ソードアート・オンライン ~The Chosen Stars~ 作:ASNE
いよいよソードアート・オンラインの正式サービス開始の日が迫り、自分は兎も角双子の妹たちも興奮を抑えられない様子で頻りにゲームの話を振ってくる。剣道少女でゲームにはあまり興味がない直葉も、少し気にしている様子だ。
そんなある日、お世話になっている重村教授の自宅に招待され、俺は単身彼の家を訪れていた。
「そうか、桐ケ谷君もSAOをプレイするんだな?」
淹れてもらった紅茶を飲んで一息ついた俺は、肯定するように一つ頷き返した。
「はい、正確には俺と妹二人ですが。……俺『も』とは?」
教授は俺の問いに答えるように俺たちが今居るリビングに飾ってある写真立てを取って、俺に見せてくれた。その一枚の写真には、教授と共に俺の知らない二人の人物が笑顔で写っている。教授も二人と一緒に居て楽しそうだ。
「この二人は?」
「私の娘と……恋人だ」
若干苦虫を嚙み潰したような顔をしている教授に、俺はその溺愛っぷりを察して苦笑する。
「娘の名前は悠那、恋人の名前は後沢鋭二だ。二人ともSAOをやるそうだから、もし出会ったらよろしく頼む」
「分かりました。もし会うことがあれば……」
それからしばらくお茶を楽しんだ後、俺は重村教授の自宅を辞した。
そして、正式サービスが前日に迫った2022年11月5日。夕飯後、風呂に入った後藍と木綿季にSAOについての注意点についてレクチャーしていた。
「さて、明日の13時のサービス開始と同時にSAOにログインする訳だけど……その前に二人に注意事項があります」
場所は俺の自室。ベッドに双子が座り、その前で俺は二人に守ってほしいことを伝える。二人は規定の年齢に達しておらず、自分が保護者として監督しなければならないためだ。
「え~!」
「こら木綿季、ちゃんと聞いて。兄さんと一緒じゃなきゃ、私たちSAO出来ないんだから」
「はぁ~い」
そう言ってわかりやすく拗ねる木綿季に、和人は好ましく思いつつやれやれと苦笑いした。。元気いっぱいの木綿季と、おしとやかで落ち着きのある藍。動と静という正反対の性格をしているが、不思議とバランスの取れた可愛い姉妹である。
「守ってほしいことは主に二つ。俺がいない時はログインしないこと、それからゲームの中でも俺となるべく離れず行動すること」
「それは……私たちがまだ対象年齢に達していないからですよね?」
「ああ、その通り」
藍と木綿季はまだ本来ナーヴギアを使用して良い年齢ではなく、保護者すなわち自分が一緒にプレイしなければならないのだ。
「それさえ守れば、SAOで一緒に冒険できるんだよね?ならだいじょーぶ!」
「ありがとな。偉いぞ、木綿季~!」
「わあ!?髪崩れちゃうよ~!」
自分の冒険が制限されてしまうのに、それを全く気にする素振りを見せない木綿季に胸がじわっと暖かくなるのを感じ、思わずその頭をぐりぐり撫でた。
「と、いうことだ。で、二人とも片手剣でいいんだよな?」
「はい。本当は後衛用の武器を使いたかったんですけど、SAOにはないので」
木綿季の頭から手を外すと、和人は尋ねたかったもう一つのこと、二人の使用武器について尋ねた。SAOには様々な武器種があるが、二人の体格では使える武器が限られる。事前に提示して話し合った結果、二人の武器は片手剣に決まった。それと、実は藍は弓など後衛の武器を使いたかったが、SAOには存在しないため藍も片手剣を使うことになったのだった。
「分かった。じゃあ、そろそろ寝るぞ」
「もう?」
「明日開始時間に間に合わなくてもいいのか?」
話すべきことは終わったため、二人を寝かせようとする和人。木綿季はぷくっと頬を膨らませて不満そうな顔をしたが、和人がからかい交じりに言うと慌てて首をぶんぶん振った。
「そ、それはヤダ!」
「じゃあ、歯みがきして寝るぞ」
「「はーい!」」
そうして彼らは、翌日に備えて早めに就寝した。翌11月6日、運命は彼らを命がけの冒険へと誘う―