プロローグ2
──ここは東京の一角、私立
『俺はどこにでもいる高校生……』系列のモノローグで始まりそうな主人公っぽい連中とか、悪の組織とか、そういう連中ばっかりが在籍している謎の高校。
だがそんな異常な高校にも1年通えば慣れるというもので。
2年生に上がったことによるゴタゴタも、喉元を過ぎればなんとやら。今月頭の〈認識汚染カラーコードクライシス〉事件の影響も消え、俺たちは珍しく平和な日常を過ごす事が出来ていた。
「え〜、初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久しぶり、今日から皆さんの歴史の授業を担当する
月曜日の1限目、誰もが眠くなる魔の時間。そこに初っ端からラノベのあとがきみたいな自己紹介をかまして、ヒョロヒョロの枯れ枝にも似た先生が教壇に立っていた。
そう、うちの高校は大概おかしいが高校なのだ。普通の授業も、普通のテストも、普通じゃないテストも存在する。
なお歴史の先生1代目は授業中に飛んできた未確認飛行物体にアブダク*1られて行方不明になった。は? 今は筋肉モリモリのマッチョマンになって地上に帰還し体育教師をしている。は???
「さて、では前任の先生を引き継いで、え〜、教科書の28ページ。日本近代からですか。
「はい!」
先生の指名に聴き慣れた快活な声が返事をして、教科書を持って立ち上がる。
烏の濡れ羽のように艶やかな長髪に、均整の取れた目鼻立ち、パッとみ凛とした雰囲気とは180°反対な悪戯っぽい笑顔。そしてこの学校にしては珍しく、特にこれといった改造がされていないベーシックな制服。
我らがトラブルシューター部の部長にして、中身が悪ガキ(自称)なことくらいしか非の打ち所がない気がする美少女だ。序でに紆余曲折を経て付き合っている彼女でもある。
「第3章:日本への幻獣種の侵入・定着に伴う北海道の浮上について!」
暖かい陽光と穏やかな朝の陽射しの中朗々と声は響き、カツカツと今時珍しくチョークの音を響かせながら授業は進んでいく。
ああ、これこそが健全な学校生活。なんか廊下を『超大きな鉤爪と蝙蝠のような翼を持った赤黒い空飛ぶ蛇』が闊歩してるだけで、なんの異常もない週明けの穏やかな学校。こういうのでいいんだよ、こういうので。
「……ということで。現在の北海道は、地球の自転に囚われることなく移動をしており──」
「
先生の説明途中に校舎をつんざき轟く悲鳴。嗚呼無常。グッバイ平穏、ウェルカム混沌。平和な日常は授業開始15分で崩壊した。
空を舞う蛇が向かった方向から、駆り立てられるように殺到する黒衣の集団。如何にも中世ヨーロッパ風な連中が、授業中の教室に扉を開けて雪崩れ込んで──
「御用改めである!」
日本産だったらしい。解せぬ。
「たった今、この部屋に地動説信者がいると密告があった! 素直に名乗り出るがいい!」
「はい! 先生がそうです!」
「協力に感謝する。これで君も我らが教徒だ」
「わぁい」
即座に先生を売り飛ばしたクラスメイトが、何か眩い十字架に似た物体を貰っていた。異端審問官が布教活動とはこれ如何に。
「ふっ、だがこの
「なにッ!?」
「何せそれは悪魔の証明、存在しないものを存在すると証明するなんて出来ないのだから!」
「日本史の兵頭……!」
わッと教室のボルテージが上がる。何も出来ずにアブダクられた前任とは明らかに違う。この先生、強い……ッ!!
「くくく、動けまい。如何な君らとて無実の輩を捉え、メンツを潰したくはないだろう」
「ぐぅ……」
「ねぇ今どんな気持ち? NDK?」
「日本史の兵頭……ッ!?」
先生が全力で煽り散らかしながら、何処からか取り出したカボチャヘッドを被り謎のダンスを踊り始める。反省を促すダンスだと!?
「私が地動説なんかいつ唱えた? 何時何分何秒〜!? 地球が何回回ったとき〜!?」
あっ。
「あっ」
「ひっ捕らえろ!!!!!!!」
「「「日本史の兵頭──ッ!!!!」」」
先生、あんな小学生並みの煽り文句さえ言わなければ……
「嫌だ! 魔女裁判に掛けられるなんて!!! 一生の傷跡が増える! それにこう……10年くらい夢に出てくる!」
「8人に勝てるわけないだろ! 粗挽き肉団子にしてやる!!」
思った以上に情けない本音を喚きながら、黒衣の連中に先生は連行されていってしまった。
ガラガラ、ピシャリ。
扉は思ったより静かに閉じられた。
その様にさっきまで机に突っ伏しスヤスヤタイムを満喫してた腐れ縁の親友殿も、髪を約1680万色に発光させながら笑い転げている。いい空気吸いやがって。コイツめ。
「授業、どうするんだろう……」
沈黙。嵐か過ぎ去った教室で、誰かが呟いた。
後に残ったのは書きかけの黒板と、笑いのツボに入ったのか痙攣するセルトのみ。あと35分の授業、どうすればいいのやら。そんな疑問に応えるように、ぴーんぽーんぱーんぺーんと最後の1音だけが外れたチャイムが鳴った。
『ただいま、兵頭先生が拉致されたことを確認しました。帰還は早くとも午後になると思われますので、午前中の担当授業は自習に変更します』
一瞬の静寂。
「「「Yeahーー!!」」」
「古戦場走れるじゃん」
「サボりだぁぁ!」
「サボテンダー!」
歓喜の声が湧き上がった。
もう1度と繰り返された放送は、普通はどうにも嬉しい内容だった。なんか1匹魔物が混ざってた気がするけど。全学年で見れば毎日1回は起きてるようなことなので、もう大体全員が慣れてしまっているからだが。
『そして2年のトラブルシューター部は、至急職員室まで集合して下さい』
今度は最初の1音だけを外したチャイムが鳴り、放送を締め括る。
さあここから先は俺たちの仕事だ。
我ら、私立稀世学院高校トラブルシューター部!
去年から1年生の間であまりにも多発していた超常現象解決の為、気が付いたら発足していて所属もしていた謎の部活動!
主な活動内容はこういう謎現象の解明・解決!
所属メンバーは
部長 烏羽 ナギサ!
副部長 香風 セルト!
アタッカー 幸村 マヨイ!
ヒーラー 葦麿 ケルシー!
記録会計 俺こと小鳥遊 コウ!
マスコット アスコット*2帰りのウマソウル号!(太め残り)
以上だ!
「欠員は……ライブで休んでるケルシーとウマソウル号だけだね。みんなで出動だー!」
ナギサの号令で、全員が職員室に向けて動き出す。今日も今日とて、俺たちは学校を奔走することになるのだった。
P.S
助け出した先生は美少女に肉体改造されていた。
なんだ今の!?