私はロートレアモン騎士国第一王女ヴェロニカ・ロートレアモンだ。
・・・・・私は見てしまった。我が妹、シルヴィア・ロートレアモンが、
口から出すことはできないが我が愛し妹シルヴィアが、
異世界から来た人物・・・・・イッセー・D・スカーレットに
せ、接吻をしていたところを・・・・・!
奴には色々と仮があるし、我が国のために力を尽くしてほしいと聖竜騎士団に入団して
ほしいぐらいと喉から手が出るほど願うほどだ。あの強さ、そして奴自身が
ドラゴンだと言うのだからこの竜を飼う国としてはいても当然、当たり前なのだ。
丁度、私自身はオーファンの儀式に落選してしまって竜を得ていないから丁度良いと
思っているのだ。ならば、奴を我がパルとして国のために力を振る舞うのに―――――と、
話が脱線してしまったな。いくら奴だとて、我が妹に手を出すことは許さん!その逆も然り!
だから、私は奴にあることを課した。聞けば、特殊な空間に入れば
その特殊な空間にいる限り、外の時間は大して時が進んでいない状況になる
便利な道具があるそうだ。なので私は告げた。
その特殊な空間の中で私と二人きり、一週間を過ごせと。その一週間を過ごした後に、
外の世界はたったの一時間と・・・・・まったくもって都合がよすぎる。
・・・・・また話が脱線してしまったな。
私が奴に、イッセーに課した事とは―――シルヴィアに相応しい者か私を納得させ
満足させることだ。実力は間違いなく申し分にない。
これは既に知っている上に体験したからな。取り敢えずは聖竜騎士団の副団長として
入団する手続きしても問題ない。だとすれば他のことだ。
―――料理―――
「はい、お待ちどうさま」
特殊な空間の中で、奴が私の前に数々の手作り料理を置いた。場所はバルコニーだ。
私と奴がいる特殊な空間は無人島に巨大な白い建物の中、リビングキッチンにいる。
どれも今できあったとばかりに湯気が立ち昇り・・・・・とても美味しそうだ。
これをあえてワザと不味いと言った日には―――私の舌がかなりおかしいと認知されそうだ。
くっ・・・・・!これはもはや合格としか言えんだろう!
どれもこれも美味しいではないか・・・・・!
―――踊り(ダンス)―――
豪華絢爛なとある一室に奴と流れる音楽に合わせながら足を動かし、身体も動かす。
人王の名は伊達ではないと言うことか・・・・・。
てっきり、この手の事は慣れていないとばかりに思っていたが・・・・・。
中々やる・・・・・。しかし、対して私はこの手のダンスはしたことがないから―――。
「そうそう、俺の脚と合わせて自然体で動くんだ」
こいつに指導されている状況だ!その上、とても分かりやすく、
スムーズに上達してしまった!
おのれ・・・・・!私が指導できることがあったら扱いてやるからな!
―――会話―――
やはり、誰かと接する時に会話は当たり前だ。
奴に私をどんな話でもいいから楽しませろと
王女らしく、命令したところ―――。私が知らない異世界の事を長々と告げられ、
私はその話を真摯に聞いてしまった。またあの異世界に行きたいと
思わされてしまうほどだ。ちっ、これも合格としよう。
―――訓練―――
いつもどんな風にお前は鍛えているのだと告げたら―――。
『グハハハハハッ!たっのしぃなぁっー!もっともっとだ!
熱く過激な死合いをしようぜぇっ!』
『言われなくてもこっちは全力でお前を倒してやんよ!』
私はただ呆然と眺めていた。自分のパルと全力でぶつかり合って、
殴り合っているのだから。
奴の強さの秘訣とは、こう言う事だったのか・・・・・、
これでは当然強くなるに決まっている。
今の奴はドラゴンとなって人型のドラゴンと殴り合っている。
あのドラゴン、嬉々としてダメージを負っている。とてもじゃないが
狂っているとしか言えないな。そんなドラゴンとウルスラのガラハッドと戦わせたら
きっとあのドラゴンが勝つかもしれない。
―――入浴―――
や、やはりだな・・・・・男は女の身体に興味があると、
男は女の裸体を見たら狼のように飛び掛かるって話を侍従たちが言っていた。
だから、だからだ!奴がどこまで私の身体を見て耐え抜くか、
奴の忍耐を確かめるべく奴の入浴中に私が突入するべきだと思う!
この建物の浴場は男と女の専用がある。当然、奴は男だから男専用の浴場に足を運んだ。
三分ぐらいしたら、突入すればいい。そう思い、三分時間が過ぎた時に男専用の浴室に
入っては服を脱ぎ去り、身体にタオルを巻かず、手に持って威風堂々と浴場に突入した。
「ヴェ、ヴェロニカ!?」
くくくっ、奴は案の定、驚いていた。さて、どこまで耐えきれるかな?
奴は湯の中に浸かっている。
私も湯に浸かろうとイッセーのもとへ歩み寄って、
「隣に座るぞ」
と、奴の隣に座ったその直後。
「お前、何がしたいんだよ・・・・・?」
・・・・・私が予想した反応ではない?何故だか、呆れた表情で言われたぞ。
「女の身体を見て、お前がどこまで私の魅力に耐えきれるのか・・・・・お前の忍耐力を
試しに来たのだ」
そう言いながら、私はやつに胸を見せびらかした。
お、男に私の身体を曝け出すのは・・・・・は、初めてで恥ずかしいが・・・・・全ては
シルヴィアのためだ。さあ、奴の反応はどうだ!?
「それ、裏を返せばヴェロニカに魅力がないってことになるけど?」
「はっ?」
「俺のことを好きでもない女の身体を見ても、何とも思わないぞ。俺から手を出すことは
一切ないからな。逆に襲われても気絶させて別の部屋に寝かせるからそのつもりで」
そう言って奴は本当に私の身体を見てもどうでもいいとばかり気にしなく、
頭と体を洗って私を残してさっさと出てしまった。
「・・・・・私に魅力がない・・・・・」
女としてのプライドはないと思ったが・・・・・、
私の大切な何かが粉砕された気分を味わわされた・・・・・。
―――就寝―――
奴は自分に好意を向ける女にしか興味がないと知らされ、私はとてもショックを受けた。
ならば、シルヴィアの身体を見れば、奴は恥ずかしがって
理性を保とうとするのか・・・・・?
「・・・・・なんだか、妹に負けた気分だ」
私の何がシルヴィアより劣っているのだ・・・・・?とても納得できないぞ・・・・・。
「奴に問いだたす」
それが一番だと奴が寝ている寝室へと足を運んだ。
この建物の部屋は扉が無く通気性がとてもいい。
だからあっさりと奴の寝室に入ることができる。
「なんだ、ヴェロニカ?」
私に背を向けて、テーブルに向かって座っているイッセーが声を掛けてきた。
私のことをお見通しのようだ。
「お前に訊きたいことがある」
「訊きたいこと?―――――っ」
奴は目を見開いた。私に魅力がないと言うならば―――私の生まれた姿を見ても
何も思わないのだろう?
「私はシルヴィアの何に劣っているんだ?」
「劣っている・・・・・?シルヴィアにか?」
「お前に好意を抱いている女にしか興味ないのだろう?
ならば、お前に好意を抱いているシルヴィアに私は何が劣っているのか訊きたいのだ」
足を運び、奴の隣に立った。テーブルには一つの蝋燭が火を灯している。
それだけが部屋を小さく明るくしている。
「教えてくれ、私の何がシルヴィアに劣っているのだ・・・・・?」
「・・・・・」
そう問うと、奴はあからさまに溜息を吐いて立ち上がり―――私をベッドに突き飛ばした。
「な、なにを―――!」
「お前さ」
「っ!」
ベッドに寝転がる私を覆い被さるように奴が私の上に構える。
「俺がシルヴィアに相応しいかそれを確かめるべくこんなことをしているんだろう」
私に確かめるように問いかける。
「どうしてお前がシルヴィアに劣っているなんて訊くんだ?可笑しな話じゃないか」
「わ、私だって・・・・・女だぞ。姉として妹には負けていられないのだ」
またこいつは溜息を吐いた。
「んで、俺はシルヴィアに相応しい男だったのか?」
「・・・・・」
明日で一週間となる。これまで見てきた、
接してきたイッセーの評価は・・・・・シルヴィアに相応しい男だと分かった。
口に出すのはあまりにも悔しいから首を小さく肯定と動かす。
「そうか、よかったよ」
「―――――」
覆い被さりながらこいつは笑みを浮かべた。その笑みに私は不覚にも見惚れてしまった。
「別に、劣ってなんかいないぞ」
急にイッセーはそんな事を言う。
「人の魅力はそれぞれだ。スタイルも然り。まあ、性格もそうだ」
「・・・・・私の性格はどうだ?」
「んー、シスコンかな?って思っている」
「シスコン・・・・・?」
それはなんだ?と問うたところ・・・・・。
「シスターコンプレックス。略してシスコン。女姉妹に対して強い愛着・執着を
持つ状態を言うんだ。ヴェロニカがシルヴィアのことを思っている気持ちがそれだ」
「んな・・・・・!?」
「まあ、ヴェロニカがシスコンだってことはある意味シルヴィアは知らないだろう。
でも、自分のことを気に掛けていると言う事は気付いていると思うぞ」
一応、バレていないのだろう・・・・・。ラーズにはバレてしまっているが・・・・・。
「さてと、ヴェロニカ」
「なんだ・・・・・?」
「お前は俺のことをどう思っているんだ?」
その問いかけに私は直ぐに答えることはできなかった。
「いや、やっぱり聞かない」
イッセーが金色の翼を広げ私の横に寝転がり、毛布を掛けてきた。
このまま寝ようと言うのか・・・・・?
そう思っていると、こいつは私の手を握り始めた。
「ん、おやすみ」
おやすみって・・・・・おい。・・・・・寝息が聞こえてきた。本当に寝たのかこいつは。
背中に感じるこいつの翼の温もり・・・・・悪くはないが・・・・・。
「(イッセーのこと、どう思っているか・・・・・か)」
それを答えるのはまだまだ先になりそうだ。
―――○♢○―――
「・・・・・」
ミラベル・ロートレアモンは一誠のために魔導艦の設計図を描いていた。
場所はラブロック商店の聖遺物展示室にある魔導艦のとある一室。
この魔導艦を一誠から譲りえたことで、ミラベルは遠慮なしで調べれるようになったことで
学院が終わるや否や、真っ直ぐラブロック商店に足を運んで魔導艦を調べながら
設計図を描いていた。一誠の要望はアジ・ダハーカを模した魔導艦である。
「姫様。ティータイムの時間です」
影のように傍に佇むユニスがそう告げる。設計図を描いていた手を止めて、一息吐く。
「ありがとう、ユニス」
ユニスから手渡されるカップを手に取り、鼻に通る香りを楽しみながら静かに口に流し込む。
その優雅さに誰もが息を漏らし、見惚れてしまうだろう。
「イッセー様から依頼された設計図はどうですか?」
「彼の魔導艦の要望は至ってシンプルだから、簡単に完成できそうです。
五つの
この魔導艦をベースに設計するだけなのだから」
「この魔導艦を調べながらイッセー様の魔導艦を設計する・・・・・ミラベル様が
有意義な時間をお過ごしできますから一石二鳥ですね」
「あら、聞き慣れない単語ね。異世界の言葉かしら?」
そう問うミラベルにユニスはどこから取り出したのか分からない一冊の本を取り出した。
「はい、リーラ様から頂いたこの本を読んで学びました」
「それはとても興味深いわ。後で私にも見せてくれない?」
「勿論です」
はにかむユニス。ふと、思い出したかのようにユニスは言った。
「設計の方はともかく、イッセー様はその後のことは一体どうするんでしょうか?」
「そうね。魔導艦一隻を作るのにかなりの時間と費用が掛かるわ。
あの子は一体どうするすのかしら・・・・・」
顎に手をやって考える仕草をするミラベルの視界に扉が勝手に開いた。
「そこは問題ない。こっちで勝手に設計図の通りに作らせてもらうよ」
「イッセー」
「設計図の方は?」
問われ、書いている最中の設計図を入ってきた一誠に見せた。
設計図を見て、満足気に頷くとミラベルに微笑んだ。
「この短期間でここまで描くなんて、凄いな。感嘆の一言だ」
「べ、別に私じゃなくても他にも魔導艦の設計をできる子たちならいるわ」
照れくさそうに顔をプイッと逸らしそう言うミラベルだったが、
「へぇ、そうなんだ。でも、俺はミラベルに設計してもらい。
他の奴じゃなくて信用と信頼をできるミラベルにな」
他意はない言葉だろうと分かっているが、ミラベルは一誠の言葉に頬を薔薇色に染める。
「そこまで言われたら・・・・・この魔導艦とシルヴァヌス以上の
魔導艦を設計してみせましょう」
「ははっ、ありがとうな。楽しみにしているよ」
「でも、どうやって魔導艦を創り上げるの?」
「オズワルドに頼むのはちょっと気が引くから異世界で作ってもらうんだ。
必要な材料は異世界ならすべて揃っているし、足りなかったら俺の力で創造する。
時間の流れが違う異空間の中でな」
なるほど・・・・・。ミラベルは納得したように一誠を見つめる。すると、一誠が口を開く。
「にしても、カサンドラ・ロートレアモン。ミラベルの姉であり第二王女が彼女なんだな」
「いきなりどうしたんですか?」
「ただの好奇心。カサンドラって言う女王は知らなかったからな。
ヴェロニカの妹でミラベルの姉を知りたかったんだ」
「そう言えば、あなたは彼女とは会っていませんでしたわね」
私は別に会いたくもなかったですが、と付け加えるミラベルであった。
「だが―――そうはいかないようだぞ」
「え?」
何を言うのだろうかと思ったミラベルの視界に、一誠の手には一通の手紙があった。
「この手紙の差出人はカサンドラ・ロートレアモンだ。ミラベル、
彼女に異世界のことを話していたらしいな?そのことについて俺と会って話がしたいって
手紙が届いたんだよ」
「―――――」
「明日は休日だ。その日に彼女が来訪してくる。念のためにヴェロニカにも教えているけど
来るかどうか分からない。なんせ、明日は異世界にオスカーを連れて行く日でもあるからな」
一誠の発言にミラベルは呆然としていた。カサンドラが来ることも、異世界にまた行くことも
耳の中に入るが、何やらただならぬ予感がしてどうしようもなかったのだった。
―――○♢○―――
翌日。カサンドラ・ロートレアモンがアンサリヴァン市に訪れたのは夜だった。
「初めまして、あたしはロートレアモン騎士国第二王女のカサンドラ・ロートレアモンで。
イッセー・D・スカーレットと、異世界の人型ドラゴンと交流を果たせたことに
聖ロア・マリアに感謝を・・・・・」
挨拶をするカサンドラ。漆黒の髪は高貴な艶を帯びて、腰までは真っ直ぐ伸ばしている。
切り揃えた前髪の下では、琥珀色の瞳が妖しげに煌めいていた。その豊満な肢体を包むのは、
絢爛たる
最高級の絹地は銀色に輝き、
色取り取りの宝石がちりばめられている。ネックレスやブレスレッド、指環といった宝飾は、
どれも名だたる工房で作られた逸品であり、カサンドラの美貌に星屑めいた輝きを添えていた。
ドレスのすそを摘まんで優雅にお辞儀をしたカサンドラに怪訝な視線を
送るのは―――ヴェロニカとミラベル、シルヴィアにラーズであった。
このラブロック商店にロートレアモン騎士国の第一から第五王女が
アンサリヴァン五百年祭以来、
揃った瞬間だった。その他にもレベッカ、キーラ、ルッカ、アッシュ、
エーコといつものメンバーが揃っている。
ヴェロニカの護衛としてグレン、ウルスラまでもいる。
「俺、そんな有名?」
「ええ、シェブロン王国にもあなたの武勇は聞いているわ。
一番話が聞くのは―――異世界のドラゴンのことね」
「ま、そうだろうな」
肩を竦め、そう言葉を返すとガシャリと音を立たせながらヴェロニカが一歩前に出た。
「カサンドラ、恋人のユリエルはどうした?仮にもお前は王女の立場で第二王子の恋人だ。
護衛も連れて来ないでこの場にまで一人だけで来るとはいささかどうかしていると思うが?」
「ああ、彼?あたしの楽しみが減りそうだから、睡眠薬で眠らせたわ」
「・・・・・とても恋人に対する扱いではないな」
「彼をどうこうしようと、あたしの勝手。それと別に彼と付き合っているわけじゃないわ」
カサンドラが爆弾発言をした。ある者は怪訝に眉根を寄せ、
ある者は目を見開き、ある者は声を出して驚愕する。
「あの話は嘘だと言うのか」
「まあね。さてと―――」
カサンドラはとある人物に目を向けた。
「久し振りね。私の可愛いラーズ」
「カ、カサンドラお姉様・・・・・」
「うふふ、数年振りにあなたを抱きしめれるわ」
嬉しそうにラーズに近寄って抱きしめるカサンドラ。
あのラーズがドギマギしている様子に一誠は珍しいものを見る目でシルヴィアに問うた。
「ラーズと仲が良いんだ?」
「というより・・・・・一方的な意味でな。
ラーズはあんな感じでちょっと苦手意識している」
「学者筋なミラベルより、兄に甘えるシルヴィアより、
まるで小さく震える小動物みたいなラーズの方が可愛いわ♪」
どうやらカサンドラは可愛いものに目が無いらしい。
今でも幸せそうに目を細めてラーズを抱き締めている。
「・・・・・おい、貴様。イッセーと話がしたいが為にきたのではないのか」
「それを言うなら、いるはずも呼んだはずもない人たちがいるわ。
特にヴェロニカ姉様とミラベル、シルヴィア。ああ、ラーズは良い意味で誤算だわ」
「ふん、私たちがいるのはイッセーに呼ばれたからだ」
いや、呼んでいないけど?ただ、カサンドラが来るって報告をしただけで―――。
と、内心そう思った一誠だが、
「帰ってくれないかしら?」
「姉に対するその口の聞き方は相変わらずのようだな・・・・・ここで斬り捨ててやろうか」
「おいこら、また正座させられたいのか?」
「ぐっ・・・・・!」
店の中で暴れ出しかねないヴェロニカに半目で言えば、
ヴェロニカがクレイモアを握っていた手を放した。
「・・・・・あのヴェロニカが言う事を聞くなんて驚いたわね」
「ちょっと、人の店の中で姉妹喧嘩したからな。お仕置きをしただけだ。
さて、カサンドラ。俺と異世界の話がしたいんだっけ?」
「ええ、面白そうな話だから聞いてみたいの」
「百聞は一見に如かず―――俺から聞くより、自分の目で見た方が早いだろう」
腰に差していた金色の軍杖を手にし、構えるとブツブツと呪文を唱えた時、
軍杖を横に突き刺した虚空が歪み出し、ポッカリと大きな穴が開いた。
その穴の先には―――異世界の町と思しき建物が覗けた。
「んじゃ、夏休み以来の異世界への訪問だ。お前ら、行くぞ?」
レベッカたちは気持ちのいい返事をし、異世界に繋がる穴に入る一誠に続いて潜った―――――。
―――○♢○―――
僕の名前はオスカー・ブレイスフォード。今日はイッセーの住んでいた
異世界へあっという間に辿りついた僕たち。異世界と言うだけあって彼に案内される場所は
どこもかしこもアンサリヴァン市だけじゃなく、シェブロン王国にすらないものが
多々あった。とても刺激的だったといえるね。
海の生物を眺めれる施設に連れて行かれた時は本当にビックリしたよ。
あんな大量の水の中をガラス一枚で隔てているんだ。
ガラス一枚の向こうの水の中をのんびりと泳いでいる魚たちを見た時は感動だね!
ただ食べるだけで水揚げされ、調理された魚しか見たことがないからとても新鮮だった。
他にも動物だけの施設にも案内されたよ?凄かったよ。猛獣もいれば可愛い動物もいたんだ。
耳の長い小さな動物を触れた時にはなんだか可愛くてしょうがなかった!
妾はアンネゲルト・ラーラー・ヴァルプルガ・ゼファロス。元ゼファロス第六皇女だった。
鳥籠のような家から自ら飛び出し、イッセーのもとへ身を置いておる。
平民の仕事をさせられておるが、別段悪くないし妾を拘束するようなことは一切ない。
自由を得られた気分はとても清々しい。
イッセーについていくと何万と言う数の花が咲き誇っている地にと足を運んでいる。
どこを見ても、見渡す限りの花だらけ。我がゼファロス帝国とは真逆の環境と景色。
とても綺麗で色んな種類の花があった。妾の世界にもこのような場所があるのか・・・・・?
あったら確かめたいものである。
あたしはカサンドラ・ロートレアモン。ロートレアモン騎士国第二王女よ。
シェブロン王国に留学している身だけれど、イッセー・D・スカーレットに興味を抱き、
彼と話しをしにアンサリヴァン市に来たというのに、
あたしの想像をはるかに超えたことをしてくれた。
異世界と言う世界に連れられ現在、あたし好みな静かな場所にいるわ。
自然豊かで鳥の囀りが聞こえ、空気も澄みきっていて彼の別荘の一つに一休み。
「どうだ、カサンドラ。異世界は」
「ええ、とても素敵。この場所もあたしは好きよ」
「反応が良好で安心した」
そう言って彼は笑みを浮かべる。
周りからあたしとあたしの美貌を
自国や他国の王侯貴族が明かりに吸い寄せられる虫のように集まって
求婚してくるほどだというのに、彼はあたしの美しさに冷静でいる。
あの偽りの恋人のユリエルですらあたしを求めているというのに。
不思議な子ね。それともドラゴンだからかしら?
「ねえ、一つ訊いて良いかしら」
「ん?」
「世界で一番安全な場所ってどこだと思うかしら?」
そう問うと、彼は不敵に笑みを浮かべた。
「異世界に住んでいるお前たちなら、この世界が一番安全な場所だろう。
この世界での俺はこの世界に住む全ての人間の頂点に立っている王、人王だからな」
・・・・・この子、王族だったなんてね。驚かされるわ。
「この世界が安全なら、あたしを退屈させはしないかしら?」
「色んな文化、食文化、地方、環境、娯楽。異世界にあるものがあればない物もある。
それを確かめたいなら協力してやるよ。―――俺と同じドラゴンを宿している王女様?」
「―――――」
気付いて、いたのね。いえ、正確に言えばあたしも気付いていた。
あの武闘会で彼の上半身が曝け出した時に見えた背中の星刻―――。
今は隠している背中には、とある竜の星刻が刻まれている。中途半端なことに、
半分しか無い紋様がね。彼は遠回しなどせず、ハッキリと言った。
「同じモルドレッドの魂を宿している身同士、仲良くしていきたい」
手を差し伸べてくる。この手を握ったら、彼との交流を深めれる。
あたしの美しさに魅了されないこの子、ドラゴンに興味がある。
半身が目の前にいるのだから拒む理由は、ない。
「そうね。ユリエルより、あなたと一緒にいた方が面白そうだわ。
あたしも半身を探していたところだったし、半身と一緒にいた方が
この子の覚醒も早くなるかもしれない」
彼の手を握りながらそう発すると、彼は目を丸くした。
「俺は別にユリエルから離れて俺と一緒にいろと言ったわけじゃないが?」
「ふふっ。どちらにしろ、あたしはあなたの手中に収められる未来だと思うわよ?」
そう言ったら、微苦笑を浮かべ頭を掻きだした。あら、本当にそうするつもりだったのね。
「俺たちが宿す竜を俺は理由があって手に入れないといけなかったからな」
「どんな理由かしら?」
彼は言った。
「この世界に連れてくることだ。龍しかいない龍の世界へ―――」