらの世界でも戦争がございますので?」

 

「違う国ではそうだな。だが、俺が住んでいた国は平和だよ。勝負事が盛んだけど」

 

「な?」とガイアたちに話を振ると、全員が首を縦に振ったのであった。

 

「勝負事とはなんだ?」

 

「ゲームだよ。チェスって知っているか?それぞれ役割がある駒を動かして、

その駒の中で重大な駒『(キング)』をチェックメイトすれば勝ちってゲームなんだ。

そのチェスの特性を応用して人間が自らチェスの駒の役割となって戦場を掛けて相手の『(キング)』を倒すんだ」

 

それから一誠はそのゲームのことをRG(レーティングゲーム)と、駒の特性やルールも説明し始めた。

チェスを知らないマキャベリとヴィットーリオはそのゲームを興味深く聞いていた。

 

「なるほど・・・・・この大陸にないゲームであるな。

人が駒として戦うゲームとは聞いただけで面白そうだ」

 

「因みに、俺たちの世界にこんな娯楽の道具があるんだ」

 

魔方陣を展開して、様々な娯楽の道具を出してマキャベリとヴィットーリオに見せた。

 

「騎士国について一段落したら遊ぼう。遊び方も教えるからさ」

 

「分かった。異世界のゲームはとても興味がある。これも売り出せば儲かるかも知れないな」

 

「なるほど、んじゃ、販売店兼家でも建てるとするか」

 

商魂逞しいマキャベリと一誠だった。きっとラブロック商工都市連合随一の店となるだろうと、

そんな事を考えた矢先、メリアが話しかけてきた。

 

『主、王国らしき構造物が見えてきました』

 

そう言われ、一誠は背中から下へ見下ろした。確かに、城のような建造物が見え、市街地も伺える。

 

「よし、ロートレアモン騎士国に着いたようだな。皆、降りるぞ」

 

「―――いや、待て一誠。何か来るぞ」

 

ガイアが一誠の動きを制止した。その言葉に一誠も気付いた。こっちに迫ってくる気配を―――。

それはすぐ目の前に現れた。

 

「ドラゴン・・・・・!」

 

巨躯の竜であった。とてつもない威圧感を放っているがメリアは真っ直ぐ目の前の

ドラゴンを見据える。正確に言えば、頭部に乗っている人物にだった。

金色の鎧を纏う碧眼の女性、兜から覗ける髪は金。

 

『そこを、どいてもいませんか?我らはこの国に手を出すつもりはございません』

 

「・・・・・竜が喋った・・・・・」

 

女性は目を丸くした。メリアが人語できるとは思ってもみなかったのだろう。

一誠はメリアの頭部に乗って目の前のドラゴンの頭部に乗る女性に話しかけた。

 

「そういうことだ。俺たちはこの国を襲うつもりはない」

 

「・・・・・あなたはどこの誰ですか?」

 

スルーかよ。女性の問いに一誠は溜息を吐きながらも名を名乗った。

 

「イッセー・D・スカーレット。このドラゴンはメリアだ。お前は?」

 

「・・・・・ウルスラ・L・セルウィン。この子はガラハッド」

 

「ガラハッド・・・・・・英雄の名前じゃないか、良い名前だな」

 

竜の名を褒め称えても、ウルスラは無表情で一誠を見詰めるばかりだった。

何時しか、一誠の周りは一対の翼をもつ竜たちに囲まれていた。

 

「へぇ・・・・・この世界のドラゴンか・・・・・なんか、ちっちゃい奴ばっかだな?」

 

「大人しく投降してくれますか?」

 

ウルスラにそう言われ苦笑を浮べる。これではこっちが悪役みたいじゃないか。

 

「しょーがない。従ってやるか」

 

「イッセー、いいの?」

 

背後からルクシャナが話しかけてきた。若干不安の色が顔に浮かんでいる。

 

「指名手配されるより素直に応じた方がいいだろう。今後の活動をしやすくするために」

 

「・・・・・分かった。イッセーがそう言うなら従うわ」

 

渋々と言った感じでルクシャナは引き下がった。魔方陣を展開して、白い旗を取り出せば掴み、

軽い調子で振るう。その姿にウルスラは近づき、メリアの頭部に乗って一誠と対峙する。

 

「悪いようにしないよな?」

 

「素性次第で」

 

「・・・・・微妙な信用感だ。メリア、城のほうへ降りてくれ」

 

『主にもしもの事があれば、主の意思に反して容赦しません。それだけ肝に銘じてください』

 

ギロリとウルスラに睨むメリアだった。主を想うその気持ちは変わらないようだ、

ウルスラは感じた。徐に城のほうへ降りて行くメリアに続いて周囲のドラゴンたちも降りる。

ある程度の高さで城の上に近づくと、一誠はマキャベリとヴィットーリア、

ルクシャナを背負ったり抱き寄せたりして躊躇もなく降り立った。

 

そんな一誠に続いてヴァーリと龍牙、ガイアとオーフィスも降り、メリアが光の奔流と化となって

一誠に向かう。メリアは一誠の中に入っていくように姿を消したのだった。

その様子にウルスラを始め、ドラゴンに騎乗している兵たちは目を丸くした。

あんな、戻り方をするドラゴンは見たこともないとばかりに。

 

―――○♢○―――

 

ロートレアモン騎士国の首都フォーティンにある五階建てのフォーティン城のとある一室で

一誠は手錠を嵌められながら事情聴取されていた。相手は金の長髪、青い瞳、

一目で豪鉄製と分かる、重厚にして豪奢な鎧を身に纏っている女性だ。

名は―――ヴェロニカ・ロートレアモン。ロートレアモン騎士国第一王女である。

青い瞳は強い意志が宿っており、一誠が可笑しな行動をしたら即座で傍に置いてある両手持ちの

大剣、クレイモアで両断しようとするだろう。事情聴取が始まってすでに十数分過ぎている。

 

「異世界から来た人間だとな・・・・・どこからどう見ても普通の人間にしか見えんが」

 

「それは俺も同じ気持ちだ。異世界の人間は俺と変わらないようだな」

 

「この私にそんな態度でいられるとは、お前はよほど身の程知らずなのか、

あるいは肝が据わっているかのどっちかだな」

 

青い瞳を鋭く一誠へ送るヴェロニカ。金色の瞳を細めて不敵の笑みを浮かべる一誠。

 

「こっちも場を踏んでいるからな。お前のような相手は慣れているんだよ」

 

「ほう・・・・・?私をロートレアモン騎士国第一王女だと知っての発言か?」

 

「いや、お前が王女だってことは知らないし、名前すら知らないんだけど?

一方的に訊かれているから」

 

「・・・・・」

 

一誠の指摘にヴェロニカは口を噤んだ。いつものように相手から情報を聞きだしているため、

自分のことを知っているだろうと思っていたため、自己紹介をすることもしていない。

異世界から来た人間ならば、自分が王女だと知らないのは当然だろう。

 

「それに鎧を纏っているから位の高い騎士かと思うぞ?王女なら、ドレスを着たらどうなんだ?

鎧よりドレスのほうが似合うぞ。綺麗なんだからさ」

 

「―――――」

 

刹那。

 

ガッキイイイイイイイイイイイイインッ!

 

ヴェロニカのクレイモアと手錠を強引に引き千切り、

どこからともなく一誠が手にした黄金の大剣が、事情聴取するために設けられた部屋の中で

激しくぶつかり合った。火花が散り、座りながらという鍔迫り合いをする。

 

「貴様・・・・・」

 

「いきなり振るなよ。危ないな」

 

一方が睨み、一方が朗らかに笑う。しばらくして、二人は矛を収めた。

 

「私の一撃を受け止めるとは・・・・・異世界から来た者ならば誰でもできることか?」

 

「全員が全員じゃない。だが、俺より強くお前より強い存在ならごまんといる」

 

「では、お前と共にいた者たちは?」

 

その問いに一誠は頷いた。

 

「マキャベリはともかくヴィットーリアならできるかな?あと、他の皆もできるだろう」

 

「・・・・・」

 

一誠の返答にヴェロニカは笑みを浮かべ出した。

 

「ならば、お前や他の者たちを無事に解放するために条件をクリアしてもらおうか」

 

「条件?というか、何も悪いことをしていないのに・・・・・」

 

「不法入国」

 

鋭い指摘に一誠はぐうの音も出なかった。既に犯罪をしていたのだと今さら気付いた。

渋い顔する一誠をヴェロニカは意地の悪い笑みを浮かべる。

 

「どうだ?私が出す条件をクリアすれば好きなところに行けるぞ?」

 

選択を与えられても、その条件を呑まない限り自由に活動ができないと理解しているため、

一誠はただ恨めしくヴェロニカを睨む。

 

「お前、絶対にSだろう」

 

ヴェロニカはただ愉快そうに笑むだけで、青い瞳で一誠を催促する。どうする?と―――。

 

「・・・・・分かった。条件ってやつをクリアする。なにすればいい?」

 

「そうだな。お前の実力を見させてもらおうか」

 

「実力?誰かと戦えってことか?」

 

一誠の問いに鉄と鉄の擦り合う音を鳴らしながら立ち上がるヴェロニカ。

踵返して一誠に背を向けて事情聴取の部屋の扉を開け放った。背中で語る、ついてこいと。

怪訝な面持でありながらも椅子から立ち上がってヴェロニカに続いて部屋から出た。

 

「ずいぶんと警戒心がないな。一国の王女に護衛を付けないなんて」

 

「護衛ならいる」

 

尻目で一誠の背後に視線を向ける。その視線を追うように背後へ視線を向けると、

美丈夫の男性が数メートル離れた距離を保ちながら歩いていた。

 

「ああ、なるほどね」

 

「お前も警戒心がないのではないのか?」

 

「ん?俺は何時でも逃げれるから問題ないんだよ」

 

「逃げた時点でお前の連れを処刑する」

 

本気なのか冗談なのか、思わせぶりな発言をする。

肩を竦め、怖い怖いと軽い調子で言う一誠はヴェロニカについていくと、

ウルスラと城の廊下の曲がり角で出くわした。

 

「・・・・・どちらへ?」

 

「丁度良い、ウルスラ。この者と一勝負をしろ」

 

「・・・・・マジで?」

 

一誠をどこかへ連れて行こうとする自分の主に問うが、

ヴェロニカはウルスラに一誠と勝負しろと言う。それには目を丸くする一誠であった。

 

「・・・・・ですが」

 

「命令だ」

 

「・・・・・わかりました」

 

若干、渋々と言った感じでウルスラは命に応じた。なので、一誠とヴェロニカ、

ウルスラといったメンバーはフォーティン城にある演習場へと赴いた。

 

「なあ、ヴェロニカ。ウルスラの実力ってどのぐらいなんだ?」

 

「私を呼び捨てとは怖いもの知らずだな。

まあいい、ウルスラの実力はロートレアモン聖竜騎士団団長を務めるほどの実力者だ。

そのうえ、ウルスラは全一対一でならば竜騎士《ドラグナー》の中で最強だ」

 

ヴェロニカの返答に一誠の瞳に戦意が宿り出す。最強の人物だと知り、一誠は小さく笑った。

 

「なにがおかしい?」

 

「いや、彼女と戦うのが楽しみになってきた。最強の存在と戦うのは楽しいからな」

 

「まさかとおもうが・・・・・ウルスラを勝てると思っているわけではあるまいな?」

 

自国の最強の騎士が負けるわけがないと心から信頼しているヴェロニカ。

異世界から来たとは言え、実力は未知数だが、ウルスラが敗北するとは到底思えない。

演習場に辿り着いた頃で一誠は言った。

 

「勝てると思うんじゃなく、勝つつもりで戦うさ」

 

演習所の中央でウルスラと一誠は対峙する。ヴェロニカは審判役を買い、

美丈夫の男性とその竜の頭部に乗って待機。

 

「そう言えば竜騎士(ドラグナー)同士の戦いを知っているか?」

 

「いや、知らない」

 

「ならば、説明する。竜に乗って相手と戦い、相手を戦闘不能、または竜落させれば勝利となる」

 

つまり竜から落ちなければ戦いは続行となる。

シンプルなルールに首を縦に振ってウルスラを見据える。

 

「よろしくな、ウルスラ」

 

「・・・・・」

 

無言で返すウルスラ。ヴェロニカは徐に腕を上げる。

 

「では―――模擬戦として試合を開始!」

 

試合開始が告げられた。最初に動きだしたのはウルスラだった。

足元に金色の魔方陣が展開したと思えば、ウルスラの呟きに応じて

巨躯のドラゴンがウルスラを頭に乗せて姿を現す。同時に、金色の鎧を纏って戦闘態勢になった。

 

「ぐるるるるる・・・・・っ!」

 

途端にウルスラの相棒(パル)が警戒の色を瞳に浮かべ唸り声を上げる。

 

「ガラハッド?」

 

警戒しているガラハッドに不思議とばかり話しかけるウルスラ。

対して一誠は未だにドラゴンを召喚していない。瞑目している。

 

「―――よし、決めた」

 

なにを決めたのかウルスラには分からなかった。一誠の相棒(パル)は金色のドラゴンのはず。

あの見たこともない神々しい輝きを放つドラゴン―――。

 

カッ!

 

一誠の足元に禍々しい黒い魔方陣が出現する。

そして、ゆっくりと魔方陣からドラゴンが出現する。

三つ首に三対六枚の黒い翼、四肢のドラゴンが―――。

 

『ギェエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

久々の外だとばかり三つ首を持つドラゴンが咆哮する。空気に激しく振動を与え、

咆哮しただけで演習場の地面が激しく抉る。全身から禍々しいオーラを放ち、

一誠を頭に乗せたドラゴンは三つの口を揃って吊り上げた。

 

『俺を現世に出したからには暴れても構わないのだろう?』

 

「ああ、相手は最強だからな。思う存分やるぞアジ・ダハーカ」

 

アジ・ダハーカと呼ばれた三つ首の黒い竜。その体はガラハッドよりかなり大きい。

真紅の六つの双眸がギラギラと敵意と殺意に満ち溢れ、ウルスラとガラハッドを睨みつける。

 

「・・・・・あなたは一体・・・・・」

 

「うぉぉおおおおおおん・・・・・・!」

 

ガラハッドが主の意思に反し、後ずさりした。

アジ・ダハーカが一歩前に踏み込めば、ガラハッドがまた一歩下がる。

ヴェロニカの視点から見れば、それはまるで親に叱られている子のようだと思わせる。

 

『おいおい、最強のなのだろう?なにを怯えている?さあ、攻撃して来い』

 

「ぐるるるるるる・・・・・・」

 

『攻撃してこなければ―――こちらから攻撃させてもらおう』

 

アジ・ダハーカの上空に幾重の魔方陣が出現した。その魔方陣から巨大な炎の塊、

幾重にも轟く雷、極太の氷の槍が出現し、ガラハッドとウルスラに襲いかかる。

 

「ガラハッド!」

 

主の意思に従い、ガラハッドは全身に魔力を帯びて宙に浮き、アジ・ダハーカの魔法から避ける。

その行動をする一人と一匹にアジ・ダハーカは、一誠の指示を聞くまでもないと

翼を羽ばたかせてガラハッドを追う。

 

『どうしたどうした!この世界のドラゴンは臆病者しかいないのか!?

ガラハッドという臆病のドラゴン!掛かってこい!』

 

「いや、単純にお前が怖いからだと思うが?」

 

一誠に突っ込まれる。アジ・ダハーカはそんな事を気にせずガラハッドを追い続ける。

と―――ガラハッドが旋回して、一筋の流れ星如く、

ガラハッドは一直線にアジ・ダハーカへ接近した。

 

「っ!」

 

ガキンッ!

 

鉄と鉄がぶつかった音が生じた。ウルスラと一誠の剣が擦れ違いざまに

振るって剣戟をしていたのだ。

 

「やるな、流石は最強。ドラゴンだけ頼っているのかと思ったらそうでもなさそうだ」

 

愉快そうに呟く一誠。アジ・ダハーカがガラハッドを追おうとすると、

旋回してまた流れ星如く、一誠とアジ・ダハーカに接近する。その度に剣と剣がぶつかり合う。

 

「くっ・・・・・!」

 

ウルスラ・L・セルウィンにとって剣戟は生まれて初めて覚えた感触だった。

ウルスラが持つ剣はガラハッドの魔力で生み出されたもの。ウルスラ自身が纏う鎧もそうだ。

聖騎甲(アーク)聖竜(マエストロ)という竜が己の心身を捧げる証として

飼い主へ献呈される甲冑。竜の魔力によって製造され、召喚によって瞬時に装着できる。

高い防御力と身体能力を飛躍的に高める効果を持つほか、過去に製造されたものには氷属性特化、

低負荷など独自の効果を持つものも存在する。聖竜によっては更に改良を加えて性能を強化できる。

 

飼い主の体格に合わせて造られるので、本来ならば他の飼い主はサイズが合わず装着することが

出来ない。その聖騎甲(アーク)を纏うことで発動できる専用武器。

聖騎甲(アーク)との製造でセットされ、独自の力を持つ。ウルスラの固有魔装は神剣フラガラッハ。

一誠は知らないが、刀身は鋼ではなく、魔力で構築されている。刃は限りなく薄く、

もしかしたら紙より薄いのかもしれない。だが、一誠はその剣を見切っている。

ウルスラの持つ剣から感じる魔力の塊を刀身として例え、

全てを斬り裂く神剣を受け止めるではなく、受け流す形で剣を交えている。

 

「―――強い」

 

「だろうな」

 

一誠の実力を垣間見て、呟いたウルスラの耳元で男の声が聞こえた。はっ!と横に振り向いた

時だった。腹部に強烈な衝撃が与えられ、ガラハッドから離れてしまった。

苦痛の呻きを漏らしながら聖騎甲(アーク)に蓄えられた魔力を解放し、

ウルスラは空中に踏み留まり、眼前を見た。―――そこに天使がいた。頭上に金色の輪っか、

金色の長髪、蒼と翡翠のオッドアイ、背中にに六対十二枚の金色の翼を生やす一誠が。

 

「なるほど、空中に浮くこともできるんだな。空中戦もできると思うと、面白みが増すな」

 

「あなたは・・・・・・」

 

「訊きたいことが山ほどあるだろうが、今は戦いに集中したらどうだ?」

 

翼を羽ばたかせてウルスラに突貫して、大剣を振るう一誠にウルスラも神剣を振るって剣戟する。

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

主の危機を察知し、ガラハッドはウルスラへ飛来する。

しかし―――その真上から巨大な黒い物体が襲いかかった。

 

『お前の相手は俺だ!』

 

「殺すなよ!」

 

『半殺しだ!』

 

それから二匹は急降下して、演習場から轟音が鳴り響く。

一拍して、ドラゴンの咆哮と悲鳴が上空にまで聞こえる。

 

「ガラハッド・・・・・!」

 

「他人の事より自分のことを心配しろ最強!」

 

「くっ・・・・・!」

 

何時の間にか目の前に一誠が大剣を振り下ろしていた。

神剣フラガラッハで受け止めようと前に突き出した。

 

ガキンッ!

 

しかし、男と女の力は歴然。その上、ウルスラは知らないが一誠は―――人間型のドラゴン。

故に、一誠の力に押し負けて地上へ吹っ飛ばされる。その最中、体勢を立て直して―――。

 

「遅い」

 

淡々とした声と共に、ウルスラの瞳を覗きこむぐらいに一誠が目の前にいた。

その直後、また腹部に衝撃が生じて―――演習場の地面に轟音と同時で直撃した。

 

「がはっ・・・・・!」

 

背中から落下して肺の中の酸素が口から全て漏れ、一時呼吸困難に陥った。

自分の姿を見れば、聖騎甲(アーク)が殆どなくなっていた。

 

「うおおおおおおおん・・・・・・」

 

自分の相棒(パル)の弱弱しい声が聞こえた。ガラハッドに視線を向けると、見るにも堪えない

姿となっていた。全身血まみれで赤く染まり、一対の翼がもぎ取られて二本の角が折られている。

ガラハッドの体を片手で押えこむアジ・ダハーカは嬉々として咆哮を上げている。

―――もう、勝敗はついた。そこで、ウルスラの意識は途切れたのであった。

 

―――○♢○―――

 

「・・・・・・」

 

ウルスラ・L・セルウィンが目覚めた頃には空が朱に染まっていた。

そしてすぐに脳裏で自分が初めて敗北したあの時の光景が過った。

ガラハッドは大丈夫なのだろうか。かなりの重症だとウルスラは思った矢先、

 

「目が覚めたようだな」

 

自分に話しかける男の声。寝転がったまま、首だけ横に動かせば自分を負かした

一誠が椅子に座っていた。少し前屈みになってウルスラの顔を覗き込んでいる。

 

「体の調子はどうだ?傷を癒したから問題ないと思うが」

 

「・・・・・?」

 

言われてみれば、疲労感や気だるさが感じられない。少なからず聖騎甲(アーク)が粉砕して

生身にも影響があると思っていたのに・・・・・それが感じない。

 

「ああ、ガラハッドも傷を癒やした。翼も角も全て治したから大丈夫だ」

 

「・・・・・本当ですか」

 

「嘘は言わない。なんだったらヴェロニカにでも聞け」

 

そう言い視線をとある方へ向ける一誠。その視線を追えば―――ヴェロニカがいた。

 

「殿下・・・・・」

 

「見事な負けっぷりであったぞ、ウルスラ」

 

労いの言葉ではなく、意地の悪い言葉で掛けられた。

そんなヴェロニカに何も言わず無表情で見詰める。

その瞳から伝えてくる何かをヴェロニカは察し、口を開く。

 

「お前の相棒(パル)は無事だ。こいつの力で完治した」

 

「そうですか・・・・・」

 

安堵で胸を撫で下ろす。それから一誠に視線を向ける。

 

「あなたは、強いですね」

 

「いや、まだまだ弱いさ。俺より強い存在がいるんだからな。そいつらを倒さない限り、

俺はまだ強くならないといけない」

 

「ウルスラを倒しておいてまだ強さの高みへ目指そうとするのか」

 

呆れ顔でヴェロニカは一誠に言う。それには苦笑を浮かべ一誠はこう言った。

 

「目標だからな。そして、家族を守るためさ」

 

「家族・・・・・お前にも家族がいるのか?」

 

「当然だろう?血が繋がっていないけど、皆・・・・・俺の家族だ」

 

どうやら家族がいるようだ。ウルスラの家族はすでにこの世にはいない。

ヴェロニカは溜息を吐く。

 

「家族か・・・・・私の父親はアレだからな・・・・・一応、守るが・・・・・」

 

「大切にしろよ?どんな人だか知らないが、唯一の肉親なんだからな」

 

「・・・・・分かっている」

 

渋々といった感じで応じるヴェロニカ。そんな二人のやりとりの最中、

ウルスラはジッと一誠を見詰める。初めて自分を負かした男の顔を―――。

真紅の長髪金色の瞳。ヴェロニカと話し合って笑ったり、苦笑を浮かべたりと表情を変えている。

 

トクン・・・・・ッ。

 

胸が小さく高鳴った。それは一体どういうことなのか、ウルスラは自問自答しても分からない。

ただ、イッセー・D・スカーレットのことが知りたいという気持ちが湧きだした。

 

バタン。

 

と、扉が開く音が聞こえた。一誠、ヴェロニカ、ウルスラは扉の方へ顔を向けると、

黒いワンピースを身に包む少女がいた。

 

「イッセー」

 

「オーフィスか」

 

「時間、皆、待ってる」

 

スタスタと一誠に近づいたオーフィスはピョンと一誠の肩に乗っかる。

それから椅子から立ち上がった一誠は二人に向かって言う。

 

「んじゃ、ヴェロニカの条件もクリアしたし、自由に活動させてもらう。

しばらくこの国のどこかで店を作って拠点として住まわせてもらう」

 

「どこにいくつもりだ?」

 

「さあ・・・・・この国に来たのは今日だし、最初は宿で止まってそれから土地を買い取って

店を開くつもりだ。名前は―――ラブロック店かな?分かりやすくて良いだろう?

出来上がったら伝えに来るから」

 

そう言い残し、この場から去ろうとする一誠だった。

 

―――キュッ。

 

「・・・・・?」

 

一誠の裾を摘まむウルスラ。どうしたんだ?とばかりウルスラに視線を落とす一誠。

 

「私も、一緒について行っていいですか?」

 

「・・・・・は?」

 

「あなたを、イッセー・D・スカーレットを興味持ちました。

私は、私を負かしたあなたを知りたい」

 

ジィ・・・・・と翠の眼の視線が一誠に注がれる。

 

「こいつは驚いた。〈沈黙の騎士聖女(サイレント・ヴァージニア)〉と呼ばれた、

積極的に他人と関わろうとしなかったお前が、自分から今日出会った男と逢い引きしたいとはな」

 

「おい、誰が逢い引きだ。叩くぞ」

 

「ふっ、一国の王女にそれができる勇気があればやってみろ」

 

売り言葉買い言葉、ヴェロニカが一誠に挑発した瞬間だった。

 

スパンッ!

 

「うぐっ!?」

 

「悪いが、俺は異世界から来た人間だ。―――この世界の常識に俺は通用しない」

 

たに折りやま折りとなっている白い紙で本当にヴェロニカを叩いてみせた一誠。

本当に叩かれると思っていなく、叩かれた無防備な頭を片手で

押えてギロリと一誠を睨むヴェロニカ。

 

「・・・・・私の権限でお前を処刑にできるのだがな・・・・・?」

 

「そんなことしたら、ドラゴンでこの国を滅ぼしちゃうぞ?」

 

「・・・・・」

 

ウルスラとガラハッドを倒した男と竜。ヴェロニカさえウルスラと一対一で戦えば敗北は必須。

自分の命で戦わせたウルスラを倒した一誠に自分が勝てる勝率はない―――。

 

「ま、冗談だ。せっかくの異世界に大暴れするつもりはない。絶対にな」

 

「その言葉、信じてもいいんだな?」

 

「お前次第だよ、ヴェロニカ。んで、ウルスラは俺と一緒に来るのか?」

 

一誠の問いに、コクリと頷くウルスラ。すでに起き上がってベッドから立ち上がっていた。

しょうがないと、ヴェロニカに背を向け扉に足を運ぶ。

 

「待て」

 

ヴェロニカが待ったを掛けた。なんだ?とヴェロニカに振り返ると、信じがたい言葉を口にした。

 

「私の許可でお前たちをこの城に一泊することを許す」

 

「・・・・・なんで?」

 

「ウルスラはお前のことを知りたがっているように私もお前のことを知りたくなった。

相棒(パル)を二匹いるお前を、ウルスラを倒したお前をな。

そのうえ、その実力は我が聖竜騎士団幹部クラスを凌駕している。

団長であるウルスラを倒したのだからな」

 

口の端を吊り上げてヴェロニカは言った。

 

「どうだ?我が聖竜騎士団に入団する気はないか?

ウルスラの補佐、副団長として働く気はないか?」

 

「いきなりの優遇だな。だが断る!」

 

「ちっ、少しぐらい悩まないか。可愛げのない奴だ」

 

「いやいや、俺は異世界じゃあ王だしな?」

 

軽く言う一誠だが、ヴェロニカは柳眉を上げた。

 

「王?お前も一国の王だったのか?」

 

「だったのかじゃなく、王なんだ。一国じゃなく世界に住んでいる人類の王。

人王、それが俺なんだ。まあ、この世界じゃ俺はただの竜使いだ。気にしないで接してくれよ」

 

ははは、と朗らかに笑う一誠であった。

 

「・・・・・お前は年幾つだ?」

 

「ん?十八歳を迎えたばかりだな。学校も卒業したし晴れて、人王になったばかりだ」

 

「学校?異世界に学校が存在するのか?」

 

「この世界にあるように俺の世界もある。逆も然りだ」

 

どうやら、一誠の世界に学校があるのだと知ったヴェロニカ。

それは一体どういったものなのか、一誠がドラゴンを召喚したからには異世界にも

ドラゴンがいるのだろう。ますますヴェロニカは一誠のことを知りたくなった。

異世界のこともできれば知っておきたい。

 

「それで、そろそろ皆のところに戻りたいんだけど、本当にこの城で一泊していいのか?」

 

「構わない。私が許す」

 

「ん、じゃあ、皆を呼ばせてもらうよ」

 

徐に一誠は指を弾いた。次の瞬間。

この場に大きな魔方陣が出現して―――光と共にガイアたちが出現した。

 

「今のは一体・・・・・」

 

「転移型魔方陣、召喚魔法だ。この世界には無いのか?」

 

「ドラゴンを召喚するならともかく、人を召喚する術はありません」

 

「ふーん。不便だな。便利なのに」

 

「で、我らを呼んだ理由は何なのだ一誠」

 

腕を組んでガイアが問う。

 

「ああ、ヴェロニカがこの城に一泊しろって言うんだ。だから皆を呼んだ」

 

「おや、それは光栄なことではないか。

騎士国の城に泊れることは人生に一度あるかないかのことだ」

 

そう言うもマキャベリは表情を変えない。

 

「そういうことなら、早く何か食べたいわ。色々と蛮人から言わされてお腹が空いたわよ」

 

「そうですねー。この国の料理を食べてみたいです」

 

ルクシャナに同意する龍牙。その二人に反応してヴェロニカが口を開く。

 

「分かった。すぐに手配しよう。

ウルスラ、客人たちを共に食することを騎士王(パラディン)に報告を」

 

「わかりました」

 

「なんか、悪いな」

 

「気にするな。異世界から来た者たちを歓迎しないでは我がロートレアモンの名が傷付く」

 

―――○♢○―――

 

「ほう、そなたがヴェロニカが招いた客人たちとな?」

 

夕餉の時間と成り、食卓の間に現れた一人の初老。愛嬌のある丸顔に、肥満体。

口髭と顎髭を生やしているが、お世辞にも似合っているとは言えない。

マッシュルームみたいな髪型が特にだった。

 

「ロートレアモン第一王女殿下のお招きによってフォーティン城に一泊させていただくことに

なりました。俺は異世界の人間、イッセー・D・スカーレットです。以後、お見知りおきを」

 

「異世界?異世界とは何なのだ?」

 

早速興味深そうに訊いてくる初老の男性。一誠は説明する。

 

「この世界とは違う世界のことを差します。つまり、俺とあなたからすれば

異世界の人間ということです。信じてもらおうとは思っておりませんが、

記憶の片隅にでも覚えておいてください」

 

「ふむ・・・・・では、異世界から来た証拠をわしに見せてくれたら信用しよう」

 

と、目を爛々と子供のように輝かせる初老の男性は騎士王(パラディン)オズワルド。

ヴェロニカの父親である。一誠は魔方陣を展開して、

マキャベリとヴィットーリアに見せた娯楽道具を出した。

 

「異世界の娯楽です」

 

「ほほう、異世界の娯楽とはな。毎日暇なわしにとって良き物だ。して、どうやって遊ぶのだ?」

 

「ええ、まずこれは―――」

 

取りだした娯楽の道具を説明に入った。ふむふむと一誠の説明を聞き頷くオズワルド。

周りが料理を食べている余所に自分の暇な時間を解消できる道具に夢中のようだ。

 

「それで、これは複数の人間、家族や友人と一緒に遊べれる娯楽道具、トランプと言います」

 

「おお!では、それがあれば我が娘たちと遊べれるのであるのか!」

 

「はい、遊び方は多々あります。その説明は後ほどで」

 

「いや、いま聞きたい。是非とも聞かせてくれ」

 

家族団欒ができるとオズワルドは嬉しそうに説明を催促する。

そんな騎士国の王に心の中で苦笑を浮かべるも、一つ一つ丁寧に説明する。

 

「ふむふむ、異世界には有意義なものがあるのだな。わしはとても羨ましく思うぞ」

 

説明が一段落して、オズワルドが羨望の眼差しを一誠に送りだす。そこで一誠が提案した。

 

「よければ、俺が持っている娯楽の道具を提供しましょうか?」

 

「むっ、良いのか?」

 

「はい、予備としてまだ同じものがあるので一つ失っても問題ないです」

 

「おお・・・・・では、喜んで貰い受けよう。後でわしと遊んではくれぬか?」

 

王の願いに一誠は笑顔で応じる。

 

「はい、よろこんで」

 

「うむ、では、後ほどヴェロニカと交えて三人で遊ぼうではないか。はーっはっは!」

 

ようやくオズワルドは一誠を解放した。一誠も料理が食べれると席について料理を食べ始める。

 

「お疲れ様です、一誠様」

 

「この世界は娯楽がないようだな。あの王、真剣に話を聞くほどだった」

 

リーラの労いに一誠は苦笑を浮かべる。

逆にそこを突けば―――あのラブロック商工都市連合のように賑やかになる違いないと踏み、

小さく笑んだ。そんな一誠にマキャベリが話しかけてきた。

 

「なにか、面白いことを考えたようだな?」

 

「皆がハッピーになれるようなことをさ。そのためには広大な土地が必要だ」

 

「ほう?それはどんな理由で必要なのか、私に説明しろ」

 

食卓に同席していたヴェロニカが話に割り込んできた。

 

「ああ、ラブロック商工都市連合に建てた建造物をこの国にも建てようかなって」

 

「ラブロック?そう言えば、お前たち異世界人は最初に降りた地は

ラブロック商工都市連合だったな。そこで何を建てたというのだ?」

 

「一言で言えば、暇つぶしにできる建物だ。現状のラブロックを見せようか」

 

食卓に魔方陣が展開して、立体映像が浮かぶ。

その映像にマキャベリとヴィットーリアの生まれ故郷であるラブロック商工都市連合が

映し出された。場所は変わり、東部都市群を映す。

 

「なんだ、あの建造物は・・・・・」

 

思わず呟いたヴェロニカ。見たことのない建造物が揃いも揃ってある。

その一つ一つに民たちが乗っていて、楽しげに笑っている。

中には機械的な竜を模した飛行物体が民を乗せて空を飛んでいる。

 

「おお!なんと楽しそうな!」

 

案の定、オズワルドが嬉々として笑みを浮かべていた。

 

「入場料、飲食、お土産以外無料の施設。その名も、ラブロック遊園地だ。

娯楽がない世界にとって唯一の巨大な娯楽に違いないだろう。

ついでに言えば、ゼファロス帝国の技術を使ったわけじゃないからな?

アレは俺たちがいた異世界に存在する施設と全く同じものだ」

 

「・・・・・政治的にあれは使い道がありそうだな。建造費はどれぐらい掛かったのだ?」

 

「ゼロだけど?」

 

その額にヴェロニカは言葉を失った。あれほどの建造物がシェブロン王国の通貨、

一グローリンも掛からず建造したと言われれば、誰もが言葉を失う。

 

「嘘だろう」

 

「嘘じゃない」

 

「いや、あれほどの規模の建造物を一グローリンとも費用を使わず作り上げたと誰が信じる?」

 

「だったら、証明してやろうか?広大な土地を提供してくれたら今すぐにでも作ってやるよ」

 

そう言った瞬間だった。

 

「よかろう、ロートレアモン騎士国の領土一部をそなたに譲ろう」

 

この国の王がとんでもない爆弾発言をした。

 

「な・・・・・っ!?」

 

「・・・・・自分で言っておいて何なんだけど、いいのか?」

 

「この建造物を作ってくれたら譲ろう。だが、作れないならそれまでだ。よいな?」

 

あっさりと認められた。そんな自分の父親に思わずヴェロニカが頭を抱え出す。

一誠はヴェロニカに苦笑を浮かべる。

 

「まあ、俺は作るだけで、領土は必要ないから安心してくれ」

 

「・・・・・そう言ってもらえると助かる」

 

それから時が過ぎオズワルドは、一誠とヴェロニカを自室に誘って

さっそく三人でトランプをし始める。

 

「ぐ・・・・・っ!またこれを引いてしまった・・・・・」

 

意外なことに、ヴェロニカが負けを繰り越していた。

オズワルドがその上で、一誠が一番勝っていた。

 

「お前、顔に出過ぎだ」

 

「またしてもわしの勝ちだ!楽しいな、トランプというものは!

次は大富豪とやらをしてみたいぞイッセー殿」

 

「呼び捨てで構いませんが?」

 

「ならば、わしのことを友人のように接してくれ。このような楽しみを与えてくれたそなたに

ありがたく思っているのだからな」

 

「・・・・・では、そうさせてもらいます」

 

一誠はこうして異世界で、またとんでもない人物と交流を果たしたのであった。

 

―――○♢○―――

 

翌日、一誠たち異世界メンバー+マキャベリ、ヴィットーリオはヴェロニカとオズワルド、

二人の護衛に美丈夫の男性とウルスラがロートレアモン騎士国の南方付近に来ていた。

その場所は広々とした野原で気持ちいい風が吹く。

 

「良い場所だな。ここで創造してしまうのはちょっと惜しい気がしてきた」

 

「なんだ、今さらできないと言ったら首を斬るぞ?」

 

「おー、怖い怖い。分かったよ。創造しますよ」

 

虚空からシャランとなる龍を模した金色の錫杖が現れて、

それを掴んだ一誠は地面に突き刺した。

すると、目の前で超巨大な金色の魔方陣が出現する。

 

「―――創造―――」

 

カッ!

 

魔方陣が一瞬の閃光を放った。あまりにも眩い光に腕で顔を覆い隠す面々。

視界が城に塗り替えられ、視力が奪われる。この場が光に支配され、

しばらく目を瞑ざるを得なかった。

 

「目を開けていいぞ」

 

一誠の声が聞こえた。目を瞑っていた面々は

目を開けて眼前に視界を入れた途端に―――驚愕の色を浮かべた。

 

広々としていた野原が一変して、昨日の夕餉で見たラブロック商工都市連合にある

巨大な施設が目の前にあったのだ。

 

「建造費ゼロ。こうして俺が創造していたから費用はいらないんだよ」

 

金色の錫杖の柄をトントンと肩に叩きながら言う。

 

「・・・・・夢でも見ているのか?」

 

「おお!凄い、これは凄いぞ!」

 

呆然とするヴェロニカを余所にオズワルドが歓喜の声を上げてラブロック遊園地二号の

敷地内へ入って行った。そんな騎士国の王に続いて一誠も追う。

オズワルドは豊満な体でありながら子供のように大はしゃぎする。

まず、目に入ったものは機械的な竜の乗り物だった。

 

「イッセー!わしはアレを乗ってみたいぞ!」

 

「了解、それじゃ機竜に乗ってくれ」

 

「うむ!」

 

嬉々として機竜の背中に跨る。足場にある革製のベルトでしっかりとオズワルドの足を固定し、

飛行する際に落下防止を施す。オズワルドを

 

「飛行時間は三分。飛行するときに障害物とぶつからないように機竜が自動的に避けてくれる。

右の足場を踏めば速度が上がって、左の足場を踏み込めば速度が減少する。

自分で操作できるがくれぐれも気を付けてくれ」

 

「分かった。早くわしを飛ばしてくれ。わしは空を飛びたくて仕方がない!」

 

急かすなって、一誠は苦笑を浮かべながら機竜を作動させると地面から機竜が浮遊をする。

 

「おおおおおっ!?」

 

「それじゃ、行ってらっしゃい」

 

一誠の発言に呼応して機竜が勝手に空へ向かって。前進した。

それからすぐにオズワルドの笑い声が聞こえてくる。

まるで夢だった願いが叶った瞬間を噛みしめて喜びを露わにしているかのようだった。

 

「・・・・・」

 

そんな時、ヴェロニカが一機の機竜に跨り始めた。そして、一誠に告げる。

 

「私も頼む」

 

―――三分後―――

 

「はははははっ!あれが空を飛んだ感覚か!実に楽しかったぞ!」

 

満面の笑みを浮かべるオズワルドが降りてきた。そして遅れて現れたヴェロニカ。

 

「満足してもらってこっちも安心したよ」

 

「うむ、そなたは実にすばらしい物を作ってもらった。

まさしくこれはマザー・ドラゴンにパルを受け取れなかった者たちに夢を叶えさせるものだろう」

 

「マザー・ドラゴン?」

 

「む、そうか。異世界から来たそなたは知らんのだな。マザー・ドラゴンとは竜を生みだす竜だ。

七歳に迎えた子供をマザー・ドラゴンからパルを受け取る『オーファンの儀式』を行い、

アルビオンの森に行かせるのだ」

 

オズワルドの話を異世界人メンバーは興味深そうに耳を傾けていた。

 

「マザー・ドラゴンか・・・・・そのドラゴンに会えるか?」

 

「申し訳ないが『オーファンの儀式』以外、マザー・ドラゴンに会うことを禁じておる。

そなたらでも入ってはダメだ。すまぬな」

 

「そっか、それは残念だ。・・・・・さて、話を変えさせてもらう。

この遊園地を運営するならば、それなりに人員が必要だ。

そして、機械の扱い方と、点検、整備も含めてだ」

 

一本一本指を立てながら言う。オズワルドとヴェロニカは「ふむ」と一誠の話を聞く。

 

「ラブロックにもそう言った説明をしてあるからこそ、

運営ができるわけだが・・・・・どうする?このままお前たちが使うなら残すが」

 

そう訊くとがしゃり、と鎧の音を立て、ヴェロニカが一歩一誠に近づく。

 

「このままにしてくれ。我が国で有意義に活用させてもらう」

 

「ん、そう言うことならこの遊園地はこのままにしておく」

 

コクリと頷く。それから、ヴェロニカとオズワルドに遊園地のことに関して説明し終えると、

遊園地の取扱説明書を渡した。

 

「そんじゃ、俺たちは店兼家を探しに行くとするか」

 

「もう行ってしまうのか?」

 

「まだこの国から離れはしないさ。落ち着いたら遊びにくるよ」

 

両腕をそれぞれ、オズワルドとヴェロニカに差し伸べる。

握手を求める一誠に二人は応じて手を差しだし、握手を交わした。

 

「うむ。何時でも城に遊びにきてくれ。その時はわしと一緒に遊んでもらうぞ?」

 

「イッセー、今度は私と剣を交えよう」

 

別れの挨拶とばかり言う二人に頷く。二人から視線を外し、

ウルスラにも手を差しのべながら視線を向けたのだった。

 

「ウルスラ。また俺と勝負してくれるか?」

 

「ええ、勿論です。次に再会した時でも構いません」

 

「分かった。今度は違うドラゴンで勝負したいな」

 

ニヤリと意味深な発言をした一誠だった。その後、オズワルドたちをフォーティン城へ送ると、

一誠たちは首都から離れた。

 

「さーて、モルドレッド・・・・・どこにいるんだろうな?」

 

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