「なあ、レベッカ」
「なんだ、イッセー」
「―――どーして、俺までヴェロニカ王女殿下を迎えなきゃいけないんだ?
俺、一介の店を構える一般人なんですけど?」
正午の鐘が、鮮やかな蒼穹に響き渡る時。第一校舎の入り口前には、市長と学院長をはじめ、
市議会や学院理事会の重鎮、そして生徒会・・・・・などなど、
総勢二十名あまりの歓迎団が整列し、ヴェロニカの来訪を待ちうけている。
なのに、一般人としてアンサリヴァン市に訪れた上に店の店員としている一誠が
既に学校を卒業した身の一誠とは無関係のアンサリヴァン騎竜学院におり、
歓迎団と交じっているのだった。
「ふふ・・・・・あの時の少年とこんな形で再会できるなんて・・・・・後で色々と
教えてもらうからね・・・・・」
エーコを誘拐した白衣の女性ことアンジェラ・コーンウェルまでもがいた。
鋭い視線が背中に突き刺さるのを一誠は嫌でも感じで物凄く居心地が悪かった。
「キミもあの時の事件の当事者だ。無関係とは言えんよ」
「帰って良い?」
「ダメだ」
「ウチの店の料理、レベッカ限定で全部無料で食べさせてあげるから」
その魅力的な申し出にレベッカは一瞬だけ肯定してしまいそうだった。
が、やはりダメだと首を横に振った。
拒否され深く溜息を吐いて一誠は辺りを見渡す。歓迎団の中には見知った少年少女もいる。
最初に名を挙げるならレベッカだ。そして次に、ラーズグリーズ・ロートレアモン、
アッシュ・ブレイク、エーコ、ギルフォード・ギルガメッシュも整列している。
さらには、
「あの赤いドラゴン。誰のパルだ?」
「名前はクー・フリン。私のパルだ」
「へぇ、レベッカの・・・・・」
その時、一誠とクー・フリンの目線があった。
「・・・・・ぐるるるる」
すると、クー・フリンは喉の奥から唸り声を上げた。
「・・・・・俺、嫌われた?」
「あんなクー・フリンを見るのは初めてだ。どうしたのだ・・・・・?」
当惑の色を浮かべるレベッカも一誠に警戒するクー・フリンに戸惑った。
「・・・・・まあいいよ。嫌われても。俺にはあいつらがいるし」
「あいつらとは?」
「家族のことだよ」
「ああ、そうか」
一誠の意図に苦笑を浮かべる。クー・フリンが一誠に警戒していることに申し訳ないと思いつつ、
子供のように拗ねた一誠に心の中でも苦笑を浮かべる。
「にしても・・・・・シルヴィアがいないな?どうしたんだ?」
レベッカは言い辛そうに口を開いた。
「まあ・・・・・・なんだ。実の姉に恐れているのだよ彼女は」
「あいつ、自分の姉を怖がるような体験をしたのか―――」
「誰が、なにを怖がっているというのだ?」
一誠の言葉を遮ったのは、何とシルヴィアだった。
「姫様・・・・・!」
シルヴィアが現れた途端、市議会や理事会の面々が恭しくお辞儀をする。シルヴィアは
一国の王女に相応しく、堂々たる態度で「ご苦労」と挨拶すると、こちらに歩み寄ってきた。
「お前・・・・・」
眉間に皺を寄せ、隣で立つシルヴィアの耳元で呟いた。
「本物はどうした?」
「―――――」
シルヴィアは一誠の問いに瞑目して少しの間を空けて声を殺して呟いた。
「よく、分かったな」
それは自分はシルヴィアではないとの発言だった。
「シルヴィアの気を覚えているからな。化けの皮を剥がす前に分かったさ」
「ふっ・・・・・流石だな。だが・・・・・分かるな?」
「ヴェロニカも気付くと思うけどな。まあ、フォローはする」
「ありがとう」
そこでレベッカが鋭い口調で告げた。
「ぐずぐずするな、シルヴィア。
ランスロットと共に姉君を迎えるべきではないのか?」
「ランスロット?」
「私のパル、
あまりランスロットを好いてはいないのです」
シルヴィアの返事に、レベッカは眉根を寄せた。
「それは、ヴェロニカ王女が
「まあ・・・・・そんなところです」
妙に歯切れの悪いシルヴィアを一瞥すると、レベッカはどういうわけか、
憐れむような笑みを浮かべた。
「ならば、そういうことにしておこう」
レベッカの意志が、一誠には気付いた。その時、大人たちの間から、次々と叫び声が上がった。
「見えたぞ!」
「おお、あれがヴェロニカ様の・・・・・!」
「あんな乗物を完成させてしまうとは!」
「帝国製の航空艦を見ているようだ・・・・・!」
一誠も釣られて、爽やかに晴れ渡る大空を見上げた。コバルトブルーの空の果て、
どう見ても自然界には存在しない遺物が、確かに浮かんでいるのだ。刻一刻と時間がたつにつれ、
異物は単なる黒い点から、少しずつその輪郭を露わにしていった。その飛行物体は、
周囲を七騎の
「はぁー、ようやく解放されるか」
「何の話しだ?」
「いや、こっちの話しだ」
―――○♢○―――
第一校舎の正面、広大な敷地を埋め尽くすように、ふわりと着地する艦は魔導艦シルヴァヌス。
水鳥が湖面に着地するかのような、穏やかな着陸だった。
この魔導艦シルヴァヌスの燃料は竜綺華晶だ。それも
特別な竜綺華晶。
ドラゴンの化石が地中で千年の時を経ると、莫大な魔力を秘めた結晶体が生まれることがある。
だが、そのため量産は不可能に等しい。その上、シルヴァヌスは帝国製の飛行艦を比べれば、
小型で防御力も低い。装甲の薄い部分は、先ほどの
防御力を補っている。
シルヴァヌスの護衛を務める七騎の
ところだった。七騎のうち、先頭の
装備している。
おそらく、彼が親衛隊隊長なのだろう。
一同が見守る中、歯車が軋むようなノイズと共に、シルヴァヌスのハッチがゆっくりと開き、
タラップが自動的に降下する。誰もが無言で見守る中―――。まるで鉄と鉄が打ち合うような
足音と共に、ヴェロニカが地上に降り立った。背後に二人の男女を引き連れて。
「なに・・・・・?」
最初に疑問を浮かべたのはレベッカだった。
その理由は、ヴェロニカの背後にいる一人の男が―――なんと一誠だったからだ。
そして、もう一人は聖竜騎士団団長、ウルスラ・L・セルウィン。
レベッカにとって意外な人物たちがヴェロニカと共にシルヴァヌスから姿を現した。
真紅のマントをばさりと翻すと、ヴェロニカは朗々と告げた。
「出迎え、大義である!」
革の鞭が、ぴしりとしなるような声だった。
腰に両手持ちの大剣、クレイモアを帯びさせながらも、七名の親衛隊員をぞろぞろと引き連れて、
ヴェロニカはこちらへ歩み寄ってきた。
市長をはじめ、一同は慌てて膝をつこうとしたのだが、
ヴェロニカはさも面倒くさそうに片手を振った。
「堅苦しいのは苦手だ。それより、シルヴィアとラーズはいるか?・・・・・ん?」
ヴェロニカの鷹のような目が、ぐるりと一同の顔を見渡すと、見知った顔が視界に移り込んだ。
そして、背後にいる少年と交互に見た。
「イッセーが二人・・・・・だと?」
怪訝に呟くヴェロニカに二人の一誠が同時に苦笑を浮かべた。
「―――はは、やっぱり驚いたか。こういうわけだ」
指を端いたその時だった。
レベッカとシルヴィアの間にいた一誠が―――ポンと煙と化となって姿を消失した。
「なっ・・・・・」
「そっちの俺は分身体・・・・・偽物といったところだ。魔法で作ってな」
「大人しく私の傍にいると思ったらそう言う事だったか」
ヴェロニカが溜息混じりにそう言葉を漏らしていると、
シルヴィアとラーズが堂々と前に進み出していた。
「四年二ヵ月と十三日ぶりだな、だが妹たちよ」
「はい。私たちがアンサリヴァンに入学するため、王宮を立って以来です」
「見ない間でも、何のお変りもなく息災のようでなによりですわ。
―――どうしてそこに私のお気に入りの殿方がいるのか、気になって仕方がないですがね」
一誠を見る目つきは鋭く、今度は実の姉に、ヴェロニカに冷たい視線を送った。
「なに、この者に少しばかり仕事をしてもらっただけだ」
「仕事、ですか。そうですわね、
恐れ戦かれているお姉様ともあろう者が私から奪うような真似なんてしませんものね」
冷笑を浮かべ、次にウルスラを見た。
「ですが、随分と警護を固め過ぎでは?聖竜騎士団団長までも引き連れて。
今回の慰問はそれほどの重要なもので?」
そう思うのは仕方がない。重要な立場、一国を守護する騎士団団長がこの場にいるからだ。
ラーズの思っていたことはヴェロニカが首を横に振ったことで否定された。
「本人が有給休暇を使ってな。私たちと共にいるのだ」
「・・・・・あの、団長が有給休暇ですって・・・・・」
ヴェロニカから聞かされた話に唖然と信じられない気持に一杯になったラーズであった。
「それよりも、だ」
ヴェロニカはシルヴィアに―――、
「―――私をたばかるつもりか」
何の迷いも無しに腰に帯びていたクレイモアを抜いて水平に横薙ぎに払った。
見た目は両手用の大剣にも拘わらず、ヴェロニカは片手で軽々と振った。
その切れ味は今まで反乱分子を全て斬り捨てた上に、
バシリスクという
そんなヴェロニカとヴェロニカの愛剣のクレイモアが、反乱分子のように実の妹の身体を襲った。
しかし、一誠以外のこの場にいる面々は信じがたい光景を目の当たりにしたのだった。
ヴェロニカのクレイモアをひらりとかわしたシルヴィアが、軽く五メートルは飛翔して、
宙でくるくると回転しつつ、華麗に着地を決めたのである。
どう見ても、人間離れした体術であった。
「やっぱり、お姉様じゃなかったわね」
ラーズはつまらなさそうに呟いた。
「流石はヴェロニカ様。やはり誤魔化せませんでしたわね」
シルヴィアは、ベリベリと音を立てて、金髪の鬘もろとも、
変装道具を顔面からむしり取った。その下から現れた素顔は―――。
「コゼットさんっ!?」
アッシュの絶句の声がこの場にいる面々の代表的な意味でもあった。
市長をはじめ、総勢二十名の歓迎団にしても、もはや言葉もなく、
この珍事を唖然として見詰めている。素顔を晒したコゼットはヴェロニカを前にしても
怯むどころか、にっこりと微笑んだ。
「当然だ。貴様からは、私への恐怖が微塵も感じられんのだからな!
この私に怯えぬシルヴィアなど、シルヴィアではない!」
「・・・・・それで、妹に嫌われたら自業自得だよなぁ」
「うふふ、そう思いますよね?」
一誠の突っ込みにラーズが聞きとって暗に肯定と同意する。
しかも、ヴェロニカの耳に届いていることを知った上でだ。ヴェロニカは眉根を寄せた。
「お前ら、後で話がある」
それだけ言い。コゼットに鋭い眼光を突き付けた。
「白状せよ。本物のシルヴィアはどこだ!」
「それは・・・・・」
コゼットが真顔になって、言い淀んだその時―――。
「わ、私なら・・・・・・ここにいますっ!」
歓迎団の背後から、制服姿のシルヴィアが現れた。今度こそ本人だろう。
「ご無沙汰しております、姉上・・・・・っ」
その証拠に、傍から見ても可哀想なくらい、シルヴィアの膝頭がガクガクと震えていた。
その膝頭をヴェロニカは視線を向けて言った。
「どうした、我が妹よ。膝が笑っているぞ?」
「そ、そんなことは・・・・・ありません。このシルヴィア・ロートレアモン、
姉上を心より・・・・・か、歓迎、いたしております」
「ちっ。どうやら、成長したのは胸と尻ばかりのようだな」
がしゃり・・・・・と、鉄靴の響きと共に、ヴェロニカが一歩を踏み出した。
「無様な姿を晒しおって、それでも貴様はロートレアモン騎士王家の人間か?
貴様には失望したぞ」
クレイモアの切っ先をシルヴィアに突き付けた。その刃にシルヴィアは目を丸くし、
畏怖の念が浮かんだ。
「お仕置きだ、シルヴィア」
事態を見守る誰もが、サッと青ざめた。ヴェロニカは片手で軽々とクレイモアを振り上げたかと
思うと―――。
「ん」
背後から一誠に肩を掴まれた。それはクレイモアを上げている肩だった。
尻目で青い眼光を一誠に向け冷たい声音で問うた。
「私の邪魔をするか?」
「・・・・・」
一誠は無言でヴェロニカの耳元に口を近づけ耳打ちをし出した。
すると、途端にヴェロニカの眉根が寄った。
「・・・・・ちっ。お前の顔に免じて、お仕置きは止めてやる」
「話が分かる女は好きだな」
ヴェロニカの言葉を満足そうに離れて笑む一誠。
「だが、二度はないぞ」
あの
見るからに平民の言葉で引き下がった。それには総勢十名の歓迎団が驚きの色を隠せなかった。
「お久しぶりです、ヴェロニカ王女殿下」
その時になって、ようやくレベッカが動いた。ヴェロニカの前に立ちはだかると、
恭しく一礼する。
「おお、レベッカではないか。なんだ、まだこんな学院にしがみ付いているのか?
さっさと退学して、騎士団に入るがいい」
ヴェロニカの気迫を、レベッカは優雅に受け流してみせた」
「そのお話でしたら、何度もお断りしたはずです。
今はまだ、学生としての身分を満喫したいのですよ」
「ふっ。この学院で貴様が学ぶことなど、もはや皆無だろうに・・・・・・相変わらず
食えない奴だ。私のいる少年と同じようにな」
その少年とは一誠のことだろう。その言葉を耳にした一誠は、
頬をポリポリと掻いて苦笑を浮かべている。
「お姉様、一つお聞きしたいことがありますが」
「なんだ?我が妹よ」
「最近の話ですが。聖竜騎士団団長と勝負した人がいるそうですが・・・・・その勝敗は
どうなったのか知りたく存じておりますの」
ラーズの問いにヴェロニカは頷く。敢えて、ラーズの問いを応えず―――クレイモアの切っ先を
一誠に突き付けた。
「お前、この街に店を構えているか?」
「ああ、そうだけど・・・・・」
「そうか。ならばそこの店に私を案内してもらおう。お前の店で腰を落ち着けたい」
ヴェロニカは小さく口の端を吊り上げる。一誠は小首を傾げる。
「そういうことなら、食べながらでもいいか?飲食店でもあるからさ」
「ほう、そうだったのか。―――私の口に合う料理でなければ私の権限でお前の店を潰すぞ」
不敵に言ったヴェロニカに対して、
「頑張って作らせてもらいます!」
直立不動の体勢でハキハキと軍人のように言葉を発した。
そんな一誠の言動に思わず苦笑を浮かべるレベッカとラーズ。
「それじゃあ」
一誠が足を動かした。その先にいたのは―――。
「「は?」」
アッシュ・ブレイクとアッシュのパル、エーコ。
「お前らも来い」
一誠は二人を小脇で抱えた。
「ちょっ・・・・・離せよ!」
「誇り高い竜族の私を荷物のように抱えんるじゃないわよ!」
抗議するアッシュとエーコを余所にヴェロニカのところに戻った。
「そいつらはなんだ?」
「多分、お前がこれから話そうとすることに関係がある者たちだ」
「・・・・・とてもそうは思えないのだがな。まあいい。
お前がそうならそいつらも連れていく」
市街地に行こうと背中で語りヴェロニカは踵を返した。
「いくぞ」
―――○♢○―――
一誠の案内のもとで聖ダーラム広場の付近に存在する飲食店、
ラブロック商店の隔離された空間にまずは、
ヴェロニカ、グレン、ウルスラ、一誠(アッシュとエーコ)だけが入室する。
「ほう・・・・・奇妙な空間だ。店の中に別の空間が存在しているとはな。
それにこの良い香りがする床は何だ?」
「畳といって異世界の敷き物だ。木からできているんだ」
興味深げに床を見詰めるヴェロニカ。目の前には長方形のテーブルと何かが詰められた
四方の形をした布が点々と置かれている。無造作にアッシュとエーコを離して、
「料理のメニュー、肉と野菜どっちがいい?」
「ふむ・・・・・両方だ」
「了解」
指をパチンと弾いた瞬間、猫の店員が一誠の背後に現れた。
「食材は任せる。肉×野菜のメニューを一人分作ってくれ」
「わかりましたにゃ!」
ペコリとお辞儀をした店員は部屋からいなくなった。
「今の猫もどきは何だ?」
「可愛いだろう?うちのマスコット兼店員なんだ」
「異世界の生物なのか?」
「そう思っても構わない。ま、自由に座ってくれ」
四方の形をした布に座るよう促す。ヴェロニカたちは頷き、各々と席に座った。
ヴェロニカを守るようにウルスラとグレンが背後に立ち、
一誠、アッシュ、エーコと順でヴェロニカと対面する。
「って、二人も座ればいいのに。ここに襲撃してくる奴はいないぞ」
「だそうだ。お前たちも座れ」
「「はっ」」
一誠の前にウルスラ、エーコの前にはグレンと座り出した時、この空間に―――。
「こちらですにゃ」
「ありがとう」
店員に案内され入室してきたレベッカとアンジェラ。二人の登場に一誠は頷く。
「シルヴィアとラーズもいれば、あの件の当事者たちが集まったな」
かくして―――。市長や理事長、そして学院長といった用心をそっちのけで、
ヴェロニカ王女との階段が始まった。最初に話を切りだしたのはヴェロニカだった。
「さて・・・・・既に察して入るだろうが、私がアンサリヴァンを訪れた真の理由とは、
決して慰問などではない」
「やはり、
眼鏡越しに、アンジェラの双眸が理知的な光を放つ。
「うむ。現場に身を置くことで初めて、報告書だけでは浮かび上がってこない事実も
見えてくるとかと思ってな。だが、襲撃されたと聞く広場がどこもかしこも壊れてなど
いなかったのが不思議だ。早速だが、当事者である貴様らの口から、
襲撃事件のことを聞かせてもらおうか」
「だったら、その時の映像を見せた方が手っ取り早いだろう」
一誠以外のヴェロニカたちの視線が一誠に集中する余所に長方形のテーブルに一つの
魔方陣が出現した。魔方陣から立体映像が浮かべ、
白銀の鎧を着込んだアッシュの映像が映し出された。
この場にいる面々はその映像に釘付けとなって終始、
アッシュと真紅のドラゴンを見た。映像は終局を迎え、役目が終えたと魔方陣ごと消失した。
「・・・・・あれが
ヴェロニカはどこか思いつめた表情となった。
さらにレベッカから説明され、それが終わると、嘆息した。
「・・・・・いまだ犯人の目星はつかんか。もっとも、エーコの
いたことが本当ならば、工学といえば、ゼファロス帝国の得意分野だ。
おそらく、首謀者は帝国軍あたりだろうが・・・・・レベッカはどう思う?」
「はい。私も帝国が怪しいと睨んでいますが・・・・・幸か不幸か、
帝国領には竜族が生息していません」
「それがどうした?」
「問題なのは、今回の事件が『ドラゴンによる襲撃』だったという点です。
確たる証拠を押さえるまでは、外交の場で帝国を追及しても無駄でしょう。
ドラゴンといえば、ロートレアモン騎士国の得意分野―――そう切り返されるのは必定です」
「うむ、レベッカの言う通りだな・・・・・。襲撃事件の関しては、
地道に捜査を続けるしかあるまい。それにしても―――」
突如、ヴェロニカがアッシュをじろりと睨み据えた。
「あれほどの事態を収拾してみせた英雄が、貴様というわけか」
「・・・・・」
ヴェロニカの睨みにアッシュは思わず肩を震わせ、冷や汗を流した。
「ならば、貴様の口から聞かせてもらおうか。報告書に置いて、
最も不明瞭だった部分―――すなわち、怪物をいかに撃退したのか、についてだ」
「そ、それは・・・・・」
何から説明したものか、口ごもったアッシュの脇で、突然、エーコが叫んだ。
「その話なら、あたしを忘れてもらっちゃ困るわ!」
「ふん・・・・・だったら聞かせてみろ、豆粒」
「エーコよ、エーコ!」
「お前のようなちんちくりん、豆粒で十分だ。不満なら、ミジンコでも構わんが」
「ほ、誇り高き竜族を・・・・・いうにことかいて・・・・・・ミジンコですって!」
エーコは地団太を踏んでいる。
その間、一誠はヴェロニカとエーコのやり取りを見て小さく声を殺して笑っていた。
「そこ、笑ってんじゃないわよ!踏みつぶすわよ!」
「いやいや、悪いな・・・・・でも、ヴェロニカの言っていることには同意してしまう。
―――くくっ」
「恐れながら、ヴェロニカ様。彼女こそがアッシュ・ブレイクのパルにして、
エーコの見苦しい姿を取り繕うように、アンジェラが恭しく告げた。
「ほう、このちんちくりんが・・・・・なるほど、よく見ると角が生えておるわ」
たちまち、ヴェロニカは目の色を変えた。
「ならば早速、私に見せてみよ」
「へ?なにを?」
きょとんとして、エーコはヴェロニカを見つめた。
「
「なっ・・・・・け、け、献呈ですって?」
エーコは文字通り、その場で飛び上がった。頬が真っ赤に染まっている。
「ふ、ふざけないでよね!あんなのは、その場限りの間に合わせよ!
ど、どうしてあたしが、こんな奴に献呈しなくちゃならないのよ!?」
「面白い反応だな。一体、どうしたというのだ?」
心の底から不思議そうに、ヴェロニカはエーコをマジマジろ眺めている。
そこで一誠が挙手した。
「そもそも俺は気になっていたんだけど。
確か、ギルフォードって奴が『
「
レベッカが不思議そうに言うも、すぐに納得した面持ちとなった。
一誠は異世界から来た存在。ならば、この世界の概念など知る由もない。
「アンジェラ先生、説明をお願いします」
説明をレベッカから求められ、アンジェラは解説を加えた。
「竜族にとって
それはもう、夫婦の契りに匹敵するとも言われています。
とはいえ、エーコちゃんはアッシュ君を主人とは認めていませんし、何分、こんな性格ですから」
「なんだ、どっちもダメダメな関係じゃないか」
「なっ、何ですってっ!」
苦笑を浮かべて言う一誠に怒りを露わにして食って掛かるエーコ。
「まあ、主人として認めるというよりも―――異性として認め、
アッシュ・ブレイクに鎧をその場の間に合わせを装着させれば御の字じゃないか?」
「「なっ・・・・・!」」
途端にアッシュとエーコの二人は顔が真っ赤に染まった。
「ほう・・・・・キミは中々面白いことを言うな」
「そうか?見た目は人間だし女だ。そっちの方がしっくりくるだろう」
肩を竦めてレベッカにそう言う。
「まあ、よい。改めて貴様らに命ずる。
ヴェロニカは王女として命令した。もはや断われるような雰囲気ではなかった。
「できるか、エーコ?」
アッシュが不安げに尋ねると、エーコは自信たっぷりに未成熟な胸を張った。
「当たり前でしょ!一度完成させた
「やるなら部屋の隅でやってくれよ」
「は?どうしてよ?」
一誠の指示にエーコは怪訝に目を細めた。「ん」とこの空間の入口に指で差せば、
「「お待たせしましたにゃー!」」
元気よく二匹の店員が料理を盛った皿を掲げるように持って部屋に入ってきた。
―――○♢○―――
エーコは室内の隅に立つと、瞑想にふける修道女のように目蓋を閉じ、呪文の詠唱を始めた。
「
一誠やアッシュ自身、エーコがどのように
これが初めてだった。
「
目の前に置かれた料理より、ヴェロニカは緊張した面持ちで事態を見守っている。
レベッカもまた、鋭い眼差しでエーコを観察している。無感情だと思われたウルスラとグレンまでもが、さりげなくエーコの様子を窺っていた。
「
一方、アンジェラに至っては、素早くペンとノートを引っ張り出して、
目の前の状況を詳細に記している。
「
ただし、厳かな儀式といってもいい状況にもかかわらず、
一誠だけは肩にエーコが何をしているのかどうでもいいとばかり突如現れたオーフィスに
乗っかられているため、妙に緊張感を欠いていた。
「―――
エーコが最後の単語を発音し終えた直後、室内にまっしをな光が充ち溢れ、
雷鳴にも似た轟音が鳴り響いた。
アッシュの身体は白銀の
「ほう・・・・・東方には『馬子にも衣装』などという諺があるそうだが、まさにそれだな。
どうだ、グレンとウルスラ?お前たちの目から見ても、
ヴェロニカの質問に、グレンとウルスラは恭しく答えた。
「はい。間違いなく、
「
所謂、模造品のような鎧でしょう」
さすがは親衛隊長と聖竜騎士団団長を務めるほどの騎士だけあって、
グレンとウルスラの言葉は的を射ていた。
「そんなの、仕方ないでしょ!」
エーコはグレンとウルスラに食って掛かった。そう、まだ幼竜の身であるエーコには、
本来、
その代わり
アッシュの身体に適合するパーツの身を抽出し、再構築する―――そうやって生みだしたのが、
この
何かを確かめる行動をする様子を見ながらヴェロニカは口にした。
「しかし・・・・・解せんな。かくも不完全な
どうにかなったとは思えんが」
ヴェロニカの素朴な疑問に応じたのは、アンジェラだった。
「実は、彼には特殊な才能があるのです。私自身、まだ解明できてはいないのですが・・・・・。
彼は当学院にて、『どんなドラゴンでも乗りこなせる男』と呼ばれているのです。私の知る限り、
自分のパル以外のドラゴンを乗りこなせる
「なるほど。その類い稀な才能と、不完全な
納得顔のヴェロニカ。対して、首を傾げ出す一誠。
「どうした?」
「んや、話を聞く限り・・・・・こんな不完全で、鎧に籠っている魔力の量も少ないんじゃ、
一時間も保たず肝心な時に鎧が消失してしまったら何の意味もないだろう」
一誠がそう言った丁度その時、アッシュの全身を覆っていた
音もなく霧散した。それを見たヴェロニカの唇に、酷薄そうな微笑みが浮かぶ。
「イッセーの言ったとおりだな。時間切れというわけか。
そのあり様では、万能の兵器にはなり得んな。とはいえ、中々面白い見せ物ではあったぞ」
ヴェロニカの口ぶりに、アッシュはカッとなって食って掛かった。
「見せ物なんかじゃないですよ!間に合わせとはいえ、
これはエーコが創成ってくれた
「貴様は阿呆か?たった数分しか保たぬ兵器など、見せ物以外のなんだというのだ?」
「ぐっ・・・・・」
「まあ、お前が気にするようなことじゃない。原因はエーコ自身だからな」
「なっ!なんですって!?」
今度はエーコが一誠に食って掛かった。
「だってお前はまだ子供なんだろう?だったら魔力の量もそれ相応の低さで
鎧を創成っているんだから当然だろう。違うか?」
「うぐ・・・・・っ」
その指摘に口を噤むエーコ。一誠は嘆息する。
「どんなに酷くても最低でも一時間は鎧を維持できないんじゃ、この先やってられないぞ」
「だったら、あんたはどうなのよ!ドラゴンなら
「・・・・・ドラゴンだと?」
怪訝な面持で「どういうことだ?」とヴェロニカは一誠に問うた。
しかし、一誠は嘆息して言った。
「だから、お前と一緒にするなって言っている。俺はそんなことできるわけがないだろう」
「はっ!自分ができないことを棚に上げて、偉そう言って誇り高き竜族に
説教するんじゃないわよ!このよそ者のドラゴン!さっさと自分の世界に戻って―――!」
刹那、一誠の肩に乗っていたオーフィスが姿を消したと思えば、
「イッセーに悪いことを言うな」
エーコの前で高密度な魔力をオーフィスが放った。
突然のオーフィスの攻撃にアッシュたちは呆然となった。
「ちょ、オーフィス!」
一拍して一誠が慌ててオーフィスを抱きかかえた。
「なにやってんだよ、お前」
オーフィスは不満げな表情を一誠の顔に向けた。
「あの者、イッセーを悪く言った。我、怒った」
「俺のために怒ってくれるのはありがたいけど、攻撃しちゃダメだろう」
「手加減した。あの者、死んでいない」
だが、それでもエーコは衣服が殆ど消失していて、満身創痍の状態だった。
身じろぎしていないのは、おそらく気絶しているのだろう。
さらにはあんな衝撃的が起きても他の客たちが騒がないのも不思議だった。
「・・・・・イッセー」
「悪い、オーフィスを含めて俺の家族は俺のことになると過激に反応してしまう。
特に俺を傷つけたり罵倒する奴だったら尚更だ」
そう言いつつも一誠は薄っすらと額に汗を浮かべる。
「魔力を放ったところをみると・・・・・その者はただの少女ではないな?」
ヴェロニカの質問に一誠は頷く。
「
オーフィスは俺の世界じゃドラゴンの中で最強のドラゴンだ。だから俺よりも強い」
それにはヴェロニカたちは目を張った。見るからに小さい少女だが、その実は最強のドラゴン。
それも一誠より強いというのだ。一誠はアッシュに介護されているエーコを見据える。
「知らないとはいえ、こいつはタブーを犯した。こっちも非があるだろうけど同情はできない」
オーフィスを宥めるように頭を撫で続けている一誠。
「イッセー、お前の世界のドラゴンは色々といるようだな。あの三つ首のドラゴンといい、
ウルスラが見たという金色のドラゴンといい―――そうだ、イッセー」
「なんだ」
「お前の力、今一度私に見せろ。明日、ウルスラとレベッカと戦ってな」
ヴェロニカの言葉には一誠を含め、一同は驚愕の色を浮かんだ。
「なんで俺が戦わないといけない?」
「余興だ。それにウルスラと再会した時にまた勝負をするのであろう?
そう言う約束をしていたではないか」
確かにそうだ。と一誠は思ったが、今はウルスラと戦うような状況ではないとヴェロニカだって
理解しているはずだ。なのに何故と疑問で一杯になった。
「あの、ヴェロニカ王女?イッセーはパルを持ってなどいないのでは?」
あまり一誠のことを知らないレベッカはそう口にする。一誠がドラゴンになれて、
異世界から来た人間だということは知っている。だが、逆に言えばそれしか知らないわけだ。
対してレベッカは複数のドラゴンをパルにしている異世界の人間としか知らない。
「なんだ、イッセーは教えていないのか?」
「教える理由もないけど?」
「ふん、だったら明日教えればいい。わが国が誇る騎士とロートレアモン騎竜学院の
最強の女と勝負してな」
徐に目の前に置かれた料理を食べ始める。
ヴェロニカの発言に場はなんとも言えない空気となった。
「・・・・・」
不意に、ウルスラがジッと一誠を見つめた。
その視線を感じウルスラに視線を向ければ視線が合い、
「明日・・・・・楽しみです。イッセー」
「マジか・・・・・」
小さく微笑むウルスラが、唖然とする一誠が互いの視界に入ったのであった。
―――○♢○―――
翌日、アンサリヴァン市にある闘技場では試合開始の時が待たれていた。
観客席は、すでに満員御礼である。レベッカの応援に駆け付けた生徒たちが大半だった。
アリーナの特等席で、ヴェロニカは眼下を見下ろしていた。その傍らには、シルヴィアとラーズ、
残る六名の親衛隊員も、ヴェロニカとシルヴィア、ラーズを中心に円を描くように、
さりげなく配備されていた。闘技場の中央にはレベッカ・ランドールとパルのクー・フーリン。
ウルスラ・L・セルウィンとパルのガラハッドが既に待機している。
対してヴェロニカの命によって二人と戦うこととなった一誠は、
―――パルをまだ召喚していないまま佇んでいた。
「そのドラゴンって成竜なのか?」
「そのとおりだ。だが、私のクー・フリンはまだまだ成長するだろう」
「ふーん・・・・・」
クー・フリンに嫌われていると思っている一誠の金色の瞳が垂直のスリット状になった。
「倒し甲斐がありそうだ」
「ぐるるるるる・・・・・っ」
クー・フリンは一誠の瞳を見た瞬間に毛を逆立て牙を剥き出した。
かなりの警戒心を抱いて様子だった。
「クー・フリンが警戒している・・・・・彼がドラゴンだからか?」
「さぁーな」
はぐらかすように肩を竦める。
「さて、私はキミのパルを知らない。見せてくれ、キミのパルを」
「・・・・・」
レベッカとウルスラが臨戦態勢となる。ウルスラの脳裏ではあの漆黒の三つ首のドラゴンか
金色のドラゴンだと予想している。だが、あの不思議な立体映像を見る限り、
真紅のドラゴンも一誠のパルだと知った。
「レベッカはともかく、ウルスラは油断できないからな・・・・・」
「おや、私を見くびっているのかい?」
「違う、実力が分からないだけだ。まあ、そろそろ呼ぶか」
と、そう言った直後。一誠の髪と同じ、足元に巨大な真紅の魔方陣が浮かんだ。
「子供の時、最初に出会ったこのドラゴンでお前たちと戦おう・・・・・」
真紅の色の鋭利な一本の角が魔方陣から出てきたかと思えば、
ゆっくりと巨躯の真紅のドラゴンが姿を現した。全長百メートルはあろう巨大なドラゴン―――。
「
「デカい・・・・・!」
クー・フリンの身体は数十メートル。だが、一誠が召喚したドラゴンは百メートルはある。
見下ろす側が見下ろされる側と成った瞬間だった。
『くくく、イッセーと共に戦うのはいつ以来だ?』
「そう言えば、久し振りだな?」
『だが、我らといい勝負できそうなドラゴンではないのは、いささかつまらないな』
パルが、ドラゴンが喋っている。
そんな異様な光景に闘技場にいる観客たちは驚きの色を隠せないでいる。
「さあ、始めようか。レベッカ、ウルスラ!」
嬉々として笑みだす一誠。真紅のオーラが迸って、戦意を露わにする。
その瞬間、試合開始のゴングが鳴りだす。
「レベッカ」
「はい」
ウルスラに呼ばれ応じるレベッカ。
「気をつけなさい。彼は―――」
警告を発しようと口を開いた瞬間。ウルスラの目にレベッカとクー・フリンが消えた。
一拍して、闘技場中に轟音が鳴り響く。激しく鳴り響いた音の方へ振り向けば、クー・フリンが
闘技場の壁と直撃していていま、地面に倒れる瞬間だった。
レベッカはまだ、クー・フリンの背に乗っている。歯牙も掛けず、レベッカとクー・フリンは
吹っ飛ばされたのだ。一誠のパルであるガイアに。
『手加減をしている。すぐに起き上がってくるだろう。―――お前も吹っ飛んでいろ』
「っ!」
身体に伝わる物凄い衝撃。視界が一変してガイアが遠くで佇んでいる。いや―――。
「(ガラハッドもろとも、私まで吹き飛ばされた・・・・・!)」
「ウルスラ団長・・・・・!」
隣でレベッカの声が聞こえた。クー・フリンがガラハッドに近づいてきたのだ。
「大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。ですが・・・・・歯牙にも掛けさせてもらえそうにもないです」
「そうですね。あっという間でした。こんなこと生まれて初めての経験です。
ですが、まだやれます」
翠の瞳の奥に戦意の炎が燃え上がっている。ウルスラも戦意を失っておらず、
ガラハッドを立ち上がらせて一誠とガイアに向く。
「レベッカ・ランドールが命じる。汝が創成し
「ウルスラ・L・セルウィンが命じる。汝が創成し
力強く発した二人の身体が迸る魔力のオーラに包まれ、それぞれ真紅と金色の鎧が装着した。その光景に観客が湧いた。
「全力で戦わないといけないようだ」
だが、まだ終わっていなかった。
「レベッカ・ランドールの名において命じる!
クー・フリンよ―――汝が献呈せし
「顕現せよ、二次元の神剣よ―――その銘は。フラガラッハ」
「なんだと・・・・・?」
一誠が疑問を浮かべたその時、レベッカの
各々の装甲が変形を始めたのだ。頭部をすっぽり覆う兜が新たに構築されたかと思うと、
肩から胸元、腰に足るまで、新型装甲次々と展開されていく。
さらには、深紅のマントがばさりと翻った。ウルスラは淡々と呟くと、固有魔装を顕現させた。
金色に輝く、豪奢な造りの柄。ただし、その刀身は鋼ではなく、魔力で構築されている。
「行くぞ、イッセー・D・スカーレット!魔槍ゲイ・ボルグ―――
「行きますよ、ガラハッド」
レベッカが放った魔槍が、一筋の流れ星の如く、ガラハッドは魔槍の後を続いて
一直線に突貫した。魔槍を防いだその瞬間、フラガラッハの一閃で決着を付ける魂胆だった。
最強で最凶の攻撃のコンビネーション。これを防げる者はこの世にいない、そう思った観客たちの
思いを―――。
『かわすまでもない。だろう?』
「ああ。当然だ」
極太の真紅の一筋で裏切った。魔槍が真紅の魔力とぶつかった拍子に霧散し、
それを見たウルスラは緊急回避して攻撃を中断せざるを得なかった。
真っ直ぐ真紅の魔力はレベッカへ向かった。
『む、危険か』
ガイアの金色の双眸が煌めく。レベッカに直撃する寸前、真紅の魔力が軌道を変えて
真上に向かった。青い空の彼方に消えた瞬間。空から轟音が鳴り響き、
真紅のオーラに塗り替えられ、赤い空と化となった、
『一誠、やりすぎた』
「ごめんごめん。これでも威力を弱めたんだがな。当たったら即消滅だった。
フォローありがとう」
当たったら即消滅。そんな魔力を放った一誠の実力は・・・・・。
ウルスラはゾッと初めて畏怖の念を抱いた。
「でも、避けるとは凄いな。ウルスラ、流石だ。冷静な判断力がお前を生かした」
一誠が微笑みかけてくる。
「二人が鎧を纏っているし、ここは俺も纏うとしようか」
「鎧・・・・・だと?」
「
何か仕掛けてくる。レベッカは察して魔槍から火炎弾を放った。
ドラゴンの強さは規格外だ。ならば、人間の方をと一誠を狙った。
だが―――あろうことか、その炎を一誠は飲み物のように吸い込んだ後に、
「―――
と呟いた一誠の身体が一瞬の閃光に包まれた。
「
光が止んだ時、一誠は赤と白の龍を模した全身鎧を纏っていた。
全身至るところに緑と青の宝玉が埋め込まれている。
「なに・・・・・!?」
「あれは・・・・・
レベッカとウルスラが驚嘆したその時、一誠がドラゴンの翼を生やして二人に接近した。
「まずは、レベッカ・・・・・お前だ」
光の速度でレベッカを襲撃。狙われた主を守ろうと
「薄い防御魔方陣だぞ、クー・フリン!」
拳を障壁に突き刺した。まるでガラスが割れたような高い音と共に障壁が呆気なく砕き散り、
そのままクー・フリンの巨躯の身体に直撃した。
だが、目の前の現実に思い知らされた。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
クー・フリンが人間の拳によって闘技場の壁にまで吹き飛ばされた。
レベッカは鎧に蓄積された魔力で宙を浮いて難を逃れたが、
「クー・フリン・・・・・!」
「―――次は、お前だ」
「っ!?」
目を煌めかせ、レベッカの背後に音もなく宣言する一誠。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!』
『Transfer!』
宝玉から音声が流れる。一誠から感じる魔力のオーラが何倍、何十倍にも膨れ上がった。
「あ・・・・・」
その力は、とっくの昔にレベッカの力量を遥かに超えていた。
ドラゴンと蟻、いやそれ以下だろう。
目の前の絶大な力にレベッカは攻撃、防御おろか、
回避することすら忘れ、唖然と一誠を見詰めた。
「敗北こそが次の勝利の糧となる」
刹那、レベッカの視界に光が広がった。
気付けば、レベッカは―――闘技場の地面に仰向けで倒れていた。
「今度は、ウルスラだな」
「・・・・・っ」
「お前はこの力で倒す」
ガイアの元へ戻り、一誠は真紅の魔力を迸らせた。
それを見たガイアも全身から真紅の魔力を迸らせて、真紅の光が深紅へと変わり、
一誠とガイアを包みこみ始めた。その中でガイアが呪文を唱え始めた。
その声に続くように一誠も発する。
『我、夢幻を司る真龍「
「我、夢幻を司る真龍の力を受け継ぐ者なり」
『我は我の「夢幻」を受け継ぐ者と共に生き』
「我は愛しき真龍「
「『我らの道に阻むものは夢幻の悠久に誘おう』」
最後は力強く言葉を発した次の瞬間。深紅の光が、より一層に輝きを増した。
深紅の光は鎧と化と成り、一誠の全身を包む。
その姿は、全身が鮮やかな紅よりも深い紅の全身鎧。
腰にはドラゴンのような尾がある。背中にドラゴンのような深紅の翼が生え、
体に金色の宝玉が幾つも埋め込まれてある。頭部には立派な深紅の角が突き出ている。
「パルが・・・・・人間と・・・・・・融合した・・・・・・!?」
「―――これが俺たち異世界の力の一つだ。
ドラゴンの力を鎧に具現化する事でドラゴンの力を振るえる」
『刮目せよ。我ら真龍の力を』
一誠から感じる膨大なオーラ。ビリビリと肌に、身体に突き刺す威圧感、
プレッシャーがこの場にいる面々にも伝わっている。畏怖の念を抱き、恐れ戦いている。
「うぉぉおおおおおおん・・・・・!」
ガラハッドが突然、弱弱しい鳴き声を漏らすと、及び腰になった。
あたかも、眼前の一誠に畏を抱いたかのように。
「・・・・・」
事実、一誠は「来ないのか?」と思いながらガラハッドを注視している。
子犬のように怯えるガラハッドとは対照的に、一誠は泰然として宙に浮いたままだ。
マスクで顔の表情は分からないが攻撃してくることを待っているだろう。
「ぐるるるるる・・・・・・」
ついに、ガラハッドはウルスラの意志に反し、後ずさりを始めた。
それにはウルスラをはじめ、観客席にいる観客たちが目を疑った。
「おいおい、ガラハッド。アジ・ダハーカよりサイズの小さい俺に怖がるなよ」
スゥーとまるで幽霊のように移動して、ガラハッドの頭部に、ウルスラと対峙する形で乗った。
そしたら、ガラハッドが地面に這いつくばるように体勢を低くした。
「俺よりもっと怖い存在がいるんだぞ。そいつと目の当たりにしたら、主を守れないぞ。
いいのか?」
「ぐおおおおおおん・・・・・・」
まるで「それはダメだ」とばかりガラハッドは一誠の言葉に応じる感じで鳴いた。
「だったら、さっさと俺に勇士を見せろ。それでもお前はウルスラの相棒か?」
「ぐるるるるる・・・・・」
低くした体勢を立て直し始めるガラハッド。それにはウルスラは驚きを隠せなかった。
それを満足そうに頷き宙に浮いた一誠は、
「ウルスラ」
ウルスラの耳元で話しかけた。
「俺に傷を負わしたらお前の勝ちでいい。いいな?」
「・・・・・」
いきなりの提案に疑問が尽きない。
だが、一誠に何か考えがあるのだろう。小さく頷いたウルスラから離れ宙に浮いた。
「―――龍化」
一誠の身体に異変が起きた。真紅の鎧が膨張し、大きく膨れ上がった。
手と足が鋭い爪を生やし、尾も野太く生え、背中の翼が巨大になり、首が長く伸び、
頭部はまさに龍そのものとなって一誠は―――。
『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
『さあ、来い。ガラハッド!』
「ぐおおおおおおおおおおおおん!」
壮絶に吼えるガラハッド。全身を魔力で覆い、真紅のドラゴンとなった一誠に突貫した―――。
―――○♢○―――
「そんな・・・・・・人がドラゴンになるなんて・・・・・」
闘技場に集まっている者たちの視界は真紅のドラゴンとウルスラとガラハッドに向けられていて、
アーニャの存在に誰も気づいていなかった。
「あの少年は・・・・・本当に人間なの・・・・・?」
一誠が真紅の鎧を装着した後に真紅のドラゴンと化となった光景を目の当たりにして、
アーニャは畏怖の念を抱き身体を震え始めた。
―――○♢○―――
「ははは、いやー、流石にあの提案を持ち込んだのはダメだったな。―――負けちゃったぜ☆」
ポカッ!
「まったくもう、こんな傷を負ってなに言っちゃっているのよ?」
「全くだ」
「一誠様・・・・・」
「自業自得ですよ?」
「お前という奴は・・・・・」
「イッセー、ダメ」
額に菱形の傷を負って、異世界メンバー総出で叩かれた一誠であった。
レベッカとウルスラとの試合から数十分経過している。結果、一誠の提案を見事にやり通して
ウルスラの勝ちとなった。ウルスラは満足そうな表情ではなかったが、
聖竜騎士団団長として名も知れない、それも平民の少年(
面目丸つぶれだろう。本人はそんな事を気にしていないが、
一誠はそのことを考えた上であんな提案をしたのだが―――。
「・・・・・」
一誠と戦ったレベッカとウルスラをはじめ、ヴェロニカ、グレン、シルヴィア、ラーズ、
アッシュ、エーコといった面々が様々な思いを胸に秘めて一誠を見つめていた。
現在、一誠たちがいるのはラブロック商店だ。
テーブルに様々な料理を置かれ、立食パーティを行っている。
「しかし、イッセーがドラゴンになるとはな。吾輩は目を疑ったぞ」
「私もです、イッセー様」
マキャベリとヴィットーリアも後に一誠を軽く叩いた。その場の流れに従ったのだろう。
「いいじゃん。ウルスラの評判を落としたくなかったし、俺は俺なりに本気も出して負けた。
というか、あそこで全力を出したら街が一瞬で焦土と化するぞ」
「色々と戦いを学んだあなたなら最小限で被害を押さえれるわよね?」
「・・・・・その通りです」
「もう、額から盛大に血を流した光景を見て私たちは心配したわ。
二度と心配を掛けさせないでちょうだい」
ルクシャナにそう言われ申し訳なさそうに首を縦に振る一誠。
「善処する」
「よろしい」
途端にニッコリと微笑むルクシャナは一誠の頭を撫でた。
「―――イッセーよ」
鎧から音を立たせヴェロニカは一誠に話しかけた。
「貴様、ドラゴンだったとはな。私を騙していたのか」
クレイモアを躊躇もなく突き付けながら問うた。
「できる限り俺は注目されることを避けたかっただけだ。
今回の一件で俺の周囲はしばらく騒がしくなるだろうがな。それと騙す騙したなんてそう思うなら
そう思っても構わない。―――俺は俺だ。イッセー・D・スカーレットだ。
それ以上でもそれ以下でもない」
対してヴェロニカに真っ直ぐ言い返す一誠。
「・・・・・そうか」
瞑目するヴェロニカ。
「ならば―――」
徐にクレイモアを上げた。
「私を謀ったその罪、ここで償え」
片手で上げたクレイモアを一気に振り下ろした。一誠は避ける素振りを見せない。
一刀両断とクレイモアの切っ先が一誠の頭に近づいた時―――、
「ま、待って下さい!」
一誠の前になんと、シルヴィアが庇うようにヴェロニカに立ちはだかった。
クレイモアの切っ先は、ピタリとシルヴィアの鼻先で停まった。
「何の真似だ、我が妹よ」
「そ、それは・・・・・」
目を泳がせ、ヴェロニカの眼光に恐れ身体を震わす。
「か、彼には事情があった。だから、誰にも自分のことをあまり話さず、その上、この街を
アッシュ・ブレイクと共に守ってくれたもう一人の英雄ともいえる存在です・・・・・。
そ、そんな彼をみすみす罪を裁かれる光景を見てなど・・・・・わ、私はできません・・・・・」
「・・・・・そういえば、アッシュとやらと
真紅のドラゴンことをお前とラーズ、レベッカは知っていたな?
それを何故私に告げなかったのか、答えてもらおうか。お前の口からでだ」
ヴェロニカに睨まれシルヴィアは今にでも屈してしまいそうだった。
しかし、敢えて弁解もしない一誠にいてもたってもいられず、
身体が先に動いてしまった自分に驚く。
「そ、それは・・・・・」
「それは?」
追求し、催促するヴェロニカ。これ以上言い逃れどころか言い訳もできず、
この恐怖の対象のヴェロニカに問われ続けられるのが目に見えている。
「っ―――」
シルヴィアはとあることを言おうと口を開いた。丁度その時だった。
ラブロック商店の扉が開いた。
「失礼します」
本来、ヴェロニカ王女の来日で一時貸し切り状態のラブロック商店に
堂々と―――ギルフォード・ギルガメッシュが入ってきた。
「なんだ、貴様」
「俺はギルフォード・ギルガメッシュと申します。以御お見知りおきを」
「ギルフォード・・・・・ああ、最近貴族に成り上がった一族の者か。
して、無礼千万にこの店に入ってきた貴様は何の目的で現れた?」
ヴェロニカの鋭利な眼光を軽く受け流し、ギルフォードは一誠に視線を向けた。
「はい、そこの真紅の髪の平民に用がありまして」
「なんだと?」
怪訝な面持で一誠は呟いた。ギルフォードは指を弾くと、
背後から恭しく複数の抱く制服を身に包んだ男女が現れ、何やら大量の袋を持っていた。
「名前はイッセー・D・スカーレットだったね?」
「それがどうした?」
「どうもこうもないさ。俺の部下となる者の名前を知らないと支配者として失格だからね」
ギルフォードの発言にヴェロニカとグレン、ウルスラを除いた一誠たちが呆然とした。
ぶっちゃけ言えば、こいつ・・・・・なに言ってんの?
「お前、何様だ?」
「人間だよ。お前の御主人様となる人間」
「俺がお前の主人だと?いきなり何わけのわからないことを言う」
「キミの正体はドラゴンだ。それも誰のパルでもない野良のドラゴン。
だったらこの俺がお前を引き取って衣食住、三食付きの生活を送らせようと思ったんだ」
ニコニコと当然のように発するギルフォード。その視界にリーラとヴィットーリアの姿が入った。
「おや、あの時の侍従たちじゃないか。こんなところで働いていたんだね。今日は運がいい」
「「・・・・・」」
「なるほど、主はこの野良のドラゴンだったとはね。宝物を守るドラゴンの習性は頷く。
美しい女性を宝物として傍に置いていたようだね。でも、大丈夫だ」
ギルフォードは言った。
「野良のドラゴンを俺の手中に収まったら、お前たちは晴れて俺のメイドとして傍に置くからさ。
これから自由な生活を送らすことを約束する。縛られた生活はもうウンザリしていただろう?
―――ああ、そこの平民の少女たちもそうしようかな?」
と、ヴェロニカたちの前で好色の発言をした。
不愉快極まりない発言のギルフォードに誰もが険しい顔を浮かべた。
「・・・・・」
一誠がギラギラと金色の瞳が垂直のスリット状となってギルフォードを睨むほどだ。
「一度ならず、二度も俺の家族に手を出そうとするのか?」
「バカだね。野良のドラゴンがそんな事を言うなんて笑わしてくれるよ」
「・・・・・」
途端に一誠が沈黙した。それを気にギルフォードは口を開こうとした時だった。
「―――最強の魔力」
「?」
いきなり一誠が意味深なことを言いだした。さらに一誠は言い続ける。
「無尽蔵の体力に続き、不死身、最強のドラゴン、某アニメの技、精力絶倫、女殺し、魅了―――」
「・・・・・っ!?」
それは―――神に要求した特典の数々だった。
「ふーん、これがそうなのか。なんとまあ、チートな能力とばかり揃っているな」
「お前・・・・・!」
「でも、そんな力を持っても完全に扱えきれないんじゃ、宝の持ち腐れ同様だよな」
嘲笑し、侮蔑が含んだ発言をし出す一誠。周りは何を言っているんだろうかと
疑問を浮かべるばかりだが、当のギルフォードは違った。自分か自分と同じ境遇の人間にしか
知らないことを一誠はハッキリと言ったのだ。
もしかしたら、目の前の一誠は―――転生者なのかとギルフォードの中で疑いが浮かんだ。
その刹那だった。ギルフォードが勝手に椅子やテーブルをなぎ倒しながら吹っ飛びだす。
壁に激突してようやく停まったギルフォードに冷笑する一誠。
「おいおい、なんだそのザマは。チートな存在のわりには呆気なく吹っ飛んだなぁ?」
「貴様・・・・・!」
ガシッ!
「―――――っ!」
ギルフォードの顔面に一誠が鷲掴みした。黒い籠手を装着してだ。
「三つ言っておく」
ギリギリと握力を増してギルフォードを持ち上げた。
「一つ、俺を侮らない方がいいぞ。例え、どんな力を有して優越感を感じてもだ。
二つ、お前の部下になるつもりはない。その上、俺より弱い奴の下には特にだ」
三つ、と一誠は言った。
「俺の家族に手を出すんなら、魂ごとお前をこの世から消失させてやる。
この世界のルールを犯してでもだ」
「っ・・・・・!」
「いいな?忠告、したぞ。特に三つ目の忠告を無視したら問答無用でお前を殺す」
ぱっとギルフォードを手放した瞬間。思いっきりボールのように蹴って店から追い出した。
「てめらもさっさと出ていけ。俺に喰い殺されたいか?」
「ひっ・・・・・!」
頭部がドラゴンと成り、複数の男女の生徒に生え揃った鋭く凶暴な牙を覗かせた。
それには慌てて逃げるように店からいなくなった。後に残ったのは、
一誠の成り行きを見ていたヴェロニカたちだけだった。
頭部を元の姿に戻し、扉を閉めたところで。
「イッセー」
ヴェロニカが声を掛けてきた。
「なんだ?」
「―――気に入ったぞ」
「・・・・・」
はい?と思わず間抜けな返事をした一誠だが、ヴェロニカはスタスタと一誠に近づいた。
「ギルフォードとやらに渡すには実に惜しい。ならば、私がお前の主となろう。
丁度、私は『オーファンの儀式』に落ちた身だ。パルがいない」
一誠とヴェロニカの顔が数センチとばかりの距離で対峙した。
ヴェロニカの蒼い瞳が一誠を捉え見据える。
「イッセー、私のパルとなるがいい。お前と私が組めばロートレアモン騎士国は私が存在する
限り安泰を約束されたのも当然だ」
「・・・・・えーと?」
「それにだ」
ヴェロニカはシルヴィアに尻目で見た。
「あの甘ったれで弱虫のシルヴィアが今回初めて私の前でお前を庇うように立ちはだかった。
どうやら私の思っていたより成長しているようだ。
これもお前がシルヴィアと交流していたからか?」
いや、それは彼女自身の心の強さだろ、と思わずにはいられなかった。
「まあよい。イッセー、お前はこれからも私の傍にいろ。
貴様の力を欲しい。今回はウルスラの名誉を守るためにあのような敗北をしたことにも
称賛もしている。元より、お前を聖竜騎士団に勧誘するつもりだったしな」
「じゃあ、クレイモアで俺を斬ろうとしたのは?」
「私が本気で貴様を斬ろうとしたと思ったのか?」
「なっ・・・・・!」
ヴェロニカの背後でシルヴィアが唖然となった。
そして、へなへなとその場で崩れ落ちて緊張感を緩ました。
「シルヴィア、ありがとうな」
「あ、ああ・・・・・って、どうして私の頭を撫でる・・・・・」
「お礼代わり」
綺麗な金髪の髪を撫でる。自分を守ってくれたことに嬉しく思い、笑みを浮かべてシルヴィアの頭を撫でている一誠。
「・・・・・」
だがしかし、ヴェロニカが不機嫌な顔になっていく。撫でられ、気恥ずかしいのか、目を泳がせ、顔を赤くするシルヴィア。
「あっ、そう言えばヴェロニカ・・・・・って、どうして不機嫌な顔になってる?」
「ふん、貴様には関係ない。それで、なんだ?」
「滞在期間は何時までだ?」
問われたヴェロニカは言った。
「五日間だ」