ナナホシ帰還物語   作:羅美

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前準備

翌日、俺はナナホシを連れて色んな人と会ってきた。ただクリフとエリナリーゼはミリスに、バーディガーディはビヘイリルにいて、特にクリフはアポを取らないと会うのが難しいため、時間が無いということになり結局ザノバ、リニア、プルセナ、改めてオルステッド様の4人と会い、話をするだけで昼過ぎになってしまった。

 

そして夕方から転移魔法陣の構築に入る。

「と言っても、いつでも発動できるように用意はしてあるからこれを連結させて魔力を入れるだけでいいわ。ルーデウス、魔力貰える?」

「もちろん。……というか、随分でかいな。これペルギウス様のところじゃないとスペース足りないんじゃないのか?」

「元々多人数用のつもりで作ったから。ペルギウス様に頼んで場所貸してもらおうかしら」

『あ、ルーデウスさん! おかえりなさい!』

庭で魔法陣を広げていたところに虎が来る。虎には観光ということでこの近くを散策してきてもらった。伴は一番気が合いそうなリリ。顔を見るに、随分と楽しかったらしい。

リリは日本語が分からないから、虎とは身振り手振りで意思疎通するしかない。厄介なことを押し付けた気はする。

 

「虎があんなにはしゃいでるの初めて見たわ」

「そうなのか? 俺の見たところ理系陽キャ感がすごいけど」

「そんな訳ないじゃない、研究室にずっと籠ってきた研究者気質の、自分の好きなことには饒舌なタイプの……」

「ああ、何となく分かったもういい」

苦笑いしながら今度は虎の方に話しかける。

『今夜に向けて魔法陣の構築してるんだけど手伝ってくれないか?』

『もちろん!今すぐ行く』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ペルギウス様に許可を貰い、向こうからなにか面白いものをお土産として持ってくる代わりに1つ大きめの部屋を貸してもらえることになった。『神』とか書いたTシャツを買ってきたらどうなるだろうか。

ペルギウス様が「思い出に浸ってこい」なんて言っていたが、多分全部知ってるんだろうな。昔ナナホシとした会話も聞かれてたと思うし。

 

せっせと15年前やった作業を繰り返し、2時間ほどで準備が終わった。想定より早く終わったので少し駄弁る。

『ナナホシは何を持ってきてるんだ? パソコンがあるなら他に持ってきてるのもあるだろ』

『そうね……魔法陣を持ってくるのにかなりスペース取ったから……財布とスマホくらい……かな……?』

スマホも見せてもらったが記憶の中にあるものとさして変わりなく、財布も紙幣の顔が変わっていた訳でもないから目新しいものはなかった。

 

『ルーデウスさんって前世が向こうだったんですよね? やっぱり向こうが懐かしいですか?』

あれ、ナナホシは俺の前世のことあまり言及してないのか。

『そうだな……俺の前世はクズみたいなやつだったからさ。向こうに未練なんてあんまりないんだよ。確かに懐かしいとは思うけど、それって明るいものでは無いし。戻りたいものでもないな』

『じゃあ何故帰ろうと? 静香に聞きましたけど元々一人で帰ろうとしたんですよね?』

『分からないけど、昔迷惑かけた人に謝りたいと思って。あ。後、ルーデウスの状態で向こうの世界を見た時、どんな風に映るんだろうとは思ったな』

『また暗く見えると思いますか?』

『いや、輝いて見えると思う。誰しも違う世界に行った時ってテンションが上がるものだろ。今の虎とか昔の俺みたいに。でも、気づくんだ。楽しいままでいたいなら自分が変わらなきゃいけないって。ほら、向こうの世界でもあるだろ。他の国に旅行するのは楽しいけど、住むのは文化の違いで大変……みたいな。そんな感じでさ。そして俺は今が楽しい。つまり変われたんだ』

『それってただの願望じゃないの?』

ナナホシが間に入ってくる。口調は少し投げやりだが表情は真剣だ。

 

『確かに、あのままずっと前世の俺だったら変わろうとも思ってなかったと思う。でも死という転機があるから変われた、その変わった状態で成長できた。言ってしまえば俺は前世の記憶を持って生まれてきたルーデウスという人間なんだよ。そして今回の帰郷は前世への罪滅ぼしの一つだ』

『まあ後、皆に向こうの世界を見てほしいなっていう理由が後付けでついたけど』

そう言うと話が終わったと思ったのか、ナナホシがすくりと立ち上がる。

『さ、重い話はこれ位にして帰りましょう。フィッツたちが待ってる』

『フィッツ?』

虎が聞きなれない人名に声を上げる。

『……つい癖で』

『はは、フィッツってのはシルフィが使う偽名だ。本名は普通にシルフィエットだからシルフィって呼んであげてくれ』

フィッツという名前の響き自体がなんだか懐かしい。今でもたまに聞くことはあるのに。ナナホシの口から聞いたからだろうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ねえ、今日は夕ご飯の用意しなくてもいいって言ってたけど本当にいいの?」

「向こうで食べるからね。ナナホシが美味しい店を奢ってくれるらしい」

「ちょっと、勝手に決めないでよ。今度魔石とかスクロールとか融通してもらうからね」

自宅に帰ると皆は既に用意を済ませていた。時間はこちらの世界は向こうの世界の約4倍で流れるため、向こうの世界で1日過ごせばこっちでは4日流れる。俺の家は首都圏にあるからまずはその近辺へ目指す方針だ。例え東北の北部に飛んだとしても、飛行機で1時間半あれば東京に着ける……等々の移動時間も考慮して向こうの世界で1泊2日、こちらの世界で約1週間の旅となる。

 

 

ロキシーはラノア魔法大学の校長ということで、自分のスケジュールは都合がきくので休暇を手に入れた。外せない用事がない訳では無いが1週間くらいならずらせるらしい。ちなみにレオはお留守番になった。

そう言えば通信石版でやり取りしている時に今回のことを触りだけ話したら『何か面白いものを持って帰って来てくれば買い取る』と言われた。まあそういうの好きそうだしな。

 

みんなを連れて空中城塞に戻り、さっきの部屋に戻ってくる。

部屋に入るなりロキシー、ララ、リリが一斉に息を飲む。

多分だがララがこの魔法陣の凄さを一番分かってそうだ。召喚魔術と転移魔法陣って似ているし。

「さあ、今から行くのはナナホシの故郷だ。そこで見る人達は俺たちとは違う世界に生きてる。ナナホシの話を聞く限り、向こうの世界はこちらより高度な文明だ。驚くこともたくさんと思う。そこも含めて社会勉強だ。そして最初に言った通り、向こうの世界の人達は魔術を使えない。概念はあるが、創作上のものらしい。ナナホシの話を聞くに魔力がある可能性はあるが、あったとしても命の危険じゃない限り魔術の使用は禁止だ。分かったか?」

皆首肯する。エリスの「分かったわ!」という声も聞こえてきた。

 

「ここの機構に魔力を流したらいいんだな」

慎重に間違いがないように、魔力を流す。魔法陣が光り始める。そして変化を始めた。あの時と同じだ。青、緑、白。そして黒。『ペルギウス様! 指示を!』『もっと魔力をよこせ! ルーデウス・グレイラット、供給を続けろ!!!』……あの日の情景が思い起こされる。思い出した、この部屋はあの時と同じ所だ。

 

瞬間、俺たちは光に包まれた。

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