ガンダムビルドダイバーズ リベスターズ   作:二葉ベス

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やさぐれ女とむっつり

 今日はわたしの家にユカリがお泊りに来ている。

 まぁこれから一緒に暮らす約束をしているのだし、今さら動揺することもないのよ。

 たかがひとつ屋根の下。いや、それどころかひとつベッドの上にわたしとユカリが2人並ぶのだ。

 ……どうしましょうか。緊張してきたわ。

 

「どうしたんですか、エンリ?」

「……いえ、なにも」

 

 暇つぶしに作っていたエントリーグレードのストライクガンダムの手が止まる。

 いや。わたしもね? こう、恋人としてユカリのことが好きなわけよ。

 そこにやましい気持ちや邪なものがないかって言われたら、それはNOとは言い切れないわけでして。

 

 問題はわたしの隣にあった。

 わたしが短パンにTシャツと、とてつもなくラフな格好をしている隣でやたら、こう。胸部の谷間をむき出しにした服を着ているユカリが気になって仕方ないのだ。

 別に同性しか愛せないわけではない。ただただ機会がなかっただけで、実際はそうなのかもしれないけど!

 でもね、仮にも恋人っていう人が部屋の中という密室で胸元をさらけ出すような恰好をしていたら、そりゃあもう目線には困るわけよ。ただでさえわたしが見下ろしたら胸元が見えるわけだし。

 そうなのよ。胸元が見えるのよ。目に入っちゃうのよ!

 目をそらそうにもユカリの純粋無垢な瞳を見れるわけもなく。……くそ、とんでもない策士ねあんたは。

 

「エントリーグレードって本当に何もいらないんですね!」

「そ、そうね」

「あ、ちょっと失礼しますね」

 

 あぁ、前のめりになったからちんちくりんなくせに豊満に育った胸の谷間が……!

 いやいや、相手はユカリよ?! そんな性事情も知らなさそうな純粋なユカリにそんなことを思うだなんてそれこそ邪悪極まりない。ユカリの彼女やめなさい! やめたくないわよ! そうよねやめたくないもの! でも目線はちらちらとそちらに向かうわけで……。

 

 あっさりとランナーを取って元の位置に戻ってきた彼女はずーっとわたしの顔を見る。

 な、なに。バレた? わたしがずっと胸ばっか見てるのが。

 

「……エンリって、むっつりですよね」

「へ?!」

「バレてないって思ってましたか? さすがに気付きますよ」

 

 何も気にしてないような仕草でランナーをパチパチと取っていく。

 そんなユカリの仕草に慣れているようなものを感じた。

 

「……すまなかったわね」

「いいんです。慣れっこですし」

 

 まぁ、ちいさい身体にそんなでかいものがついてればね。

 相対評価というか、相対性理論というやつなのかもしれない。わたし相対性理論のこと何一つ知らないから語感だけで考えていたけれど。

 

「それにエンリだったらいいですし」

「……それって、どういう」

 

 ユカリは作成中のガンプラを机に置くと、ニヤリと口元と目元を歪ませてから言の葉を紡ぐ。

 

「エンリだったら、いいって言ってるんですよ?」

 

 それって、ユカリは今日そういう風なことを考えながら胸元が見える服を着てきたってこと……?

 思わず喉がごくりと鳴る。

 いやいや。わたしはもっと清く健全な付き合いをすべきだって思ってるのよ。ホントよ?

 でも、ユカリがそう言っているんだったら、胸ぐらい揉ませてくれたっていいと思うの。そんなわたしにはない重たそうなものを2つも載せているんだったら、1つぐらい支えたって誰も文句は言わないと思うのよ。言いそうな相手が「いいよ」って言ってるんだから。

 

 いやいやいやいや! 待て待て待て待て!

 相手はJKよ?! 18歳未満の少女。手を出したらどこから経由して警察まで行って「未成年者性犯罪」の刑で死刑とか言われたらたまったもんじゃないわよ。

 だから清いお付き合いよ。わたしは少なくとも邪な気持ちでおっぱいに触りたいだなんて思ってないの。

 

 わたしは思わず頭を抱えた。

 

「エンリ?!」

「わたしにはわたしがもう、分からないわ」

「…………はぁ」

 

 自分がむっつりだって言うことは分かってたわよ。

 男性の筋肉を見て「あー、いいわね」とか思ったこともあるし、女性の腰を見て「んー、美しい」とか心の中で言ってたわよ。でも口にはしなかった。何故か。それは恥ずかしいから。

 自分の性癖を口にするってこと自体憚れることでしょ、普通は。

 

「エンリって、案外度胸ないですね」

「普通に刺さるからやめてくれないかしら」

「いつものガンプラバトルみたいに荒々しく私のことを乱してくれるのかなーって」

「あ、あんた?!」

「冗談ですよ! でも、私だってそういう知識はあるんですからね?」

 

 わたしにはわたしが分からないって言ったけど、あれに追記する。

 わたしにはユカリが分からないわ。こんなに積極的だったかしら。

 

「じゃあそんなエンリに罰ゲームです」

「どこにその要素あったのよ」

「いいから! 耳貸してください」

 

 まぁ、いいけど。

 そっと右耳を渡してみる。彼女は耳に両手を添えて、息を吸い込む。

 

「エンリのえっち」

 

 耳元でくすぐったい吐息と言葉を触って、みるみるうちに体温が上がっていくのを感じる。

 

「ユカリ!!!」

「あ、あはは。これ言う方もちょっと恥ずかしいですね」

 

 この女……。

 あーホント、今夜はちゃんと自分の理性を耐えられるかしら。

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