ガンダムビルドダイバーズ リベスターズ   作:二葉ベス

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ジークアクス見ました。
ジークアクスのネタバレができないので、ジークアクスを見てください。

というのはさておき、久々にナツハルのお話です。


その日の「決闘」
その日の「決闘」 その1


「ハルお姉ちゃんって、誰と1番戦いたくないの?」

 

 なにセツ、いきなり何の話を始めてるのさ。

 まぁ。なんというか、言われたときに何人か思い浮かぶよ?

 例えばタイルさんとか。あの人戦い方がとにかく鋭利と言うか、殺意があまりにも純粋すぎるというか。

 死の点どころか蜘蛛の巣みたいな死の線が辺り一帯に広がるわけで。そんなもん怖すぎるに決まってる。戦いたくないわホント。

 とはいえ、たまーにフォース戦ということで殺りあったりするけど……。正直乗り気じゃなさすぎるってば。

 

 あとは純粋にモミジとは想像しただけでも戦いたくない。

 だってもうなんか、同じバトルの枠組みじゃないじゃん。なんだよ、バトルスキャンって。先に居場所を知って狙い撃つってなんだよ。怖すぎるでしょ!

 戦闘開幕から全方位からの狙撃を警戒しないといけないとか、どんな嫌がらせ?!

 

 その点で言えば開幕フルブッパしてくるセツも怖いんだけど……。

 

「うーん、ナツキかなぁ……」

「なんで? ずっと一緒にいるのに」

「まぁ、なんというか……。ずっと一緒にいるからかなぁ……」

 

 多分どんな手段を尽くそうとも、必ず死力を尽くすことになると思う。

 1~100までの戦法を試しても……。勝てるのかな、わたし……?

 

 ◇

 

「どうしてこうなったの……」

 

 やらかし。そんな言葉が頭の中をシャトルランで駆け巡る。

 まさか、ナツキの……。ナツキの……!

 

「GPD時代のナツキの動画を見てたら怒られるとか……」

「あー、だからかぁ。常に一緒。2人で1つのイチャラブバカップルのあんたらが珍しく喧嘩してるのは」

「あははは~! めんどくさー!」

 

 ちの、笑わないでほしい。わたしだって初めての経験で、本当に意味がわからないんだ。

 ただ、こう……。ナツキにも否はあると思うんだ。確かに勝手に過去ナツキの動画を見てたのは悪かったよ?

 でもさ、あんなに怒ることないじゃん。「信じられない!」とか「前から思ってたけど、そういうちょっとノンデリなとこ、直した方がいいよ!」とか。

 

「わたし、ただ例の決勝戦の試合を見てただけだよ?! それでなんであんなに怒られなきゃいけないのさ!」

「ハルちゃん。いいことを教えてあげる。女の子のデリケートなところは触れちゃダメなの」

「いやでも、話してくれたからいいもんだと……」

「ハルちゃん!!」

 

 ピシャリとした声がフォースネスト全体に響く。

 ちのが人を叱る時を知っているが、こう、なんというか。自分本当にいけないことをしたんだな、って気持ちにさせられるから、心が苦しくなってしまう。

 

「人の過去を、勝手に覗き見しない!」

「そりゃそーだ」

「……ごめん」

「ちのに謝らない!」

「はい……」

 

 気分は猫ミームの叱られている猫みたいな顔だ。

 まぁ、確かに。勝手に人の過去を覗き見するのは大切な相手でもデリカシーがないのかもしれない。

 むぅ~~~! でもデスティニーフレームを使ったガンプラバトルはあれしかないし、気になってようやく見つけた動画だったから、嬉しくなって即再生しただけなのに。

 それがノンデリだと言われたら、そうですね、はい……。

 

「うんうん。それなら……」

「分かった、ちゃんと直接ナツキに……」

「決闘で勝負しないとね!」

「え?」

「は?」

 

 それまでちのの味方面していたモミジの態度が一気に豹変する。

 「え、何いってんだこいつ。マジか」みたいな顔。実際わたしもそうだし。

 なんでそこで決闘の話が出てくるの? え、なんで? 本気でわからない。

 

「だってさぁー? チミたち仮にもカップルG-tuberですよ? すんごい動画のネタとしてぴったりでしょ!」

「……んあー、まぁ。そうだけど」

「ちのっち、ストロングスタイルすぎない? ワロタ」

「こっちは笑えないけど?!」

 

 あのナツキとバトルするの?! いやいやいやいや、絶対に嫌だ!

 だいたい、そんな事するより普通に謝った方がいいじゃん!

 時間の無駄! はいかいさーん!

 

「でもよく聞くよ? 実際にナツキちゃんとハルちゃんがバトったら、どっちが強いのか、って」

「あー、それあたしも気になるわ。ぶっちゃけどうなん?」

 

 どうなん、って言われても。

 セツには言った気がするが、わたしが最も相手をしたくないダイバーというのがナツキだ。

 前にケーキヴァイキングとフォース戦したときに、エンリがナツキをあと1歩のところまで追い詰めたのを見て、本当に強者だなと感じたんだ。

 あれはわたしにはできない。なんというか、ちゃんと相手の対策を組んで行動しているから。

 

 基本的な、というかリサーチはバトルする上で、最も重要な勝利へのファクターとなるのだが。

 わたしとナツキが戦う場合においてだけ、その基本が通用しない。

 わたしの考えなど、すべてお見通しだからだ。

 

「単純な技量的に、向こうが上なんだからわたしが負けるに決まってるじゃん」

「実際に戦ったこともないのに?」

「分かるよ、考えてることが分かれば、自ずと行動のパターンも絞れる。その上でナツキは経験と実力を兼ね備えてるから、わたしじゃ勝てない」

 

 1番戦いたくないのは、強いチャンプなんかじゃなくて、己をよく知る人物。

 それがナツキ、というだけの話だ。まぁ、実際に戦ったことはないんだけどさ。

 

「じゃあそれ、配信しよーよ」

「えぇ……」

「うわ、すっごい嫌そうな顔。でも考えてもみて? 話題作りにはこれ以上にないぐらい最適だよ?」

 

 分かる。G-tuberの端くれとしてはよ~~~く分かっている。

 この1戦を望んでいる視聴者の期待値が。分かる。わたしも見たい!

 ナツキVSエンリレベルで見たい! でも、おぉぉ~~うーーーーん……。

 

「じゃーさ。お互い勝った方が1つお願いを叶えてくれるっていう、アンティルール付きなら?」

「…………ノッた」

「うっは、チョロ」

「妬けるを通り越して、もはや惚気だよね、これ」

 

 だって、ナツキに1つなんでもお願いできるんでしょ?

 それだったら、わたしもやりたいことがあるんだ。

 わたしだけじゃ絶対にしたくないし、ナツキも反対するかもしれないから。

 

 けど、この機会を手にできたら、わたしも覚悟ができるはず。

 ならば、その当の本人を叩き潰すしかない!

 

「打倒、ナツキ! 打倒、ナツキ! うおおおおお!!!!」

「ねぇモミジちゃん。なんでこの子たち、喧嘩したの?」

「さぁ? ちょっと刺激でも欲しかったんじゃね?」

 

 ◇

 

 ハルが過去の私の動画を見ていた。

 それもめっちゃトラウマだったGPD地方大会決勝戦の、エンリとのバトルだ。

 恥ずかしいし、そもそもあの時は心情ぐちゃぐちゃで戦いに身が入らなかったのを覚えている。

 でもさぁ、私に一言も言わずに勝手に見るなんてノンデリがすぎるんじゃない?

 

 確かに? 私も言い過ぎたかもー? とか思ったよ?

 でも無断で過去は探られたくないし、1番見られたくないところなのに……!

 

「んんぅ~~~~~!!! ぬあああああああ!!!!」

「はぁ……。ナツキさぁ、人んちのフォースネストで叫ぶの、止めてくれる?」

「だってぇ!! 自分とこのフォースネスト行ったら、ハルと鉢合わせしそうだし……。それだったら知り合いのネストに行くしかないじゃん」

「だからってうちのネストに来るの止めてくんない? てか帰れ」

「わたしとエンリちゃんの仲でしょ!」

「だから帰れって行ってんのよ!!」

「あはは、まぁまぁ……」

 

 わたしは今、エンリちゃんのとこのフォース、ケーキヴァイキングのネストを間借りして愚痴をこぼしている。

 ハル、どうせ面倒だからって自分のフォースネストでふんぞり返ってるんだ。わたしの愚痴を散々ぶちまけて!

 あーあ! もうマヴ解散だよ! 恋人だって……。だって……!

 

「うわぁぁぁんん!!! ハルに捨てられちゃうよぉぉぉ!!!!」

「……うわ、めんどくさ」

「だって、だってぇえええ!!」

「ナ、ナツキさん、これティッシュです……」

「ありがとぉ! ずび~~~~~!!!!」

 

 何が悲しくて年下のユーカリちゃんの介護を受けているのだろうか?

 分かってる。どれもこれも、すべてハルをノンデリと罵倒したわたしが悪いんだから。

 

「……どうして女同士のカップルは皆こんなにも面倒なんですの?」

「は? なんで私の方を見ながらそんな事言うのよ」

「確かに。エンリはたまーに本気で面倒くさい時はありますね。特にナツキさん関連だと」

「そうですわねー」

「ムスビがそれ言えた義理じゃないでしょうが」

 

 わたしが泣き真似してる他所で、別の修羅場を生み出さないでほしいんですけど。

 なんでどこもかしこも、面倒な人たちばっかなんだろう。みんなセツちゃんみたいに素直になればいいのに……。そしたらきっと、世界は少しだけ平和になるはずだ。

 うぐ、言ってて自分にもぐさっと刺さったわ。素直じゃないのは、何もハルだけじゃないってことか。

 

「ぶっちゃけ私はどうでもいいけど、これでナツキが弱くなったら許さないから」

「むぅ。そういうところですよ、エンリ」

「何よ、ぶちのめしたい相手が弱くなったら嫌でしょ」

「はぁ……。エンリのナツキさん大好き宣言は今に始まった話じゃないですけどぉ……」

「だいっきらいよこんな奴!!」

「ツンデレですわね」

「そうですねー、ヤケマスネー」

 

 だいたいエンリちゃんはエンリちゃんで、私のこと大好きすぎでしょ。

 ちゃんとユーカリちゃんの相手をしてあげればいいのに。ふくれっ面でむくれてるし。

 まぁ、これも今に始まったことじゃないんだけど、かるーく私も気まずくなるから止めてほしいんだよなぁ……。

 

 などと考えているところに、ユーカリちゃんのところに1通のDMが届いたようだ。

 ウィンドウモニターを開いて、黙々と読んで……。え、顔真っ青になった。

 

「あ、あの……」

「どうしたの、ユーカリちゃん?」

「……ハルさんからナツキさん宛に、果し状が」

「へ?」

 

 プレゼントボックスにユーカリちゃんから送られてきたアイテムを開く。

 ……うん、これ。確かに私への果し状だった。

 

 ◇

 

 ナツキへ。

 

 こうなった以上、わたしたちは「決闘」をすべきだと思う。

 ◯月✕日の21:00にデュエル・ディメンションのアスティカシア高等専門学園で待つ。

 

 勝った方は負けた方になんでも1つ言うことを聞かせられます。

 ↑ここ重要

 

 首を洗って待ってて、ナツキ。

 わたしが勝つから。

 

 ハルより

 

 ◇

 

 読んでて凍りついた。めっちゃキレてるじゃん、ハル。

 てか、え? なんでも1つ言うことを……?

 

「なんでも。今なんでもって言った?」

「決闘よりなんでそっちに反応するのよ。きも」

「きも、は余計!」

 

 決闘をして、勝った方は負けた方の言うことを聞く。

 つまりアンティルールによる、事実上の喧嘩。ふーん、そっかそっか。ふーーーん……。

 うわー、戦いたくないぃぃぃ……。普段からマヴでコンビネーションしてるからわたしの手の内はアケスケだし、向こうもそんな感じだろう。

 エンリちゃんとは別の方面で、ハルとは戦いたくないんだよなぁ……。

 

「くっくっく! それにしても、ナツキとハルで決闘ねぇ。面白いじゃない!」

「そうですね! なにげにどっちが強いかって、わたしも知らないので気になります!」

「いや、もちろん私だし。何言ってるの」

「その割にはぁ? すんごい戦いたくな~い、ふえ~ん♡ みたいな顔してるわよ?? お??」

 

 む、ムカつく……。

 このツインテ頭蛮族のエンリちゃん、分からせていいかな?

 

 っていうのはさておき、実際戦いたくないってのは事実だ。

 多分エンリちゃん以上に。私の手の内が割れてるから、実力で斬り伏せるしかない。

 実力の上ではおそらく私の方が上。でもガンプラの性能としては、間違いなくハルのファイルムの方が上だ。

 ほぼすべての攻撃が一撃必殺。足を止めればビットによる斉射。近づけば七分咲きトランザムでの居合い切り。その上でビットの攻撃も捌かなきゃいけない。

 

 考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。

 

「はぁ。まぁ、その時が来るまでユーカリは貸してあげるわ」

「え? なんで」

「だって、ハルの戦い方に一番近いのはユーカリじゃない。私の方が強いのは確信してるけど、今回の練習相手には向かない。そうでしょう?」

「エンリの頼みなら、頑張ります!」

 

 意外だ。エンリちゃんがまさか便宜を図ってくれるなんて。

 それだけ私とハルの「決闘」が楽しみなのか、目の前で喧嘩するところを見るのが愉悦なのか。

 多分後者だと思うけど、こういう時は素直に好意を受け取っておいた方がいい。

 

 私だって勝ちたい。勝った方がなんでも1つ命令できる権利。

 それで私は仲直りしようと、お願いするんだ。直接、面倒じゃない方法でやればいいんだけど、特段ハルにやってほしいこともないし。うん、そうしよう。

 

「にしても、こんな時に"あの"フレンがいないと、楽でいいわねぇ」

「それでしたら、きちんとフレンさんにご共有させていただきましたわ!」

「え? ムスビちゃん、それって……」

 

「利用できるものはとことん利用する。ナツハル決闘会の開幕ですわ!!!!!」

 

 かくして、私とハルだけの喧嘩だったはずが……。

 予想よりも遥かに周りを巻き込んでのドタバタ決闘劇なるなんて、このときの私は……。

 いや流石に分かってた! もう嫌な予感しかしないんだもん!

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