一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode30

翌日。レベッカが生徒会メンバー(ギルフォードは欠席)に案内したのは、

学院の敷地内にある建物だった。

煉瓦造りの二階建て。そのデザインは洗練されていて、

現代建築の様式が色濃く反映されている。

 

年季の入った建造物が並ぶ学院では、かなり異彩を放っていた。

しかも、その館を一言で表現するならば―――廃墟。玄関の扉には何枚もの板が打ちつけられ、

立ち入りを厳重に禁じているのだ。と、レベッカが厳粛な面持ちで口を開いた。

 

「元々、この館は生徒会役員の仕事場として、十年ほど前に建設された物だった」

 

「いや、分身ではなく、本体の俺を学院に呼ばせた本人が

唐突に言っても理解できないんだけど?」

 

「おや、離れた場所でも状況を把握できるんじゃなかったのかい?」

 

「それをカットしているんだ。そっちはそっちでこっちはこっちで生活をしているし、

してもらっている。学校で問題なんて起こりそうもないからな」

 

オリジナル、本物の一誠がそう説明する。

 

「で、この十年間放っておかれている館を掃除でもするのか?」

 

「それだけではない。この館を我々が使うことに決めたのだ。

一連の事件を経て、我々はジュリアス王子が決して背徳者ではないことを知った。

その事実が公表されるのは、ずっと先のことになるだろう。

だが、ジュリアス舘の封印くらいは、もう解いて良いと思う。

ミラベル王女も許可してくれたことだしな」

 

そこで言葉を切ると、レベッカは懐から竜綺華晶を取り出した。

 

「おい」

 

「なんだ?」

 

「それを出してどうする気だ?」

 

一誠の問いにさも当然のようにレベッカは答えた。

 

「玄関の扉に打ち付けられている板を壊すのだが?」

 

「レベッカって・・・・・威風堂々として、学生たちから憧れと人気を得ているけど、

意外と粗暴な生徒会長だな。

面倒くさいことは全部、クー・フリンか竜綺華晶で済ましているのか?」

 

「―――――」

 

場の空気に亀裂が走ったような感じを覚えたアッシュ達。

生徒会長のレベッカにそんな事をハッキリ言う者は一人もいないはずだった。

だが、いま目の前にいた。

あわわ・・・・・!とレベッカの次の言動、

様子を胸に不安を抱いて窺うアッシュ達であった。

 

「・・・・・」

 

レベッカは―――竜綺華晶を懐に仕舞って館の扉に打ち付けられた板に触れる。

 

「ふん!」

 

と、気合を入れて板を取り外しにかかったのだが・・・・・十年間も放置していた扉に

張られた板は簡単に女の力では取れるわけでもなく。レベッカの頑張りが無化するのである。

そこへ、十二枚の金色の翼がレベッカの横を通り過ぎ、

板を皮肉気に扉から外していくのだった。

 

「こう言うことは男に任せるべきだって」

 

レベッカの背後で苦笑を浮かべる一誠。

 

―――○♢○―――

 

かくして、生徒会員一同は掃除に取り掛かったのだが―――そこで、

思わぬ落とし穴にハマることになった。

 

「ひゃあっ!」

 

転んだ拍子に、バケツの水を盛大にぶちまけるシルヴィア。

 

「んもう、シルヴィアは何しているの―――きゃっ!」

 

水浸しとなった床の上、つるりと滑って尻餅をつくエーコ。

その顔には蜘蛛の巣がびっしりと張り付いている。

 

「ルッカ、これは重いからあたしが・・・・・」

 

「大丈夫。何時もキーラに任せてばかりじゃいけないよ」

 

その脇では、キーラとルッカが花瓶を応接間に運ぶよう、レベッカに頼まれたのだが、

その主導権を争っているのだった。いかにも美術的価値の高そうな花瓶にも拘わらず、

キーラとルッカは「自分が運ぶ」と相手に気を使い譲らず、引っ張り合っている。

 

「あの子たち・・・・・何しているのかしら?」

 

エプロンを身に着け、頭に布を巻いたラーズが嘆息していた。

一方、男のアッシュは慣れた手つきで部屋の掃除をしていた。

それには一誠は感心していた。

ラーズが王女だからシルヴィアのように片付けることができない、

または下手な類かと思っていたが予想を斜め上へ。アッシュは男子寮で住んでいるため、

それなりに片付けることができるだろうと思ってはいた。

 

「ラーズ、掃除ができるんだな」

 

「家庭能力が無能な女、王女だと思われたくないからよ。

侍従達には何度も止められたことはあるけれど、密かに技術を身につけたわ。

私だけでしょうね、お姉様方は絶対にしないもの」

 

ヴェロニカは武闘派で政治。第二王女はシェブロン王国に留学。ミラベルは考古学者と理事長。シルヴィアはああだ。

 

「うん、ラーズはどこに出しても恥ずかしくないだろうな。

オズワルドは良い娘を持って幸せだろうに」

 

「あら・・・・・じゃあ、私を貰ってくれる?」

 

と、一誠に視線を送るラーズ。そのあからさまな様子に―――。

 

「こらこら、手を止めない。掃除をしないと夕暮れになるぞ」

 

レベッカが窘めさせ、掃除を続行させた。

 

「イッセー。私と一緒にこの館の中を見て回ろう」

 

「どうしてだ?」

 

「キミの力で、使えなくなった、もしくは壊れている個所を直してもらいたいからだ。

業者を頼むより、キミの力を使って直した方が断然早い」

 

レベッカの提案に一誠は深く考えず肯定し、アッシュたちを残して部屋から出た。

綺麗になった廊下をレベッカと共に歩き、応接間に食堂、会議室、寝室、書庫、

そして浴室・・・・・ざっと見て回り故障していないか、

または古くなって使えなくなった整備品や生活用品を見つけ次第、一誠は直していく。

 

「ふむ、便利だなイッセーの力は」

 

金属の接触部分が錆びているのか、

蛇口はピクリとも動かなかったはずの蛇口を一誠が能力で直したことでレベッカが感心する。

 

「イッセーは万能だな」

 

「万能じゃないさ。俺だってできる事とできないことだってある」

 

「そうなのか?では、例えばどんなことができない?」

 

問われ、一誠は金色の瞳を真っ直ぐレベッカに向けた。

 

「大雑把に言えば、一人じゃできないことだ」

 

「だから―――キミの家族はあんなに多いんだね?」

 

何かを確かめるようにレベッカは一誠に訊ねると、一誠は首肯する。

 

「戦争と同じだよ。どんな強くても一人で万の相手と戦うのは無謀すぎる。

どんなに優れても数の暴力に押し潰される。俺もどんなに強くても一人で

何でもできる分けがない。知っているだろう?俺は一度死んだって。それが証拠だ」

 

「・・・・・」

 

「さて、そろそろ戻ろうか。―――そこで覗き見している奴らがいるしな」

 

徐に一誠は浴室の扉に向かって腕を横薙ぎに振るうと、扉が勝手に開いて―――。

 

「うわ!」

 

「きゃっ!」

 

と浴室の扉の向こうにいたシルヴィア達が、

いきなり開いた扉に対応できずになだれ込むように現れた。

 

「お前ら、もう掃除が終わったのか?」

 

「え、えーと・・・・・」

 

「ま、まだだ・・・・・」

 

しどろもどろに、言葉を濁すシルヴィア達だった。

一誠は溜息を吐き、レベッカに問う。

 

「レベッカ会長?サボっている生徒会員に罰を与えた方が良いと思うぞ?」

 

「そうだな・・・・・では、こうしよう」

 

意地の悪い笑みを浮かべたレベッカ。シルヴィア達はどんな罰を与えるのか、

若干顔を青ざめてその時を出迎えた。

 

「あ・・・・・足が・・・・・」

 

「こ、これは・・・・・っ」

 

「うぐぐ・・・・・っ」

 

館から離れた場所、校庭でシルヴィア、ラーズ、ルッカ、キーラの四人は、

土下座の如く正座で直で地面に座らされている。その傍には心配で見にきた

アッシュに付き添うようにエーコもいた。さらには一誠もいた。

ただし、土下座をするシルヴィア達の監視役としての分身体だ。

本物の一誠は館にレベッカと二人きりだ。

 

「イ、イッセー・・・・・後、どれぐらいなのだ・・・・・?」

 

「あと十分だ」

 

「短い時間なのに・・・・・この苦痛の中でその程度の時間だと・・・・・結構長く

感じてしょうがない・・・・・っ」

 

「座る行為がこんなに辛いなんて・・・・・」

 

苦痛を漏らす。実際に座らされているシルヴィア達の辛さは顔に出るほど。

アッシュはそんな四人に同情したのか、一誠に声を掛けた。

 

「なあ、もう良いんじゃないのか?ただちょっとだけ掃除をしていなかっただけだぞ」

 

「そーいうのはレベッカに言え。俺はただ時間になるまで座っているか見ているだけだ」

 

実行させているのはレベッカだからな、と一誠はアッシュに伝える。

 

「なんなら、アッシュ・ブレイクがこいつらの代わりに土下座、延長して一時間するか?」

 

「ごめんなさい!」

 

『薄情者!』

 

あっさりと呆気なく拒み、シルヴィアたちに救いの手を伸ばさなかった

アッシュに避難の言葉が発せられた。

一誠はそんな面々に苦笑を浮かべたその時だった。

 

「―――やあ、お嬢さんがた。随分と面白そうなことをしているね?」

 

天空を斬り裂くように、黒髪長髪の男子生徒が飛来したのである。

貴公子然とした、端正な生徒だった。

ざっ・・・・・と風が巻き起こり、高貴な輝きを放つ聖竜(マエストロ)が着陸する。

 

あのクー・フリンに勝るとも劣らぬ巨体だった。

額を飾る黒水晶が、ぎらぎらとした輝きを放っている。

その黒水晶を一目した瞬間、エーコはゾクリと身を震わせた。

ただの装飾品にしか見えないが、なにやら不気味な波動を感じ取ったのである。

貴公子は、聖竜(マエストロ)の頭部に超然と立っている。

 

「あら・・・・・久し振りに見たわね」

 

その顔を見るなり、ラーズが立ち上がろうとするが・・・・・土下座をしていた

足に痺れが生じ、思うように立ち上がれず、生じる痺れに顔に

苦痛とプルプルと身体を震わしだす。エーコは貴公子の顔を見つめた。

漆黒の長髪を一つに束ね、眉は細く凜として、双眸は深い紺碧をたたえている。

鼻梁は高く、一流の彫刻家が掘ったような神像のようだ。

 

「・・・・・なによ、あんた?」

 

エーコがじろりと睨みつけると、貴公子は朗らかに笑った。

 

「その幼竜じみた角・・・・・お前がエーコで間違いないな?」

 

ずしん、ずしん・・・・・大きな地響きと共に聖竜(マエストロ)がエーコとの距離を詰める。

その気になれば、エーコを丸呑みできそうな距離にまで達した。それでもエーコは恐れない。

アヴァロン聖竜皇家の末裔である自分に、

一介のドラゴンが危害を加えるとは思えなかったからだ。貴公子は優雅な仕草で、

エーコに手を差し伸べた。

 

「幼竜エーコ。今日から僕の仲間になれ」

 

「はあっ?」

 

一体、この男は何を言っているのだろう?

 

「いいか、エーコ?お前は僕の覇道に必要不可欠な存在の一つなんだ。

ハッキリ言わせてもらうと、僕はお前が欲しい、正確には、アヴァロン聖竜皇家の力がね」

 

「あんた、まさか・・・・・帝国軍の手先じゃないでしょうね!?」

 

エーコは警戒心を露わにして、貴公子を睨み据えた。

 

「ふっ・・・・・この僕を、機械油に塗れた帝国人と一緒にされては困るな」

 

「じゃあ、何者だっていうのよ?」

 

その質問を待っていたとばかりに。貴公子は会心の笑みを浮かべた。

 

「―――――オスカー・ブレイスフォードだ」

 

が、第三者が貴公子の正体を静かに告げたのだった。第三者へ一斉に視線を送ると、

 

「イッセーとレベッカ会長!」

 

もう一人の一誠とレベッカが校庭に現れていた。

オスカーはせっかく名乗ろうとした自分を邪魔した者、

レベッカに不機嫌そうに顔を浮かべていた。

 

「レベッカ、これから僕が格好良く名乗ろうとしたのに、先に言わないでほしかったかな」

 

「誰が言ってもお前のことはいずれ知るから問題はないさ。

それより、この場にパルを連れてくるなどどういうことだ?

パルは竜舎にいなければならないのだが」

 

「僕のトリスタンがあんな狭い建物中に窮屈な思いをさせることなんてできないよ」

 

「ふ・・・・・無知が罪と言うのはこの事か」

 

オスカーの発言にレベッカは嘲笑染みた発言をし、肩を竦める。

それにはオスカーの綺麗な柳眉が吊りあがる。

 

「どういうことかな?」

 

「それは自分の目で確かめるべきだな。止めはしないぞ?

ふふっ、お前が驚く顔が目に浮かぶ。授業を、生徒会をサボり続けたいたお前に、

なんにも知らないのだからな」

 

レベッカは愉快と優越感が顔から浮かべている。そんなレベッカを何故だか気にくわない。

まるで一人だけ楽しい思いをしていたかのような感じが伝わってきてしょうがない。

 

「ああ、シルヴィア達。もう正座を解いて良いぞ。

しばらく、その場から動けないだろうがな」

 

一誠がそう告げると、シルヴィア達は姿勢を崩すも、一誠の言う通り・・・・・その場から

動けなかった。

 

「ところで、さっきからどうしてあんなところで座っていたんだい?」

 

「なに、ただのお仕置きだ」

 

「ふっ。ロートレアモン騎士国の第四、第五王女が地べたで土下座なんて前代未聞だね。

見ていて面白かったよ。―――さあ、レベッカ。僕と戦ってもらおうか。

僕が勝った暁に―――以前からの約束、お前を嫁にする!」

 

「はあ?どういうことだ!?」

 

アッシュは驚きのあまり、つい口を挟んでしまった。

あのレベッカに勝負を挑むだけでも無謀なのに、嫁にしようなどとは!

一体。どれほど自信過剰な男なのかと、呆れ果ててしまう。

 

「って、レベッカ。あんなことを言っているけど、仮にお前は負けたとしても嫁になるか?」

 

「いや、それはない」

 

「即答か!」

 

オスカーにしては珍しく真顔でツッコミを入れた。

 

「だってさ。諦めろオスカーちゃん」

 

「オスカー・・・・・ちゃん?」

 

一誠のオスカーに対する呼び方に怪訝な顔でオスカーを見つめる。

オスカーをどこから見ても男にしか見えないが・・・・・。

 

「おや、どうしてそんな事を言うんだ?」

 

「後で教えるさ。それにレベッカが戦うまででもないぞ?」

 

「へぇ、キミが僕の相手になるって?」

 

「ああ、そうだ。―――レベッカはお前には渡さないし、

俺が守るからな。指一本も触れさせない」

 

途端に一誠が纏う雰囲気がガラリと変わる。瞳が真剣になり、

クー・フリンに勝るとも劣らない巨体のトリスタンに向ける戦意が伝わってくる。

 

「そこまで言うなら・・・・・でも、その前にキミの名前を聞こうか?」

 

「イッセー・D・スカーレットだ」

 

「―――ほう、キミが異世界から来たドラゴンか。なら、問題ないな!」

 

オスカーの叫びに反応し、トリスタンが一歩を踏み出す。

ずぅん・・・・・!と地鳴りがして、大地が縦に激しく揺れた。

 

「イッセー、一応聞くが・・・・・大丈夫なのか?」

 

「俺を信じろ。俺の戦う姿を見ててくれば、絶対に負けないしレベッカを守るよ」

 

―――とくん。

 

突然、レベッカの鼓動が跳ね上がった。

それは、レベッカが一度も経験したことのなかった、ときめきだった。

 

「異世界のドラゴン・・・・・とても興味があったんだよね。

エーコのように頭から角を生やしていないなんて珍しいや」

 

「御託は良い。こいよ」

 

クイクイと手を招く。その挑発にオスカーは口角を上げてトリスタンに指示を出した。

主の命令にトリスタンが前足を振り下ろす。一誠は避けようとせず、

そのままトリスタンの前肢に踏み潰された―――。

 

「はっはっはっ!なんだ、呆気なかったね?これが異世界のドラゴンの実力なら―――」

 

オスカーは高らかに笑い、勝利を確信した。

―――だが、どうだ?シルヴィア達はどよめき、騒ぎ、叫びもしない。

 

「おや、キミたちの友達が踏み潰されたのに、随分と冷静だね?」

 

「・・・・・ふっ。それは当然だろう?」

 

ようやく足の痺れが治って、立ち上がることができたシルヴィアが不敵に言った。

 

「お前の後ろにイッセーがいるのだからな」

 

「え?」

 

シルヴィアの発言にオスカーはキョトンとして背後に振り返った。

 

「うーん、絶景絶景」

 

オスカーの視界にトリスタンの頭部に佇んでいる一誠がいた。オスカーは目を見開いたのは

当然だった。あの一瞬で気付かれず、背後に回って立っていたのだ。

その気になればオスカーをトリスタンから突き落とすことだってできたはずだ。

 

「異世界のドラゴンの力、一部だけ見せてやるよ」

 

そう言う一誠の体が光に包まれた。宙に浮きだして、光がどんどん膨張する。

オスカーの目は光で何も見えず腕で目を覆い、光が収まるのを待った。

光が消失した頃にオスカーは上空を見上げて絶句した。

トリスタンより大きい真紅の巨大なドラゴンが翼を広げて見下ろしているではないか。

立派で鋭利な一本の角に金色の双眸。見聞したことのないドラゴンが目の前に降り立った。

 

『レベッカ、乗れ』

 

「ああ!」

 

真紅のドラゴンはレベッカを頭部に乗せた。

 

「バカな、イッセー・D・スカーレットはどこだ!?」

 

『俺がそうだが?言っただろう、異世界のドラゴンだと。ある意味これが俺の本来の姿だ』

 

「な、なんだと!?くっ、トリスタン!」

 

オスカーの意図にトリスタンは汲み取って、翼を羽ばたかせて空へと飛翔する。

それに続く一誠。

 

「オスカー・ブレイスフォードが命ずる!汝が創成し聖騎甲(アーク)を我に献呈せよ!」

 

全身が金色の光に包まれるオスカー。そして閃光。それから―――光が途絶え、

綺羅星如く光り輝く甲冑を装備した、オスカーの聖天竜騎士(アーク・ドラグナー)の姿が顕現した。

四肢のたてがみを思わせる騎士甲冑は壮麗で、兜から拍車に至るまで金色だった。

金色はシェブロン王国を象徴する色で、獅子はシェブロン王家の家紋に使われている。

おそらくトリスタンは、オスカーの出自や野望を踏まえた上で、

その絢爛たる聖騎甲(アーク)を創成ったのだろう。

 

「異世界のドラゴンは僕とトリスタンが倒してみよう!」

 

「と、あんなことを言っているがイッセー?」

 

『オスカーに騎士甲冑と固有魔装を与えただけだ』

 

一誠はさも気にせず、速度を上げた。

 

『遅いな』

 

「んなっ!?」

 

刹那―――。トリスタンの両翼が両断した。

翼を無くしたドラゴンは地竜(アーシア)のように四肢だけとなり、

空中を飛ぶことがままならず落下する。

途中、落下するトリスタンの両翼は一誠が一瞬で口に咥えて咀嚼する。

 

ずぅううううううんっ!

 

校庭に落下したトリスタン。両翼が失い、痛々しい姿であった。

 

「トリスタン・・・・・ッ!」

 

『殺しはしない』

 

一誠も校庭に降り立ち、トリスタンの両翼を食べながら発する。

その後、オスカーとトリスタンの周囲に巨大な魔方陣が幾重にも展開した。

 

『チェックメイトだ。呆気なかったな?』

 

「くっ・・・・・!」

 

絶望的な状況にオスカーはガクリと頭を垂らした。せっかく纏った甲冑も意味がなかった。

異世界のドラゴン・・・・・強過ぎるとオスカーは悔しい思いを胸に抱く。

 

『俺がいる限り、レベッカは渡さない。レベッカが欲しければ、俺を倒さないことには

話にならない』

 

レベッカを下ろし、一誠は人の姿へと戻った。

 

「んじゃ、トリスタンの翼を再生させるからどいてもらおうか」

 

一誠の背中から十二枚の金色の翼が展開して、オスカーをトリスタンから翼で下ろし、

トリスタンをあっという間に翼で包みこんだ。一瞬の閃光が迸り、

しばらくして翼が解かれた。トリスタンの姿が現れると、

両断された両翼が元に戻っていた。

 

「・・・・・」

 

それを見て、オスカーは空いた口が塞がらなかった。

 

「ドラゴンの翼って不味かったな」

 

「いや、食べるものではないと思うのだが」

 

「やっぱり?焼いてから食べたほうが良かったか」

 

そんなオスカーを余所に、さっさとこの場から去ろうとする

一誠にレベッカやシルヴィアたちも続いた。

 

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