ソードアート・オンライン ~The Chosen Stars~ 作:ASNE
本来の歴史では、ミトはアスナを失う恐怖でパーティーを離脱してしまい、心に深い傷を残してしまうことになる。
―だが、この世界では……
「そんな……」
現在、元ベータテスターのプレイヤーミトは、絶望の淵に立たされていた。些細な事故から親友のアスナの攻撃が敵を呼び寄せる『実付き』のネペントを倒してしまい、その上崩落する崖から落下してしまい分断されてしまった。そして……ミトの左上に見えるアスナの体力ゲージがどんどん減少し、死に近づいてしまっていた。そしてさらに、先日見殺しにしてしまったパーティーの散り際がフラッシュバックしてしまう。
幼少期からゲームを一緒に遊ぶ友達が居ず、人と関わりもなかったミトにとってはアスナは唯一の大切な親友だった。その親友が今、命を落とそうとしている。
(ごめん……アスナ……)
アスナを失う様に耐えられなかったミトは、目を開けてパーティー解除のボタンを押そうとした。
―その時、奇跡は起きた。
「はあああああッ!」
「セアアアアッ!」
「やああああッ!」
「え……?」
次々をモンスターが爆散するエフェクトと音が響き、目の前に三人の女の子がネペントをソードスキルで切り伏せながら現れた。三人とも盾なしの片手剣使いの女の子だ。一人は同年代の赤髪の少女で、少し遅れて駆けて来る二人の紫髪の少女はまだ幼く、中学生よりも下かもしれない。
……もっとも、今のミトにとってはどうでも良かった。今の彼女にとっては、《道の先から》人が現れたことが重要だったからだ。
「大丈夫ですか!?」
赤髪の少女の問いかけに、ミトは早口で尋ねた。
「あの……私の友達が危ないんです!茶髪の……」
「そのおねーさんなら大丈夫!私たちのパーティーリーダーが助けてるからね!」
紫髪の少女がにかっと人懐っこそうな笑みを浮かべて、ミトを安心させるように言った。ミトはその一言を聞いて、己の心が少し落ち着くのを感じた。
「そっか……良かった……」
ミトは一瞬涙を浮かべそうになりながらもぶんぶん首を振って愛用の鎌を構え直し、三人に加勢すべく駆けだした。
(アスナ、待ってて……!)
少し時間を遡り、崖上のアスナは苦境に立たされていた。ポーションは尽き、HPも残り少ない。死の恐怖が迫りながらも、アスナは懸命にレイピアを振るう。
(ミト……早く来て!)
―だが、助けは思わぬ所からやって来た。背後から四つのソードスキルの発動音が聞こえ、ネペントが次々ポリゴンの欠片と化す。
「え!?」
アスナが思わず後ろを振り向くと、四人のプレイヤーがアスナに加勢すべく突入してきていたのだ。
「加勢する!お節介かもしれないが……」
「いえ、ありがとうございます!」
パーティーリーダーらしき少年が遠慮がちに問いかけてきたのを遮り、アスナは素早くお礼を言うと『リニアー』を発動させてネペントを葬り去った。その時、崖下に落ちたミトのことが頭をよぎる。
(そうだ、ミト……!)
「あの、私は大丈夫です!それよりも、私の友達が崖下に……!」
少年はアスナの言葉に目を見開き、周囲を素早く見渡すとパーティーメンバーらしき赤髪の少女に指示を飛ばした。
「ここはいい!二人を連れてそこの道から、崖下に行け!彼女は俺が守る!」
「了解!ほら、行くよ!」
「「は、はい!」」
三人は自分の目の前のネペントを切り捨てると、大急ぎで崖下に続く道へ向かう。黒髪の少年は、ネペントの鞭攻撃をジャンプして躱し、宙返りをしてアスナの背後に降り立つと背中合わせの状態になった。
―その時、二人に不思議な感覚が起きる。『前にも、こんなことが……』と。二人はそんな感覚を振り払うように、ネペントを切り払っていく。時に体の位置を入れ替えつつ、即席のコンビとは思えないほど連携して戦っていった。
((やっぱり、俺[私]前にもこんなことが……))
やがて膨大な量だったネペントを切り伏せ終わり、最後の一体になった時。新たな敵が現れた。―ネペントを捕食したのは、大型の獣型モンスター<ジャイアント・アンスロソー>だ。
「グルォォ!」
「くうッ!?」
アスナに標的を定めた獣型モンスターはかぎ爪でアスナに殴りかかり、咄嗟に受け止めるもそのパワーでレイピアが吹き飛び、アスナは地面に倒れ込んだ。
「○○○!」
その少年―キリトは思わずアスナの名前じゃない名前で彼女を呼びながら片手剣用ソードスキル<ソニックリープ>で片目を潰し、そのまま切り刻んでいく。
一方アスナは自分の知らない名前で呼ばれたことに戸惑いながらも、懐かしさを感じていた。
(私、どうして……)
「ッ!」
アスナの頭に一瞬痛みが走り、その瞬間膨大な量の記憶が流れ込む。次々脳内に浮かぶ、星々の物語の光景。そこに写る人物の顔を見た時、アスナは前世の記憶を取り戻した。
「そう、なのね……○○ー……」
キリトはぐちゃぐちゃに混乱しつつも、獣型モンスターを切り刻んでいた。
(俺、どうして……)
実はキリトと赤髪の少女には、前世の記憶があった。その影響からミトとアスナの危機を察知して急いで駆け付けたのだが、咄嗟にアスナを別の名で呼んでしまったことで混乱してしまうと同時に、先ほど共闘した時に感じた懐かしさの正体に納得していたのだ。
(まさか……彼女なのか……?)
「らああああッ!」
体勢を崩した獣の上に飛び乗り、ソードスキルで止めを刺すと地面に降り立ち、ゆっくり振り向いた。
呆然と立ち尽くす二人。その瞳からは本人が自覚しないながらも、次々と涙が零れ落ちる。
と、いうことでプロローグでした。本作主人公含め、現在三人『スターウォーズ』の登場人物の前世の記憶を保持しています。とはいえスターウォーズの要素は前世の記憶と少々の能力強化だけで、ほとんどSAOですがクロスオーバータグを付けております。ご承知おき下さい。
原作にはいなかったキリトのパーティーメンバーですが、いずれも原作キャラでオリキャラではございません(目次のあらすじで分かるとは思いますが)。
次回からはこの話に至るまでのキリト、そして○○○の過去を掘り下げていきます。設定も随時明らかにしていくので、お楽しみに。
では、また次回。