ナナホシ帰還物語   作:羅美

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証明

目の前のルーデウスは私の話を真剣に聞いている。あの地での思い出の一つだ。

ペルギウスの空中城塞にてベットで寝転んでいる私と近くで椅子に腰かけているルーデウス。確か、あれは二人とも使う機会のない日本語を使っての会話だった。

 

「ナナホシって地球に帰れたとしても日本以外の国に飛んだら不法入国で即刻逮捕だよな」

「そうね。特に太平洋の島国にでも転移したら私はとても世間を賑わせられるんでしょうね」

 

まあそれくらいの覚悟は全然ある。帰れるだけ全然マシだろう。

 

「そこでだ、俺に案があるんだ」

「何の……?」

「帰った後の方法に決まってるだろ。それともナナホシには何か考えが?」

「いやまあ無いけど」

「よし、じゃあ決まりだな」

 

ルーデウスは自信満々に言い放つ。

彼がこのような顔をする時はとても上手くいく時か、全く上手くいかないか、そのどっちかのような気がする。

ともかく、私はルーデウスに向き直る。

 

「それで案ってのは?」

「インターネットだ」

「インターネット……?」

 

インターネットというのは……何だったか。確かパソコンでやるアレだ。

私も使ったことがあるぞ。小学生の時に父親のパソコンを一人の時にこっそり見たんだったか。一瞬でバレたけど。

親が持ってたスマホもインターネットを使ってたはずだ。

 

「ネットはな、検索すれば大体のことは出てくる。多分だがナナホシの事故もネットで取り上げられてるはずだ」

「ホントに?」

「よく考えてみろよ。三人をも巻き込んだ大事故。それにも関わらず二人の死体と血痕が不明。その二人もずっと行方不明。警察でもかなり特異な事件として扱われているはず。ニュースとか掲示板とかで多少話題になってるはずだ、多分」

「多分って何よ、多分って」

「元無職の勘ってやつだよ」

「それでも……」

 

いや、もしかしたら結構いい案かもしれない。ネットの仕組みにそこまで詳しい訳ではないが……。転移が出来たらネットを使えるところで、私を日本に連れて行ってくれるほどの権力を持っている人にネットを見せる。

上手く話せれば機密として私を秘密裏に……世間を騒がせずに日本へ飛べるプランになるかも。

 

「ルーデウス、その計画。詳しく聞かせて」

「分かった。まず……」

 

〜〜〜

 

 

在アメリカ日本大使館へ着くのにはそう苦労をかけなかった。

目的は不法入国をしている私をなんとかしてもらうため。

理由は、大使館が同じくワシントンにあったからでもある。おかげで昼頃には着くことも出来た。しかし、なかなか日本語案内が見つからない。というよりどこに案内板がある……とかそんな感覚が一切無くなってるので見つけられないという方が正しいか。

昼時だからか人も多く、混雑しているので日本人がいても分からない。おまけに案内板は見つからないし英語だったら読めないな……いや、日本大使館だから日本語で書かれてるか。

とにかく右往左往していて、職員を見つけるのも億劫になってきた頃。チャンスは巡ってきた。話しかけてきてくれたのは(たぶん)アメリカ人の女の人。

 

「Hello!! What can I do for you, sir?」

「あ……! えっと……日本語の案内ってどこですか!?」

「You can talk to the man over there and he'll be able to help you with Japanese!」

 

英語は聞き取れなかったが、指差しの方向を見るとどうやら向こうらしい。もう少しなんて言うか……ゆっくり話すとかしてくれないのかな。されても分かんないけど。

そして人混みの中をかき分け、日本人っぽい顔立ちの職員がいた。

いや日本大使館だから日本人がいるのは当たり前なんだけど。むしろ、なんでこんなにアメリカ人がいたんだよ。

『日本の帰国の方へ』と書かれた看板と共に幾人かの日本人が案内をしている。なんかこの役所独特の雰囲気にまで懐かしさを覚えて辛い。

おそらく私はすぐに追い出されるか、じっくりと話を聞かれるか、そのまま不法入国で逮捕されるかのどれかだろう。出来るだけ人となりが良さそうな……あの人だ。さあ、頼むぞ。

私が話しかけたのは初老くらいの男の人。人となりが良さそうな感じがする。多分。

 

「あの……少しいいですか?」

「はい! あ、どうぞこちらにお掛けになって」

「あ、ありがとうございます。……それで何ですけど、そのパソコンってインターネット繋がってますか?」

 

そう言って横にあるパソコンを指さす。こんなにパソコンって薄かったけ。時代は進化しているということか。

男の人の方は私の意図が読めないようで困惑される。

 

「それで2012年11月22日ーーー市で起きた交通事故について調べていただきたいのですが」

「そういうのは少し業務の管轄外と言いますか……」

「調べて貰えたらすぐに分かります! ……何ならチップも出しますので」

 

アメリカにあるチップ文化を思い出してふと流れで言ってみる。ドルや円では無いから渡したら更に困惑されるだろうけど。

そう言うと観念したようにキーボードをカタカタと叩き出した。お手数をかけます。少し罪悪感。

でも私自身パソコンを上手く使えるわけじゃないから、これをやって協力してくれる人は絶対に必要だ。ルーデウスが居たらいいんだけどそうもいかない。

 

「こちらで宜しいでしょうか?」

 

そうやって見せてきたのは『〇〇市 事故 2012年 11月 22日』と検索された画面だった。

 

「そうしたら……えっと……これでいいのかな?」

「はい」

 

私が一番上にあったサイトのリンクを指さすとページが飛ぶ。出てきたのはおそらく掲示板。

ニュースの引用のような文面と共にどんどん事故に関しての感想が書かれていた。

彼の言うとおり、私の事故のニュースは話題になったらしい。複雑な気持ちを持ちつつ、引用元のニュースサイトを指さす。

職員の人は少し面倒くさそうな顔でマウスを押した。少し長い読み込みの後にページが現れた。目で追っていく。

『22日、〇〇市で男と高校生二人がトラックにはねられました。警察によりますと、三人のうち二人が行方不明となっており、捜索を急いでいるとのことです。また、55歳の男を逮捕して事故の状況を調べています。』

 

「これだ……」

 

途中まで読んだところでポツリと声をこぼした。こんな事故が同じ日に二回もあってたまるか。

この時点では私の名前や顔はニュースに乗っていなかった。

 

「職員さん。このニュースって続報みたいなのありますか?」

 

私がそう尋ねると目の前の男の人はパソコンを覗き込んだ後、「あー」と声を漏らした。

その後、取り上げるようにパソコンを男の方に素早く向け直しカタカタとキーボードを打っている。熱心に調べているようだ。

 

「え……? ああ。やっぱこれあれだ。日本の方でもこの事故、結構報道されたんですよ。親御さんがすごい娘さんを熱心に探しててたのを……覚え……て…………て……」

「あの?」

「も、もしかして貴方は……この事故の……ですか?」

 

そう言って今度は恐る恐ると言った具合にパソコンを私の方へ向けてきた。

それは、私の顔写真と共に『私たちの娘、七星静香を探しています!』と大きく書かれたサイトだった。

もしかして、お母さんたちは私をこれまで、二年間ずっと探してくれていたという事なのだろうか……いや、それより今は。

 

「はい! その写真は私の……私のなんです! あなたの上司の方とお話させてもらいませんか!?」

 

私の存在がこちらの世界で証明されたことに喜ぶ方が早い。

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