「そういえばモミジちゃんってさぁ、好きな人とかいないの?」
「はぁ? どしたん急に」
唐突に訳の分からないことを話し始めるちの。
当の本人は本当にどうでも良さそうな顔でジュースをチューチュー吸っている。なんだこいつ。ちょっと殴ってやろうか。
「いやさー。モミジちゃんってそういう色恋沙汰一切ないなー、って」
「まぁすぐ隣にいる年中イチャコラしてるナツハルよりはな」
「あれは例外だよ。……あそこだけ湿度が2℃ぐらい高いでしょ」
ナツハルの話は置いておくとして、久々に配信外のちのと会ったのでこうやって郊外のレストランで飲んでいるわけだが。
こういうときの話は基本恋愛の話なのかおたくらのフォースリーダーは。
「ちのも気になるわけだよ。うちの子がなーーーーーーーーーーーぜか気にしてるモミジちゃんは、いったいどういう恋愛を送ってきたのかなー、って」
「きっも」
「傷ついた」
ちののいつものきーもい返事はともかく。
まぁたまにはいいか、そういう話も。別に聞かれてどうこうするって話でもないだろうし。
「大した話じゃないけどさ。高校の時の過ち、みたいな」
「じゃあ……付き合っちゃったり?!」
「してない。ただの……。あたしの片思いだったと思う」
◇
大体あれは高校時代のときかなー。
ギャル全盛期。それこそガンプラなんかよりメイクにコスメ。ファッションやらネイルやらと。それはそれで楽しかった日々を送ってたよ。
でもなんでだろうね。そんな楽しい生活を送ってたのに、なんとなーく。そう、なんとなく充実しない毎日みたいなのを過ごしてたんだ。
そんな高校生によくある情熱を持て余してる時にたまたま目に入ったのがガンプラの展覧会、みたいなのをやってたんだよ。
地下通路だからってそういうのやってもいいんだー、とか思って近づいたらさ。最後だったよ。
最初にバッと目についたのは、ハイザックの美しい緑。そしてパイプを付けた重装備の重たさ。
心がときめいた瞬間だったよね。こんな兵器じみたものになんであたしはこんなに心を打たれてしまったんだろうってね。
んで、目を離せずにいたら隣にいた女の子が話しかけてきたんよ。
「ハイザック、好きなんですか?」ってね。
そいつがあたしをGBNに誘った張本人なんだけど。
あたしはそんな声すら聞こえないぐらい、心臓を鷲掴みにされたよね。
この子、ハイザックっていうんだ……。ってね。
◇
「恋っていう恋はこんなとこかな」
「……初恋がハイザックなの?!」
「まー、そうなんのかね」
「うわー、マジでいるんだ。漫画の中の世界だと思ってた……」
ま、本当は声をかけてきたユカリっちのことが、後々気になっていたわけだけど。
女の子同士がどうこうって言うより、今はそれよりも大事にすべきものが見つかっちゃったのもある。
なんだかんだ、ちびっこのことが心配でたまにいらん世話を焼いたりもするし。
そんな姉妹のような、母親のような毎日が今は落ち着いてて、楽しいと思える日々なんだと思う。
ってことを詳らかに口にでもしたら「セッちゃんは渡さないよ! シッシッ!」なんていう親バカ発言と共にくどくどとちびっこの何たることが美しいことか、ということを永遠に聞かされるに違いない。
それは嫌だからね。
「マジかー。モミジちゃんも変わった人なんだねー」
「ムカつくから人を哀れ目でみんなやめろ」
「えー、だって初恋の相手を今も忘れられずにブンブン乗り回してるんでしょ? ちのとセッちゃんの方がまだ健全だよ!」
「あんたはもうちょっとちびっこを自由にしてやれっての。ここちのの奢りだから」
「わかったよー。むぅ……。ならピザ頼んでやる」
「お、いいじゃん」
まぁ、あたしも。なんだかんだ今が幸せなのかもな。ふっ、なーんて。
【元ギャルの初恋の話】
裏話ですが、実はユカリっち復活ルートがあったりなかったり。
ただセツに恋愛感情をもたせるのがやや解釈違いだったので、その周りのルートをバッサリ切ってました