一誠の竜騎士物語   作:ダーク・シリウス

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Episode32

フィアナの森に獣除けの魔香炉を設置した一誠は学校が終わるや否や、ラブロック商店に戻った。

店はもう既に馴染んだ光景が目に入る。ラブロック商店に訪れた客たちが賑やかな空間を

作っており、隔離している個室にはほぼ満員な状態で使われている。

また、聖遺物を見ようと訪れている客もいれば、異世界から持ち込んだ娯楽道具を

購入している客も窺える。

 

「いらっしゃ―――あっ、一誠さん。お帰りなさい」

 

「ただいま龍牙」

 

黒いタキシードを身に包む龍牙が一誠を出迎えた。

 

「お客さん来ていますよ」

 

「誰だ?」

 

「オスカーって言えば分かるって言ってたけど」

 

早速来たか。内心そう呟いて「男だろう?」と龍牙に問う。

 

「うん、見るからに貴公子って感じでした」

 

「そいつ、女だから」

 

「・・・・・」

 

オスカーが女だと知らされ固まる龍牙。一誠は当然のようにオスカーのもとへと歩み寄る。

 

「よう、オスカー」

 

「やあ、また会ったね。待っていたよ。遅いからこの店の料理を食べていたよ。

とても美味しいじゃないか」

 

言葉通り、店の奥の一角に座っているオスカーのテーブルには

様々な料理と積み重ねられた食器があった。

 

「結構食べているな」

 

「僕はこう見ても食べる方でね。ああ、ちゃんと払うから心配しないでね」

 

華奢な体のどこに入るのだろうかと思うほどであった。

 

「で、風呂を入りに来たんだな?」

 

「それもあるし、他にもある。取り敢えず座って話をしよう」

 

「俺たちの店なんだがな」

 

オスカーの左隣に座ると、「ぷはーっ」とオスカーは満腹と表現する感じで息を吐いた。

 

「さてと、お腹もいっぱいになったし、話をしようかな。キミのことが知りたいし」

 

「何が知りたいんだ?」

 

「そうだね、その前に言いたいことがあるんだ。僕の仲間にならないか?」

 

「断わる」

 

「即答か!」

 

デジャブを感じるオスカー。だが、予想の範囲内と言い続ける。

 

「じゃあ、僕の嫁にならないか?」

 

「・・・・・その話しか。他の二人はどうするんだ?」

 

「アッシュ・ブレイクに関してはエーコのアヴァロンの聖竜皇の力が欲しいからね。

まだ諦めるつもりはないけど―――ギルフォード・ギルガメッシュは口封じにお願いするよ」

 

「そうか・・・・・」

 

不安感を覚えるが、気になることが浮かび上がってオスカーに問う一誠だった。

 

「どうして女だと隠しているんだ?」

 

「異世界から来たキミには分からない―――と言いたいところだけど、

僕に協力するなら教えてもいいよ?」

 

ニヤリと交渉を持ち掛け、一誠に対してそう言うが。

 

「レベッカに訊いた方が早いな。んじゃ」

 

あっさりと訊く相手を変えてオスカーから離れようと立ち上がったところで、

オスカーが「話す、話すから待って!」、慌てて一誠の腕を掴んで強引に座らせた。

 

「・・・・・シェブロン王国は男じゃないと王位を継ぐことができないんだよ」

 

「なるほど」

 

女のオスカーでは絶対に王位継承候補にすらなれなかっただろう。

だから、男装してまで王になりたがっているオスカーに感嘆と同情が胸の奥から湧きあがる。

 

「ロートレアモン騎士国とシェブロン王国は同盟関係だから、

そっちの国にも竜騎士(ドラグナー)はいるのか?」

 

「残念ながら、竜騎士(ドラグナー)おろか聖天竜騎士(アーク・ドラグナー)すら僕以外いない。

マザー・ドラゴンにシェブロン王国の子供たちは選ばれずにいるんだよ。

例外として僕だけが選ばれたんだ」

 

「おー、それは凄いじゃないか。シェブロン王国唯一の竜騎士(ドラグナー)。自慢できることだ」

 

オスカーに拍手を送ると、そんなこと言われたことがないのか、

照れたように顔を赤くして一誠から視線を逸らした。

 

「だけど、どうしてエーコを欲しがるんだ?あいつがいなくても、

お前とトリスタンがかなり有利な立場だと思うんだが?」

 

「エーコはアヴァロンの聖竜皇家の末裔の姫だよ?このアルク=ストラーダ大陸で古から

存在していた一族の末裔。竜を飼うもの、または竜の力を利用とする者じゃあ

当然エーコの力を欲するのさ」

 

「力の制御すらできていないあいつを、欲しがる奴は物好きな奴だな」

 

肩を竦める。オスカーは小首を傾げる。

 

「そうかい?それにアヴァロン聖竜皇の生き血をすすれば、

不老不死の肉体を得る―――古い言い伝えもあるんだよ」

 

「不老不死?なんだ、オスカーはそんなもんを欲しいのか?」

 

「そんなもんって・・・・・僕は別に欲しくはないよ。

シェブロン王が不老不死の秘薬を求めているそうなんだよ」

 

「不老不死なんて、文字と言葉を見聞すればさぞかし魅力的なことだろうが、

実際はいいもんじゃないのにな」

 

嘲笑する一誠に、オスカーは疑問をぶつけた。「どういうこと?」と。

 

「考えてみたこともないだろうから教えるよ。

自分を残して知人、友人、親友、家族が死にゆく中、自分だけ長い時間の中で

生き続けるんだ。当然、自分のことを知っている奴らは一人もいなくなる。

例え、新たに人と交流して絆を深めても、愛し合ってもそいつは死んで、

不老不死の自分だけが生き残る―――そんな生き方を永遠に続くんだ。

それが嫌で自殺しようが、殺してもらおうが不老不死である自分は死ねない。

最後に残るのは後悔、絶望だけだ」

 

「・・・・・っ」

 

オスカーは身震いした。不老不死なんて言葉、聞くだけで確かに魅力かもしれないが

そこまで考えたことが無く、故に一誠の言葉を聞くまではありもしない

古い言い伝えとしか認識しなかった。

仮にもしも、オスカーも不老不死の肉体を得たら―――。

 

「(トリスタンやセレスが先に死んで、ずっと僕は一人ぼっちになる)」

 

「そういうことだ。不老不死は、そんないいもんじゃないって。いつしか人だけじゃなく、

生命体は死を迎える。死んで当たり前なんだ」

 

「・・・・・ドラゴンのキミも死ぬのかい?」

 

「しばらくは生きるだろうな。軽く一万年は」

 

「い、一万・・・・・!?」

 

騎士国のドラゴンの寿命はそんな長く生きられない。

なのに異世界のドラゴンは軽く一万年も生きるなんて―――!

内心驚くオスカーの心を見透かすような笑みを浮かべる一誠が口を開く。

 

「驚いたか?」

 

「う、うん・・・・・」

 

「レベッカ達も驚いていたよ。異世界のドラゴンを見せたり、

異世界に連れて行ったりもしたら尚更だった」

 

「異世界のドラゴン・・・・・?」

 

「ああ、そうだ。例を上げるなら―――」

 

一誠がオスカーの頭に手を触れた。次の瞬間。

オスカーの意識が引きずり込まれるように暗い空間へ。

意識だけのオスカーは辺りを見渡す。ここはどこだ―――?

 

『―――おや、あのエーコとか言うドラゴンではない方が来ましたね』

 

『主が我らを紹介させたいのだろう』

 

『あいつはただ自慢したいだけだろう』

 

―――――っ!?暗い空間から次々と巨大なドラゴンたちが姿を現した。

金色に輝くドラゴンがいれば、三つ首のドラゴン、樹木のドラゴン、

獰猛で凶暴そうなドラゴン、巨人型のドラゴンなどなど・・・・・。

 

「(こ、これが・・・・・異世界のドラゴンだって・・・・・!?

トリスタンより大きいじゃないか・・・・・!)」

 

オスカーが驚く最中、何かによって引っ張られる感覚を覚えたと思えば―――頭を掴む

一誠の姿が視界に飛び込んできた。

 

「どうだ?お前が見たドラゴンは俺の身体の中にいる。全部で十一匹だ」

 

「じゅ、十一匹・・・・・」

 

確かに・・・・・・驚きっぱなしで数までは数えていなかったが、そのぐらいはいた。

 

「あ、正確に言えば俺も含めて十四か」

 

「え、まだいるの!?」

 

「おう、俺のように人の姿をしたドラゴンがこの店の中にいるぞ」

 

「んなっ・・・・・」

 

驚愕するオスカーだった。オスカーの驚くさまに一誠は愉快そうに笑みを浮かべ続ける。

 

「因みに、俺は一度死んで人間からドラゴンとして甦った」

 

―――○♢○―――

 

新学期早々。「アンサリヴァンの五百年祭」の準備に追われる

あまり一誠たちの学院生活は瞬く間に過ぎていった。五百年祭当日まで、

あと一週間を切っている。祝日にも拘わらず生徒会議が行われることで一誠はリーラを

引き連れて生徒会専用の館、別名―――ジュリアス舘に辿り着き、会議室の扉を潜るなり、

一誠の眼は珍しいものを見る目となった。

 

「やあ、イッセー。待ちわびたよ」

 

あのオスカー・ブレイスフォードが、休憩用のソファを陣取って、

気さくに声を掛けてきたのだ。優雅に足を組んだ様子は、憎らしいほど貴族めいていた。

オスカーの背後には、銀のポニーテールに左目に黒革製の眼帯を覆っている少女がいた。

 

が、一般的なメイド服の概念を打ち破るかのように、メイド服には、

黒の装飾がふんだんに施されていてとにかく黒いのだ。スカートの丈は短く、

活発な印象を受ける。

 

そんなメイドの少女が仏頂面で佇んでいる。

貴公子とメイド以外、室内に人影は見当たらない。

早く行こうとした結果がこうなったのだろう。

 

「おはよう、オスカー」

 

「意外だね。『どうしてここにいるんだ?』って言われるのかと思ったよ」

 

「レベッカからお前のことを色々と聞いたからな。副会長なんだって?

オスカーの正体を明かされてたくなければ、

生徒会に入れって脅された形でここ(生徒会)にいるようだな」

 

その一誠の言葉にオスカーは肩を竦めた。

 

「まあね。だから彼女の願いはある意味叶えているからこそ、僕はサボっていられるんだ」

 

「自慢できるようなことでもないがな」

 

そう言って苦笑を浮かべれば、一誠の背後に影の如くリーラが佇む。

 

「ところで、考えてはくれたかな?」

 

「ん?なんのことだ?」

 

「僕の嫁になることだよ」

 

オスカーの発言に一誠は手を叩いた。そういえばそんなことも言われたなー、な感じで。

 

「俺の嫁になるなら話は分かるけど、お前の嫁にはなれないって」

 

「ふふっ、そこは大丈夫だよ」

 

オスカーは指をパチンと鳴らすと、背後にいるメイドに命じた。

 

「セレス!プロジェクトAだ!」

 

「・・・・・面倒くせぇなあ」

 

セレスと呼ばれた少女は仏頂面を崩すことなく、鬱陶しそうな顔をした。

 

「ま、暇つぶしには丁度良いか」

 

ずかずかとセレスが歩み寄ると、一誠に手を伸ばしてきた。

子犬の頭を撫でるように、さりげない動作だったが、

 

―――パシッ。

 

「っ!」

 

リーラがその手を弾いたのであった。

 

「失礼、無作法で我が主に触れないでください」

 

「んだと・・・・・?」

 

セレスの綺麗な柳眉は限界まで吊り上がると、リーラに罵倒した。

 

「邪魔するな、家畜は家畜らしく、道端に這いつくばっていろ!」

 

「その家畜で這いつくばるのはあなたさまです」

 

と、リーラが冷たくセレスを見下ろした瞬間。セレスの身体に浮遊感を覚えた。

そのまま―――ドスンと会議室の床に背中から倒され、

目の前に黒光りする黒い塊を突き付けられた。

 

「な―――っ!?」

 

「相手の力量を計れないメイドは、三流以下でございます」

 

目を見開くセレスに銃を突き付けるリーラの言った通り、

地面に這いつくばったのはセレスの方であった。

 

「そう言えば、自己紹介していなかったな。

彼女は俺の専属メイドの一人、リーラ・シャルンホルストだ。

俺が小さい頃から傍にいてくれている愛おしいメイドだ」

 

「以後、お見知りおきを」

 

セレスから離れ優雅にお辞儀をするリーラ。起き上がったセレスの顔は

屈辱にリーラを睨んでいた。

 

「そのメイドも、異世界から来た人間なんだね?」

 

「ああ、そうだ。異世界から来た俺たちの実力は折り紙つきだ。

ドラゴンだって相手にできるほどにな」

 

「へぇ・・・・・じゃあ、キミのメイドもということか。

それだったらセレスが負けてしまうのは無理もないか」

 

「あたしは負けていねぇよ!」

 

オスカーに反論、食って掛かるセレスであった。

 

「でしたら、あなたはドラゴンと戦えるのですね?

ああ、この世界のドラゴンではなく、異世界の方のドラゴンの方です」

 

「・・・・・」

 

リーラの指摘にセレスは拳を固く握り、震わす。セレスは見ていたのだ。

トリスタンの両翼をあっさりと切り捨て、倒した瞬間を。

オスカーが聖騎甲(アーク)を纏って、固有魔装を出す前にだ。

そんな相手に一介の人間が勝てると思うか?―――無理だ。

 

「ところで、プロジェクトAの内容は?」

 

「キミを女装させて、僕の嫁になってもらうことだよ」

 

「リーラ、物凄く助かった。ありがとう」

 

「・・・・・」

 

リーラ?と一誠は返事をしないリーラに問いかける。

が、顎に手をやって何か考える仕草の彼女はうんともすんともしない。

と、一誠に顔を向ける。

 

「いえ、なんでもございません」

 

そんな口振りするリーラだが、一誠が目を細め、嫌な顔を浮かべる。

 

「・・・・・何を考えていたのか想像が付くのは愛し合っている

証拠だからと思ってもいいか?」

 

「何のことだかわかりませんが、愛し合っているのは間違いないですよ?」

 

甘えるように一誠に寄り添って、目を瞑っては一誠の頬に柔らかく濡れた唇を押し付けた。

 

「今はこれで我慢してくださいませ。

お部屋に戻りになされたらちゃんと唇を交わしましょう」

 

「・・・・・はぐらかされるよ」

 

負けたと、両手を上げた。そんな二人の様子を見ていた

オスカーはセレスに視線を向け、顔も向けて口を開いた。

 

「セレス、僕たちも―――」

 

「やるかボケ虫が!」

 

と言ったと同時に懐からナイフを取り出してオスカーに放って、

ナイフはオスカーの横を通り過ぎて壁に突き刺さった。

それが突っ込みとしてしたセレスだが、自分で地雷を踏んでしまった事に気が付かない。

 

「―――主に対してその暴言と行動、許し難いですね」

 

「ああ―――!?」

 

リーラがセレスの首に刀手をし、意識を狩り取った。

気絶したセレスを荷物のように肩で担いだリーラはオスカーに言った。

 

「少し、このメイドをお借りします。メイドとはなんたるか、

調―――いえ、教育を施します。骨の髄まで叩きこみ、教え込む必要があるようなので」

 

「・・・・・できれば、今日中に返してもらえるかな?」

 

「善処します」

 

冷や汗を流すオスカーに、涼しい顔でこの場からいなくなろうと

一誠に頭を下げてから会議室を後にした。

 

「ねぇ・・・・・セレスは大丈夫かな?」

 

「態度が変わっていると思った方が良いぞ」

 

一誠も若干、冷や汗を流していたのであった。

 

―――○♢○―――

 

その後、レベッカ達も会議室に現れたので定刻通りに生徒会会議が始まった。

今日はオスカーも出席しているので、一誠が知る限り始めて全ての役員が

一堂に会したことになる。

 

「はい、あがり」

 

―――――生徒会役員全員が会議をしながらトランプすることもだ。

 

「んじゃ、負けたアッシュ・ブレイクは女になる罰ゲームをしてもらおうか」

 

「ちょっと待て!?そもそもなんで会議中に遊びながらするんだ!?」

 

「オスカーを知らない俺たちはオスカーと交流を深めるためだと始める前に説明しただろ?」

 

そう言いながら玩具の銃を取り出して、アッシュに銃口を突きつけて引き金を引いた。

銃口から怪光線が放たれ、その光をアッシュが浴びてしまう。

アッシュ以外の面々が興味津々、

不安の視線で見守る最中、アッシュの身体に変化が起きる。

髪が背中にまで伸たストレートロングヘアに、平らだった胸がどんどん膨らみ、

たっぷりとした量感に制服が窮屈そうに盛り上がり、

体つきも華奢にへと―――一誠たちの前でアッシュは

世界初の男性から女性へビフォーアフターを成し遂げたのであった。

 

「ほう。これは予想以上だ。とても綺麗ではないか!」

 

オスカーが嬉々として称賛する。レベッカ達も思わず溜息を洩らす程、

アッシュは美少女になったのだ。

 

「・・・・・これ、本物?」

 

エーコが怪訝に双丘を凝視する。そんなエーコにドギマギするアッシュ。

 

「女になったからな。当然だ」

 

「元に戻るの?」

 

「一時間後になれば元に戻る。そのあいだはずっとそのままだ。頑張れ、アシュリー」

 

「ア、アシュリー!?」

 

高い声で愕然とするアッシュ。

 

「イッセー、質問」

 

「なんだ」

 

「それで、女が男にもなれるの?」

 

ルッカが問うた。口の端を吊り上げて、銃口をエーコに向けて引き金を引いた。

 

「―――こんな感じで、性転換ができる」

 

男になったエーコを周りは興味深々と一誠が持つ玩具の銃を見つめる。

 

「ま、一時的なもんだから絶対に男や女になることはない。罰ゲームぐらいしか使えない」

 

「ちょっと!私を元に戻しなさいよ!」

 

エーコが抗議するが、一誠は聞き流す。

 

「そうだ。面白くなったところで一つ提案がある」

 

「なんだ?」

 

「以前から不思議に思っていたのだが、

生徒会役員は各種競技に参加できないと言う決まりは、残念だと思わないか?」

 

オスカーの言葉を受け、一誠を除く一同は真顔になった。

生徒会役員は競技に参加しないのか―――この時期になると、

必ず議論の対象になるテーマであった。

 

「いいかい?学院生や市民、さらには来賓が最も観たいと思っているのは、

何だと思う?もちろん、竜騎士(ドラグナー)同士の壮絶なバトルに決まっている。

偉大なる聖竜(マエストロ)を駆る騎士同士が、本気でぶつかり合うんだ。

血湧き肉躍る催しだと思わないか?」

 

やや興奮気味のオスカーに答えたのは、レベッカだった。

 

「いや、厳密には参加できないわけではないんだ。

ただ、歴代の生徒会役員が出場を遠慮してきたのでな。何時の間にか、

伝統のようになってしまっただけだ。それに、一般生徒を相手に聖竜(マエストロ)で立ち向かうのは、

いささか大人気ないともいえる。最初から結果が分かり切っている競技など、

つまらんだろう?」

 

オスカーは負けじとばかり、新たな提案を持ちかけた。

 

「ならば、一般競技に加えて、聖騎武闘会(ドラグナーズ・ガンナバウド)を催すのはどうだ?

なんといっても、今年は五百年祭だ。これくらいの特例は問題ないと思うが」

 

形の良い顎に指を添えると、レベッカは考え込む仕草をした。

 

「ふむ。竜騎士(ドラグナー)による伝統的な格闘戦か。それは確かに面白そうだが・・・・・一つ、問題がある」

 

「問題?」

 

小首を傾げるオスカー。レベッカは視線を―――一誠に向けた。

 

「彼のドラゴンが強過ぎるのだよ。だから私たちの誰と戦っても結果、イッセーが勝ってしまう」

 

「彼のドラゴン・・・・・ああ・・・・・なるほどね」

 

一誠のドラゴンを見たオスカーは納得し、

ギルフォード以外のレベッカ達は一誠のドラゴン、

異世界のドラゴンの強さを肌で感じていた。レベッカのクー・フリンのみならず、

ウルスラのガラハッドを倒したほどだ。

一介の学院生のドラゴンでは勝つことはまず不可能である。

 

「んじゃ、お前らに有利な条件で戦えば良いだけだ。ああ、ギルフォード以外でな」

 

「どうしてギルフォード以外なんだ?」

 

「それはこいつ自身が強いからだ。パル抜きでな」

 

そうなのか?本当なのか?と一同はギルフォードに一瞥した。

その理由はギルフォードの実力よりも一誠が言う自分たちの有利な条件で戦うという真相だ。

 

「その条件って?」

 

「そうだな・・・・・決められた範囲以内から動くことを禁ずる、

または一撃でも食らわせ尚且つ、傷つけたらその瞬間、相手の勝利―――ってのはどうだ?」

 

『・・・・・』

 

それぐらいなら、なんとかなるかもしれないと雰囲気が漂う。

決められた範囲以から離れて長距離からの攻撃をすれば、

例え、当たらなくても向こうからの攻撃も当たる可能性は低くなる。

 

「ただし、勝つごとに俺は違うドラゴンと戦う。五百年祭だ。

異世界のドラゴンを披露したい。どうだ、レベッカ?」

 

「うむ、その行動範囲内を決めれば空も自由に飛べれない。

私たちが勝てる確率も少なからず上がると言うわけである。

そして来賓の方々に思う存分に見せることもできる」

 

「んじゃ、それでいいな?」

 

一誠の意見に周りは否定の意は問うこともなかった。

 

「ついでだ、俺と戦い勝った奴は―――俺ができることなら何でもするし

言う事を聞く素晴らしい権利を与えてやる」

 

『っ!?』

 

その言葉を聞き、一誠を慕う少女たちから―――勝利への執念が伝わってきた。

だが、一人だけ手を挙げた。

 

「えっと、おれはどうすればいいんでしょう?

一応、竜騎士(ドラグナー)には叙任されましたけど、

まさか会場でエーコを覚醒させるわけにもいきませんし。

いっそのこと、俺は辞退した方が良いんじゃないかと思います」

 

だが、そこに一誠が水をさした。

 

「いや、アッシュ・ブレイク、お前には是非とも、出場してもらいたい」

 

「おいおい、俺とエーコの事情は知ってるくせに、無茶言うなって!」

 

アッシュが口調を強めると、今度はオスカーが甘い微笑みを漏らした。

 

「忘れたのかい?お前は『どんなドラゴンでも乗りこなせる男』なんだろう?

エーコに騎乗できずとも、自分の好きなドラゴンを選べばいいさ」

 

「言っておくけど、俺のドラゴンを乗せないからな」

 

と、一誠が釘を刺した。そう言われてアッシュは冷や汗を浮かべて首を横に振った。

流石にあの異世界のドラゴンたちを乗りこなせるとは到底思えないからだ。

自我がかなり強く、言う事を聞くのは一誠だけである。一誠が言えば従うかもしれないが、

アッシュでは自分勝手に動かれるかもしれない。

 

「お前の友達で聖竜(マエストロ)がいるか?」

 

「・・・・・一人だけなら」

 

「じゃ、そいつから借りてもらうように説得してみろ。

ダメだったら俺が異世界のドラゴンを用意する」

 

「っ!?」

 

一誠の発した言葉にアッシュは大きく目を見開いた。

まさか、異世界のドラゴンを用意してくれるなんて言うとは思いもしなかったからだ。

 

「いいのか・・・・・?」

 

「仮に俺と戦うことになったら呆気なくお前が負けてしまうのがつまらなさすぎるからな」

 

「用意するなら、とっても強いドラゴンにしなさいよね!」

 

「だったら、お前がしっかり力をコントロールできるようにしろ。

アヴァロン聖竜皇の癖に未熟め」

 

「な、なんですってぇ!?」

 

痛いところを突かれ、あまりの言い草に怒るエーコであった。

そんなエーコを余所にオスカーが一誠に顔を向け口を開いた。

 

「異世界のドラゴンを用意するって、一体どうやってだい?」

 

「普通に異世界に戻って異世界にいるドラゴンの知り合いに声を掛けて

この世界に連れてくるんだが?」

 

「そんなことが可能なのかい?」

 

「俺だからできるある意味神業だ」

 

ニヤリと口角をあげて不敵に言う。オスカーは「ほう」と漏らす。

そしてそう言った直後、一誠が異世界に戻ると言うなら―――あの世界をまた

見て回りたいと言う気持ちからラーズをはじめとする女生徒たちが

手を挙げて自分もと名乗り上げたのは別の話。

 

「ああ、そうだ。オスカー」

 

「なにかな?」

 

「俺がお前に勝ったら、エーコはどうでもいいとして、

レベッカとの結婚は諦めてもらうからな」

 

一誠が発した発言にレベッカは一度は目を丸くしたが、目を細めると、微笑みを浮かべた。

 

「ふっ、だったら僕がもしもキミに勝ったら僕の嫁として女になってもらうよ?」

 

二人が、一誠とオスカーが不敵に言い合う。

 

「んじゃ、追加だ。俺が勝ったら―――お前の全てを俺がもらおうかな?

その唇とお前の貞操、全てだ」

 

「な・・・・・」

 

『なぁっ!?』

 

オスカーが女だと知らないシルヴィアたちにとって信じられないことを聞いた瞬間であった。

あの、イッセーが、男に、求めるなんて・・・・・!

だが、一誠にとってそれは冗談であった。

好きでもない男にそう言われて、こんな理不尽な提案を反故してもらうよう、

全力でぶつかってくるように仕向けたのであった。

 

「それが嫌なら、勝ち進んで全力で俺と勝負するんだな。

無論、さっきの条件付きで俺は戦うつもりだ。―――楽しみにしているぞ?」

 

そんな問題ありな発言をする一誠は気付かなかった。

 

『(そんなこと、絶対阻止する!)』

 

一誠を慕う少女たちが意を決して、一誠かオスカーと戦うことになったら全力で、

命を掛けてまで阻もうと心から思っていたことを・・・・・。

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