「モミジちゃん、またやつれたでしょ」
およそ3週間ぶりに会ったであろうちのっちが第一声で、本質を見抜いたかのような声を上げる。
「そんな事ないけどなー」と声に出してとぼけるほど大人でもなければ、それが聞いてよと、悩みを共有するほどの出来事ではないので、自分の顔に笑顔の仮面を貼っつけておくことにした。
「だって、最近忙しそーにしてたでしょ?」
「ちのっちだって、ふあぁ……大概じゃん」
「ちのはいーの! それよりモミジちゃん、こんな時間にログインしてもセッちゃんはもう寝てるよ?」
ELダイバーに寝るという概念があったのか。むしろそっちの方が驚きだ。
「別にそれが目的じゃないし」
「じゃー、傭兵稼業?」
「もち。最近なーんも出来てなかったしねー」
結論から言う。確かに最近やつれた。というか仕事が忙しすぎるんだよ。
年末年始の仕事がいつもどおり忙しいのは知ってたよ。これでも入社3年以上は経っている。
けれどね、年末は厄年だった。後輩や同期がミスやらかしまくるから、こっちにまで仕事が回ってきて。はぁ、そりゃもうてんわわんやだったわ。
まぁ、ちのっちがそれを察して言ってくるんだから、結構救われた気持ちにはなったけど。
でもちのっちだってG-tuber活動で年末年始忙しいって聞いてたけど、なんだその変わらない顔色とボディは。呪うぞ。
「もう年始だしね。お仕事はおやすみ?」
「うんや。明日行ってから」
「うへー。ちの、絶対就職したくない」
あんたなら十分G-tuberとして成功してるでしょうに。
知ってるんだからな、あんたが普通に収益化してるの。結構トップ層にいるよなぁ?!
「インターンでもさせてやろうか?」
「勘弁。ちのちゃんは~、遊んで暮らした~いの~」
「あー、ファンのみんなが聞いたら幻滅するだろうなー」
「本心じゃありませんー! でももうちょっと稼ぎがあったらいいなーって思うけどね」
曰く、同じG-tuberの中では稼いでいる方だと言うが、1人と1機で生活できるほどのお金はもらっていないとのことらしい。アルバイト感覚ってことか。
「って! ちののことはいーの! モミジちゃん、最近食べてないでしょ」
「た、食べてますが?」
「嘘だぁ! だって頬とか結構シュッとしすぎてるっていうか。ちょっと骨がうっすら反映されてるんだから」
嘘でしょ。慌てて鏡を見て唖然とした。マジかー
「忙しいのは分かるけどさ、もっといいもの食べてよ」
「ちのっちはあたしのおかんかっての」
「じゃあ今度お母さんのお金でどこか行きますか? リアルで!」
GBN内じゃカロリーに反映されないでしょーが。
まぁ、食べるのであればやっぱりあれかな。
「肉食べたい。にんにくたっぷりなやつ」
【それって焼き肉一択では?】
年下の配信者の奢りで、焼き肉を食いに行く元ギャルがいるらしい